Friday, July 31, 2015

第61回全国高等学校演劇大会(滋賀大会) 神奈川大学附属中・高校演劇部『恋文』

(全国高等学校演劇協議会公式webサイトより)

@ひこね市文化プラザ グランドホール

作:小林友哉
出演:神奈川大学附属中・高校演劇部

今年の2月。海なし県・長野に,浜っ子の超さわやかーな風が吹いたのでした。

あんな高校生活なかった。あんな友達も周りにいなかった。
でもとってもキュンキュンする!なんだこの高校は!

…というのが神大附属で,ここが全国と決まった時,私は心から満足したのでした。

あれから半年。もうあのキスミントのような作品は拝めない…と思っていたら,うまいこと予定が変わりもう一度観ることができたのですー!きゃー奇跡ー☆
(関東大会の感想はこちら。)

キャストさんのお名前を片っ端から覚えていたわけではないのですが,ざっと見ると関東のときに載っていたお名前がほとんど…?と思ったら,ほぼ関東キャストでした!主要キャストはがっちり関東!またあのおとぼけ&でも愛され環くんやカッコカワイイ昴ちゃんが観られて,もう本当にはわ~ってなって観てました。笑

でも最初の幕開きはすっごいハラハラしちゃって,観客じゃなかったんですが気が気じゃなかったです。そのうち後ろから「うわーこれ音響だなー。かわいそう…」とつぶやくおじさんの声がして,(黙って見守ってください…)と心から願いました。無事音が入ってよかった!
例えばフィギュアスケートでも,音が出たと思ったら自分の曲じゃなくて他の選手のだった…とかたまにあって,掛け直してプログラムが始まるけど動揺しちゃって思うようなパフォーマンスができなかった!ってことがありますよね。(昨年?一昨年?くらいに日本の選手でもあった。)なので緞帳の向こうにいる彼・彼女達は大丈夫かなぁとすごい心配しちゃったんですが,幕が上がったらきちっと始まったので安心しました…。トラブルの原因は私はわかりませんが,やっぱ舞台って魔物住んでるな…って思いました。乗り越えた神大のみなさん,スゴイです…!

半年ぶりなのでここが大きく変わったなとか,この演出変わったなとかそういうところには全然気づけませんでした…。無念…。

だけどやっぱりこの学校の魅力は「表情」と「間」だなーって,改めて思いました。
表情は,顔もだし,声も。特に私は環くんの表情が好きで,見えない女の子に振り回されてうひょーってなってるところとか,うまいこと聞き出そうと企んでるところとか,ふと立ち止まって考えてるところとか,実感がこもっててとても素敵だなーって思います。あと多分,キャストさんご自身のお顔が愛され顔だなって。笑←これは演技でどーのとかじゃないので,ホントにいいもの持ってるなって思います。
声はやっぱり昴ちゃん役の方が素敵で,かっこつけてちょっと高めになっちゃうあたりとか,本心を言うときの落ち着き方とか,声から気持ちが見えるというか。そんな感じがして。あと全体的に,すごくわちゃわちゃしている作品だから最低限聞かせるせりふと流してもOKなせりふの強弱で舞台にメリハリがついてたり,女子がある意味女子を捨てている出し方とかしてて(ピンクちゃんと黄色ちゃんとか。笑),潔さを感じました…。
あとメガネくんの「モテ期かな」とかたまらない…。客席目線であれは100%笑いを取りに行くお芝居だと思うのだけど…,いいですね…。その一言です。笑

家族のアドレスを使った後すぐアドレス変更とかちょっと強引なところもあるけど,空間自体も比較的崩しながら使っていたので,勢いが勝ってもうあまり気になりませんでした。本当に,よくあの勢いをキープできるなぁって思います。
そうそう。新鮮さは「野沢菜うめー!」から「近江牛うめー!」になったくらいで(笑),新鮮味はさほど感じなかったのですが…。逆にこのクオリティを半年キープするってかなり大変だろうなと今思いました。多少キャストさんも変わって,私の気づかないところで変更点なんかもあったと思うんですが,テンポや笑いの質を維持するのって,稽古してると慣れが入ってきちゃうからどうしてもだれてきちゃうと思うんですよね。神大附属のみなさんのピークの持って来方っていうんでしょうか。そういうものの旨さも,なんとなく感じました。

一度観たからストーリーはわかりきっているのに,それでも今目の前で起きていることにドキドキしてしまう。そんな力のある舞台でした。
神大附属のみなさん,お疲れ様でした!

第61回全国高等学校演劇大会(滋賀大会) 長野県松川高校演劇部『べいべー』

(全国高等学校演劇協議会公式webサイトより)

@ひこね市文化プラザ グランドホール

作:青山一也
出演:長野県松川高校演劇部

いよいよ私の出身地・長野県の松川!
昨年の県大会から始まり,関東大会,2ヵ月前のまつもと市民芸術館での公演をちゃっかりしっかり観てきたので,勝手に思い入れがある松川!
お昼休憩直前のいわき総合から出口に近い席を確保し,お昼休憩に入ったらちょっとダッシュして列に並んじゃいました。年甲斐もなく…。←お陰で前方のセンターを確保。たかしくんのプロポーションをお楽しみいただけました。笑
(ちなみに過去の公演の感想は,上記の大会名とか会場名とかにリンク貼りました。)

そう…。4度目の観劇で,2015年度版キャストでの公演も観ているので,そういう視点から書きたいと思います。

60分観て思ったのは,ちゃーーーーーーーんと2015度版になっている!!!
ということ!!!(゜ ゜)
ちゃんと,現メンバーのものになってたんです,今回の舞台!!(大事なことなので2回)

6月のまつ芸では,「3年生が抜けた穴を埋めた感じ」の舞台だったり会場に負けているように見えて,(まぁ仕方ないよね)とどこかで思っていたのです。
がっ!

…きっと,この2ヵ月で新しい役についた方は自分のモノにしようとされたり,新しいキャストさんと昨年度からのキャストさんをうまくなじませてきたんだろうなぁと思いました。
例えば出だしのテンポは明らかによくなっていたし,夫婦がはけていくところは変にせりふを引き摺っていなかったし,詰めた!というのがよーくわかりました。けんたくんが着ている「もも」の衣装も新しくなったりしていて,稽古を重ねて破けたのかなとかいろいろ想像を巡らせていました。笑

あと,キャストの皆さんの髪の伸びで2ヵ月経ったなということも感じました。笑
かりんちゃんの髪の毛の盛り具合とか,さくらちゃんのひとつ縛りとか。(あれ。でも6月にさくらちゃんがどういう髪型だったか覚えてない…!)(でも県とかは下ろしてたので,結べるようになったんだねぇってしみじみ思いました(´v`)笑←そして縛ってあるからちゃんと首も見える…。)(そうそう,前回は天パに見えなかったたかしくんもちゃんとくるくるしていた。)

やっぱり全国ってお客さんも(一緒に芝居をつくるぞ!)って目で観ているような気がして……。たとえば大分豊府の『うさみくん』で手拍子が起きたり,その他でもちゃんとパフォーマンスする側がしかけたところに乗っかって笑ったり,そんなの。そういう土壌があるから,今回の『べいべー』もお客さんが味方してくれたなぁと思いました。義務というよりは,ちゃんと感覚で味方してくれたなと思います。つまり面白さがきちんと届いた!100%部外者ですが,笑いが起きたときはしめしめって思いましたし,安心しました。笑
そして,4回観た中で,今回の舞台が一番良かったなって素直に思います。今回のこの公演を観られて,良かった。

お客さんの度肝を抜いたのはおそらく例のそいやっさだと思います(笑)。が,前回とっても微妙だったので看護婦さんどう頑張ったかなーとついつい意識を注いで見てしまったんですが,見事微妙から絶妙になってました(´∇`)☆ちゃんと見えて→認識して→反応するというプロセスが,あの間から伝わってきました!お芝居でもお笑いでも私達観客って,何かアクションがあったらそのアクション自体に面白みを感じるというよりは受け手のリアクションに面白みを感じていると思うので,看護婦さんの衝撃を私達も共有できたなーって思います。


というのがストレートな感想。


そして2010年代なので舞台の感想はさまざまな手段で世に出ておりまして,私もさまざまな手段でいろんな作品の感想にちょこちょこ目を通しました。その中で引っかかったものがあったので,ここからはその感想の中のひとつ「作品が古いということ」を受けて,考えたことを書きたいなと思います。反論というよりは,私の目線で思うことをつらつらしてみます。

この作品自体の初演は2007年頃なの…かな?いやそれはあんまり問題じゃないか。書かれた時期より中身の問題だな。看護婦という名称から看護師に統一されたのは2002年だから,この作品の中身はそれより前の時期なのだろうなーと思います。現代なら大概の病院では取り違え防止のバンドがあると思いますが,それがないからこそ取り違えてしまったんですよね。「この時代だからそうだった」「そういうことが起きたから生まれたドラマ」という取り方になるんじゃないかななんて思います。

どの時代のどの国の作品でも,ひととして生きていくにあたって根底に流れる普遍的なテーマってあると私は思っていて,『べいべー』はそういうとこに近い作品なんだろうなと思います。“(親がどういう人かを含めて)生まれる環境は選べないけど,生きていこう”…みたいな。もちろんそういうのが通用しない環境もあるけど,現代の日本では通用する。むしろ当たり前すぎるからそれを古いと感じるひともいるかもしれないけど,タイムリーなトピックスばかり追っていてもつまらなかったり苦しくなったりする気もします。
あと勝手な想像ですが,2014年に全国に行った次に何を選ぶかってなったときに,原点(みたいなの)に立ち返るってありそうな選択肢だとも思います。それがまた評価されてここに至ったんじゃないかと…。

なのでこの作品の「古さ」は,私からすると特に問題じゃないです。そういう状況下の中で彼・彼女が感じたこと考えたことを共有する作品,という感じです。


話がずれますが,先月高校の部活の先輩(芝居づくりを職業として選んだことがあるひと)と話した時に,「作る側の楽しみを知るには観る側の楽しみは捨てなきゃいけないよ」と言われたことがあるという話を聞きました。それを聞いた私は「観る側100%で生きていこう…」と思ったものです。いや中学高校の5年ちょっとは作る側だったわけですが,観る側の年月の方が圧倒的に長いので大丈夫です。(←何が。)私は素人のプロを極めたいと思います。
演劇の学問的な知識とかが全くない,素人のプロから観るとこんな感じです。

はーい。最後はなんだか小難しい話になっちゃいましたが,とにかく良いものが観られました!長野県の高校が全国の舞台でお客さんを笑わせていたのが,元長野県民として本当に嬉しかったです。現役のときは私達の学校も全国を目指していたので悔しい気持ちがなくもないですが,時代が違うしそれ以上に面白かったので,もう関係ありません。笑
松川高校の皆さん,お疲れ様でしたー!そしてありがとうございましたー!

+++

2015.8.21追記。

そうそう。先日気づいたことがあるので,書き足しておきます。
昨年11月からこの作品を観るたび,ずーっと何か違和感がありました。それが何なのかはわからずにいました。

でも,わかりました。この作品,「看護婦」と「准教授」という単語が出てくるのです。
上記で“この作品は看護婦というワードを使ってる時代の作品だと解釈した”みたいなこと書いてますが,よくよく,よーく考えると,看護婦という呼び方から看護師になったのは2002年。助教授から准教授になったのは2007年。なので看護婦と准教授という組み合わせはなんかちぐはぐしているんじゃ!
(…ということを,ある朝洗顔してるときに気づきました。笑)

まぁもちろん,今でも呼ぶ人は看護婦さんって呼ぶし,保育士じゃなくて保母さんって呼ぶし,あの子達の親がそう呼んでいたのかなとこじつけることもできるけど。でもね。という感じです。

重箱の隅をつつくようなこと書いてすみません。でも半年以上うっすーら,この違和感があったので,それが何だったのかわかった!やったーという感じなんです。笑
それだけです。すみません…。(--)

第61回全国高等学校演劇大会(滋賀大会) 香川県立丸亀高校演劇部『用務員コンドウタケシ』

(全国高等学校演劇協議会公式webサイトより)

@ひこね市文化プラザ グランドホール

作:豊嶋了子と丸高演劇部
出演:香川県立丸亀高校演劇部

私は思いっきり関東圏のニンゲンなので,西日本の高校は名前もよくわからないところだらけで,丸高という学校も今回初めて認識しました…。
がっ,この記事を書くためにちょっと調べてみたら,偏差値めちゃくちゃすごい学校じゃないですか!平成25年には創立120周年を迎えたようで,かなりの伝統校のようです。わー!すみませんでしたちゃんとインプットできました!!!

でもって!そう!学校のwebサイトなど拝見したのですが!丸演(と略すらしい)ってスゴイ…!
ラ,ラジオ出演してる…!!


今日の「ギリっとイコー!!」は、【月刊!丸高演劇部!7月号】いよいよ31日(金)に迫った全国大会。富士山、つまりは日本一をめざす彼らの、大会直前の想いをお聴きください。最後には、中桐アナにサプライズプレゼントが…!?今日の出演は、建部壮一郎くん・爲廣千香子さん・橋口万澄さんの3人!このあと、夕方5:35から!
Posted by ギリっとイコ~!! on 2015年7月25日




うまく表示されるかしら…。
月イチで出演されている(た?)ようです。ローカルなラジオ局だからこそできるんだろうなぁ。とっても素敵ー!(と書いて,そういえば私の部活も大昔にFM長野さんに出させていただいたことがあったけど,公演の宣伝のための単発だったので。連続って,やっぱすごいな…!)

さてはて作品です。
勝手なイメージで, 伝統校×偏差値高い=応援すごい という感じを私は持っているのですが,そう考えると丸高さんが応援部を舞台にしたのも納得…!
引き継ぎで「団長は男って決まってる。それが伝統。」というせりふがあって,ずいぶん違和感というか…伝統のために伝統を守ってるなんてヤな伝統だな~と思っていたんですが,それも丸高の何かに実際あるものなのかなと,今ふと思っています。

なんか,縛られてしまって,制限されてしまうようで,実態に即しているとは限らなくて,メンドクサイなって思います。「伝統」って。学校でも部活でも,時間が経ってひと(ソフト)が変わってしまったら同じ名前のハードなだけの違うソフトだよなんて私は思っているのだけど,そのハードに縛られたいソフトもあるよなぁなんてことを考えながら観ていました。応援部とかはきっと特にそうで,そうしたいのに(実際は)そうできないもどかしさとか苦しさとかそんなものが,じわじわ伝わってきました。

そうそう。お芝居を観てて,登場人物がぱちっと手を叩くとそのひとの思惑お伝えタイムになって,伝えたい相手だけに伝えられるのが斬新でした…!いろいろな人の表(実際の行動)と裏(言葉には出さないけど考えていること)を観客が把握できる手法としてこんなのがあるのかーとびっくり。
ただ私はなんでもかんでも言語化してほしいとは思わないので,若干ずるいななんて思ったり。笑

あ。今この文章を書いていて,2005年と2008年に観た二兎社の『歌わせたい男たち』を思い出しました。あれも高校の卒業式をめぐって,男の先生達が女の先生に「君が代」を歌わせようとすったもんだするお芝居なのだけど,「内言」と「外言」に触れていて,思いと言葉について考えさせられたなぁ。でもあれは焦点が女の先生に絞られていたけど,今回は複数人物の内言が絡んでいたから,ああいった構成になったのかなと思います。

ラストの応援は圧巻でした!(え,みなさんあくまでも素は演劇部ですよね!?)と思ったんですが,私の目の前にいたひとは本気で団長でした。若干この時間疲れがあったんですけど,それも吹き飛びました。笑

お芝居の中で「先輩にあこがれて応援部に入りました」みたいなせりふがあって,きゅんときました。そういう気持ちって,とっても大事だなぁって。それって中学とか高校の演劇部とかでも言えることで,私も中学は英語部に入ろうとしていたのに,カッコイイ先輩がいたから演劇部に入ったし(カッコイイはちょっと違うか…。笑),中学のときあこがれた先輩が進んだ高校に私も入りたいって思って先輩を追った。伝統とかなんとか言うけど,そういった気持ちでハードって繋がっていくんだろうなぁなんて,ちょっぴり思いました。

歴史ある丸高だからこそ作れたお芝居なんだろうなと思います。
丸亀高校のみなさん,お疲れ様でしたー!
(ちなみに丸演のみなさんはブログを運営されているようです!2011年からちゃんと途切れず続ていてすごい!ちょっと覗いてみましたが,部員のみなさんも顧問の先生もきちんと携わっているブログです。こちらからどうぞ。)

第61回全国高等学校演劇大会(滋賀大会) 福島県立いわき総合高校演劇部『ちいさなセカイ』

(全国高等学校演劇協議会公式webサイトより)

@ひこね市文化プラザ グランドホール

原案:福島県立いわき総合高校演劇部
構成・脚本:齋藤夏菜子
出演:福島県立いわき総合高校演劇部

いわき総合といえば…!
箱根駅伝で一躍有名になった柏原竜二くん(東洋大卒・現富士通)の母校!
今年1月に関東大会で静岡理工科大学星陵高校演劇部が上演した『ブルーシート』を作った学校!
というイメージがあって,特に『ブルーシート』はかなりのインパクトがあった舞台だったので,それを作った学校の演劇部ってどんなんなんだ!ととっても気になっていたのです。生で観られて本当によかったー!

