Sunday, November 2, 2014

第31回長野県高校演劇合同発表会 長野県上田東高校演劇班『平成二十六年度のカルメンシータ』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@ホクト文化ホール

作:東出彩伍
出演:長野県上田東高校演劇班

上田東さんは2006年の県大会以来。伊那西や東海大三もそうですが,昔県大会に参加されていた学校が今もこうして出場されているのって,本当にすごいことだなーと思います。学校事情はもちろんそれぞれだと思いますが,全体の生徒数が減ったり,ある学年は人数が極端に少なかったり,廃部になってしまうことって,いくらでもあることだと思うので。

大会中の速報によると,顧問の先生の作だそうです。美須々の『B面セレナーデ』(県大会)でもちょっと書きましたが,先生が書かれる場合,作品に生徒を合わせるのか,生徒に作品を合わせるのかに分けられると思うんです。言い換えれば,自分のために書くのか,生徒のために書くのか。もちろんどちらかだけなんてなくて,「しいて言えばどっち寄りか」みたいな表現になると思うんですが,この作品は「生徒のため」なのかなーと観劇中から思いました。作品を通して,班員のみなさんに“○○を考えるきっかけ”みたいなものを提示しているように感じました。

私も今,一応社会人として働いておりまして,学生時代にはブラックなバイトもしてたりしてなかったり…。
なので(わかる…訴えたい気持ちわかる…。)とか思いながら観てました。笑

自論ですが,中学や高校で一番役に立つ・立たせるべき教科は公民分野だと思っています。世の中のしくみ,お金のしくみ,公的サービスのこと…生きていくにあたり,特に生活に関わる教科・科目だと思うんです。
でも,私が高校生だったとき,現代社会の先生も政治経済の先生も,誰も「雇用先で不当な扱いをされたときどうしたらいいか」とか,「本当にお金がなくなったらどうすればいいのか」について教えてなんてくれなかった。高卒で働くひともいた学校だったのに。
「自分で調べろ」と言われたらそれまでですが,それでも,引き出しの中身まで教えてくれなくていいから,困った時にどの引き出しを開ければヒントが見つかるのかくらい知っておかなければ,社会に搾取されてしまう…!

…そんなことを,学部3年の時に履修した公民指導法を通して考えていました。はい。公民指導法,本当に面白くて,一瞬教職も良いなぁと惑わされたくらいです。笑

奨学金も,進学したい高校生にとってはかなり身近な話題ですよね。私の職場の同僚は,今学部と修士課程の奨学金をダブルで返していて,完済まであと28年かかるらしいので(うぉぉ…)と思いました。生きていくのって,たいへん…。

さてさて脱線したので戻します…。

あ,でもやっぱり,この話は,「長期的なスパンで見通しを立てづらく,優先順位を整理した上での状況判断をしづらい主人公と,その特性によって巻き込まれる周りの人々の話」に見えなくもないな…と思いました。主人公の布施くん,下手したらオレオレ詐欺の実行犯とかやっちゃいそうなタイプだな,と…。(自分で綿密な作戦を立てたり下っぱに命令するタイプではなく,深く考えず,言われたままに行動していくタイプ。)
会社人間というよりは,会社の目標と自分の目標が混同してしまう感じ。他人から「かっこいいね」って言われたら,自分のことを「かっこいい」って思ってしまう感じ…!?例えばルシータさんに対しても,「優しくされたから好き」とか。
なので不当だとわかっていても,じゃあそれに対して対処できるかと言われたらそこまでのスキルがないので,なかなか現状を打破できない人なのかなという印象を持ちました。


あと,これは脚本の問題かな?と思うのですが,キャラクターが揺らぐんですよね…。

美佳は布施くんのことを結局どう思っているの?周りに冷やかされてその気になってるだけなの?って。言葉(せりふ)は出ているけど,常にちょっと“困った顔”で情緒が伴ってない感じがして,その場その場で言葉だけ出ている印象でした。

ルシータさんはバリキャリな感じで,会社のために働くよりも自分のために働くような人(だから会社をすっと辞められる)だなーっという感じで素敵でした。でも最初,仕事じゃなくてダンス衣装で出てくるときはもう少し「いい人」感を見たかったなぁと思いました。店員さんから椅子を出してもらったときに「ありがとう」と言っていたけど,そういうことではなくて,立ち居振る舞いとか,表情とかから,親しみやすさだとか,布施くんが惚れた理由がわかるような何かを見たかったです。あのままだと,布施くんの言葉と実際の姿が解離してるなーという印象です。
また,ラストでルシータさんが布施くんにコロッとなってしまいますが,帳尻合わせというか,(なぜそうなった!?)という気持ちになってしまいました。コロッといくまでのプロセスが見えなくて…。私はひとの心の動きっぷりを見たい人間なので,ここをもう少し丁寧に見たかったなぁと思いました。
あ。そしてスーツのルシータさんが銀行員のように見えてしまったので,もっとおしゃれスーツとか黒ストッキングとか,そういう衣装でも良いのかなと思いました。


講師の先生も仰っていましたが,貧血で倒れたひとをなぜ冷たい床の上に…!
倒れたら動かしちゃまずい場合もありますが,貧血なのでどうか畳の上で休ませてあげてください…。ここらへんは高校生ゆえの生活経験のなさみたいなものも感じちゃいました(身の周りで倒れる人がいないに越したことはないですが…)。


いろいろ書きましたが,ほんとによく高校生が居酒屋を舞台に芝居したなぁ~と率直に思いました。みなさん…行ったこととかあるのでしょうか?以前,知り合いの40代の主婦の方とお話していたときに居酒屋の話になり,「最近息子がよく食べるようになってきたから,ファミレスに行くよりも安上がりなのよね」と聞かされ,ドヒャー!と思ったものです。
あと,これまた個人的な話で,先月居酒屋に行ったら,接客してくださった店員さんが高校生でした。日曜の夜に…。生活のためなのか自由なお金のためなのかはわからないけど,カサハラさんはかなり衝撃を受けました。ちなみに場所は新橋(笑)。
でも,高校生にはあまりなじみのない場所だし(あっちゃ困るし),役作りや動きも含めて大変だったと思います。居酒屋の店員さんってほんとに動きが止まることがないので,ぜひ二十歳になったら観察してみてください。

作りこんだ舞台セット,暗転中の光が素敵でした。みなさん,ブラックな大人や会社に惑わされない大人になってください…。
上田東のみなさん,お疲れ様でしたー!

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