Thursday, July 30, 2015

第61回全国高等学校演劇大会(滋賀大会) 佐賀県立佐賀東高校演劇部『ママ』

(全国高等学校演劇協議会公式webサイトより)

@ひこね市文化プラザ グランドホール

作:いやどみ☆こ~せい・佐賀東高校演劇部
出演:佐賀県立佐賀東高校演劇部

ここもパンフレットを読んでびっくり…。2014年には,県内外合わせて新作11作,26の会場で公演を打っているというではありませんか…。ひ,ひとつき1本のペースですか…!なんてエネルギーのある学校なの…!ものっすごいパワフルな学校なんだろうなぁと思ったら,その通りの作品でした。

なんか,高校演劇でこんなにボロボロ泣いたのは初めてです。うるり,ぽろり。なら多少ありましたが,カバンの中からハンカチごそごそしちゃうような作品は,初めて。高校演劇を観始めて15年目になりますが,忘れられない作品の一つになったかも。
そうそう。カサハラさん母と子の愛みたいなテーマに弱いんですよー(; ;)
だから強制的に涙を流したいときはスティーブン・スピルバーグ監督の映画『A.I.』を観るくらい,胸を鷲掴みにされちゃうのです。それを生のお芝居でやられたから,ぴぎゃーってなっちゃいました。ぴぎゃーって。笑

コハルが,アラサーの私の心をすっごいくすぐってきました。笑
なんなのあの必死さ。すごいママのこと好きじゃないか。
コハル役の方…。男の子,ですよ…ね?まだきちんと声変わりしていなくて(←ある意味すごい),多分女の人が聞いたらものすごい切なくなる声してるなーと思います…。今しか聞けない声ですねきっと…。
そう。すごいママのこと好きで,それしか見えないから,高校3年生という設定はちょっと違和感がありました。中3,いや中1くらいでも良さそう。この年だったら,まだいい子で頑張るぞ!っていうお子さんがいると思うので…。(そして一般的には次第にママ離れしていく。はず。)

ミユキちゃんがコハルくんをぎゅっと抱きしめるところなんて,その最たるところで,気持ちを言葉にするのってとても難しいな,苦しいなと思いました。それをまるごと引き受けるミユキちゃんに,ぐっときました。大きな看護師さんだわ…。あと,ミユキちゃん役の方の声がすごく好みでした。ああいう感じの声,印象に残ってあこがれです。

コハルが小さくて幼くてついつい守ってあげたくなってしまうから,おじさんとおばさんとその娘の言葉にはかなりショーゲキでした。
弟は自分の姉が倒れても,そんな冷たい言葉しか掛けられないんかいとか,義理の妹もそんなにお義姉さんといざこざがあったのかなというようなシャットダウンっぷりで,こんなこと本当に言うんかいと心の中で思わずつっこんでしまいました。その娘さんも薬剤師になりたいとは言っていたけど,(あの子には絶対調剤されたくない!!!)と観ながら思ってしまいました。笑 きっと彼女は彼女なりの正義があって,両親に親孝行したい気持ちも強いと思うのだけど……「あなたのお母さんのせいで私は大学に行けなくなる」みたいな物言いはどうなのよ,トキコちゃん…。あと「死体見るの初めてだから気持ち悪い」って言葉はあまりにひどいでしょうよ,トキコちゃん…。素直すぎてつらいです。この子もこのままのせりふで高校生っていう設定には,少し無理があるような。中3でもそろそろアウトな発言かなぁと思いながら聞いてました。

そんな感じでせりふは(えぇぇ…)と思うところがあったのだけど,“コハルくんにはそう聞こえた”と受け取ることにしたいと思います…。

音響と照明効果が本当に「効果」として出ている作品だなーと思いました。音響は,選んで選んでこれを使っているんだろうなということが特に伝わってきました。同じ曲を何度も掛けているのだけど,ここぞというところでボーカル入りにしてくるとか。(場の盛り上げ方を知っている…!)と冷静に思う自分もいれば,それにまんまとやられてぐわーってきてる自分もいました(笑)。
照明も,魅せるところでガツンと客席に向けて照らしてくるから,本当に狙ってきてるなぁ~と実感…。それに加えてキャストさんの動きもよく考えられていて,幻想的な表現が本当に幻想的でした。

ママの書いた台本ははちゃめちゃなのにキャストのパワーで振り切ってるという感じで,でもその中にもママに触れられそうですり抜けていくコハルのもどかしさが感じられる瞬間もあって,エネルギーの緩急が激しい作品だったなーとも感じます。歌って踊って,本当にパワフルな作品でした…。その中でも,既に書いたミユキちゃんぎゅ,のところと,冒頭の眠っているママがふわぁ~って起きるところ(←心の像が動き出す感じで)と,「ママ何やってるの?」ってコハルがママのやってることを覗きこんで自分もやってみる(そしてママはすり抜けていく)…っていうあたりが特に私の胸は締め付けられてました…。あぁぁ…。

母子家庭でも何かしらの保険に入っているだろうとか,親戚がそんな言葉かけるのかとか,大人の私が観るとちょこちょこ(おや?)と思うポイントはありましたが,気持ちでここまで突き抜けてきた作品なのかなと思います。そしてその気持ちとか,役者のエネルギーに私も圧倒されてしまいました。とにかくノンバーバルで魅せる,言語を超えたところに訴えてくる,そんな作品でした。
佐賀東高校のみなさん,お疲れ様でした。

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