パンフレットを観て,(ひとがいっぱいいる…)(キャストがいっぱいいる…)(誰が何をやるのかな…)(とりあえず観よう…)と思ってこの時間に臨みました。

観て,思ったこと。
一人ひとり,人生を抱えて,今そこにいるんだなぁということ。

いや,そりゃ,当たり前なんだけど,ひとって揃っているように見えて,同じもののように見えて,全くの別物の集合体であることを改めて感じました。様々なプロセスを経て,一人ひとり違う時間を通って,「今ここ」を共有しているんだなということを改めて感じました。同じものから様々な切り取り方をするのは,今月上旬に観たマームとジプシー『cocoon』を連想させました。

舞台の奥には生徒達のものであろうTシャツや色とりどりのフラッグがかかっていて,とても賑やかな雰囲気。文化祭感を感じさせる,カラフルで楽しい雰囲気。
だけど手前は現実というか,奥が表面的なものだとしたら,その深層が手前の人たちなんだろうななんて,ぼんやり思いました。

人数の圧ってすごいというか,恐ろしいなと思いました。あの,学級委員の子がどんなに大きな声でみんなを統率しようとしても,全然通らない。少人数の会話×いくつかの集まりによって,簡単にかき消されてしまう。みんな,何言ってるかはガヤガヤしすぎて全然聞き取れなかったのだけど,少人数には少人数の会話の流れとか話してることがあるんだろうなというのはしっかり伝わってきて,そこは“話し合い”や“エチュード”で作品を作ってきたというこの高校の強さが出ていたところなんだろうなと思います。

舞台の上だけでまとまらずに,こんなにも客席に絡んできた作品は,全国で観た10作品のうちでこれがダントツかも。西野カナの「涙色」のカラオケを満員の会場で歌うあたりとか,すっごい振り切って突き抜けてるものがあるよね。笑

そうそう。この作品の成功として,映像の存在があると思うのです!
関東大会でプロジェクターを多用している学校が南にも北にもあって,(2010年代ってこういう時代なのね~)としみじみ思っていたのですが,全国にはそういうところが全然なくて。(あれ。2010年代どこに行った?)って感じだったのですが,ここはもう本当に映像のレベルがすごくて。笑
TwitterとかLINEとか,本当にそのまんまの画面を使っていたり,撮ったプリクラとかも本当に写ってるし,あとやっぱり一番は西野カナの「涙色」のカラオケ映像!画像だけじゃなくて映像で流してるからすごかった…!“※想像です”みたいな感じですみれちゃんの“こうしたかった感”がすごーーーーーい伝わってきました。あぁ,本人としてはつらいんだけど,こちらとしては思わず笑っちゃいました。ごめんすみれちゃん…。
でも幕開き&ラストのリアルな映像は,ちょっと長いかなとも感じました。(あ。だけどラストの,交差点曲がったらいきなり侵入禁止区域のバリケードが見えたときはちょっと衝撃でした。隣り合わせで生きているんだなと,ダイレクトで伝わってきて。)

あれが高校生のリアルな世界なのかと言われるとよくわからないけど,SNSでブロックしちゃうとか生身で向き合っていないところで拒絶したり関係性をアピールされたり,ストレートだけで付き合えない苦しさがあるのはとっても伝わってきました。なんだか今の高校生は実際に面と向かってのコミュニケーションとSNS上のコミュニケーション,二重のお付き合いがあるような気がして,柔軟で繊細なコミュニケーション力が必要になってしまうのではと思いました。あー大変。
それが「ちいさな」セカイだったとわかるのはきっと後になってからの話で,そこにいるときはそのセカイが全てだと思うので,いつか3年1組のひとたちが(あぁあれはちいさなセカイだったな)と思えたら良いななんてことも思いました。

あとこんなにわちゃわちゃしているから,次第に(これちゃんと60分で終えられるの?)と心配になってきて,観劇中つい時計をチラチラ見ちゃいました。この記事を書くにあたって,演劇部なのか演劇クラブなのか…とか名称を確認するためにいわき総合高校のwebサイトを拝見したのですが,通しの時も60分切るか切らないかだったようです。観ていても(ここでchapter7が始まるの!?)という感じで,よくまとめたなと思いました…。最後は緞帳下せるかな~ということも位置的に心配だったのですが,そっちはやっぱり大変だったみたいで,最後のポジショニングってきちんと考えなければ危ないなぁとも実感。
(話外れますが,いわき総合高校のwebサイトがとても丁寧で観劇。違う。感激。←本気で変換ミスした。)

はっ!衣装について書き忘れた!ポロシャツ×スカート×レギンスという格好が素敵でした!実際の高校生活であの格好はないでしょうが,アクティブな舞台だったので安心して観られました。一応一般的にはスカートでも一分丈とか三分丈のスパッツ穿いてるとは思うんですが,それでもそれが見えると(ギャッ!!)って思っちゃうので。私。
あとポロシャツの色も良くて,グループで色の系統を揃えてるのが良かったです。それでもハブられてる子はなんだか一人だけ系統のはじっこの色だったりして,うまいなーって思いました。

思いつくまま書いてすみません…。人数のエネルギー,圧をものすごく感じた作品でした。きっとこのひとたち(がいる学校の先輩たち)なら,確かに『ブルーシート』も作れただろうなぁ。
皆さんがどんな大人になるのか,楽しみな高校だなとも思いました。
いわき総合のみなさん,お疲れ様でした。

第61回全国高等学校演劇大会(滋賀大会) 北海道札幌琴似工業高校定時制演劇部『北極星の見つけかた』

(全国高等学校演劇協議会公式webサイトより)

@ひこね市文化プラザ グランドホール

作:鷲頭環
出演:北海道札幌琴似工業高校定時制演劇部

2004年度に,長野県下伊那農業高校演劇班の「『1+2+3』の答え」という舞台を観ました。農業高校の日常を創作でまとめた舞台で,関東大会まで出場していました。当時同じ長野県民だった私にとって,それはとっても新鮮で,そして(なんかずるい…)と感じていました。今思えばずるいというより,自分達の持っているものがはっきりしていたことがうらやましかったのかもしれません。

昨年度は,関東大会で神奈川県立湘南高校(定時制)演劇部『さよなら小宮くん』を観ました。これは既成作品だけど,(私のバイアスも多少かかっているのかもしれませんが,)定時制のひとたちだから作れた空気感のようにも見えました。なんとなく人との距離感が掴みづらいひとたち。そんなふうに見えたのです。

何の迷いもなく全日制普通科をのほほんと過ごした私にとって,専門の課程だったり特定の時間での学びを選ぶひとたちは強みがあるように思います。専門の科に進んだり特定の時間で学ぶひとたちには何かしらの理由があって,それは全日制普通科とは違う世界で,それだけで“個性”。その個性をうまく生かしてお芝居を作れたら,本当に強い舞台が作れるんだろうなぁなんて思います。

だから工業高校×定時制って,それだけでかなりインパクトあるカンパニーだと思うんです。ひとくちに高校生と言っても,いろんな生き方があるんだなぁとしみじみ思いました。
そのひとたちが,工業高校が舞台のお芝居を作る!彼らにとっての日常と,私の非日常が出会えた気がして,なんだかとっても心踊るひとときでした。

この記事を書くために改めて速報に目を通したのですが,超衝撃…!当て書きのメインキャスト9人のうち7人が昨年度で卒業してしまったようで,今年度は自分達のものにできるかで努力されてきたそう!私は初見だったので,この公演から得られる情報が全てで,前のキャストさんとの比較などはできないのですが,すんなーり観られたので特に違和感などは感じなかったです。いやー…。むしろこんなに入れ替えがあったのに,よくここまでの質に持ってこられたなぁと…。定時制ですから,毎回全員がきちっと集まれたわけではないと思うと,一回にかける集中力というか…出すべきときにきちんと力が出せるカンパニーだったんだろうなと思います。すごいなぁ。

さて中身のお話に…。私,工業高校には未だかつて足を踏み入れたことがないのですが,雰囲気がたっぷり伝わってきて,とても素敵なセットでした!広すぎず狭すぎず,必要なものがちゃんと揃っているのにシンプル!舞台美術賞と知って納得です…。

特に私がぐっときたのは,「定時制」について定時制の生徒さん自らが触れていたこと。私自身も高校生のときにそういった偏見を持っていなかったと言えば嘘になるので,ここに切り込む強さというか覚悟を全国の舞台で示したことに大きな意味があるように感じました。舞台でそういうものを観たことがなかったので,本当に新鮮というかリスペクトというか…。うまく言えないけど,このひとたちすごいなと思いました。(あぁ…。“すごい”とかってなんてぺらっぺらした薄い言葉なんだろう!でも私の辞書からは換わりの言葉がすぐ出てこないよー!)

障害を持っている生徒さんも役としていらして,本人の受け止めと周りの理解とフォローのバランスって,ムズカシイなぁなんてこともちょっぴり思ったり。私は不登校とかいじめよりは,そういったものをお持ちの方にお会いすることが多いので,ついつい気になって意識を向けてしまいました。がんばりたいのにがんばれないもどかしさが夏希ちゃんから痛いくらい伝わって来て,なんだかとっても切ない気持ちに。適切にフォローされることの大切さも感じられました…。

あと何といっても山田さんが素敵でした。笑
あんなにベクトルが違うひとだから,ちょっとしたアクセントなのかと思いきや…最後はまさかのまさかの,山田さんに持っていかれるオチ…!すごい楽しそうに踊っちゃうし,緞帳キワキワまでアピールしてくるし,なんなの山田さん!ずるいぞ!笑

優秀賞,おめでとうございます。
小さな光の羅列が意味づけされていく過程を追えて,琴工定時さんだからこそ作れた世界をたっぷり味わえて,とっても素敵な1時間でした!お疲れ様でしたー。東京公演も楽しんできてください!

Thursday, July 30, 2015

第61回全国高等学校演劇大会(滋賀大会) 鳥取県立米子高校演劇部『学習図鑑 見たことのない小さな海の巨人の僕の必需品』

(全国高等学校演劇協議会公式webサイトより)

@ひこね市文化プラザ グランドホール

作:高泉淳子
出演:鳥取県立米子高校演劇部

この作品,実際観たことはなかったけれど,ずいぶん昔のものということだけは知っていました。高泉さん作のものは2008年に『Over the rainbow……?』を観たり,出演作も2007年に『ティンゲルグリム』を観たりなんかしていたので,ふわふわちょっとフシギだったりカワイかったり…なイメージがあって,これもそんな感じなのかなぁなんて思って観ました。

1時間経って思ったのは,やっぱり脚本がしっかりしているから,(安定…!!!!!!)のひとこと。昨年今年とたっくさんの高校演劇を観て思ったことは,高校演劇の出来の6割7割は脚本で決まるんじゃないかということ。いや,ドラマも映画もそう。でも特に高校演劇はここに依拠するところが大きい気がして。脚本を選んだ時点で,オーバーな言い方すると出来の半分くらいは決まってるんじゃないかな。そこが破綻してたら,いくら演出をつけたり演技をしてもねぇ…。ってなると思うのです。
そう思うと,ストーリーとしては実に安心して観ることができました。というか,ちゃんと作品の世界を楽しむことができました。

舞台装置&小道具がとっても面白かったです!どこまで元の脚本に書かれているものなのかはわからないけど,登場人物が壁を乗り越えてえいさほいさ出はけするのがキュートで,出てくるたび(あ,来たーっ!)って思ってました(笑)。カワイイ~。そしてあの壁の耐性がすごい~。どうやって作ってあるんだろうー。気になりました。ひょいっといける人もいれば,(よいせ!)って言う感じで出はけしている人もいて,それも含めてかわいらしかったです。

そして…大きな小道具?なんて言えばいいんでしょう。大きなガイコツがとってもインパクトありました!フラフラすかすかしている感じが山田くんの心のようにも見えたり。パーツが集まってどどーんってなるのが素敵ー!あれ重そう…。絡まることなくちゃんと消えていたので,おぉっと思いました。
あと私の中でもう一つ素敵な大きな小道具(?)が,ホース!すごい!長い!終わりが見えない!あれがへその緒になるとは…。面白いなぁ。でもあの構図,ちょーーーーーーど,野田秀樹の『The Diver』のラストのようで,すごい既視感でした(笑)。大きい小道具って舞台の中でものすごいインパクトありますね。面白かったです。

あ。あと舞台装置の中で,私もセンターにある血みどろ(に見えた)の壁っぽい何かが何なのかずっと気になってました。まさか最後の最後でぱかーっと開くとは!しかも蛇腹式(←確か)に!ここでタカイズミワールドが見えたような気がしました…。

山田くんがさらさら~っと生きている感じが何とも魅力的で素敵でした。飄々としているというか。離婚してお父さん側に引き取られたからこそ,いろんな女の子・女性が出てきて振り回されるというか翻弄されたり,胎内に戻ろうと試みたり…があるのかなとぼんやり思いました。ラストはいろんな環境因を乗り越えて生きていく,そんな山田くんを感じたり。
でも私結構後ろの方で観ていたので,さらーっと出すせりふが聞き取れないところもちらほらあり,ちょっと残念でした。でも張って出す声のお芝居かと聞かれると多分そうでもないので,会場との相性の問題だったんだろうなと思います。

“生き物”の扱い方がコミカルなのにどこか鋭くて,軽く観られるのになんだか気になる,そんな演出も素敵でした。そういうところを含めて不思議なタカイズミワールド…。

あとやっぱ,タカイズミ作品ってタイトルも不思議でちょっと考えちゃいますよね。海は小さいと思わなければ,自分は巨人と思わなければ,生きていけないのかな。よくわからんな。元のホンも読んでみたいなーって思いました。

タカイズミワールドがちゃんと米子色になっていて,なんとも言えないふわふわした世界を堪能できました。
米子高校のみなさん,お疲れ様でしたー。

第61回全国高等学校演劇大会(滋賀大会) 千葉県立松戸高校演劇部『CRANES』

(全国高等学校演劇協議会公式webサイトより)

@ひこね市文化プラザ グランドホール

作:黒瀬貴之
出演:千葉県立松戸高校演劇部

関東大会を観に行ったときはこの作品の前に会場を出てしまったので,初めての観劇でした。
広島の高校が舞台ということは知っていて,なんでこの作品選んだんだろう~というのは素朴な疑問だったんですが,速報を読んでなるほどーって思いました。(珠ちゃんって,元々の台本も千葉県出身の設定なのかな。)
同じく速報にも広島の方の感想で「広島県民にとって8月6日は特別な日だが,他府県の人にとっては特別ではないことに驚いた」という文を読んで,(うんうん,きっとそうだよなぁ~)って思いました。自分の常識は他人の非常識…じゃないけど,自分が思っていることは相手も思っているだろうと思っていては,私達は分かり合えないだろうなぁとぼんやり思いました。

女子のギスギスした感じがリアルで,見応えがありました。会話劇って嘘っぽい喋りに聞こえると冷めちゃうんですが,皆さんせりふの出が自然で,すーっと聞けました。ちょうど今月アタマには長野県上田東高校演劇班『どよ雨びは晴れ』を観たんですが,そこでも讃岐弁が出てきて,ほわっと優しい響きの言葉が素敵だな~と思っていたのでした。あのあたりの方言,ほっこりしていいですね。私は厳密な方言のイントネーションとかわからないので,ほわほわ~っと違和感感じることなく聞けました。

ひとつの同じことをしていても,どんな気持ちでそこにいるかは一人ひとり違うなぁ…ということをしみじみ感じたお芝居でした。表向きの目的とか目指すものはあっても,純粋にそれをやり遂げようと努力するひともいれば,それを利用してその場にいようと努力するひともいる。「だから繋がれない」ではなく,「それでも繋がれる」と思えることが大切なのかななんてふと思いました。
最後,一人ひとりの机が並んでいくところが印象的でした。

あと,まさかの合唱があってびっくり!上手下手の出入り口に生徒さんがいるなーとは思ってたんですが,(スタッフ…?)って思ってました。すみません。しかも合唱隊の制服が,松戸高校の制服なんですね。学園モノって自校の制服になることが多いかと思うんですが,「違う学校を演じるという意識を持つために」とこれまた速報に書かれていて,なるほどなーって思いました。私は自校の制服って安易で(予算とかもあるけどさ。あるけどさ。)あまり好きじゃないので,衣装を集めたところは本当にすごいなと思いました。

ちなみに私の隣の席の子は,赤いTシャツを着た女子高生。そう,来年の全国総文開催地である広島から視察に来た高校生でした。どんな気持ちでこの作品を観ていたのかな。気になりました。
松戸高校のみなさん,お疲れ様でしたー。

第61回全国高等学校演劇大会(滋賀大会) 大分県立大分豊府高校演劇部『うさみくんのお姉ちゃん』

(全国高等学校演劇協議会公式webサイトより)

@ひこね市文化プラザ グランドホール

作:中原久典
出演:大分県立大分豊府高校演劇部

パンフレットの写真から学園モノということを読み取り,
パンフレットの文章から現代の自然な話し言葉の作品っぽい…という印象を受けていました。

観てみて。

お,面白かった…!



会場の沸点が低いような気がして,(え,そんなとこでも笑うの!?)と感じるところもたまにありましたが,面白かったです。

うさみくんのお姉ちゃんが,素敵~!

