@千曲市更埴文化会館あんずホール
作:コイケユタカ
出演:埼玉県立秩父農工科学高校演劇部
やってきました千曲市。
北の関東大会をがっつり観るのは10年ぶり。
秩父農工のお芝居を観るのも10年ぶり!!!
そしてスミマセン…。(-ω-)
私,この年まで秩父農工って私立なんだと思ってました…。だって今も昔も部員の皆さんが60人もいるんだもの…。パンフレット開いて「埼玉県立」って書いてあって,(アレ?)って思いました。10年目の真実…!
この記事を書くにあたり,「演劇部」なのか「演劇クラブ」なのか,はたまた長野県のはじっこのように「演劇班」なのかを調べるべく,学校のwebサイトや演劇部のブログなどを拝見しました。そしたら知ってしまった。
…え。専用の劇場が建ってるですって…?
本当に公立なのか疑わしくなりました。笑
長野県出身のニンゲンからしたら,埼玉はどこであってもやはり都会なのです…。次元が違うのです…。すごいな埼玉…!
あと,コイケユタカ先生も10年前に塩尻にいらしているではありませんか…。関東大会に出場するという意味で,10年間一定のクオリティを保ち続けていると思うと,すごい方だなーとしみじみ思いました。
もちろんそれは部活にも言えることで,顧問の先生の異動や部員の入れ替わりに左右されることなく,学校としてクオリティを保っていることが本当にすごいなと思いました。10年経てば部員なんて3巡するし,同じ名前の違う学校になって当然なのに。でも秩父農工は違う。公立だから余計にすごいなーって。安定してるなーって感じました。
はい。作品の中身に触れたいと思います。
ラストのラストで,赤い照明で,10年前に観た秩父農工の『なにげ』を思い出しました。あの,赤い靴の女の子がだーーーーっていっぱいいて,こっちに振り向いてくるあのシーン。もう『なにげ』がどんな話だったか全然覚えていないんですが,あのシーンが強烈なインパクトを放ってて,ずっと心に残ってるんです。(あと全身白タイツでメガネ?のお兄さんが下手のすごく高い場所から飛び降りてきたことと,布でできた舞台セットも覚えている。ピンポイントすぎ。笑)
そう。ともかくそこを思い出したのです。最後の最後にそうくるか!っていうところを。もちろん作者の方は違うのですが,(秩父農工らしい舞台だ!)と瞬間的に感じました。
幕が開いてぱっと目を引いたのは,赤いじゅうたんの八百屋。
「魅せる!」という意識がビシビシ伝わってきました。でかいし。さすが秩父農工だなーって,これもまた一瞬で思いました。笑
あと,舞台セットですごーいと思ったのは,奥の壁状のもの!上から下までベルトみたいな平らなひもみたいなものが何本も張ってあるんですが,何もしなければそれはパネルみたいに見えるし,そこへ突入すればみょーんと出入りすることもできる!パパっと効率よく出はけするにはとっても良い仕組み!面白い構造…!
そしてまんまと騙されたというか…,うん,騙されましたよね。トラックが開くまで,私もそこにいるのはニンゲンだと思っていました。うまいなぁ。最初に扉が開いたときのわんわんキャンキャンぶりが必死で,とてもよかった!ここから目の前にいる彼・彼女達は,心のイメージだということがすとんと落ちてきました。
(でもよく見たら,ちゃんとパンフレットに“いぬ”って書いてあるよね。はるかぜちゃん語じゃなくて,“いぬ”って。笑)
やっぱり当て書きだからだと思うんですけど,キャラクターがとっても立ってました…。
チャラチャラなLEOとかマッチョなビリーとか(役名が合ってるか不安だ),アキバ系なすばるとか。男性陣が特に良かったなぁ。小次郎は,擦れた役の窪田正孝くんのようでした…。(ほめてる)
やっぱり母数の規模が違うな…と,観ながら思いました。良い意味で,見せつけられているという感じ。笑
両親の選んだ道に抗えないつぐみ。つぐみの進む道に抗えないサクラ。
そうしなきゃいけないレールの上で,純粋につぐみが迎えに来ることを待っているサクラが,愛おしくて愛おしくてたまりませんでした。サクラに限らず,他の子達もそう。信じたいという純粋な気持ちが強くて,ヒリヒリしました。観ていてつらかったです。
きっとつぐみも純粋に会いたいと思っただろうし,ずっと一緒にいたいと思っただろうな。だって家族なんだから。だけどそれに直面したらつらすぎて苦しすぎて,現実にぶちのめされてしまうから,つぐみが生き延びる手段として選んだのは「忘れること」だったんだろうなと思います。蓋をして,感じないようにして,麻痺していく。忘れていく。それは残酷なことなのかもしれないけど,そうしなければ生き延びられない時代になっているのかもしれない。何を信じたいのか,何を信じられるのか,何を信じているのか,よくわからん時代になっているのかもしれない。
一瞬(あ。)と思ったのが,ビリー(で,良いですよね…!?青い服の筋肉のひと!笑)がヒトラーのあの象徴的なポーズを取っていたところ。どさくさに紛れて…じゃないですけど,その前の流れからそそっとごくごく自然に入れ込んできたので,怖いなと思いました。隙間を狙ってサッと挟んでくる。その入れ方そのものがそれらしくて…うん,一瞬背筋が凍りました。民主主義も使い方によっては恐ろしい凶器になり得るということを感じました。最後ガス室(トラック)に閉じ込めて…というところも,ぞぞぞってなりました。犬達の神経が徐々にやられていくあたりとか。民主主義の極端なところを想像させられました。
(民主主義といえば,椎名林檎の「NIPPON」も若干そういうの意識して作ってると思うので,その曲のセレクトは良かったなーなんて思います。そういえばAKB48の「ヘビーローテーション」も,ある意味超民主主義というか,ファンという名の民意を反映してる作品ですよね。秀逸ー!)
あとあと,秩父農工が都会☆って思った部分と言えば,若干の下ネタをさらっと入れてくるあたりとか,作○学院と合コンしちゃうってせりふで言ってるあたり。度胸というか…いい意味で怖いもの知らずで良いなって思いました(笑)。他校の名前って,自分達の立ち位置がわかってこそ使えるものだと思うので,これでこそ関東ですね…!
この感想をカタカタと打っていて,『D-パラダイム』の“D”って何かなーと思っています。
Dから始まる単語なんて山ほどあるしな。
ドラマ?ドメスティック?ダブルバインド?あ,“どこに向かってるの”の“D”かな。
(2015.2.6追記…ひらめきました!DemocracyのD!ではないかと!思うのですが!どうなんでしょう!)
「どこに向かってるのかな?」「知らなーい」
なんとも強烈なせりふ。最後のせりふ。
2010年代の高校生だから出てくる,得体の知れない未来を探っているような,ただただ傍観しているような,そんな作品だったと思います。
初日の朝イチでしたが,一気に秩父農工の色に染まりました。やっぱり力がある学校はやってくれますね。秩父農工のみなさん,お疲れさまでしたー。
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