Saturday, December 5, 2015

フェスティバル/トーキョー15『ブルーシート』

(フェスティバル/トーキョー15公式webサイトより)

@豊島区 旧第十中学校 グラウンド

作・演出:飴屋法水
出演:福島県立いわき総合高校卒業生 他

今年の1月,千葉県は八千代市。高校演劇の関東大会で,私はこの作品と出会いました。
静岡理工科大学星陵高校演劇部の皆さんが上演していた『ブルーシート』。うまく言語化できないのだけれど,一言で表すなら,「とんでもないものを観てしまった」。そう思いました。終演してからしばらくは,席を立つことができませんでした。(その時の感想はこちら。)

この作品は,福島にある県立いわき総合高校の芸術表現系列を専攻している生徒10人によるもので,2013年に高校のグラウンドで上演されたものだということを,後になって知りました。どうやら登場人物名は全て,実際の生徒さんのお名前。
授業に演劇の科目があって,授業でお芝居をつくる。総合学科ならではの学びだなぁと思いました。飴屋法水さんが一緒に作っていたなんて。すごいなぁ。そんなことも思っていました。

星陵の『ブルーシート』を観て約半年後。今年のフェスティバル/トーキョーのラインナップを知って,衝撃でした。まさかの,再演。しかも,当時の,オリジナルキャストで。
これは絶対に絶対に,絶対に行かなきゃいけない!
ということで,ばしっとチケットを取り,豊島区の廃校へお出かけしてきたのでした。


なんかもう,入場する時点で泣きそうでした。笑
席に着いたら,背景のイチョウがとてもきれいでした。12月なのにびっくりするくらい暑くて。そう,肌が焼けそうなくらい太陽が輝いて,どかっと晴れていました。パーフェクトブルーってこういう空のことなんでしょうか。東京でこんなに空が広い場所,久々に来たかもしれません。

校庭に並べられた椅子,美術室にありそうな額縁,転がっているボール,奥には廃車になった青い車。彼・彼女が見ていたかもしれない風景。
その地続きに座っていると,なんだか不思議な感覚。

どう始まるのかなって思っていたら,2013年初演の,当時のいわき総合高校の校長先生のあいさつ映像からでした。改めて,この学校がどんなものだったのか,このお芝居がどんな生徒達によってつくられたのか,確かめてからお芝居に入ることができたなと思います。

私は,芝居は嘘の塊だと思っていて,例外があるなら串田和美さんのつくる作品だって思っているのです。脚本から芝居を立ち上げるんじゃなく,その場にいるそのひとそのものから感情が出て,心の動きが生まれて,芝居として立ち上がってくる。それが串田さんの芝居。
今回の『ブルーシート』も,これと似た感覚がありました。「芝居」の語源は,地べたに座って演じ手を見ることって言われているけど,もしそうなのだとしたら,グラウンドに置かれた席から見つめるこの作品こそ,私にとって生まれて初めて観た「芝居」なのかもしれない。そんなふうに思いました。
でもって,せりふもト書きもあるけれど,このお芝居は行間が埋まっている感じがすごくして。その行間を埋めているものは,テキストとして書かれているせりふやト書きによる身体の動きに反応する生身の人間なのだということがとってもよく感じられました。椅子取りゲームとか,「選挙に行ったひとー,お酒飲んでるひとー」とか当てはまる人探しのところとか…。笑

終演してから戯曲を買って,読みました。
ほぼ戯曲に役名として名前が載っているオリジナルキャストさんが出演されていましたが,今回は出られなかったひと,今回新しく出演しているひとがいて,時の流れを感じました。
ヒッチーの妹さん…なのかな?まさかのきょうだいで出演されている方もいらして,新鮮でした。

彼らが見ていたもの,感じていたこと,考えていたこと,が,言葉や,表情や,体の症状や,動きから,苦しいほど生々しく,苦しいほど生き生きと伝わってきて,なんでもないシーンで泣いてしまいました。3回くらい。感動したとか,切ないとか,そういうふうに名付けられるものじゃなくて,圧で。静かに打ち寄せる,圧で,私の涙腺が圧迫されたのだと思います。

あと,自由で。舞台がグラウンドだから,びっくりするくらい自由で。
途中,あんなに奥のところでキャッチボールとか始めちゃうし。ラストも,私達観客が絶対に届かないところまで,彼らは自由に行けてしまう。最後,下手(と呼んで良いのだろうか。)から全員で叫んでいた,「おーい!おーい!お前は人間か?」がとても愛おしくて,絶望を少し上回る希望が見えたような気がしました。


飴屋さんの携わっている作品で,今年の夏にマームとジプシーの『cocoon』を観ていました。少女たちの,戦争のお話。
飴屋さんは,戦争も,津波も,災害も,すべて包みこんでくれる。『cocoon』と今回の作品を合わせて,そう思いました。

私は,私の見たものを忘れることができるけど,私は,私の見たものを覚えておきたい。
観ることができて,ほんとうに良かった。きっとこの先,ふとした瞬間に思い出す。そんな舞台でした。

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