サバサバしたキャラクターと,お姉ちゃんを演じていたキャストさんの声がとっても素敵でした。スカッとした気持ちになるというか。幕が降りていくときの気持ちが久々に晴れやかでした。笑

この作品,温かいひとか冷たいひとかどちらかしか出てこなくて,それがお互いを引き立てていたなぁ~と思います。

うさみくんのお姉ちゃん,確かに自分にも他人にも厳しいからコワイように見えるけど,芯はとても強くて優しいひとで,パッと見誤解されやすいのがまた魅力なんだろうなーなんて思いました。(剣道部とかにいそうだな…。笑) 冷たいひとである女子2人にも「そういうところをやめろって言ってるのよ」みたいにビシッと言っていて,その潔さがめちゃくちゃカッコイイ!今どきあんなにビシッと言えるひと,なかなかいなさそう。自分がどう思われるかを気にすることなく一貫した主張をできるのって,すごいな~なんて思いました。
あと,アンパンマンと聞いて,昨年度の関東大会の千葉県立成田国際高校演劇部『繭の中』を思い出しました。成田国際にもアンパンマンごっこをきょうだいでやったことがあるってシーンがあったと思うんですが,やっぱアンパンマンって強いんだなとしみじみ…。(子どもの心の中の支え的な存在として…。)“愛と勇気だけ”って皆誰しも一度は疑問に思ったことがあるであろう歌詞だと思うのですが,劇中に出てきたやなせさんの言葉で納得しました。「戦う時は友達を巻き込んじゃいけない」かぁ…。深い言葉ですね…。そういえば,なんとなーく,遠目から見てなんですが,うさみくんのお姉ちゃん,気持ちアンパンマンに似ている気が…。(ほめてる!)(だってそういう要素がないとアンパンマンのくだりに説得力なくなっちゃうし!)例えばドラえもんじゃだめなんだよね。その身を擲って戦うのはアンパンマンだもの。道具には頼らないのだもの。

そして溝呂木くんがとても素敵でした…。緘黙ちっくな状態になっている溝呂木くんですが,可能な限り応えようという気持ちはすごく見えて,その一生懸命さが切なくて。あと一瞬の迷いがしっかり見えるところ(うーん。って上見て考えたり。笑)とか。人って考えるときに無意識に上向いたりするけど,そういうお芝居がすごく自然でうまいなー!と思いました。
お客さんも集中していたので,小声で話す溝呂木くんのせりふは聞き取れるときもあれば難しいときもあったのだけど,聞き取れなくても私は特にストレスには感じなくて,雰囲気がしっかり伝わってきたので問題なかったです。学校でとてもつらい思いをしてしまうと元のように振る舞うのはかなり大変なことなのだと思うけど,60分で溝呂木くんの成長がしっかり見えました。やっぱりそこは真摯に向き合ったお姉ちゃんとか,松田くんや宇佐美くんの存在あってこそなんだろうなー。

吹部やバレーボール部の友達も,勘違いしたまま舞い上がる感じがとっても愉快でした。フルートの生演奏があってびっくり…。演じている上に演奏しちゃうなんて,近年の高校生はマルチな才能をお持ちなのですね…。お姉ちゃんと溝呂木くんが下手の壁らへんに来たときも,(絶対このあと壁ドンくるわー)って観客としてはやや予想できるんですが,実際壁ドンがあると「キャー!壁ドンよー!!!」って友達が騒ぐのがお約束すぎてまた面白くて。高校時代にあんな友達がいたら楽しいだろうなと思いました。笑

あと,舞台セットがなんだか面白いなぁと思いました。教室が舞台になるお芝居っていっぱいあると思うんですが,造りが私にとっては新鮮で,面白かったです。センターのちょっと上手寄りに教室の入り口があるので,誰が出ても入っても目立つ位置。でもって廊下まで引っ張った(廊下から引っ張ってくる)演技も多少見えるので,いいなーって思って観てました。私は袖の向こうまで世界が広がっているように感じられるお芝居が好きなので,廊下の向こうは何があるのかなーってワクワクしました。斜めだと視線も集めやすいだろうし…。正面からきちんと観てみたかったなぁ。「青春舞台」でまた拝見できるのを楽しみにしています。

この記事を書くまで(これって創作だっけ既成だっけ)と思ってたんですが,しっかり創作ですね…。キャストの皆さんの“個”がしっかり見えたので,顧問の先生のセンスが光りまくっていたのだろうな~とも思います。本当に自然というか,過剰ではないのに存在感がちゃんとあって,知らず知らず作品に没頭できちゃう1時間でした。いやー。充実した時間だった。

大分豊府さんが全国の頂点と知ったときはとっても納得でした。生で拝見できて満足です。
大分豊府のみなさん,お疲れ様でしたー!

第61回全国高等学校演劇大会(滋賀大会) 佐賀県立佐賀東高校演劇部『ママ』

(全国高等学校演劇協議会公式webサイトより)

@ひこね市文化プラザ グランドホール

作:いやどみ☆こ~せい・佐賀東高校演劇部
出演:佐賀県立佐賀東高校演劇部

ここもパンフレットを読んでびっくり…。2014年には,県内外合わせて新作11作,26の会場で公演を打っているというではありませんか…。ひ,ひとつき1本のペースですか…!なんてエネルギーのある学校なの…!ものっすごいパワフルな学校なんだろうなぁと思ったら,その通りの作品でした。

なんか,高校演劇でこんなにボロボロ泣いたのは初めてです。うるり,ぽろり。なら多少ありましたが,カバンの中からハンカチごそごそしちゃうような作品は,初めて。高校演劇を観始めて15年目になりますが,忘れられない作品の一つになったかも。
そうそう。カサハラさん母と子の愛みたいなテーマに弱いんですよー(; ;)
だから強制的に涙を流したいときはスティーブン・スピルバーグ監督の映画『A.I.』を観るくらい,胸を鷲掴みにされちゃうのです。それを生のお芝居でやられたから,ぴぎゃーってなっちゃいました。ぴぎゃーって。笑

コハルが,アラサーの私の心をすっごいくすぐってきました。笑
なんなのあの必死さ。すごいママのこと好きじゃないか。
コハル役の方…。男の子,ですよ…ね?まだきちんと声変わりしていなくて(←ある意味すごい),多分女の人が聞いたらものすごい切なくなる声してるなーと思います…。今しか聞けない声ですねきっと…。
そう。すごいママのこと好きで,それしか見えないから,高校3年生という設定はちょっと違和感がありました。中3,いや中1くらいでも良さそう。この年だったら,まだいい子で頑張るぞ!っていうお子さんがいると思うので…。(そして一般的には次第にママ離れしていく。はず。)

ミユキちゃんがコハルくんをぎゅっと抱きしめるところなんて,その最たるところで,気持ちを言葉にするのってとても難しいな,苦しいなと思いました。それをまるごと引き受けるミユキちゃんに,ぐっときました。大きな看護師さんだわ…。あと,ミユキちゃん役の方の声がすごく好みでした。ああいう感じの声,印象に残ってあこがれです。

コハルが小さくて幼くてついつい守ってあげたくなってしまうから,おじさんとおばさんとその娘の言葉にはかなりショーゲキでした。
弟は自分の姉が倒れても,そんな冷たい言葉しか掛けられないんかいとか,義理の妹もそんなにお義姉さんといざこざがあったのかなというようなシャットダウンっぷりで,こんなこと本当に言うんかいと心の中で思わずつっこんでしまいました。その娘さんも薬剤師になりたいとは言っていたけど,(あの子には絶対調剤されたくない!!!)と観ながら思ってしまいました。笑 きっと彼女は彼女なりの正義があって,両親に親孝行したい気持ちも強いと思うのだけど……「あなたのお母さんのせいで私は大学に行けなくなる」みたいな物言いはどうなのよ,トキコちゃん…。あと「死体見るの初めてだから気持ち悪い」って言葉はあまりにひどいでしょうよ,トキコちゃん…。素直すぎてつらいです。この子もこのままのせりふで高校生っていう設定には,少し無理があるような。中3でもそろそろアウトな発言かなぁと思いながら聞いてました。

そんな感じでせりふは(えぇぇ…)と思うところがあったのだけど,“コハルくんにはそう聞こえた”と受け取ることにしたいと思います…。

音響と照明効果が本当に「効果」として出ている作品だなーと思いました。音響は,選んで選んでこれを使っているんだろうなということが特に伝わってきました。同じ曲を何度も掛けているのだけど,ここぞというところでボーカル入りにしてくるとか。(場の盛り上げ方を知っている…!)と冷静に思う自分もいれば,それにまんまとやられてぐわーってきてる自分もいました(笑)。
照明も,魅せるところでガツンと客席に向けて照らしてくるから,本当に狙ってきてるなぁ~と実感…。それに加えてキャストさんの動きもよく考えられていて,幻想的な表現が本当に幻想的でした。

ママの書いた台本ははちゃめちゃなのにキャストのパワーで振り切ってるという感じで,でもその中にもママに触れられそうですり抜けていくコハルのもどかしさが感じられる瞬間もあって,エネルギーの緩急が激しい作品だったなーとも感じます。歌って踊って,本当にパワフルな作品でした…。その中でも,既に書いたミユキちゃんぎゅ,のところと,冒頭の眠っているママがふわぁ~って起きるところ(←心の像が動き出す感じで)と,「ママ何やってるの?」ってコハルがママのやってることを覗きこんで自分もやってみる(そしてママはすり抜けていく)…っていうあたりが特に私の胸は締め付けられてました…。あぁぁ…。

母子家庭でも何かしらの保険に入っているだろうとか,親戚がそんな言葉かけるのかとか,大人の私が観るとちょこちょこ(おや?)と思うポイントはありましたが,気持ちでここまで突き抜けてきた作品なのかなと思います。そしてその気持ちとか,役者のエネルギーに私も圧倒されてしまいました。とにかくノンバーバルで魅せる,言語を超えたところに訴えてくる,そんな作品でした。
佐賀東高校のみなさん,お疲れ様でした。

第61回全国高等学校演劇大会(滋賀大会) 大阪府立緑風冠高校演劇部『太鼓』

(全国高等学校演劇協議会公式webサイトより)

@ひこね市文化プラザ グランドホール

作:木谷茂生
出演:大阪府立緑風冠高校演劇部

やってきました全国大会。初日の一発目は『太鼓』。
たいこ,たいこ,たいこ…。事前に調べたりしていなかったのですが,朝私の近くにいた女子高生達が「あー朝イチ大阪かー。いきなり戦争かー。」と話しているのが聞こえ,ふんふんそうなのかと思っていました。

パンフレットをぱらりとめくって,うわぁすごいと思ったのが,この戯曲の発表時期。1956年。もう半世紀以上前のこと。これを!今!やろうと思った根性がすごいわ…と純粋に思いました。昨年度,地元長野県にも初演から10年以上経ってるのに中国が舞台のWWⅡ作品をやっていた学校があって(長野県屋代高校演劇班『南京の早春賦』),いやガッツがある高校だわ~と思っていたのだけど,それとはもう比較にならないくらい。当事者の,作者という名の当事者の言葉の重みを感じる,重厚な作品でした…。

そう。標準語で書かれている戯曲だから,役者から出てくる言葉も当然標準語なのだけど,なんかふと,(そういえばこの子達って大阪の子だよな。普段はバリバリの関西弁喋ったりするんだろうか)とか,そんなこと考えちゃって。私。 せりふの中でちょっと訛っちゃうとか,そんなことが全然なかったので…とにかく彼らのせりふに圧倒されてしまいました。
特に心にグサリと来たのは,速報のTHEATRE LAKE2015第4号にも書かれていたせりふ。「死んだ者は,いくら大勢寄り集まっても,無駄なのだ。私達一人一人の死が無駄だったように,……。私たちが,たとえ何億万人増えたところで,生きている人,たった一人の力にされ及ばない。なぜならば,私達は,誰一人として,訴える口を持ってはいないのだ……」
何億と一人を天秤にかけても,何億が勝てない。それは今ここにいないから。今ここにいることがどんなに強いことかを,改めて感じました。そして訴える口があるのなら,私達は歩み寄ることができる。はず。

でも,話すことができても,わかろうとすることができなければ,結局少年と<少年>のようにもなってしまうのだなという無力さというか,無能さというか…そんなものも感じました。

『太鼓』というタイトルですが,本当に太鼓の生演奏があってびっくり。日本人の心臓の音のようなものなんだろうか。戦争の音や音楽というと管楽器がつい思い浮かぶのだけど,もっと根源的なところにこの音があるような気がして,新鮮に感じました。

希望したから,兵士になることを希望したからこそ彼は少年から兵士になったけれど,肩書きが変わったからといって急に強くなるわけでもないし,戦える訳でもないし,ひとを殺せる訳でもない。見えない敵も怖くてたまらない。そんな弱さや脆さ,あどけなさが滲み出るお芝居。高校生が演じるからなんだかリアリティがありました。なんか本当に,よくこれを選んで取り組んできたなの一言に尽きます。朝から重厚なものを見せてもらいました…。

緑風冠高校のみなさん,お疲れ様でした。優秀賞,おめでとうございます。

Tuesday, July 28, 2015

せたがやこどもプロジェクト2015≪ステージ編≫子どもとおとなのための◎読み聞かせ 『お話の森』

(世田谷パブリックシアター公式webサイトより)

@シアタートラム

監修:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:仲村トオル

何年も前からある企画だけど,『お話の森』に出かけるのは今回が初めて!今月は新国立劇場の大人と子どものための舞台(『かがみのかなたはたなかのなかに』)も観たので,公共劇場が親子を意識して作品作りをしているのをたっぷり味わえた感じ。
ロビーに入ったら『お話の森』のフラッグがはたはたしていて,段ボール製の木にはちびっこたちのお気に入りの絵本のタイトルを書いたふせんがぺぺぺっと貼られていて,なんだかいつものトラムとは違う,ワクワクしちゃう感じがありました。←そうそう。私,大学院生の時に指導教官の研究のお手伝いを地元でしておりまして,その研究というのが絵本の読み聞かせだったもので,『だるまさん』とか書かれてると(あれかーっ)てピンときました。最近の絵本事情についていけた…☆笑

さてはて仲村トオルさんの『お話の森』!
私はこのひとが2008年にベストファーザー賞を獲得して「親バカになれない親はバカだ」みたいなコメントをしているのを記事で読み,(なんだこのひと素敵だぞ!)と思ったのをきっかけに,それ以来注目しているのです(笑)。そして2009年にシアタートラムで上演した『奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話』を観て,舞台の仲村さんにうっとり…(*´∇`*)それ以来の和服姿を拝めて,私は非常に非常にときめきました…☆

本格的にお話に入る前に,今回読むお話は太宰治の『お伽草紙』の中から「舌切雀」を選んだこと,この作品は終戦間際に書かれたこと,それを頭の片隅に置いて聞いてほしいということを仲村さんが言っていました。1時間経って,お話が終わって,なんとなく…昨年朝ドラでやっていた『花子とアン』を思い出しました。村岡花子もそういう時にバリバリ原稿を執筆していて,辞書と原稿を持って逃げるシーンがあったなぁ。洋書の翻訳と太宰のような創作では少し違うのかもしれないけど,それでもあの時代に<想像すること>は共通している気がして。今月観たマームとジプシーの『cocoon』に出てくるせりふ,“繭(空想)がわたしを死(現実)から守ってくれる”に近しいものをこの作品から感じました。あの時代を生き延びるには,そういうものが必要だったんじゃないかって。そう思うのです。

中身はというと,もちろんただの読み聞かせではなくて,室内のセットがあったり,トオルさんが舌切雀を追うときには冬用のブーツを履いたり,あと要所要所で切り絵のような映像が出るので,聴きやすかったし見やすかった!トオルさんが女の人の役をやるの,ちょっと面白くて素敵…(笑)。
おばあさんはだいぶ意地の悪いひととして描かれているけど,家でぐうたらしている夫をここまで支えてきたと思うとなんだか切ない気持ちになりました。最後は自滅というか,自分が選んだ欲の大きさに自分で潰れてしまうあたりもすごく人間味があって,なんだかマクベス夫人っぽいなとも思ったり。おじいさんはおばあさんが亡くなったあとも,雀のお宿を探したのかしら。とか,そんな想像もしたり。

そう。舞台もちゃんと室内のセットがあって,それを回転させてトオルさんが前に出てくると屋外になる…というシンプルな装置。だけどちゃんと場を区切っていて,時の流れを自然に追えました。室内のセットを回転させると襖だったところがパネルっぽくなるから,そこに写る映像も場面の雰囲気が出ていて(おぉぉ~)と思いました。きっと簡単に見えて緻密な細工が盛りだくさんなのだろうけど,例えば超少人数の部活の高校なんかでも,少数キャストとスタッフで舞台を回すときに使える工夫がありそうだな~なんてことも考えて観てました。

終演時にトオルさんが『グッドバイ』の宣伝をしていて,(もうチケットないよ…)と思っていたら,その翌日ケラさんのTwitterで追加席のお知らせを見たので瞬足でチケット確保しました!9月にまたケラさん×トオルさん×太宰が観られるの,楽しみー!これを励みに日々生き延びたいと思います☆笑

Saturday, July 25, 2015

映画『みんなの学校』

◇STAFF
監督:真鍋俊永
撮影:大久保秋弘
プロデューサー:兼井孝之

出演:大空小学校のみんな

(2015.7.24 劇場で鑑賞)

大学院の同期に誘われて観に行ってきました~。
もともとM1のときに児童養護施設のドキュメンタリー映画『隣る人』を同期みんなで観に行ったことがあって,それを思い出してくれたのだとか。私はあれ以来,ドキュメンタリーの面白さというか奥深さに惹かれています。

ドキュメンタリーってあらすじに書きにくいので…まずは予告編をどうぞ。笑


舞台となる大空小学校は大阪市住吉区にある公立学校。学区に住んでいれば,必然的に通うことになる学校。映画や公式webサイトによると,隣の学校の人数が増えたためにできた新設校。
この学校では特別支援が必要なお子さんも,支援級を設置することなく通常級で過ごします。教職員も特に加配等はなく,サポーターさんやボランティアさんの手を借りて手厚くお子さんを見ているみたい。「自分にされていやなことは人にしない 言わない」が学校で唯一のルールで,これを破ると“やり直しの部屋(校長室)”に出向く仕組みだそうで…。

とにかく学校全体がチームとはこのこと!という感じで,例えば朝起きられなくて登校できない子は管理作業員のおじちゃんが起こしに行く…とか。教員以外の見守り体勢がとにかく手厚いというか,分厚い学校でした…。

