Sunday, July 5, 2015

長野県屋代高校演劇班 第59回鳩祭公演『A・R-芥川龍之介素描-』

(鳩祭公演パンフレットより。演出は生徒さんなので念のためお名前を伏せました。)

@長野県屋代高校342教室

作:如月小春
出演:長野県屋代高校演劇班

長野東と上田東の間に行こうと決めた2校目の学校は,屋代!
私の中で屋代高校といえば…

①私が中学生のときにネットでやりとりがあった学校!
→「屋代大作戦!」という名前(確か)の演劇班webサイトが当時あって,そのサイトさんと私のwebサイトで相互リンクさせていただいていました(相互リンクという単語がもはや時代ですね)。屋代の管理人さんは,後に私の母校となる高校への進学を本気で考えたことがあったそうで,長野県広いな遠いなと思ったものです。あと屋代のwebサイトのURLの一部が“846”で,ステキ!と思ったものです。

②昨年小川幸司先生作の『南京の早春賦』をやった超チャレンジャーな学校!
→県大会と関東大会を拝見し,2000年代のあの頃を懐かしく感じたものです(県大会の感想はこちら,関東大会の感想はこちらからどうぞ)。

そんな屋代が今年は『A・R』ですって!?
なんてカサハラホイホイな学校なのでしょうか!

『A・R』はその昔……ちょうど12年前,『南京』初演と同じ2003年に長野県田川高校演劇部が文化祭公演として上演したことがありました。そして私はそれを観ました(感想はこちら)。
この年の田川は超すごいことをしていて,文化祭一般公開の2日間で,2作品3チーム4公演というとんでもない公演を打ってました。1作やった1,2時間後くらいに別作品をやるという,今思うとすんごいスケジューリング。なので舞台セットは両作品ともだいたい同じで,どっちも観ると舞台装置の使い方の違いを感じられるという,観客としてはなんとも興味深い公演でした。

そして私の記憶が正しければ,屋代の顧問の先生,前任校でもこの作品やっていらっしゃる…。(違ったらスミマセン。)
きっと先生的には思い入れのある作品なのかな!
いろいろもろもろコミコミで,屋代版『A・R』,なんだか気になる!

…ということで,行ってきました屋代高校!

鳩祭のパンフレットを元に会場の3棟4階を目指したのだけど…
とっても良心的!あっちこちに「342教室はこちら」って札が貼ってあって,階段の窓ガラスにも「あとちょっと!」とかって紙が貼ってあって,来てほしいオーラがすんごい伝わってきました。

環境の良さにもびっくり!文化祭は騒音と吹部軽音とアナウンス放送との闘いだと個人的に思っているのだけど,3棟の4階は演劇班以外に使っていない…!!!!!騒音,ない…!!!!!すご~…(゜д゜)と思い教室の前に到着!

パンフレットにも壁や窓ガラスに貼ってあるチラシにも開場時間が書いていないので早く来過ぎてしまいました。まだ最終ミーティング的なことをしている最中だったようで,いろいろ聞こえてきたので華麗にスルーしておきました。笑

開場して「奥から座ってくださーい」と案内されたので,はーいと思って客席のはじっこに座ったら,失敗…!
座ったお向かいにも客席が!あぁぁすいません!と思ったのですが,そのままそこにいさせていただきました。奥ってお部屋の奥のことだったのですね…。
…そう!つまり対面式の客席だったのでした!面白ーい!
面白いのは客席だけではなくて,照明もいっぱいですごーい!
ミニ照明用の吊り台的なものがあったり,直置きの照明があったり,なんだか種類がいっぱい!凝ってる!!
そして客席の横には役者さんのスタンバイ場所になるであろう椅子がいくつかと,衣装が置かれていました。本編では使用されませんでしたが,小道具を収納してる箱がアッ○ル社の物で,あら(-ω-)と思ったり。笑←このときは,そこにあれば本編で使用するものだと思って見てたので…。

あとは音響席と照明席で合わせて4台くらいパソコンがあって,こんな時代なのかぁ~としみじみしながら待ってました。


さてお芝居の話に…。

懐かしいような,初めて聴くせりふのような…(・ω・)
『A・R』のもともとのボリュームがわからないので,田川版も屋代版も多少切ってあるのかなとは思うのですが,それでも12年前に聴いた覚えのあるせりふが出てきて,うぉーってなりました。笑
「逃げましょうか,一緒に」とか。キターッ!!てなりました。笑

昨年度の『南京』に出ていらしたアデラ役と由美子役の方はばっちり覚えていたので,特にこのお二人を追ってしまいました。アデラ役だった方,やっぱり憑依系の役者さんだなと再認…。男性役だとかっちょよくなりますね!パワフルな役が本当に合う方だなーって思います。そしてせりふも以前より聞き取りやすくなっている気が…!(でも編集者の時に着るジャケットはちょっと大きくて気になりました。作家にも着せるから,余計でかさが際立ってしまいました。)

あと今回特に素敵☆と思ったのは,兄役の方!1年生ということで高校演劇デビューされたばかりだと思うのですが,この方の目が,良い!!!この方は横顔でも目で演技できてるのが見えて,ちょっとトリハダものでした。すごい…。この先が楽しみな役者さんです…。

