Saturday, January 24, 2015

第50回関東高等学校演劇研究大会(八千代会場) 茨城県立水戸第二高校演劇部『エゴロジスト』

@八千代市市民会館

作:根本玲乃
出演:茨城県立水戸第二高校演劇部

初!南の関東大会!茨城県の高校!どんななんだろうな~と思って観ました。

きっと,カーリングストーンのような勢いのままにここ(関東大会)まで来たんだろうなぁ!というのが率直な感想です。
荒削りで,書きたいことがたくさんあって,伝えたいものもたくさんあって,今も将来もどっちも大事で,どちらも大切にできると思うししたい…という,万能感みたいなものが見えました。“等身大の高校生”が出ていて良かったです。

パンフレットには「この劇をご覧いただき,少しでも多くの方と『原発』について考えていきたい」とあるので話のメインはここなのだと思いますが,友達に素直に気持ちを伝えられない…とか,私利私欲のための詐欺…とか,家族がいない高校生達…とか,伏線がいろいろありすぎて,「とにかく詰め込みました!」という印象も受けました。バラバラとしたピースはあるのだけど,全部は繋がっていなくて一枚の絵にならない感じ。もう少し描きたいところを絞ると,すっきりしたのかなとも思います。

観ていて気になったことを,思いついた順に書きたいと思います。

①あれ,そもそも何で宇宙大会ないんだっけ?
もともとないなら,スーツのお姉さんはなまこチームを火星に呼んでお仕事させれば良いのでは…と思ったのですが,だめですか?その設定だと火星チームと戦えなくなるからだめですか?(笑)なんでないかはせりふでも言っていた気がするけど,あんまりはっきりしていなかったかも…。

②原発の「何が」問題なのかが,もう少し見えるとよかったなぁ。
生きるためにはお金が必要で,お金を得るためには職を選ばない(選べない)ひともいる。それがたまたま発電所なのかもしれない。
日々積もっていく問題を解消しようと今アクションをかけたり,改善に向けて努力をしなければいけないのは原発の「使用」だけではなくて,国全体の借金だったり…,もっと細かく言うと年金制度だったり,いろいろあると思うんです。そういった,「負の連鎖」自体が問題なのか,負の連鎖を傍観している「利己的な姿勢」が問題なのかが見えにくかったです。どっちもあるのかもしれないけど話が大きすぎるし着地点が何でもありになってしまいそうな気がするので,原発の「何が」問題なのかが絞れていると良かったと思います。

③嵯峨野ちゃんのエゴ
嵯峨野ちゃんは「プレゼント(レモンのはちみつ漬け)を渡すことで,それに触れるたび渡した自分のことを相手に思い出させてしまう。それが相手にとって負担なのでは。」というスタンスの子なんだなと思っているんですが,なんかここは嵯峨野ちゃんが裏を読みすぎている気がして,(え…友達なんだよ,ね!?)と思ってしまいました。例えば準決勝とかで負けた相手がそれをしたら負け惜しみ感も出てわかる気もするのだけど,単純に立場が違う友達なら純粋に応援してあげれば良いのでは…。神経質ね嵯峨野ちゃん…と,しみじみ思いました。

③バイトちゃんへの共感しづらさ
カタカナが苦手なのでウインナーコーヒーとウインナーがごっちゃになってしまうということなのだけど,いくら田舎の出でも,日本人でそれはちょーっと無理があるかなと思いました。過去からタイムスリップしてきた人くらいでちょうどいい語学力…!笑
なので,このバイトちゃんはいっそのこと,日本語をほとんど話せない出稼ぎに来た外国人とか…そういう大きな文化差のあるひとの設定の方が,やりやすかったんじゃないかなと思います。

④10万円の稼ぎ方
…が,なんだか安易!なんだか安易な気がするのです!!なぜそんなビジネスを始めようと思ったのですか!動機やねらいが見えにくくて,(なんで?)が先行しちゃう感じがしました。

あと,気になったこと…ではなく共感ポイントになるんですが,火星チームの皆さんは,失うものが少ないので自暴自棄というか,刹那主義になるのも当然だなーと思いました。なれるものなら彼女達だって安全な仕事をしたいし,安定した生活を望みたい。でもそれができない(選べない)場合もある。そこに正論を持ってこられても逆効果というか,わかっていることとできることは違うので,火星チームは苦しいだろうなーなんて思って観てました。
私は普段こちらに近い方とお会いすることが多いので,なまこチームはまぶしかったです。若いなぁって。それがキラキラしていて万能感に溢れる高校生ってことなんだろうけど。

あ。あと話ではなく演出や演技のことになるのですが,私いろんなところで書いてますが,シャウト系がだめなんです。勢いのある喋り方って言うのかな。なんか,叫び率が高いお芝居のことです。あるいは普通のせりふでも,叫んでるように聞こえるお芝居のことです。
水戸第二もこれに近い感じだったのでちょっと抵抗がありました。きっとせりふの出がもっと自然になったら,リアクションも一本調子にならずに済んだのかな?と思います。

あとあと,冒頭とクライマックスでなまこの子が登場しますが,しょっぱなで中学生みたいな服装の子なのにややドスの効いた低めの声だったので,若干ギャップを感じました(笑)。でもってこの役をされていた方はせりふを出すときちょっと表情がお辛そうだったので,無理なく出せるといいだろうなぁと,ちょっとハラハラして聞いていました…。


作と主演を兼任されている方ってたまにお見かけしますが,下手するとそのひとのオンステージになっちゃうんじゃないかなと思います。
…が,今回はきちんと別の方がメインの演出を担当されていたようなので,客観的に引いて完成させられたのかな,なんて思いました。


作者の方の意欲と,日々揺れ動いている思いが見える作品だったなと思います。きっと現時点で答えがすっきり出せないから,文字通り「投げて終わり」にしたのだと思いますが,部のみなさんがこの作品に散りばめられている「気になること」の種をそれぞれ育てて,いつか何らかの答えや表出を生み出せたら良いなと感じました。
水戸第二のみなさん,お疲れ様でしたー!

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