障害がなくてもあっても地域の子どもとして育てられていく,育ちあっていく子どもの姿は確かに温かくて,きっとこの子達が大きくなってバラバラの中学や高校なんかに行っても,地域で出会ったら「あっ,○○!」「おっす」みたいな感じになるんだろうな~なんて想像しながら見ていました。

とっても刺激的な映画だったので,観て思ったことを4点にまとめたいと思います。

①校長先生がすごい
「教員が替わっても学校はそこにある」と言うけれど,それでも学校のトップである校長先生の影響というものは測り知れないものがあると私は思っています。開校当時からこの学校は木村校長が舵切りをしてきたけれど,この先生だったから成し得た部分も大きいだろうなと思います。
児童が学校から脱出しようものなら窓から「出た!追いかけろ!」という感じで近くにいた大人に確保するよう指示を出したり,教室に戻れない子どもがいたら担任と2人掛かりでずるずる引き摺って教室に戻す。とにかく,校内を動く,動く,そして児童に直接指導をする!
めっちゃパワフル~と思う反面,(あれ。校長って出張とかナントカ会議とかしょっちゅうあるお仕事のひとですよね…)と思ってくるのです。この先生はずっと学校にいるような錯覚に陥ります。観てると。
逆に副校長先生?教頭先生?は全く出演されていなかったので,そこが校長の補佐をしまくっているとは思うのですが…。でもこれで本当に学校運営回ってるんだろうか!と心配になってしまいました。子どもからすると,「ルールを破ったら自分をしかるのはいつもあの人」という一貫性があるのは良いのだろうなぁとも思ったり。
あと,校長先生が語った本音は,人間味がすごーく伝わってきました。いやぁ,仕方ないよ。そう思って当然だよ。先生である前にひとだもの。って思いました。あと木村校長に限らず,世の中の先生達ってやっぱり,超自我が強いんだろうなぁとも思いました。

②6年生のKのおうち
彼が出てくるたび,(もう!…もう!!!)と思いながら観ました。いろんな児童がでてきましたが,私も一緒に観に行った同期も彼のことが一番気がかりです。情緒が育ちにくい環境や関わりだったんだろうなということが,彼の生活や言動から伝わってきました。ご両親のお仕事が早朝からあるそうなのだけど,それを差っ引いてもケアされていない度合いがかなり激しくて,福祉レベルで気になるご家庭です。卒業式の服装なんかも見ていてすごくショックだったのだけど,あそこに彼の育ちが詰まっている気がしました。校長の「自分のためにがんばれ」という言葉はとてもぐっと来たのだけど,どうか今彼がいるところががんばれる環境であってほしいし,がんばりたいと思える何かがあってほしいなと思います。

③4年生のM
M~~~~!!!(;o;)もう,1/2成人式っぽい授業参観のシーンでは,涙なしには見られませんでした…!Mは自分の感情や行動のコントロールがうまくいかなくて友達に暴力を振ってしまう子なのだけど,あとで振り返れば「あれはだめだった」「もう暴力は振るわない」と思える子なのに…。自分でもわかっているのにコントロールできないのって,すごくつらいと思うんですよね…。2月12日に暴力を振ってしまった後,「もうしません」と反省文を書いたのに,その3日後また手を出してしまったところは私も苦しい気持ちでいっぱいになりました…。
そして1/2成人式(っぽいもの)は,みんな将来の夢とか,もう少し未来の話をするのだけど,彼は「暴力をしない暴言を言わない」という直近の目標を語るのです。最初は頑張って話す彼ですが,次第に顔が歪んで涙が出ちゃって。あぁぁ~,苦しいよねー!つらいよねーーー!!!(;×;)と,ここでもらい泣きしちゃいました…。まさに通級適のお子さんだなと思います…。

④支援を要する子どもは,何を目標に学校生活を送れば良いのか
今回一番考えさせられたのはここです。
以前上司の一人が「インクルーシブ教育なんてきれいごとだよ」と仰っていたのが心に引っかかっていたのですが,そう言った上司の意図が,なんとなくわかったような気がします。
私が普段職場でお会いするお子さんは支援を要する方が多いので,そういう…職業的な立場のフィルターがかかった上での感想になりますが…。

確かに,学校が怖くて行けなくなってしまった子どもが大空小学校に転入したことでまた行けるようになるのなら,保護者としてはとても嬉しいことなのだと思います。ハンデがあっても周囲に支えられ,同じことを達成できるのは大きな喜びなのだろうとも思います。支援を要する仲間がいることで,周囲の子どもたちも必然的に,ちょっと工夫をした関わりを持ってくれるようになるのだろうとは思います。

だけど,生きるために身に着けるべき知識(時間,お金の計算,読み書き)やコミュニケーションスキル(ヘルプを自ら出す,交渉する)は,ここで本当に身につけられるのかという疑問がかなり残りました。
この地域で永久に暮らせる保障はないし,中学校など上級の学校でこの手厚さと同じ支援が受けられるとは到底思えない。小学校6年間で彼ら自身が身に着けるべき学習とは何なのか。目標や保護者の願いは当然それぞれ違うけれど,その子どもの成長には何が必要かという視点で環境を選択することはとても大切なことだと思います。ASD圏のお子さんもこの映画にはいらっしゃいましたが,小人数の学級・学校と言ってもやはり刺激は多く,耳を塞いでいる映像を見るとやはり負荷は高いのだろうということが伝わってきました。「みんな」と同じ場所にいられることももちろん大切なのだけど,「この子」が安心できたり集中できる環境を用意してやるべきことに取り組めたら,また身に着くものも違うのかもしれないなと思います。


最後はちょっと否定的なことも書きましたが,でもこれを公立の学校が,加配なしで取り組んでいるのは本っ当ーにすごいことだなと思います。教師陣の情熱,街のひとの温かさあってこそできることなのでしょう…。「教育とは何か」「地域で子どもが育つには何が必要か」を考えるヒントをくれた,そんな映画でした。

Monday, July 20, 2015

第44回関東高等学校演劇研究大会(栃木会場) 長野県長野東高校演劇部『サバの缶詰』(DVD)

2009年1月24日・25日
@栃木市文化会館大ホール

作:清水信一
出演:長野県長野東高校演劇部

(2015.7.20にDVDで鑑賞)

今月上旬に長野東の文化祭にお邪魔した際,顧問の先生からこのDVDをいただきました。
先月お会いしたときに(←なんかこれだけ読むとすごいお会いしている感じ。笑)この作品のお話を伺っていたので,どんな舞台だったんだろう~と思っていたのでした…。

しっとり…。とってもしっとりした作品でした…。

終始テンポもしっとりだなと思っていたのですが,鑑賞後に長野県高校演劇連盟に掲載されている「高校演劇ながの第15号」を読んでちょっと納得…。キャストさんが全員1年生でした!
すすす,すごくないですか!?
卒業した3年生とカンペキに入れ違いということは,言い方キツイですが一度廃部したようなものですよね…!?それでいきなり関東大会って,超すごいと思うんですが!よくここまで来ましたね…!ひゃーーー。(驚きを隠しきれない)

舞台は実在するところなのに,ストーリーはファンタジー要素が入っているからなんだか不思議な気持ちで観てました。このエリアのひとが長野東に通学できるのか(長野東のひとたちにとってこのエリアは身近なのか)は地図を見てもイマイチわからないのですが,地域に向き合う作品っていいなーなんて思いました。昨年度の関東大会の新潟県立六日町高校演劇部『ここは六日町あたり』でも思いましたが,その地域に住んでる人でないと出せない空気感って絶対あると思うので。

そうそう。映像だから臨場感は半減しているし,カメラを挟んでいる時点でお芝居というよりはお芝居の「記録」だと私は思っているのだけど,なんだか長野県の夏の空気とか,夜のひんやりした感じとか,そういうものがちゃんと想像できました。ホリゾントの効果かな。「私ホリゾント好きじゃない」って過去に何度も言ってますが,それでもきちんと使えているところがあると(おぉーっ)てなります。笑

ついでに舞台装置の話をすると,ホームの質感がとっても素敵でした!これは映像だからアップで見られて逆に良かった!雨ざらしのコンクリートや,看板(これがたまらん。いい錆び具合。いい落ち具合。)が重厚感たっぷりで,まさに舞台を支えてるなーって感じがしました。あとぽつんとつく電灯も素敵。お芝居だから表現できなくて仕方ないけど,夜のシーンは蛾が大量に飛び回ってるんだろうななんていう画も想像できました。

その流れで小道具(というのかしら)の話もすると,きゅうりとおにぎりがホンモノなのもよかったなぁー。音がいいよね。3人で揃ってかじるところなんかも,(あーこれ絶対狙ってるところだわー)なんて思って聞いてました。笑 あのポリポリした音って,どうしてそれだけで夏感が増すのかしら。『トトロ』って単語も出てきてるから,それで余計夏っぽさが出るのかも…。ラップもカシャカシャ感がいいよね。


さてさてお芝居の中身の話を…。小学生であっても高校生であっても,それぞれの立場でぶち当たる壁というか問題というか悩みというか考えてしまうことというか,そういうものがあるよなぁということをしみじみ思いました。
周りのひとが聞けば(なぁんだそんなこと)になるかもしれないけど……例えば裏サイトにあることないこと書きこまれたくらいで退学するんかとか,書きこんじゃった本人も混乱して死にたいとか言い出しちゃうし,耐性!耐性低いよ!と心の中で突っ込んでしまいましたが,当人にとっては超一大事で,それこそ状況によっては死にたくなったりするよなぁって。歴史の登場人物は武勇伝ばかりだし,どんなに勉強ができても忘れていくときは忘れていくし。なんのために高校行くんだろうとか考えちゃうだろうなって。でもそういうことって周りに言われて解決することじゃないし,自分なりに何かに触れて考えて,ぐるっと巡って今を生きることしかできないことに気づくのかなーなんて思いました。

幹太くんみたいな年齢の子どもだったら,親の都合に人生かなり振り回されちゃうよなぁ。振り回されるのはつらいけど,でも守ってもらわなきゃ生きられないから結局振り回されないとだし。そんなときに何を頼りに生きていくのかな。幹太くんの場合は知識とか普段得られない体験に没頭することで防衛していたのだろうけど,子どもでも大人でもない晶子姉ちゃんと出会うことで大人の誰にも(おそらく)言えない無価値観とか,そういうのを言えたんだろうなー。口にはしなくても,寂しさとか,くるしさとか,そういう何かで繋がっていることがわかったのかな。2人は。
(いやしかし幹太くんの嘘もびっくりだわ…。よく西麻布とかって地名がポロッと言えるなぁと。でも広尾まで3駅とかすぐ出てくるから,やっぱ幹太くんにとってそこは大切な場所なのかな。なんて思ったり。)

きゅうりバ…あ,真理婆ちゃんが言ってた「シンから思えば来る…」みたいなせりふは印象的でした。(なのに正確に覚えてない…。←)シンって,芯かな心かなーとかって考えちゃいました。


シーンが結構ぷちぷち切れるので,(そそそ,それで!?)というところもちょこちょこあったり。
退学問題まで発展したネットいじめは「死にたーい!」「ごめーん」でそのままだし,幹太くんは新しい生活をどう思ってるのかなとか,そのあたりは気になるところです。
そこへさらに電車が来ちゃったので,幹太くんじゃないけど(あれは何だー!)となり,情報過多!

でもシンから思ったから電車が来たというのはなんだか違う気がして,じゃあ何だろうと聞かれるとなんとも言えないのだけど…。うーん。現状に向き合うための後押しみたいな感じで,廃線のホーム(傷ついたお疲れの心を休める場所)から今も現役で電車が走ってるところまで連れてってくれたのかなーという感じが個人的にはしています。つらくて保健室で寝てた自分を迎えに来てくれた友達。みたいな。そんな感じ。(たとえになっているのだろうか…。)


あと2000年代後半だな!と時代を感じたところがあって。
髪型が…みんなシャキッとしている…。私も2000年代の高校生で,髪はストレートであればあるほど価値があると思って生きてきたニンゲンだったので,すんごい親近感わきました。皆さん天使の輪が美しいですね…。(お母さんとなっちゃんが同じ役だっていうことには,声+天使の輪加減でわかりました。)
はい,それだけです。笑

あとあと。昨年拝見した長野東の『銀河鉄道の夜~吉里吉里国ものがたり~』でも,登場人物の名前がとっても素敵ーと思っていたのだけど,この作品でも名前へのこだわりが感じられて,素敵でした。


幹太のお母さんもおばあちゃんも,晶子のひいおばあちゃんもてっちゃんも実際には出てこないけれど,なぜだか情景が浮かびました。すごいなぁ。
そしてこのキャストさん達,何気に私と年が近いわ…。きれいな天使の輪っかを持ってた彼女達は,どんな大人になっているのかしら。なーんて,お話そのものもそうでないことも,想像が膨らむしっとりきれいな舞台でした。

顧問の先生,素敵なお時間をありがとうございましたー。

Thursday, July 16, 2015

新国立劇場『かがみのかなたはたなかのなかに』

(新国立劇場公式webサイトより)

@新国立劇場小劇場

作・演出:長塚圭史
振付:近藤良平
出演:近藤良平/首藤康之/長塚圭史/松たか子

2005年からほぼ毎年,最低1回は生で松たか子を拝むことを人生の励みにして生きてきました。(壮大)

昨年春の『もっと泣いてよフラッパー』から舞台の予定がないなぁ~。もしや…と思っていたらそのもしやで,無事松たか子は今年の春に女の子を出産されていたのでした。そして入ってきた,7月に舞台というお知らせ!産休明けの松たか子!観たい!!!!!

…と思って気合いで取りました☆これで今年の行いで悔いはほぼありません!笑

そうそう。前回このメンバーが新国立でお芝居やったときは,取りたいと思ってて結局行動に移さなかったのです。それがやっぱりあとでじわじわきまして,もう同じ過ちはすまいと…。

事前に松たか子がピンクのドレスを着る♡という情報は得ていたものの,あとはわからずとにかく劇場へ!


ひゃーん!びっくり!

開場中からキャストさんが水兵さんの格好をして,無表情MAXで歩いてるじゃありませんか~!

松たか子も階段から静かに降りて来て,(はわわわぁ~♡♡♡)と思ってうっとりしていたら…

気づいたら,

目の前に,

ままま,松さんがっっっ!
超無表情MAXで,目が合ってます!20cm先にいます!ていうか私進行方向邪魔してます!!!
そそっとどきました。(いていいならずっと邪魔したかった。←)

はぁぁ~。なんか,東京では珍しいパフォーマンスな感じ…。(松本ではこういうのありそう。)

長塚さんも近藤さんも首藤さんも,皆カチカチと歩いて,止まって,方向転換して,また歩く…というパフォーマンスをされていました。
他にも階段やあちこちにお芝居を楽しめるしかけや展示があって,長塚さんニクイな~なんて思ったり。


客席に着いたらセンターだったので,私の松たか子への愛がイープラスに届いたのだと思います。笑

今回は子どものための作品ということもあって,舞台から一番近い席は親子のための席でした。うわぁい素敵~。

子どものための作品だからといって子どもっぽい作品…というのは私も好きではなくて,何年か前まで毎年公演していた世田谷パブリックシアターの『にんぎょひめ』なんかの作り方はとっても素敵だなーと思っていました。やっぱり長塚さんもそういうふうに子どものための作品を作っていらして,わかりやすいけど怖いというか…構成はシンプルだけど感情を揺さぶる作品は,大人の私が観てもとっても楽しかったしぞわっとしちゃいました。

そしてやっぱり松さん…。4ヵ月前にお子さんを生んだなんて信じられない…。とてもエレガントで,チャーミングで,ピンクが似合って…。終始うっとり…。この日は終演後にシアタートークがあったので参加したのだけど,そこで「松さんは何度やっても今ここで初めて起きたかのようなことをしている」みたいな話が出てきて,そうですそうです!と思いました。そういうお芝居が,ちゃーんと,だけどものっすごい自然にできてしまう女優さんだから,やっぱりすごい。はぁ。溜息でちゃう。

そうそう。首藤さんと近藤さんは鏡を挟む間柄(?)なのだけど,松さんのお相手が長塚さんとは…。ていうか長塚さん,女装キレイなんですけど…。なんかミッツマングローブみたいで(←見た目が),すんごいガツガツしてる感じがとにかく面白くって。このひと怖いもの知らずというか,怖いことないんじゃないかなって思いながら観てました。(でも自分の奥さんが鏡の中に連れ去られちゃったらどうしようなんてファンタジーを抱くというのだから,不思議なひとだなぁとも思います)


開演前は,奥にあるテーブルや椅子は鏡なのかな?とも思っていたんですが,開演したらやっぱり実物で。首藤さんと近藤さんのシンクロが美しかったです。左手で何かやるとか,超大変そうだなぁ。
でも途中から従属しているはずの鏡の像が行動の主導権を握っていくあたりなんかは,ちょっとぞわっとしちゃいました。面白いのだけど,でも鏡の中の自分が現実の自分を操っていたとしたら,恐ろしいなぁとか。こちらもファンタジーを抱きながら見入ってしまいました。


最後,まっぷたつになってしまったけいこがよたよたと歩いているところは,うまく言えないけど“肉感”というか,そういうものを感じました。右脳と半身,左脳ともう半身がなんだか別々に動いているみたいで。ちょっと怖くて切ない終演でした。


シアタートークでも話があったけど,子どもの反応があると私も嬉しくなりました。アニメやパソコンなんかもいいけど,目の前で何かが展開されて,そこからドキドキワクワクぞわぞわしちゃうような気持ちが心の中で生まれたら,とっても素敵だろうなぁーと思うのです。
新国立のいいお仕事っぷりを体感できました。