ただ全体で残念だなーと思ったところもあって。まずは声。
昨年の7月にくちびるの会『旅人と門』という作品を観た時に,箱に合わせた声量って大事だなーと思ったんです。箱に対して過剰に大きい声だと,(すいませーん,私この距離にいまーす(・_・)ノシ)と思ってしまいます。どこに届けたいのかな?って。置いてきぼりにされてしまった感じ。
大きい声が出せるのは大切なことです。特に大会やホールなんかでは聞こえないと話にならないし,重視されると思います。でもお客さんとの距離を測って声量をコントロールできるのも技術のうちなんじゃないかなと感じました。
…というか!せっかくの教室公演なんだから!ささやき放題だと思うのだけど!なんだか声張りまくりの一本調子で,ものすごくもったいなかった感がしますー!どことなく2000年代前半の松本深志を彷彿とさせる声の出し方に,屋代全体がなっている気がしました…。

次に残念だったのは,役者の立ち位置!
対面式の舞台にするならば,どちらから見えても面白い画になるべきだと思います。
がっ,明らかに(あ,あっちが表なんだな。大会にこの作品持ってったらあっちが客席だな)と思えるつくりになっていて,裏(だと思われる側)にいた私はしょんぼりしてしまいました。対面なら多少見えないのは我慢せざるを得ないと思えますが,特定の人物が毎度毎度背中だと,なんだか寂しいですな…(逆に別の特定の人物は毎回こっち向いてる)。だったらもう対面とかでなくて良いから,一方向からしっかり全体を見たかったなーなんて思いました。演出さんが兼キャストだったので難しいだろうなとは思うのですが,例えば音響さんや照明さんが見てあげるとかできると良いのかなー。
あとストーリーテラーっぽいせりふを出すひとのほとんど(妻とか)がその場に棒立ち!ということが多くてもったいなーいと思いました。対面式!対面式です!せっかく物語を回すせりふを出すのだから,聴かせるせりふを思い切り聴かせても良いんじゃないかなーとか思います。話しながら舞台をぐるっと一周回るとか。ずっと客席に視線投げっぱじゃなくて狙って向けるとか。そういった観客をはっとさせて巻き込むような工夫があると,一層のめり込めたかなと思いました。

さらに残念というか惜しいと思ったのは,狙いはわかるけど!というところ。
小道具のろうそくをつけたは良いけど,ただ持ってるだけでせりふが終わるとろうそくの出番もおしまいとか…(え,それだけのために!?)と思ってしまうところがちょこちょこあって,もう少し別のことにも使えると小道具を使ったことになるだろうな~なんて思いました。あとたった数行のせりふのために着替えたり。うぅーん。やりたいことはわかるのだけど,もう少しスマートに行くと役者さんもやりやすそうだななんて感じました。

いろいろ書いて申し訳ないのですが,先週今週と何校かの文化祭公演にお邪魔して,表情の変化が乏しい方がたくさんいることに改めて気づきました。せりふは出ているのにどうして薄っぺらく聞こえるんだ…って謎に思うたびに,(あー表情がついてないからかー)ってことに気づきます。まゆ一つ,口元ひとつ,目ひとつでそのひとの感情が見えたら,もっと表現の幅が広がるだろうな~と思います。屋代の皆さん,声は出ているのでぜひそういったノンバーバルな表現もできると素敵です!

そうそう。開場時から照明すごーいと思っていたんですが,やっぱりすごかった!
LEDの照明を高校で持っているなんて!一台でいろーんな色が出せて,なんて時代は変わったのだろうと感激しながら光を見つめてしまいました…(笑)。でもLEDだと,つくか消えるかなんですね。細かいフェイドアウトやインはできなくて,そこはその子の限界なのだとも見ていて思いました…。
あと天井に布吊ってあるな~とは思ってたんですが,そこにプロジェクター投映するとは!時代だー!笑   歯車ぐるぐるが素敵でした…。

カーテンコールもとても丁寧で良かったです(「夏服の男」は「夏服の男」として,考える楽しみをお客さんに委ねても良かったのかなと思いましたが…)。
そうかぁ。妻役の方はこれで引退なのですね。…あっ。妻役の方。お芝居始まる前にひじのあざが見えて(稽古激しかったんだなー)と思っていたんですが,まさかの階段落ちがあったのでこれか!って思いました。笑 階段を転げ落ちたことで,なんだか良秀の絵が立体的に浮かび上がったみたいで,あそこはインパクトありました。…はっ。脱線脱線。妻役の方,由美子や関東大会の運営含め,お疲れ様でした。3年生はお一人のようなので,その分いろいろ大変なことも多かったかと思います。引退公演を拝見できて良かったですー!


なんだか残念残念といっぱい言ってしまった気がするけど,せりふの出や滑舌などなど『南京』からの伸びが確実に見えた作品でした!素敵な1年生も入班(と呼ぶの!?)されので,今後が楽しみな学校です。またカサハラホイホイしてください。笑
屋代のみなさん,お疲れさまでした。お邪魔しましたー。

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