Wednesday, December 23, 2015

ナイロン100℃ 43rd SESSION 『消失』

(ナイロン100℃公式webサイトより)

@下北沢本多劇場

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:みのすけ/大倉孝二/犬山イヌコ/三宅弘城/松永玲子/八嶋智人

10年前にまつもと市民芸術館で観た『消失』。当時は周りが観るからじゃあ私もって感じで,モチベーションとしてはそんなに高くないまま観ていたんです。チケットの確保も他の人に任せていて,フラフラ~っと行った感じ。今思えばとてももったいない観劇だった。ケラさんのお芝居はその前の年に高校の部活でやっていたのを観ていたし,当時小学館から季刊で出ていた「せりふの時代」で『スラップスティックス』なんかも読んでいたけれど,ナイロンのお芝居を観るのは初めてで。あのポケモンのニャースの声を出している犬山犬子さん(当時の表記)がいる!というのは知っていたけど,でもそれくらいでした。しかも平日公演だったから,休憩なしの2時間45分のお芝居は疲れてしまって。案の定意識を飛ばしてしまい,この10年間ずっと後悔していました。

お芝居でオリジナルキャストがもう一度集まるということが,どれだけ大変なことか。
しかも昨年のものならともかく,11年前の作品だから,本当に奇跡と言っても良いのではないかと思います。
私が人生レベルで影響を受けた作品,世田谷パブリックシアター制作の『春琴』も,初演の2008年から最後の公演があった2013年まで4回公演があったけれど,それだって初演キャストの再結成はもうできない。お芝居は一回一回がいかに貴重で刹那的なものであるかを感じさせられました。
ケラさんのTwitterを追っていると,今回の『消失』は録画もしないしDVDにもしない。この公演が終わったら,ナイロンの活動自体が2年はなくなると言っていたから,これを観なかったら10年どころじゃなく一生後悔するわと思い,チケットを確保したのでした。

東京にやってきてもうすぐ10年になるのだけど,なぜか初めての本多劇場。この作品がデビューになってよかった…。しかも当日超寝坊をしてしまって,駅から走らねば!という感じだったんです。昔スズナリに行ったときは見事に迷ったので今回も不安でしたが,本多劇場って井の頭線から見えるからね。なんとかたどり着くことができました。

私のバイト時代の先輩も今回の公演を観ていて,ブログにそれをまとめているのですが,
「どんどん壊れていくのに、新しく生まれてはこないんですよね」

という台詞が秀逸で、絶望を串刺しにして一皿にまとめたみたい。

と評しているのが印象的でした。読んでから出かけたので,このせりふが出てきたときは(あぁぁ出たーーーー)ってなりました。その通りすぎて,もう何も言えなくなってしまう。

一人ひとりに正義とか「正しい」「良い」みたいなものがあるとして,その塊がこれなのかと思うと,とても苦しい。


この年になって,他のナイロンの公演も観たり,最近だと三宅さんは朝ドラなんかにも出演されていて,ケラさんの作品感というか空気感になじめたり…。そう,SFをちゃんとSFとして観られたから,すーっと世界に入ることができました。思えば高校生の頃って,あまりSFを舞台では観ていなかったなぁ。

最後の蓄光パネルは,初演時も強烈なインパクトがあって,そこはちゃーんと覚えていました。まつ芸のときは本気の蓄光パネルだったと記憶しているのだけど,今回はどうするのかなぁと思って観ていたら,段ボール製でした。でもやっぱ,あの焼き付けから影だけ残るのは,衝撃です。

今年は『お話の森』とか『グッドバイ』とか,ケラさん演出の舞台を3本も観ちゃいました。私の中ではかなり多い方です。3本あわせて,映像も音楽も,ケラさんのこだわりを感じられたなぁ~と思います。今回は(“も”なのかもしれないけど)映像と音楽のシンクロっぷりに特にぐっときちゃいました。単純にカッコイイ。

10年の時を経てようやく感じられた,絶望に溢れた濃密な時間と空間でした。
これだけでも十分満足ですが,ミラクルなことに中学時代の同級生に劇場で会うことができました。(この前の週に会おうと思っていたけど果たせなかったひと。)この日の朝地元からバスで東京に来たとな…。
私は自分の大切なひとに会える場所は,結婚式場・葬式場・劇場+学会会場だと思っているんですが,改めてこれを実感しました。この前の日だったら,中高の部活の同期が観に来ていたみたい。やっぱみんな同じもの気になるよね。笑 お芝居の力ってすごいわ…!

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