七五調の脚本,私も読んでみたい!書籍化されたらじっくり読んでみたいので,ぜひお願いします長塚さん…。笑

Sunday, July 12, 2015

長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部 第67回ぎんが祭公演『南洋記』

(ぎんが祭公演パンフレットより)

@長野県松本蟻ヶ崎高校231教室

作:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部
出演:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部

昨年は特にがっつりお邪魔して蟻高のお芝居を拝見していたのですが,もう今年は文化祭までは頑張らなくていいかな~なんて思っていました。

ですがとあることをきっかけに,どうしても今年の3年生の引退公演を観たい!と思い,母校の千穐楽よりも優先させて足を運んでしまいました…。


「なんよーき」とタイトルは知っていたのですが,本当に事前情報がそれだけで…。教室に着いて,パンフレット(和綴じ風で素敵☆)をもらって,席に着いてぱらり。

あらま!なんと!中島敦の話ではありませんか!(゜ ゜)

中島敦といえば,先月10年越しの観劇を果たした世田谷パブリックシアター『敦-山月記・名人伝-』を観たばかり!そしてそこで何度も出てきた“人生は何事をも為さぬには余りに長いが,何事かを為すには余りに短い。”という言葉を思い返しながら,開演を待ちました。

今年お邪魔した9校を思い返すと,0からの創作ってこの学校だけだったなーということに気づきました。過去に上演歴があるものを除けば,この学校だけ。そして感じたものは,蟻高の創作意欲の高さと,ベースの力の高さでした。

『山月記』って高校生にとっては特に身近な題材だと思うので,背伸びの無い感じというか…無理なく,でも実直に作品や作者に向き合って歩み寄ろうとしているあたりはとっても好感が持てました。
それから,出演されている方のほとんどが3年生というだけあって,本当に見応えがありました。蟻高の文化祭はちゃっかり3年連続お邪魔してしまったので,今年の3年生が文化祭デビューした年も拝見していたのでした。(1年生のときにあの役をやってたな…)と覚えている人もいて,時の流れをしみじみと感じました。特に昨年,今の3年生が2年生の時にきっちりと基礎を押さえたお芝居を作ってこられたと思うので,その力が今回きちんと出ていたなぁと思いました。お芝居にも,演出にも。
(カーテンコールで部長さんが「今回は時間がなく…」って仰っていましたが,そんなふうには全く見えなくて,よくここまでまとめたなぁというのが正直な感想です。力のあるひとたちの本当の力を体感することができました。)

お芝居が始まってすぐ(わぁぁ♡)と思ったのは,李徴役の方…♡
昨年の作品でもすんごく印象に残ってた方なんですが,今回はまさかの李徴…!えっ,女性ですよねどーするんですか!と思っていたんですが(←先月もさもさした李徴の萬斎さんを観ていたこともあり。笑),超絶キレイでびっくりしました。映画『女帝』のチャン・ツィイーを彷彿とさせる佇まいで,めっちゃアジアンビューティーな香りがしました…。また衣装の赤が良いですね…。

あと,のぼる役の方が素敵でした!初めて拝見する方だったので無意識で注目してしまったというのもあるんですが,思えば蟻高で子どもらしい子どもって今まで出てこなかったと思うので,そこがあったのかな…。高校演劇のキャスティングって身長や体格で選べないところもあると思うんですが,他のキャストとの身長差も自然で雰囲気もとってもキュートな方だったので,良いポジション持ってる方だな…なんて思いました。笑←例えば,背が高いひとはどう頑張っても子ども役は無理があるので…。

あとあと土方さん役の方も,昨年とはガラッと…でもないけど,表現の幅が広い方だなー!と再認しました。昨年はちょっと中性的というか,男子とも分け隔てなく接する女子高生という感じだったのですが,土方さんは本当に男装じゃなく男性に見えたので力のある方だなぁー…。と感じました。懐が広そうで,どっしり構えている感が素敵ですね。


中身のことで言うと,袁傪と李徴がバッタリしちゃうところは,もう少し丁寧に観たかったなーという気持ちがありました。李徴は人間を襲う気100パーでいて,(いざ獲物ー!)と思ってよく見たら(うわ袁傪じゃんまじか!)ってなると思うんですが,バッと出て2人の目が合ってバッと散る…みたいな流れになってしまっていて,李徴のハッとする瞬間…みたいなところがもう少し見えるとよかったなーなんて思いました。

李徴がたくさんの「声」を聞いて発狂するところも…。私が先月『敦』で似たシーンを観ていたことももちろん影響していると思うんですが,ちょっとワンパターンかな,と思いました。呼ばれて呼ばれて,でもそれがなぜ彼にとって耐え難いものだったかをこちらが感じる前に,わぁぁーってはけていってしまった気がしました。もう少しじっくり見せたりいろんな「声」があったら,徐々にのしかかってくる感が出たのかも…。


昨年と比較したい訳じゃないのですが,シーン数が多かったり一人複数の役…という構成は,昨年の影響が少なからずあるんじゃないかなと思いました。それが良いとか悪いとかではなくて…良いお芝居はもちろん良いと思うのだけど,「いつも同じ(ような)芝居しかできない」みたいになっちゃうのはもったいないかなと思います。ちょっと構成や作風が違う蟻高も,いつか観てみたいです。

あとやっぱり暗転の数は気になるところで,そしてどうせ完全暗転にならない文化祭公演ならば,例えば青転とかにしたらきれいじゃないかなーなんて思いました。一人何役もあるから,シーンを変えるために黒にしたいのかもしれないですが,南洋感というか,ちょっと幻想的な感じがしてきれいだろうなって。←これは単にカサハラさんが青転好きなだけ。笑


はっ。そうそう。文化祭公演は舞台と客席が至近距離!というのが醍醐味だと思うんですが,蟻高の良かったところをもうひとつ挙げると衣装と小道具のこだわり!これが見えましたー。特に敦のカバンが素敵!何だあの使い込んだ感!
高校演劇だとどうしても低予算になってしまうと思うんですが,ここまで統一感があって味があると,もう何も言えないというか…。あぁ良かった。


そして引退公演を観たかった最大の理由は,お芝居ももちろんですがカーテンコールに立ち会いたかった!これです。
本当に,本当に私部外者なんですが,思わずもらい泣きしちゃいました。部長さんの言葉,2年生の方の言葉が本当にしっかりしていらして,きちんと考えてこの場に臨んでいるのだということもよくわかりました。
人生の短さ,儚さ,“高校生”という貴重な時間,たった1公演や2公演のために何ヵ月も準備して臨む高校演劇の尊さ。いろんなものを感じました。

あの子が出ていた舞台,あの子のお芝居に心が動いたことを,私はきっと忘れない。

16番目の部員さん。この3年生の最後のお芝居を観ることができて,私はとても幸せでした。



情熱とか,本気とか,そんな,口にしたらぺらぺらした響きになってしまう言葉でしか表現できず悔しいのですが,蟻高のそんな気持ちが見えた舞台でした。
無理とはわかっているけれど,このお芝居を大会で観たかったなぁ。
でも,それが高校演劇だから。そっと自分の胸にしまっておきます。

蟻高のみなさん,お邪魔しました。
特に3年生の皆さんは,今まで本当にお疲れ様でした。とても温かい時間でした。皆さんの引退に立ち会うことができ,本当に胸がいっぱいです。ありがとうございました。

+++

2015.7.20追記
そうそう。おそらく昨年12月の『Nippon, cha cha cha!』自主公演でポスターを描かれていた方の作品だと思うのですが,今回もポスターを担当されており,校内のあちこちに貼られていました。


首になんて書いてあるんだろう~。
右上のレタリングとかも味があって素敵でした。

長野県松本深志高校演劇部 第68回とんぼ祭公演『キサラギ』


(とんぼ祭公演パンフレットより)

@長野県松本深志高校講堂

(原作:古沢良太『キサラギ』)
出演:長野県松本深志高校演劇部

昨年あたりから深志のことを思い出すことが多くて,とんぼ祭の2週間前に飯田,1週間前に屋代におでかけしたら,なんとなーく深志が恋しく(?)なり…

スケジュールも良い感じに組めたので,行ってきました松本深志!
実に!実に10年ぶり。2005年の縮とん以来です。

深志といえば講堂での公演。私の中のとんぼ祭公演は,一般公開の本当に最後の最後に組まれていて,じっとり暑い中でみんなパンフレットやうちわをパタパタさせながら観て,終演後は舞台設置委員会だかなんだかのお兄さんたちが「撤去~!」って言ってパイプ椅子を一掃する…という印象がつよーくありました。当時中学生の私からすると,すごくかっこよく見えたものです。

しかし今回お邪魔すると,設置されているパイプ椅子は平成26年度の生徒さんの卒業記念品みたいな感じだったようで…。これはキレイに使わねばですな…。

今年,9校の文化祭にお邪魔し演劇の公演を拝見しましたが,私は最前列(の特にセンター)は未来の高校生のための席だと思っているのです。深志だったら未来の深志生。そういう子が座りたいだろうからどの学校でも最前列は遠慮していたのに,肝心の中学生っぽい子がここまで全然いなくて。今回のとんぼ祭で初めて中学生っぽい子が最前列のほぼセンターを確保されていたので,あぁよかったと思いました。まぁその子達が演劇部に入学するかはさておき,(高校生ってすごーい!)と思えたらそれで十分だと思うし,それが受験のモチベーションに繋がれば素敵だなって。
(…そうそう。だから本番の記録用映像は後ろで撮る方がいいだろうな~なんてことも思いました。ゲネならどこからどう撮ろうが構わないと思うのだけど。)

講堂入口でパンフレットをもらい,席に着き,ぱらり。あれと思って,ぐるりと見回す。それでもあれれと思ったのだけど,やっぱりない。

…作者の方の名前が,ない…!!!!!

まさか深志でそれはありえんと正直思ったのですが,記載されていませんでした。おーのー!<(>ロ<)>
既成で記載するのは当然ですが,たとえ創作であっても作者の名前は出さねば!それが高校の文化祭公演であっても!と思って生きているニンゲンなので,ちょっと衝撃的でした。(昨年の田川の文化祭の記事でも書きましたが,私は中学生の時に顧問が著作権無視したまま公演を打とうとしたことが解せず,中3の引退直前に退部したので。)

でもパンフレットで(あっ♡)と思うところも!
“部員募集!”みたいな欄があって,興味のある人は124教室へどうぞ☆的なことが書かれてたんですが…
124教室と言えば!忘れもしない『南京の早春賦』クリスマスアトリエ公演でお邪魔した場所ではないですか♡2003年のことです。平日だったので,普通に中学から一度家に帰り,私服で放課後の深志にお邪魔したときのわくわくコソコソドキドキ感は今でも忘れられません。笑
あそこがずっと活動場所だったんですね。
こうしてずーっと一つの部活が同じ教室で活動してるなんて…素敵だわ…!空間で時代が繋がっているんだなぁ。しみじみ…。


はっ!お芝居はというと,脚本がしっかりしていたので,(やっぱ脚本が出来の6,7割に関わるな。特に高校演劇。)と思いながら見入っちゃいました。でもってこの作者は誰なのかすんごい気になっちゃったので終演後演出さんに伺ったのですが,元は映画らしいです。そして2度舞台にもなっているそうな…!
後で調べたら,映画は2007年のブルーリボンの作品賞(しかも『それでもボクはやってない』と競って獲得した賞だそうで!知らなかった自分ハズカシイ…!)を受賞していたり,舞台のフライヤーは私確実に見たことありました。あぁぁ。狭い,狭いわカサハラさん…!

とにかく,この公演は映画から引っ張ってきているそうです。(映画を観たことないので映画のせりふがそのままカットされて使用されてるのかとかわからないので,この記事を書くにあたり「原作」という表記でクレジットを載せています。)
映画自体が演劇的らしいので,お芝居にしようと思った深志の意図もなんとなくわかったように思います。かつて講堂で上演された『魚の祭』(2003年)では舞台上の役者達がカレーライスをマジ食いしてたり本気で目隠ししてスイカ割りしてましたが,それに近い体当たり感があってよかったです。笑
深志の本気を見られた気がします。

そう。話がちょっと戻りますが脚本の作りがしっかりしていたのでかなり面白かったです。男性5名の役の中に2人女性がいらっしゃいましたが,お二方ともちゃんとそれっぽく見えるから違和感なく受け入れられました。いちご娘。ちゃん役の方は特にアイラインが太めだったので,余計両性具有感が増して良かったです。ミニーちゃんの耳とかも気持ち悪くて。(ほめてる)

この作品をやる上で超重要なのは,この舞台にいない如月ミキをいかに観客に想像させるかだと思うんですが,なんとなーく想像できたように思います。それは単にミキの人となりに関する説明的なせりふからではなくて,むしろそのせりふに対して「あぁ~,そうそう!」という“ミキちゃんあるある”に周囲が共感しているところの力が大きかったように思います。そういうところが彼女の魅力で,そういうところに彼らは惹かれていたんだろうなということもじんわり伝わってくるし。…うん。なんとなーく,つかめました。

自分にとって身近な人の死を心の中で整理することを心理学の用語で「喪の作業」と言いますが…この作業過程がきちんと見えました!
事実と真実は違うから,事実の断片を集めたらその隙間も含めてどう意味付け,どう解釈するかってとても大切なことなのだと思います。彼らの,自分達でミキの死の意味を見いだそうとあれこれ考え推測して結論付けようという行為そのものがとっても自浄的で,もがきながら生きる人間味みたいなものが伝わってきました。


昨年の地区大会で印象に残っていた方が特に舞台を引っ張っている感じで,本当にぐいぐい観ちゃいました。今回の役名で言うとオダ・ユージと家元役のお二人。お二人とも声が素敵だったなぁ~。家元さんはタッパがあるからそれだけで存在感あって。よかったなぁ。(特にオダ役の子は,地区大会の時に私の友人かつ深志の演劇部OGに「深志っぽい声だね」と評されていた。笑)←でもオダさん,噛むと顔に手を当てちゃうのが役というよりは素な感じがして,ちょっとだけ残念…。

そして個人的にスネークさんの砕けっぷりが素敵…。いるよねああいうひと。誰かにくっついてじゃないと主張できないひと。でもってすぐ調子乗るひと。本気で乗っかってるから,ついくすりとなってしまいました。笑

あと,すごいなーと思ったのがみなさんのスーツのサイズが合ってること!
高校演劇でスーツを着るとなるとどうしてもご家族のものを借りたりしなきゃだと思うんですが,そうするとスーツに着られちゃうことがしばしばあると思うのですよ…。
しかし!今回のキャストさんはみーんなサイズがぴったしだった!腕の長さとかすんごいちょうどよかった!これすごいなーって思って観てました。衣装,大事です。


はー。相変わらずとっ散らかっててすみません。
文化祭の一つとして演劇があるというスタンスも,深志らしくて好きです。(←いや,どこもそうなんだけど。舞台設置委員会のみなさんが,公演にとても協力的だよね。)
去年の地区で気になっていた方の引退公演に足を運ぶことができたのも嬉しかったです。まんぞく!

深志のみなさん,お疲れでしたー。久しぶりにお邪魔できてよかったです。中学生の頃のふんわりした深志への憧れの気持ちを思い起こすことができました!ありがとうございました。笑

Saturday, July 11, 2015

長野県田川高校演劇部 第33回蒼穹祭公演『もっと泣いてよフラッパー』

(蒼穹祭公演パンフレットより)

@長野県田川高校小体育館

作:串田和美
潤色:長野県田川高校演劇部
出演:長野県田川高校演劇部

この…この作品をやると知ったときは正直「え?」ってなりました。

私は昨年松本で串田さんの『フラッパー』を観ていたので,どんな作品かはすぐピンときました。
同時に,串田さん“作”の作品って,串田さんありきであって,串田さんが演出するから成立するものだと思うんです。
それに高校生が手をつける。
きっと彼らも実際にあの舞台を観て,いいなーって思ったからこそ挑戦したいのだろうなと思いました。憧れという気持ちは,お芝居をつくるひとにとって大切な感情なのだと思います。それに実際挑んで,形にして,発表したという意味では,田川がこの作品を上演した意義はあるのだろうと思います。

そうそう。やるって知ったときは,「えっ,音楽どーするの!?」と思っていたのですが,開演してびっくり。吹部とコラボしてる…!
文化部において,演劇部と吹奏楽部って犬猿の仲じゃないのですか!?(って『ボクのじゆうちょう』で学んだよ!笑)文化祭で公演時間に気遣い合わなきゃいけないこの両部が,どうして一つの舞台に立てるの!?
…と思ったのですが,どうやら今年度,田川の吹奏楽部はMAX10人程度らしく,蒼穹祭の中に吹部としての発表枠がなかったようで…。(うそーん!文化部の代表といえば吹部でしょうに!)と思うのですが,そういう年とかめぐり合わせってあるよね。きっと。

どういう経緯があったかはわからないのですが,とにかく劇部と吹部がコラボしたそうで。すごいなー…。


いろいろ思うところがあるのですが,私の頭の中を,ない作文力を使って
①チーム編成
②演出
③作品選び
④その他
…の4点にまとめてみたいと思います。


①チーム編成について

蒼穹祭の時点で部員の方が28名もいたそうです。すごーい。大所帯。今どき珍しい!
28人いるときに,どういうチーム編成を組むかってとっても重要だと思うんですよね。

例えば今回の田川のように,全員出演することを目的にすることもできると思うのだけど,「部活」という上下関係を考えた時に,公演を通して先輩が後輩にスキルを伝えることもできると思うのですね。2,3年で演出・助演出を組んでもいいし,1,3年がダブルキャストなんかで組んでもいい。特に長野県の場合7月の文化祭で引退する3年生が多いということを考えると,3年生が出る文化祭公演は単純に考えて,水準が一番ピークのはずで。そこに下級生が触れることができたら,いいもの盗めるだろうなーとか思う訳です。

