Saturday, August 8, 2015

第42回北信地区高校演劇合同発表会 長野清泉女学院高校演劇部『宇宙の子供たち』

(北信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@千曲市更埴文化会館あんずホール

作:安樂怜・辻井大作

北信地区大会の大トリは清泉!清泉といえば私の現役時代は県大会常連校で,06年度の県大会以来の観劇でした。

このタイトルを見た時,あれって思いました。
そしてパンフレットの後ろ(過去の上演記録)をめくって,ですよねって思いました。

見覚えがあったのです。この単語。『宇宙の子供たち』。

2004年度の清泉の上演作も,『宇宙の子供たち―クリアウォーター号の場合』なんですよね。作:井上梓・辻井大作,潤色:長野清泉女学院高校演劇部で上演されてました。

私,04年度の県大会も行ってたんですけど…イマイチ観た記憶がなくて…。
なんでだろう~。しかも過去のブログにも何も書いてないから本当に謎すぎる。でも中抜けしてたとは思い難いので,やっぱ見てたのかな??

とりあえず過去の資料を引っ張り出してみると,04年度の『宇宙の子供たち』にもケンジくんやタダシくんが出てきているので,おそらくこの作品がベースで15年度版ができたのかな~なんて思ってます。11年の月日を経て作品の練り直しができるのも,私立ならではだなぁと感じます。

(というわけで04年度の下敷きがあって今回の作品ができたと思っているのですが,その場合クレジットには井上さんのお名前とかなくて良いのかしらと思ったり。よくわからないけど。)


さてお芝居です。幕が下りたときに,もし県大会に3校行けるのなら,ここは確実に通るんだろうなーと直感的に思いました。
昨年度から久しぶりにがっつり高校演劇の観劇を再開して,“2010年代っぽい”と感じる作品にいくつか出会ってきました。この作品もまた,2010年代らしいというか,この時代なのでヒリヒリと胸に迫るなと思います…。

創作で大事なもののひとつがタイトルだと思うんですが,「こども」が「供」の字表記な時点で,こどもには優しくない話なんだろうなぁなんて想像できました。それこそ04年くらいはまだまだこの字は使われていたけど,今ほとんど使われないですよね。そこであえて(04年度の練り直しでもそうでなくても)使っているので,大人目線というか,大人に振り回されるというか,こどもが弱者として描かれる作品なんだろうなぁと。実際そうでした。

先月,マームとジプシー『cocoon』を舞台で観て原作を読んだり,仲村トオルの読み聞かせ『お話の森』で太宰治の「御伽草紙」から「舌切雀」を聞きました。『cocoon』は思春期の少女から見た戦争の話で,空想することで現実に直面することから自分を守ってきた子が主人公。太宰治の「御伽草紙」は,WWⅡ真っ只中に書かれたお話。次元は少し違うけど,危機的状況に陥った時,空想はとても大きな力を持ち,その人を支えるのだろうということを2作から感じました。

『宇宙の子供たち』もまたそうで,ネグられているきょうだいの空想の世界。ワクワクするし,カワイイし,ドキドキする。でも,その分とても苦しくなる。そんな舞台でした。

作中,何度かこども電話相談のシーンが出てくるのも,時代を感じました。今年の3月末でTBSのこども電話相談室が終了したのも記憶に新しかったので,これを連想しました。多分意識して入れ込んでるんだと思うんですが。
(この記事書くために全国こども電話相談室・リアル!のサイト観てみたんですが,アクセスすると乃木坂の子がなんとも言えない表情してて若干つらくなるなぁ…。もうここでは受け止めてもらえないのね…。って。)
ロクスケとお姉さんが楽しくケンジとタダシのはてなに答えていたところから一変して現実味を帯びたやりとりになってしまった瞬間は,2人にとって最後の大人との繋がりが途絶えてしまったように見えて,ものすごーくつらくなりました…。あぁ…。

あと宇宙?でお父さんとお母さんが襲ってくるシーン(お母さんの衣装がスゴイ…!)も,デフォルメされているにせよ,実際こうだったんだろうなぁとか。思いました。

そうそう。「こうなりたかった」とか「こうしたかった」が全面に溢れてるあたりは,先月全国大会で観た佐賀県立佐賀東高校『ママ』に通じるところがありました。あと人数のわちゃわちゃ感は福島県立いわき総合高校演劇部『ちいさなセカイ』とか,そんな感じ。そういう雰囲気に似た作品が長野県の地区大会でも観られたことが,なんだか嬉しかったです。でも雰囲気が一緒だから嬉しいというわけじゃなくて……,なんていえばいいんだろうか…。なんとなく,地区だけじゃない場所でも通用しそうだなという作品が,長野県で観られた。あ。そうそう。そんな感じかな。そういう舞台に出会えたことが,嬉しかったです。はい。

だからこそいっちばん最後の音響さんのミス?(音の入り)がすっごいもったいなかったです…!あそこは2人の希望であり,2人が望遠鏡で一番見たかったものだったと思うんです。私の気持ちも結構ぐわわ~ってなってたんですが,ハタッと我に返ってしまいました。うぅぅ。
清泉に限らず,音響のオペミスがなんとなく大会全体で目立った気がします。というかやっぱり照明のミスと比べてかなり大きなミスになっちゃいますよね。音響って。当たり前のことがきちっとできるって大変なんだなと思いました…。

なんかまとまりのないことの羅列になっちゃってすみません。
あと,女子校の運命として,登場人物が男性であろうが女性であろうが全部女子高校生が演じる…というものがあると思うんですが,ケンジもタダシもとってもすんなり見られました!私結構ぎゃん!!って反応しちゃうこともあるんですけど,素敵なキャスティングでした…。すごいな…。そうそう。ロクスケとかお姉さんとか,主要なキャストさんの雰囲気が皆さん良かったです。脚本に使われるのではなく,脚本を使っていたのが見えた感じ!

大人が観るとグサリと胸に突き刺さる,かわいくて切なくて愛おしい作品でした。
清泉の皆さん,お疲れ様でしたー。

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