作:伊三野友章+中村恵
出演:千葉県立成田国際高校演劇部
パンフレットの「上演にあたって」の文章がとても印象的でした。ちょっと(というか全文)引用させていただきます。
あるひきこもり男性は,部屋にとじこもったまま自宅ごと津波に流されたという。
はっとした。わたしたちは,つい漠然と「被災者」とひとくくりにしてしまいがちだ。けれど一言に「被災者」といっても百人百様,たとえば障害者や外国人といった「災害弱者」の存在もある。
ほんとうに《ひとりひとりの震災》にわたしたちの想像力は及んでいるだろうか。震災を忘れるな,というが,その前にわたしたちは,忘れないためにまず,覚える必要がある。
「というが,その前にわたしたちは,忘れないためにまず,覚える必要がある。」
このフレーズがとても強烈でした。
そしてこの作品は二人芝居。しかもそのうちのお一人は,なんと8役あるじゃないですか。
どんな舞台になるんだろうと,期待して観ました。
面白かった!3.11をこんな角度から切り取るのかぁ~と。目から鱗というか…新鮮でした。
被災地というと,私は岩手や福島,茨城なんかをぱっと想像してしまいがちだけど,千葉県でも津波にさらわれて行方不明になった方がいらっしゃる。忘れないための覚え方として,ほんの少し距離を置いて,多面的に見て,ひとつの真実に迫っていくあたりが,千葉県なのかもしれないなと感じました。
それから,「たとえば障害者や外国人といった…」を読んで,重いASDの方とか,知的な遅れがある方とか,そんな方々に思いを馳せました。そういった方にお会いすることが多いので。私。
そうしたいと思っていたことと,実際に取った行動と,それによって生じた結果は必ずしも一貫しているとは限らないということを,改めて感じました。それが良いわけでもなければ悪いわけでもないし,それでこそ人間らしいと思うのだけど,その少しずつのズレが人生の転機になることもありうる。その一人がカズオくんだったんだろうなぁ。
始まってすぐに,だむだむした音と現代的な映像が流れてきたときは,(さすが千葉だ!現代的だ!)と思いました。高校演劇も,技術を駆使したすごいものをさらさら~っと流せる時代になっていたのですね。
でもって,高校演劇で二人芝居ってたまに観ますが(最近だと長野県木曽青峰の『砂漠の情熱』とか,長野県松本県ヶ丘の『閑古鳥は鳴かせない』とか),せりふが一人にしかない…という舞台は初めてでした!ショーゲキ!私は短期記憶が悪いので,8役やった方の記憶力はかなりリスペクトです…!
あれなんですね…。なんでもう一人の方にはせりふないんだろうと思ったんですが,成田国際高校演劇部のブログによると,正式な部員は8役の方のみなんですね…。それでこの完成度!すごすぎるー!お手伝いさんてモチベーションの維持とかマネジメント面で難しいところが多々あると思うのですが,まるまる含めてすんごいカンパニーだなと思います。
お芝居を支えているのが映像と音なんですが,映像,特に聞かせたいせりふが字幕になって出てくるんですが,ただ文字が出てくるだけでなくアニメーションの効果がかかっているので,若干過剰に感じるところもありました。記者の心に引っかかったワードがイメージとして投映されていると思うんですが,記者のというより,作者の聞かせたいワードがぐいぐい!にも見えなくはなくて,ちょっとゴリゴリしてるなぁという印象もありました。あくまでアニメーションの話です。
逆に音はシンプルでよかったなぁ。8役の方が切り替わるときにピコリンッというような,ゲーム音のようなものが流れるんですが,「再現スタート!」みたいな合図のようで面白かったです。
あ,あとラストの,下手からの照明がきれいだったなぁ。
演技の話をすると…(8役見分けられるんだろうか…)と心配だったんですが,スクリーン左上に「○○の証言」という視覚的な補助があったので大丈夫でした。ただ8役の方はややべたっとした感じの喋りが多くて,せりふの言葉は違うのに,なんとなく調子(喋り方)が似ている気がしました。一人くらいドライに,淡々と話すような人物がいても良いのかなと思います。メグかハヤシくんあたりかな。物理的に距離があったりいじめた方は,あまり詳細に覚えてなかったりするので。
それから,歩き方がちょっと気になりました。なんだろうな。重心の問題なのかな。一歩進むごとに重心がぶれて前に出ている足の方に寄っている気がしたので,コントロールできるようになるとさらに歩き姿がキレイになるだろうなぁと思います。
それからそれからアンパンマンの話になるんですが,小2(妹)でアンパンマンごっこか…と思うと,若干幼い気が…!あと小学生くらいになれば,いじめられて登校渋りとか,部屋から出たくないと思うことがある…って十分にあると思うので,例えばカズオが引きこもり始めた年に年長,でもいいのかなーと思います。ちょこっと年が離れてて,アンパンマンなんてとっくに卒業してるお兄ちゃんが小さい妹に付き合ってあげる感じとか,素敵なんじゃと思います。あくまで主観です。
やっぱり60分の中で,ミツルの「バンッ」が一番インパクトがあったな。視覚的にも聴覚的にも!
誰に何と言われるか,誰に何をされるかは,自分自身の人生を編む中でとても重要度の高いものだと感じます。その些細な一言で生きていける気がするし,ほんの一瞬の出来事で死んでしまいたくもなる。外からどう見られていても,思われていても,大切なのはその人自身がどう感じ,受け止めるかなのだと思いました。それがよくわかる作品でした。
在るもの全てがシンプルだから,見せたいものもストレートに届いてきました。
長野県茅野の『夜長姫と耳男』(県大会)でも思いましたが,人数が少ないからやれることが少ない訳ではないということも感じることができました。来年度,新入生の部員さんが増えることをお祈りしております…!成田国際のみなさん,お疲れ様でしたー!
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