そう思うと,今回の田川はその機会を自分達で手放してしまった感があって,もったいなかったです。「全員キャストとして出る」という目的を立てたのならもうどうしようもないのだけど,こんなに枠の緩い作品を1年生がモノにできるのかと聞かれるとちょっと謎だし,キャストとスタッフワークのバランスとして見るとかなり極端だなというのが率直な感想です。


②演出の不在について

そしてそして,こんなに出演者がいるのだから一貫した舵取りさんがいなきゃだと思うのですが,パンフレットを見ると…演出さんがいない…!!!
うそーん!どうやって作ったんですかー!!!!!(-ロ-;)

(この作品をやりたかったのだろうな…)という気持ちは,よーく伝わるんです。
でも,やってみたかった止まりで,こうしたい!という方向は見えなかったなと思います。
演出さんが個人名で記載されないということは,きっとみなさんが意見を出し合って作られたのだろうとは思うのですが…例えばきっかけとか,間とか,見せたい絵とか,そういうものがほとんど見えず,申し訳ないのですがふんわりふんわりした作品に見えました。「全員出る」を大切にしたい気持ちもわかるのですが,誰か一人,客観的かつ定位置でこの作品を見るひとがいないと,作品が迷子になってしまうなと思います。誰か一人,センターで見るひとがいれば,衣装のちぐはぐ感も音楽の取ってつけた感も楽器に対してせりふの負けっぷりも,わかるはずです。

大切なのは,28人全員がキャストとして出るのではなく,28人が責任を持って舞台を作ることではないでしょうか。演出,照明,音響,舞台装置など…それぞれがそれぞれの部署でプランを練り,試し,検証していくことで,「やってみたかった」から抜け出せるはずです。「自分達がつくる」意識に切り替わるはずです。


③作品選びと質の確保について

①とも絡んでくると思うのですが,「やりたいこと」と「やれること」ってズレがあると思うんですよね。
私達個人もそうで,例えば将来芝居でご飯を食べていきたいと思ったとしても,演技力やある程度の容姿,トレーニングすればどうにかなる体,資金など…いろいろ必要になってくるわけです。それと現実を照らし合わせることで,(あ,これは無理だ)(ここならいける)みたいにすり合わせをしていくと思います。
それは部活みたいな集団にも当てはまることで,例えば3人しか部員がいないのに10人キャストのお芝居は作れないし,ろくに動けもしないのにアクロバット満載の舞台を作るのも無理がある。

田川は今回,「やりたいこと」だけで突き進んでしまったかな。というのが正直なところ…。
やっぱり音楽劇である以上声が聞こえないなんて致命的すぎるのですが,普通のせりふでも怪しい方がちらほらいました。せりふを聞いた途端,(あ。これ去年の○○役のひとだ)とわかるひともいて,なぜならばせりふの出し方が全く一緒だったからで。うううー。残念すぎる。

そして新入生が入って3ヵ月ちょっとで発表できる水準に持ってこなければならないと考えると,120分弱のお芝居はどうなのでしょうか。負荷が高すぎやしないでしょうか。120分だらだらとやるよりは,45分でも良いのできちっとまとまったお芝居を作る・観る方が,お互い有意義かなとも思います。文化祭は60分の枠に縛られず自由に組める公演だとは思うのですが,まずは!まずは質の確保に努めてほしいなと思います。


④その他

『フラッパー』も観てるし,挑戦作な分いろいろ反応してしまいましたが,今年おでかけした9校中,一公演の集客人数は田川が一番でした…。観た感じ…。100人弱はいましたよね。
部員も多い分集まるのはある意味当然なのかもしれませんが,それでも実際足を運んでくれるってかなりすごいことだと思うのです。そこは本当に驚きです。普段の行いが集客にも繋がっているのだろうなと思います…。笑

あと,田川といえば小体にワイヤーを張ることで有名(?)ですが,今回そのワイヤーに布吊ってたんでびびりました…。ちゃんと中割になっている…!すっごい!あれどーやってんの!
しかも上下にあるパイプで組んだセットも,スラムちっくというか路地裏感というか,そういうものが出ててよかったです。底が抜けないかちょっとドキドキしてしまいましたが,見応えある装置でした…。

そしてキャストさんに関して言うと,昨年の『審査員』から個人的に注目している3年生さんにうっとりしちゃいました。笑
今回はアスピリン役で出ていて,超かっちょよかったです。いいなぁいいなぁ。今年の深志の文化祭公演でスーツについて書いてますが,ここでもアスピリン的にはジャストサイズなスーツで雰囲気出てました。せりふの出がすごーく自然で,身のこなしも素敵でした。もう舞台上でお目に掛かれないと思うと切ないです…。

そうそう。この作品観てたら,なんだか北野武監督の映画『Dolls』を連想しました。夢とか希望を見出したと思った矢先に命を落とす人々の話なのだけど,アスピリンとかビリーとかまさしくそんな感じで。人生の儚さをふんわりと感じました。


はい。こんな感じでしょうか。なんだか厳しいことばかり言ってすみません。でも高校演劇ではおそらく取り組まないであろうプロのお芝居に取り組むとはこういうことかなとも思います。
新しく作品作りに取り組まれることがあるのなら,まずは演出を立てて,各々持ち場をきちっと持った上で役割を果たすこと。キャストであればベースの力をしっかりつけること。これが重要になってくるのかな。「やってみました」止まりにならないためには。

せっかく!せっかく!他校からしたら喉から手が出るほどほしい男子部員もたくさんいるし,全体の数も多いのだから,それを生かすマネジメントをしていけるといいだろうなと思います。
じっくり一つの作品に向き合えたら,スペシャルなチームができそうだなという気もしています。
地区大会作品に期待です。
そして3年生のみなさんは,今まで本当にお疲れ様でした!

長野県木曽青峰高校演劇部 第7回蒼陵祭公演『一人ぼっちの南吉か~新美南吉の作品群による上演脚本~』


(蒼陵祭公演パンフレットより一部掲載)

@長野県木曽青峰高校小体育館

作:日下部英司
出演:長野県木曽青峰高校演劇部

昨年の木曽青峰といえば文化祭直前に南木曽で土砂災害があり,文化祭の開催自体が危なくなったり,部活の発表会場や時間に変更なんかがあったりして大変だったようで…。演劇部も照明や音響に大幅な変更があったようです。それでもShow must go onだった舞台を観て,随分励まされたものです。

あれから1年。今年も良い感じにスケジュールが合ったので行ってきました!

今年の木曽青峰は『南吉』!
あれ,これ観たことあるぞ!?
2008年度に長野県松本蟻ヶ崎高校が上演したのを観ていたのでした,私。(そのあとも再演があったはず)

しかしもう7年も前のこと…。一回しか観てないし若干記憶がぼんやり…。
でも,観てたらなんとなーく蘇ってきました。彼岸花の話とか。秋は日が落ちるのが早いとか。
私は新美南吉作品を『ごんぎつね』と『手袋を買いに』くらいしか知らず,もっといろいろ知ってたらさらに楽しめたのかしらと思いながら今この文を書いています。

キャストさん3人のうち,人物2を担当されていた方が特に素敵でした~。
少年っぽい役から女の人まで自然に演じられて,演技の幅が広い役者さんだなーと思いました。東京のお部屋にイメージとして現れたみな子さんとか,良かったなぁ…(ノ´ω`*)

『ごんぎつね』も茂平さんからの伝聞だし,このお芝居も一人が複数人を演じるからどこか私も一歩引いて観ちゃうのでそういうもんなのかもしれませんが,私思いました!

なんだか!
心の温度が!
一緒な気がするの!

(多分昨年『砂漠の情熱』とか蟻高の『Nippon, cha cha cha!』も観たから,比較したり共通点見つけたりして思ったことだと思われ。)

観ていて,(ごんよ…。なぜそんなに最初からしっとりしているんだい。)と思ってしまいました。
ごんって小狐…。あ,そっか。「子」狐じゃないからミニサイズの大人ってことかな?まぁいいや。とにかくごんはいたずらっ子だと思うんですが,なんでいたずらっ子なのかと考えたときに,一人ぼっちで寂しかったり(←意識できているかは別として),周りにかまってほしくてちょっかい出したり…なところがあるんじゃないかと思います。
なのでもっとガチャガチャしてても良いんじゃないかなー。

ウナギを逃がした後に真実を知って後悔→せめてもの償いでイワシをプレゼント…というところも,狐のアタマなりに考えて→「これから喜んでもらえるかも!」と期待したところで→庄八が泥棒扱いされちゃって,「まじかー!ごめんそんなつもりじゃないのに~!」(;o;)
…みたいなあたふた感がもう少し見えたら,人間味が出そうだな~わくわく。なんて思いました。

でも!
他のシーンや他の役者さんの心の温度…みたいなものがほとんど一緒だったので,多分そこだけ温度(?)を上げると浮くんだろうな…。だからしっとりしていたのだろうと思います。

お話としてはきれいに,本当に詩のように流れていくのだけど,そういったキャラクターの力動が感じられたら個人的にはもっと幸せだなぁ。例えばちびっこ達が新美先生のお話を聞きにくるときも,早く聞きたくてワクワクしているだろうし,ぐいぐい,それこそ言葉通り身を乗り出して聞き入っちゃうと思うんですよね。だからもっと聞きたくなるのだろうし。なんだか時だけが淡々と流れていくような感じがしちゃったので,もっと気持ちの波を私達観客も味わえたらいいなーって思いました。

あと前回(2008年度)この作品を観たときにも思ったんですけど,これだけ抽象度が高い舞台なので,母があれだけリアルだとちょっとギャップに驚いてしまう…しまった…のです。そこだけぼーん!と具体的なものが出てきた感じで。もうちょっと他の表現と近づけるというか,ギャップを薄めてもいいのかなぁ。例えばシルエットにするとか…?うーん,なんだろう。シルエットで見ると頭なでなでしてるように見えるとか?うううーん…。生身の人間の手で撫でたいから頭部もリアルにしているのだろうけど。なんだろう。好みの問題なのかな。


そういえば衣装が良くなっていた!前回と比べて!
前回は上も下も黒×黒で,稽古着をそのまま持ってきた感があったり,ぺらぺらしていてちょっとチープな感じがあったのだけど…今回は質感のある衣装で素敵でした!ちゃんとごん役の方はきつね色…☆笑
ただ母役の方は他のお二人と比べて系統が違ったかも…。

あとあと,照明もおや!新しい!と思ったところがあって,新美南吉2?かな?デニムシャツを着てた役者さんがセンターでがっくり来て暗転する…というところ。段階的に照明が落ちてって,なんだか新しかったです。意図的にそうやってるのかたまたまそうなっちゃったのかは微妙なところでしたが,あれはあれでアリだなーって思いました。笑

舞台セットも去年の『砂漠の情熱』で使っているものを再利用されていたり,コンパクトに作ってあるあたりはスマートで良かったです。またこれを地区大会とかに持っていくなら,作りも若干変わるのかなーと思いますが…。
そういった構成の変更やお芝居そのものは,夏休みの宿題になるのかな。

昨年のキャストさんは当時3年生なので総入れ替えだったと思うのですが,昨年大会のパンフレットでお見かけしたお名前の方が今年もちゃんと裏方さんだったので,そういうところで学年と学年を繋げたり,部を支えているから成り立っているところもあるんだろうな~と思います。

キャストの皆さん,スタッフの皆さん,お疲れ様でした。木曽でちゃんと音響も照明もついている舞台を観られて安心しました!地区大会でパワーアップした舞台を観られるのを楽しみにしていますー。

(ところで南吉って29歳で亡くなっているんですね…。私もあとちょこっとだわ…。先月観た中島敦といい,若くしてこの世を去る人ばかりに触れている気がするわ最近…。)

Sunday, July 5, 2015

長野県上田東高校演劇班 第46回あずま祭公演『どよ雨びは晴れ』


(あずま祭公演パンフレットより)

@長野県上田東高校小体育館

作:佐藤奈苗
出演:長野県上田東高校演劇班

7月の第一週に長野東にお邪魔しよう~と思っていたら,こちらの学校のフォロワーさんから「うちにも来てください!」とお誘いいただいたので…

その言葉を真に受け…

行ってきました上田東!中信のニンゲンからするとすんごい行きにくい場所!(…と,今まで思っていたけどやっぱ南信の方が大変かもしれないと先週思った。笑)

上田東さんといえば,飯田高校や長野西高校と同じく2006年に県大会の公演を観ているはずなのだけど,これまた記憶がすっぽり抜け落ちていて,昨年の県大会のイメージ!顧問の先生が生徒への愛溢れる作品をお書きになっていたのでした…。(そのときの感想はこちら。)

自分のブログを確認すると,これで「文化祭」のタグがつくのは25作目(実際はもうちょっと観てる。し,自分が作ってる分は抜いてる。)なんですが,








こんなに大会仕様の文化祭公演はじめて…!(゜ロ゜)









びっくりするぐらい,


大会仕様だったのです上田東さん…!



たとえば!
①開演前の1ベル
②開演直前の作品名アナウンス
③開演直前の2ベル
④会場出口横に設置されているメッセージボード…!



すっごいしょーげきてきでした。いろんな文化祭公演があるんだなぁ…。
ぱっと会場に入った時,会場がひんやーりしていて&しーんとしていて,(静か……。)と思ったのです。客入れ音楽掛ければいいのにーって。でも掛けてない理由が自分の中でわかりました。そっか,大会は客入れ音楽とかないものね…。

それが良い悪いじゃなくて,カチカチっとしていて新鮮!ということをお伝えできればと思います。はい。


そして私は前回の県大会のときに,特に気になっていたキャストさんがいたのです。
『平成二十六年度のカルメンシータ』でルシータさん役だった方と,美佳さん役だった方。

なんとーーーーー!

今回お二方ともスタッフさんでしたーーーーーーー!!!(;∀;)ざんねーーーん!

開場待ちしているときに美佳さん役だった方とふぁ~ってすれ違ったんですが,明らかに裏方っぽい格好で(おやおやもしや!?)と思ったのですが,そのもしやでした…。舞台上で発見したかったです…。でもキャストさんもスタッフさんもできちゃうなんてすごいなぁ。

そうそう。パンフレットの中身がすごい充実してました。上田東さん!

こちらもA3両面刷りで,ぺらりとめくると見開きで班員さんお一人お一人のお写真&コメントが…!なんて豪華!そして班員いっぱい!キャストが9人で,みんな高校生の役だったので,写真付きなのは本当にありがたかったです。今も見ながらキーボード打ってるんですが,すごく書きやすいです。笑
パンフレットってその学校の個性や本気が伝わってくるので,見たり読むの大好きですー(^^)


さてさて作品の方へ。

私,このタイトルはずーっと前から知ってたんですけど観たことはなくて。ついに!という感じでした。
週休2日だの土曜休みだの言ってるので,舞台は2002年くらいなのかな。中高生からするとかなりの生活の変化だったなぁ(経験者は語る)。
そうそう。『夏祭り』で一躍有名になった(当時)女子中高生バンドWhiteberryの曲で「ときめきラブコール」という曲があるんですが,その中に“第2土曜日”って単語があって。第1,3,5土曜日は半日授業があった小学校時代を経た私が聴くと,甘美な響きがしたものでした。はいそれは置いといて。

(そう。時代は2000年代前半なのですよ。なのでスマホを持ってた湊くんなんかは,ずいぶん未来からやって来てしまったな…と思いました。笑)

開演して最初の一言目ってすっっっっごく大切だなとどのお芝居でも思っているんですが,度肝を抜かれました。
超通る声がしたから!!!!!「ごめーん!」って。
声ってやっぱひとを惹きつける力があって,ついつい声の主を目で追ってしまうのです…。真澄ちゃん役の方,すごいインパクトがありました。しかしパンフレットを確認すると1年生さんではありませんか!良い人が入ってきたな上田東!笑 いやーこれからが楽しみ!

他に1年生さんで言うと舞ちゃん役の方も素敵でした…。マイワールドにすぐおでかけしちゃう人,素敵…。やきそばコロッケパン?コロッケやきそばパン?のくだりはちょっとたどたどしく感じちゃいましたが,身のこなしとか髪型とか含めて良かったです~。

あと『カルメンシータ』でへにょへにょな店長布施くんを演じていらした方も出ていたのですが,ずいぶん立派になって…。親戚のおばちゃんのような気持ちになってしまいました…。(注※舞台のキャラクターとキャストさんご自身のパーソナリティは関係ありません。笑)こなれたお芝居というか,落ち着いたお芝居ができるのはやっぱり3年生さんだなーと感じました…。

あとあと同じく『カルメンシータ』でシングルマザー(だったっけ?)を演じていた方は,やっぱり詩帆ちゃんのようなポジションが合う方ですね…。おおらかと言うか,ちょっとお姉さん的なところと言うか。そういう役柄が合う方だな~と思いました。


このお芝居は讃岐弁で書かれているみたいです。方言ってもう一種の外国語だと思うので,よくこれに取り組んだなーと思いました。私は讃岐弁のバイリンガルではないので「こんなふうに言わない!」とかわからずそのまま聞き流していましたが,瀬戸内のほんわりした感じが良いですよね。讃岐。

方言が体に染み付くまで大変だろうなと思うんですが,せりふの出は必要以上に丁寧になってしまったかなという感じもありました。全部しっかり聞いて,しっかり出すというか。でも会話劇なので,普通に教室で飛び交っている会話は,果たして本当に最後まで相手の言葉を聞き終えてから返答してるかな?というのは疑問かもしれません。もっと相手の話を遮ることもあるだろうし,あと複数個所で同時に会話が進むというのもあると思うんですよね。ほとんどのせりふがモノラル放送というか単回線になってたので,もうちょっとステレオ放送というか副回線があっても面白いだろうし,自然かなーと思います。


これは演技や演出の話ではなくて脚本の話になっちゃうと思うんですが…,いや私の集中力の問題かもなんですが…スドエリちゃんとカナマイちゃん,気づいたら仲が戻って手をつないではける!みたいな感じになってて,(あれなぜどーして!)と思っちゃいました。スドエリちゃんが振られた話からぽーんと「どこそこに一緒に行ったよね」みたいな話に飛んだ気が…。あぁー,でも,その会話がダイレクトに仲を戻すというよりは二人に何かしらの心情の変化があってまた手をつなごうという気になっていくのだとしたら,それは演出あたりの話になるのかな。とにかくちょっと唐突感が私にはありました。(とか言ってちゃんと私がキャッチできてないだけだったら恥ずかしい…)


演出の話で言うと,距離感とか関わり方の温度の差とか,言葉で出てこない人間関係があぶり出されるのが面白い本だと思うので,そこがもっと見えるといいなって思います。パンフレットの「あらすじ」には“仲が悪いようにみえて本当は仲がいいのか謎の二人の女の子”って文があったと思うんですが,あれだと明らかに悪くて,よさげな要素が見えなかったんですよね。もっとカナマイちゃんは無邪気…というか,今彼が振った相手だとしてももう少しフレンドリーに接すると,スドエリちゃんの(みんなの前だしとりあえず当たり障りなくカナマイと接しよう…)みたいな温度とギャップが生まれて良いのかなー…なんて。


はっ。あと舞台装置の話もすると,黒板がきちんと書ける黒板だったから良かった!教室が舞台の作品でも黒板を含めるとイマイチ使いこなせていない作品も中にはあるけど,「すき焼き」とか…。笑 でもせっかくだから,中野さんあたりがみんなに指示出すときなんかに使っても良かったかも…。
そんでもって出はけが全部上手からなのだけど,センター寄りで観てもパネルが見切れちゃってて役者さんの袖~パネルの出入りが見えちゃったのがもったいなかったですー。逆に使わないなら下手のパネルはなくても良いのかなと思うので,もう1枚上手に持ってきてもよかったのかなーなんて思いました。


そして一番最後の曲が,こう言ってしまうとアレなのだけど,なんだかスーパーで掛かっているような音楽に聞こえなくもないなという感じがしたので,もうちょっと探してみても良いのかも…!


いろいろだだだーっと書いちゃいましたが,上田東さんの穏やかな雰囲気が素敵な舞台でした!なんとなくの想像で思うことですが,演出を担当された方の雰囲気が舞台にも出ているなーという感じがしました。
あと1年生の方が多く出演されていましたが,会場が小体なのに声がしっかり出ているキャストさんが全体的に多くておぉっ!っと思いました。変に癖がないせりふを出せるって大事だなーと思います。
3年生お二人の引退を見守ることもでき,ここまで来てよかったですー!

あと一つ欲を言うなら,公演後にメッセージボード…だと,一度に複数人が記入するのは限界があるのでアンケート用紙があると嬉しいなーなんて思いました。

上田東のみなさん,温かい舞台をありがとうございました。お邪魔しましたー!

長野県屋代高校演劇班 第59回鳩祭公演『A・R-芥川龍之介素描-』

(鳩祭公演パンフレットより。演出は生徒さんなので念のためお名前を伏せました。)

@長野県屋代高校342教室

作:如月小春
出演:長野県屋代高校演劇班

長野東と上田東の間に行こうと決めた2校目の学校は,屋代!
私の中で屋代高校といえば…

①私が中学生のときにネットでやりとりがあった学校!
→「屋代大作戦!」という名前(確か)の演劇班webサイトが当時あって,そのサイトさんと私のwebサイトで相互リンクさせていただいていました(相互リンクという単語がもはや時代ですね)。屋代の管理人さんは,後に私の母校となる高校への進学を本気で考えたことがあったそうで,長野県広いな遠いなと思ったものです。あと屋代のwebサイトのURLの一部が“846”で,ステキ!と思ったものです。

②昨年小川幸司先生作の『南京の早春賦』をやった超チャレンジャーな学校!
→県大会と関東大会を拝見し,2000年代のあの頃を懐かしく感じたものです(県大会の感想はこちら,関東大会の感想はこちらからどうぞ)。

そんな屋代が今年は『A・R』ですって!?
なんてカサハラホイホイな学校なのでしょうか!

『A・R』はその昔……ちょうど12年前,『南京』初演と同じ2003年に長野県田川高校演劇部が文化祭公演として上演したことがありました。そして私はそれを観ました(感想はこちら)。
この年の田川は超すごいことをしていて,文化祭一般公開の2日間で,2作品3チーム4公演というとんでもない公演を打ってました。1作やった1,2時間後くらいに別作品をやるという,今思うとすんごいスケジューリング。なので舞台セットは両作品ともだいたい同じで,どっちも観ると舞台装置の使い方の違いを感じられるという,観客としてはなんとも興味深い公演でした。

そして私の記憶が正しければ,屋代の顧問の先生,前任校でもこの作品やっていらっしゃる…。(違ったらスミマセン。)
きっと先生的には思い入れのある作品なのかな!
いろいろもろもろコミコミで,屋代版『A・R』,なんだか気になる!

…ということで,行ってきました屋代高校!

鳩祭のパンフレットを元に会場の3棟4階を目指したのだけど…
とっても良心的!あっちこちに「342教室はこちら」って札が貼ってあって,階段の窓ガラスにも「あとちょっと!」とかって紙が貼ってあって,来てほしいオーラがすんごい伝わってきました。

環境の良さにもびっくり!文化祭は騒音と吹部軽音とアナウンス放送との闘いだと個人的に思っているのだけど,3棟の4階は演劇班以外に使っていない…!!!!!騒音,ない…!!!!!すご~…(゜д゜)と思い教室の前に到着!

パンフレットにも壁や窓ガラスに貼ってあるチラシにも開場時間が書いていないので早く来過ぎてしまいました。まだ最終ミーティング的なことをしている最中だったようで,いろいろ聞こえてきたので華麗にスルーしておきました。笑

開場して「奥から座ってくださーい」と案内されたので,はーいと思って客席のはじっこに座ったら,失敗…!
座ったお向かいにも客席が!あぁぁすいません!と思ったのですが,そのままそこにいさせていただきました。奥ってお部屋の奥のことだったのですね…。
…そう!つまり対面式の客席だったのでした!面白ーい!
面白いのは客席だけではなくて,照明もいっぱいですごーい!
ミニ照明用の吊り台的なものがあったり,直置きの照明があったり,なんだか種類がいっぱい!凝ってる!!
そして客席の横には役者さんのスタンバイ場所になるであろう椅子がいくつかと,衣装が置かれていました。本編では使用されませんでしたが,小道具を収納してる箱がアッ○ル社の物で,あら(-ω-)と思ったり。笑←このときは,そこにあれば本編で使用するものだと思って見てたので…。

あとは音響席と照明席で合わせて4台くらいパソコンがあって,こんな時代なのかぁ~としみじみしながら待ってました。


さてお芝居の話に…。

懐かしいような,初めて聴くせりふのような…(・ω・)
『A・R』のもともとのボリュームがわからないので,田川版も屋代版も多少切ってあるのかなとは思うのですが,それでも12年前に聴いた覚えのあるせりふが出てきて,うぉーってなりました。笑
「逃げましょうか,一緒に」とか。キターッ!!てなりました。笑

昨年度の『南京』に出ていらしたアデラ役と由美子役の方はばっちり覚えていたので,特にこのお二人を追ってしまいました。アデラ役だった方,やっぱり憑依系の役者さんだなと再認…。男性役だとかっちょよくなりますね!パワフルな役が本当に合う方だなーって思います。そしてせりふも以前より聞き取りやすくなっている気が…!(でも編集者の時に着るジャケットはちょっと大きくて気になりました。作家にも着せるから,余計でかさが際立ってしまいました。)

あと今回特に素敵☆と思ったのは,兄役の方!1年生ということで高校演劇デビューされたばかりだと思うのですが,この方の目が,良い!!!この方は横顔でも目で演技できてるのが見えて,ちょっとトリハダものでした。すごい…。この先が楽しみな役者さんです…。

ただ全体で残念だなーと思ったところもあって。まずは声。
昨年の7月にくちびるの会『旅人と門』という作品を観た時に,箱に合わせた声量って大事だなーと思ったんです。箱に対して過剰に大きい声だと,(すいませーん,私この距離にいまーす(・_・)ノシ)と思ってしまいます。どこに届けたいのかな?って。置いてきぼりにされてしまった感じ。
大きい声が出せるのは大切なことです。特に大会やホールなんかでは聞こえないと話にならないし,重視されると思います。でもお客さんとの距離を測って声量をコントロールできるのも技術のうちなんじゃないかなと感じました。
…というか!せっかくの教室公演なんだから!ささやき放題だと思うのだけど!なんだか声張りまくりの一本調子で,ものすごくもったいなかった感がしますー!どことなく2000年代前半の松本深志を彷彿とさせる声の出し方に,屋代全体がなっている気がしました…。

次に残念だったのは,役者の立ち位置!
対面式の舞台にするならば,どちらから見えても面白い画になるべきだと思います。
がっ,明らかに(あ,あっちが表なんだな。大会にこの作品持ってったらあっちが客席だな)と思えるつくりになっていて,裏(だと思われる側)にいた私はしょんぼりしてしまいました。対面なら多少見えないのは我慢せざるを得ないと思えますが,特定の人物が毎度毎度背中だと,なんだか寂しいですな…(逆に別の特定の人物は毎回こっち向いてる)。だったらもう対面とかでなくて良いから,一方向からしっかり全体を見たかったなーなんて思いました。演出さんが兼キャストだったので難しいだろうなとは思うのですが,例えば音響さんや照明さんが見てあげるとかできると良いのかなー。
あとストーリーテラーっぽいせりふを出すひとのほとんど(妻とか)がその場に棒立ち!ということが多くてもったいなーいと思いました。対面式!対面式です!せっかく物語を回すせりふを出すのだから,聴かせるせりふを思い切り聴かせても良いんじゃないかなーとか思います。話しながら舞台をぐるっと一周回るとか。ずっと客席に視線投げっぱじゃなくて狙って向けるとか。そういった観客をはっとさせて巻き込むような工夫があると,一層のめり込めたかなと思いました。

さらに残念というか惜しいと思ったのは,狙いはわかるけど!というところ。
小道具のろうそくをつけたは良いけど,ただ持ってるだけでせりふが終わるとろうそくの出番もおしまいとか…(え,それだけのために!?)と思ってしまうところがちょこちょこあって,もう少し別のことにも使えると小道具を使ったことになるだろうな~なんて思いました。あとたった数行のせりふのために着替えたり。うぅーん。やりたいことはわかるのだけど,もう少しスマートに行くと役者さんもやりやすそうだななんて感じました。

いろいろ書いて申し訳ないのですが,先週今週と何校かの文化祭公演にお邪魔して,表情の変化が乏しい方がたくさんいることに改めて気づきました。せりふは出ているのにどうして薄っぺらく聞こえるんだ…って謎に思うたびに,(あー表情がついてないからかー)ってことに気づきます。まゆ一つ,口元ひとつ,目ひとつでそのひとの感情が見えたら,もっと表現の幅が広がるだろうな~と思います。屋代の皆さん,声は出ているのでぜひそういったノンバーバルな表現もできると素敵です!

そうそう。開場時から照明すごーいと思っていたんですが,やっぱりすごかった!
LEDの照明を高校で持っているなんて!一台でいろーんな色が出せて,なんて時代は変わったのだろうと感激しながら光を見つめてしまいました…(笑)。でもLEDだと,つくか消えるかなんですね。細かいフェイドアウトやインはできなくて,そこはその子の限界なのだとも見ていて思いました…。
あと天井に布吊ってあるな~とは思ってたんですが,そこにプロジェクター投映するとは!時代だー!笑   歯車ぐるぐるが素敵でした…。

カーテンコールもとても丁寧で良かったです(「夏服の男」は「夏服の男」として,考える楽しみをお客さんに委ねても良かったのかなと思いましたが…)。
そうかぁ。妻役の方はこれで引退なのですね。…あっ。妻役の方。お芝居始まる前にひじのあざが見えて(稽古激しかったんだなー)と思っていたんですが,まさかの階段落ちがあったのでこれか!って思いました。笑 階段を転げ落ちたことで,なんだか良秀の絵が立体的に浮かび上がったみたいで,あそこはインパクトありました。…はっ。脱線脱線。妻役の方,由美子や関東大会の運営含め,お疲れ様でした。3年生はお一人のようなので,その分いろいろ大変なことも多かったかと思います。引退公演を拝見できて良かったですー!


なんだか残念残念といっぱい言ってしまった気がするけど,せりふの出や滑舌などなど『南京』からの伸びが確実に見えた作品でした!素敵な1年生も入班(と呼ぶの!?)されので,今後が楽しみな学校です。またカサハラホイホイしてください。笑
屋代のみなさん,お疲れさまでした。お邪魔しましたー。

Saturday, July 4, 2015

長野県長野西高校演劇班 第56回梶の葉祭公演『銀河鉄道の夜のような夜』

(梶の葉祭公演パンフレットより)

@長野県長野西高校梶の葉ルーム

作:ラーメンズ
出演:長野県長野西高校演劇班

この週は,土曜の午前に北信の長野東,日曜の午後に東信の上田東に行くことは決まっていました。
間の時間をどう過ごすか!と考えた時に,頭の中の会議で(そうだ気になる高校へ行こう)ということになり,その一校を長野西に決めました。

個人的に,長野西は今長野県で一番アツイ(熱い・厚い)学校だと思っているのと,私が現役のときに超お世話になった副顧問の出身校なので行ってみたーい!となったのです。

長野西といえば9年前に『めぐるめぐる梶の葉たち』という長野西をモチーフにした作品を作っていて,関東まで進んでいた学校。断片ですが今でも覚えてます。
でも近年は地区大会に出ていなかったみたいです。その理由っぽいものがわかりました。

班員さんが2人…!
と,お手伝いで1人…!

しかも今年は新入生さんが入らなかったようです。800名を超える長野西高生がいるのに!それぶんの2って!!!
いろいろご苦労がおありのようです。


しかし今年から新しい顧問の先生,新しい教頭先生…!(教頭先生,多分班活動指導にはあまり絡まないと思いますが…。でも厚い!)


どんなかなーと思ってお邪魔したのですが…



すっごい集客率!!(゜ ゜)



教室公演だから人数にしたら少ないのかもしれないけど,客席埋まってる率で見るとかなりのもの!班員2人じゃないの!?なんでみんな集まって来てるの!?集まってるならその勢いで入班(と言うのかしら?)すればいいのに!!!

…という想像がばばばばっと浮かびました。笑
いやそれくらい人が来ていたのでびびりました。



なのですが。




まさかの。





開演して15分で終演。








うそーーーーーーん!!!!!(゜∀。)!!!!!!








いやいやいや。

事情はわかるのですが,

でも15分ですかー!?というのが正直なところでした。

お笑いライブじゃないからね…。演劇班の公演だからね…。せめて最低30分はパフォーマンスがあっても良いのかなと思います。2人で一緒に稽古が難しければ,例えば朗読とかでも良いと思います。

(めっちゃ余談ですが,その昔,劇場でバイトしてた頃のこと。とある女優さんが前売りを開始する前に降板してしまって,その作品の上演自体が流れたことがありました。でも枠としてはその作品用に1ヵ月劇場を貸しているから,そのカンパニーは作品を変えて,いろんな役者を引っ張ってきて朗読劇をやった…というのがすごい印象に残ってます。同じ俳優さん女優さんが1ヵ月まるまる出演することはスケジュール的に無理だから,20人の役者が日替わりで出演してつなぐ…みたいな。朗読作品は全部同じもので。降板決定から替わりの公演が決まるまでが超早くて,あのカンパニーすげぇと思ったものです。笑)


でもさすがラーメンズ。作品自体は面白かった,はずです(;ω;)

はずですというのは…

キャストさんおふたりの滑舌があまりクリアでなくて,面白さが伝わって来づらかったから…。

残念!とても残念!言葉で笑わせるのに,言葉が届かないなんてとても致命的!

キャストさんおふたりとも,さ行が弱いのかなーなんて若干分析しながら聞いちゃいました。すみません…。だけどそこがなってなかったら,早口で言われたときはもうお手上げになっちゃうと思うのです。あぁもったいなかった…!

あと滑舌プラス,表情筋があんまり動いていない気がして,ここももったいなかったポイントのひとつです。くちびるの周りはもちろん動いているのですが,ほっぺたとか,口の縦横の動きとか,あんまり見えなかったかなーと思います。なかなか地味でつらい稽古だとは思いますが,明瞭に聴こえたらもっと楽しく見られるんだろうなという期待を込めて…。


いろいろな事情がわからないまま言いますが,せっかく班として活動されているし,地区大会にぜひ戻って来てもらいたいなーなんて思いました。私北信のひとでもなんでもないけど。でもやっぱり他校の存在って刺激になるし,戻ってくる学校があると地区全体も元気になりそうだし!

それこそ昨年の長野県木曽青峰高校演劇部『砂漠の情熱』みたいに2人で40分くらいのお芝居…でも全然良いと思うのです。今回はコントだったけど,ちゃんとお芝居をやっているおふたりをぜひ見てみたいなぁと思います。そうそう。おふたりはキャラの棲み分けができている感じで(笑),どちらも舞台映えする方だったので!ぜひ舞台で観てみたい!そう思います。

いろいろ書いちゃいましたが,今後の長野西さんに期待しています!
以上であります!

長野県長野東高校演劇部 第42回東雲祭公演『カタイジ』

(東雲祭公演パンフレットより一部掲載)

@長野県長野東高校第2体育館

作:高場光春
出演:長野県長野東高校演劇部

先週は南信におでかけした私ですが,そもそも今年度母校以外の文化祭に行こうと思った最初の学校は!この!長野東高校さんなのです!!!

このブログやらTwitterやらで何度も何度も述べていますが,昨年の長野県大会で本当にぐっとくる舞台を作っていたのです,長野東さん。(そのときの感想はこちら。)
私のこの砂漠のような心の中にも,まだオアシスが残っていることが実感できました(;v;)笑

関東大会でこちらの部員さんに直接お会いすることができたのですが,もう感動して泣きそうになっちゃったくらいで。←重症。

(今の(関東当時の)2年生の皆さんの,最後の文化祭公演に行きたい…!)というスイッチが入り,2月に宣言してから5ヵ月。はくたかに乗ってぴゅーっと長野まで行き,長電バスでどどどーっと高校までお邪魔して,公約を果たして参りました。


こ,公演パンフレットが豪華A3両面刷り…!
しかも中は2008年から昨年までの公演の写真がずらーり!

すごーい!毎公演こんなにしっかり写真で残ってるなんて!
(←私は2000年代半ばのニンゲンなので,携帯のカメラなんてせいぜい待受サイズが限界で,デジカメ持ってる人もほっとんどいなかったから。残ってたら超貴重でした。)
裏も外部公演の写真だったり次回の大会の日程だったりが載ってて,パンフレットだけど広告にもなってるからすごいわーなんて思いながら読みました。
あと肝心のキャストスタッフのところは,ぴちっと文字の…インデントって言うんだっけ?文字の出だしが縦にちゃんと揃ってるからとても良かったです。こういうのすごい気になる人なので。笑


そして開演前…。
演出さんの前説の第一声がすごいびっくりしました。びっくりというか(なんて良い声!)って思って。
こんな素敵なひとが裏方さんなんて…。もったいないというか贅沢というか…。そんな気持ちになりました。

あ。そうそう。パンフレットの話に戻るんですが,びっくりしたんです。パッと見て。部員さんは16人くらいいらっしゃるのに,キャストが5人だったから!
部員が多ければキャストも多く…が正解とは思わないのですが,昨年度に部員全体のほぼ限界の数までキャストで出演されていた作品を観ていたので,このギャップに驚きました。役名を見ると全員女子なので,この作品が選ばれた時点で男子部員は出られないし。覚悟というか,長野東の挑戦してくる姿勢がパンフレットから伝わってきました…。(なのでリアルカタイジがあったんじゃないかとか勝手に想像している。←)

お芝居の話に移って…。女子高生のギスギスした感じがとっても魅力的でした…!(ほめてる。)思わず自分の高校生の頃を思い返してしまいました。
高校とか中学とか,そういう枠がきちっとしてる環境の先輩後輩同期の関係って変なところで濃いし,必要以上に侵襲的だし,独特だなぁと思います。私は大学時代は部活じゃなくサークルでそういう関係のひとを作ったので,あとになって当時はガチガチしてたなーと気づきました…。。多分高校とか中学3年間を振り返るときに,部活が良かった悪かったって評価は,引退までの成果というよりも人間関係によるところが大きいんだろうなーとも感じました。

演劇部のひとたちが他の部活のひとを演じるってどうなるんだろうーと思ってたんですが,なんか水泳部って身体接触の面では演劇部に近いものがあるなーとも観てて感じました。身体接触というか,他者の体の扱い方…?距離感??

個人的に,演劇部なんて男女の境があるようでないに近いし,サラシ巻くキャストがいたら誰かが手伝わなきゃだし,早替えとかも手伝えるならしなきゃだし,恥とかそういう次元じゃないから!…と思ってて。水泳部もきっと「体型が…!」とかそういう次元じゃないし着替えとか一緒にするだろうし…。他者の体に触れていいかとか,これだけ寄ったら相手が気にするなとか,そういうものへの抵抗が低い部活なんじゃないかなーとふと思いました。(例えば剣道部とか柔道部だったら,なんとなく気安くぺたぺたできないと思う。)そういう意味で,みんなが蚊帳にきゅっと集まるところとかくっちゃべってるところで後輩が先輩にすりすりすり寄ってくるところから,個人対個人の関係に加えて部全体の雰囲気みたいなものも伝わってきたように思います。

キャストが5人というだけあって,一人一人が個性的でとっても素敵でした…。(あ。超どうでもいいけど,久子ちゃん以外の4人の名字ってセーラームーンみたいだな…。笑)
どの世代にも集団にも自分なりの正義を持ってるひとっていると思うんですが,この中だと特に澄香ちゃんなのかな。寿命で死ぬのとベープで死ぬのじゃ違う!みたいなあたりとか。そうそう。正義というか一人一人にとっての「これが良いだろう」と思うことって違って,そのすれ違いが面白い本だなーって思いました。久子ちゃんだったら虫よけのためにベープとかスプレーとか,陽菜ちゃんだったら蚊帳とか。それが他者にどう影響を与えるかとかそういうことは考えなしに自分の思うところを出していくあたりは10代後半の高校生っぽいなぁなんて。

でも本のところで言うと,最後に久子ちゃんがぷつぷつ言ってるなーと思ったらもう幕!みたいになちゃった感じもして,(あらっ!?)って思っちゃうところもありました。もうあれ以上話は進められないとは思うのだけど,唐突感がなくもないというか。なんだろうか…。演出で何とかなる問題なのだろうか…。
いやでも久子ちゃんの本音が出てくるのが終演間際すぎる気がして,それで私の気持ちの収拾がつかないまま終演になっているのかもしれない…。うーん…。

はっ。そういえばパンフには衣装さんやメイクさんが個人名ではいなかったけど,みなさん見た目が良かった!水泳部っぽくてよかった!赤ってリーダーの色…って訳じゃないけど,茜ちゃんがさらっと着こなしていてさすがですと思ったのと,久子ちゃんが長袖なのも蚊対策なのかなーと思ったのと,陽菜ちゃんの黒髪&前髪ぱっつん&三つ編みが不思議ちゃんオーラたっぷりで素敵だったー!(ほめてる。)
風花ちゃんと澄香ちゃんは黒黒で若干かぶってると思ったけど,でも一人一色テーマカラーとか作っちゃったらいかにもっていう感じがしちゃうので,これはこれで良いのかな。(なんか本当に茜ちゃんと風花ちゃん役の方は普通に水泳部にいそうな見た目で素敵だった…。)


今年は1年生さんがたくさん入部されたと聞いていたので雰囲気も変わってるのかなーと思ったんですが,キャストの面も演出の面も3年生の方ががっちり固めていたので安心して観ることができました…。やっぱり3年生って厚みというか安定の度合いが違うなぁと久子ちゃん役の方や茜ちゃん役の方を観て実感しました。

そう,キャスティングがとても良かったです…。
身長や見た目含めて,すごく自然でした。(これ,後輩役が実際は先輩とかあるのかな)とか思いながら観てたんですが,どうやら実際の学年とキャラクターの学年がほぼ一致していたようなので,そこも自然に見えた要因のひとつになったのかも。

大会に持っていく作品だと思うので,ここからどう詰めていくかが楽しみです(・v・)
会話で人間関係をあぶり出すお芝居って実はすごいムズカシイだろうなーと思いつつ…
せりふは出てきているので,目とか表情とか,ノンバーバルな面が見えるともっと面白くなるだろうなーとか,
口が横開きになりがちな方は縦も意識していけると声がもっとクリアになりそうだなーとか,
せっかく部屋の外の演技があるなら,もっとお芝居をそこまで引っ張ったり,逆に廊下からせりふ出して注目させてから入室してもいいだろうなーとか,
もっと初めて見るもの(部屋の約半分を占領している蚊帳どーん,とか)にハッとする瞬間が見たいなぁとか,
下手の階段いいなーとか,
最後の一人一ランタン(?)がきれいだなーとか,長野東っぽいなーとか,でもちょっと取ってつけた感もあるなーとか,
最後の音響ちょっと長かったなーとか,
蚊帳の中で4人がうちわパタパタしてる姿が蚊のように見えて(?)かわいかったなーとか,
いろいろ思いました…(´∇`)

思ったままつらつら書きまくってすみません…。
年度や作品が変わっても,長野東さんのベースの力をしっかり感じることができました。
OGさんもいらしていたようで,いいなーって思いながら会場を後にしました。
先週飯田高校にお邪魔したときも思いましたが,その学校のホームにお邪魔することで,より一層その学校らしさを感じることができました!
あとやっぱり大会も大事だけど,文化祭公演っていいなぁ。私は高校演劇には文化祭公演で初めて触れたので,原点に返れる気がします。笑

長野東のみなさん,お疲れ様でしたー!地区大会のご成功をお祈りしております!

+++

2015.7.7補足
作品にも何にも関係ないところでつけたしなのですが,アンケート用紙のことで。
アンケートって大きく分けて選択式(はい・いいえとか,よくあてはまる・全くあてはまらないとか)と自由記述式(ご自由にお書きください)に分かれると思うのですが,全部の項目で自由記述だと文を考えたり書いたりで時間がかかってしまうので,可能なところは選択式にできるとお客としてはありがたいなーと思います。
(たとえば音響照明舞台装置あたりはとてもよかった~普通だった~全くよくなかったみたいな5段階で聞けるかな…?)

Thursday, July 2, 2015

マームとジプシー『cocoon』


@東京芸術劇場

原作:今日マチ子「cocoon」(秋田書店)
作・演出:藤田貴大
音楽:原田郁子
出演:青柳いづみ/菊池明明/青葉市子/小川沙希/花衣/川崎ゆり子/小泉まき/西原ひよ/高田静流/中嶋祥子/難波有/長谷川洋子/伴朱音/吉田聡子/コロスケ/石井亮介/尾野島慎太朗/中島広隆/波佐谷聡/飴屋法水

生涯忘れることのできない舞台に出会いました。

2013年。この作品の初演の年。
公演があることは知っていましたが,この年は個人的にとても忙しく,自分で積極的にチケットを取ってお芝居を観に行くのが難しい時期でした。年末に新聞各紙や劇評なんかで「演劇界の事件」と書かれているのを読み,見逃して後悔したことを覚えています。
だから再演を知ったときは絶対観よう!と思って頑張りました。


なかなか文章にするのが難しいお芝居なので,余談(?)から…。

今回は映像のスタッフさんとして作品に参加されている召田実子さんに,終演後お会いしました。

召田さんは私の高校の部活の先輩で,じっこ先輩と呼ばせていただいています。実は3つ年が離れているので一緒に同じ作品を作ったことはなくて,先輩が高校を卒業された翌月に私が入学しました。
それでもじっこ先輩は私のことを知っていてくださいました。なぜなら私は中2のときから自分が観たお芝居の感想をネットに上げていたので,じっこ先輩もそれをご存知だったようで…。
さらにOGとして何度か高校にいらしたこともあり,先輩と同じ係になった私のことを気にかけてくださっていたのでした(と思っているの…)。

私が上京してからは,マームとジプシーの旗揚げ公演『スープも枯れた』やFUKAI PRODUCE羽衣の『あのひとたちのリサイタル』なんかを拝見したことがあるのですが,先輩にお会いできるのは本当に久しぶり。
いきなり来ちゃったし,もし先輩が私のことわからなかったらどうしよーう!と思ったのですがそんな心配無用で,私が高校生のときに会ったまんまの先輩がロビーに出てきてくださいました。

うまく表現できませんが,じっこ先輩の にぱっ という笑顔を見たら,『cocoon』を観て感じていたものがぶわーっと出ちゃって,数年ぶりに再会するなり号泣するというアクシデントが…。笑

泣き止みたいのに止められない私のあたまを,じっこ先輩は何度もなでてくれました。先輩の方が身長低いのに。それが余計に情けなくて,さらに涙出ちゃうという…。←
マームとジプシーのマームって,じっこ先輩のことを言うんじゃないだろうかと本気で思いました。


そんな,涙出ちゃうような作品でした。
沖縄のひめゆり部隊をモチーフにした漫画の同名作。
キャッチコピーみたいな感じで,フライヤーやwebに「憧れも,初戀も,爆撃も,死も。」と書かれているのだけど,まさしくこれがぜーんぶ詰まっていました。
本当に,よくこの作品を作ったな…と率直に思いました。舞台化しようとか,こう作ろうとか。藤田さん,本当にすごい劇作家です…。しかもやり残した感じがあって今回再演されているようなのでさらに。私は原作の漫画は読んだことないですが,この作品に向き合うには相当な覚悟が必要だと思うので。

そうそう。藤田さんは象徴するシーンのリフレインを別角度から見せる映画的な手法を特長とされているようで,確かに以前拝見した舞台もそんなふうになっていた気がします。ただ当時の私はそういうものに見慣れていなかったりリフレインが織り成すものの意味をうまくキャッチできなかったりで,あまりそれを魅力に感じられなかったのです。

でも今回はそのリフレインがとても素敵で,いとおしくて,かけがえのないもののように感じました。「今はいつなんだろう」みたいなせりふがあったと思うんですが,時間軸を超えるという意味でこれがとっても効果的だったというか。
廊下で先輩と後輩があいさつしてすれ違うとか,今日帰りに甘いもの食べて帰るとか,掃除さぼってどうのとか,そういった日常的すぎてある意味「どうでもいい時間」の積み重ねの中にちょこちょこっと戦争という非日常が挟まってきて,いつしか日常が奪われていく。「どうでもいい時間」が本当はとてもいとおしくて,かけがえのないもので,キラキラまぶしかったことが,あとになってわかる。繰り返しの中から,そんなことがじわじわと滲むように伝わってきました。

あと,すんごい動くんですよねこの舞台。役者さんが。息切れないの!?っていうくらいノンストップ。「止まったら死んでしまう」と表現されることがあるけど,あの女の子達もキラキラが止まらなくて,はじけるように舞台上を生きていたのかな。
でもゴム跳びとか本当にすごいと思うのだな…。舞台転換というか場が換わるときにいちいちゴムをぴよーんと2,3人が跳んでいて,鮮やかすぎた…。引っ掛かったりとかしないのだろうかとか思って観てました。笑

ガマでの活動中のシーンは,カオスすぎてちょっと気持ち悪くなりました。でもこれがあの子達が味わったものなんだろうとも思いました。
男の人達の「学生さーん!」がインパクト強くて,観劇して2日くらい置いてこの文書いてるんですが,それこそうじ虫のように耳にこびりついてます。
そうそう。ガマのシーンは声にエコーがかかっていたので驚きでした。そんな,リアルタイムでエコーかけられる仕組みがあるのですね。舞台で。現代の技術すごいなぁ。

音声といえば。途中で爆撃音が入るのですが,それが地響きのようで客席が揺れました。こんな音響体験は初めてで,本気で五感に訴えてくる舞台だなぁと思いました…。

あとその,場の転換が鮮やかでうわぁ~って思いました。
木枠で場がバンバン換わっていくのですが,私だったらあの操作やれる自信がない…。皆さんの空間認知の力がスゴイ!って素直に思いました(笑)。
本当に平面の木枠を,立てたり床に置いたり回転させたりで空間を仕切っていたり,ベニヤっぽい板に切り込みを入れて→それを組み合わせて棚なんかにしちゃうあたりは予算が少ない高校演劇とかでも使えるのでは…なんて思ったり。あたまいいな,あれ…!

流れに身を任せ…,さらにせりふのことなんですが,先日平田オリザさんの「わかりあえないことから  コミュニケーション能力とは何か」を読み,マイクロスリップが入ることで人間らしくなる…みたいな情報を得ていたのですが,藤田さんのホンってすごいこのマイクロスリップだらけということを再認しました!
私が初期のマームに馴染めなかったのは,逆にこれが新鮮だったんじゃないかと思います。でも「あれがそれして」みたいなせりふ,今聞くとすごーく人間味を帯びてるなぁと思います。
藤田さんがどこまで平田さんの影響を受けてるかはわかりませんが,桜美林で繋がってたんだろうななんて連想をしました。

あと。この作品は,タイトルにもなっているからある意味当然なのだけど,''繭''がキーワードなんだろうなと思いました。サンは何度も何度も「繭が私のことを守ってくれた」と言っていたけれど,繭って人のことでもあるし,サンが思い描く空想の世界のことなんだろうとも思います。空想の世界を繭と呼ぶ作品は,昨年度高校演劇の関東大会に出場した千葉県立成田国際高校演劇部『繭の中』もそうで,この作品のことも思い出しながら観ました。
現実に直面していたら自我が崩壊してしまうのだろうな。生きるために繭が必要だったし,繭がなくなってしまったら生きていけないのだろうな。

まだ書くのかと自分でも思いますが高校演劇繋がりで…。
これも昨年度の関東大会で観た作品。長野県屋代高校演劇班『南京の早春賦』のラスト!終わりよければ…みたいなまとめかたになっていて解せなかったのだけど,やっぱあのラストは理想の中の理想になっていて,それこそ「繭の中」で世界が完結しているのではと改めて思いました。はい。それだけです。


本当にただだらだらと書いてしまいましたが,私の心を貫きまくった作品でした。事件を,追いかけることができてよかった。原作も読んでみたいです。(今回の舞台,サンとマユ以外は役者さんのお名前がそのまま役名になっているのですね。これも時間を超越してそこにいたかもしれない感がしてきゅんときました…。)

東京公演が終わると全国ツアーが始まるようです。沖縄にはどんな風に受け止められるのかな。またきっと他とは違う空気になるのだろうななんて思います。


過去からしたら未来である今も,今から見た未来も,「偶然」が起きない時代にしなくては。