Saturday, November 28, 2015

第32回長野県高校演劇合同発表会 長野県茅野高校演劇部『話半分』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@東御市文化会館サンテラスホール

作:郷原玲
出演:長野県茅野高校演劇部

2010年代の長野県を引っ張る茅野高校のお芝居を初めて観たのが昨年の県大会。あれから1年。今年は諏訪地区の代表が一校になってしまったようなのですが,また県大会で茅野のお芝居を堪能することができたのでした。

『話半分』は昨年松本美須々ヶ丘高校が文化祭でやっていたということ,そしてもっと昔に茅野が上演していた…ということだけ知っていました。戦争モノというか,そういう時代の話ということも辛うじて知っていて,あとは未知数でした。

…なのですが,幕が上がった瞬間,
(あの中に美須々のひといるんじゃないだろうか…)
と,本気で思ってしまいました…。
9月の中信地区大会で美須々の『木の葉に書いた歌』を観ていたので…。あれもほぼ同じ時代の話だったので…。

昨年茅野の『夜長姫と耳男』を観た時も(美須々っぽ~い!)と思ったのですが,今回も思ってしまったのです…。なんだろう。雰囲気?演出の仕方??

多分,多分の話ですが,きっと郷原先生が演出されても,今回に近い舞台になったんじゃないかと思います。
何が言いたいかと言うと,3年生の皆さんがしっかり郷原先生の本をモノにしていたということです。
実質1年くらいしか一緒に活動する期間はなかったと思うんですが,それでもちゃんと,郷原先生の栄養を摂取して,育ってる。そんな感じがしました。今年の中信地区で言えば松本蟻ヶ崎高校みたいな感じ。そういう栄養のシャワー浴びたらそう育つよね,って。ニュアンスがうまく伝われば良いのですが,ほめています…。

講師の先生も,演出や舞台セット,衣装,照明にきちんとプランナーがいるとお話されていましたが,私もそれを感じました。スタッフががっちり3年生の皆さんなので,意図も明確だし,魅せ方がわかっているし,3年生の集大成の作品になっているなと感じました。ここがしっかりしているから,キャストの半分が1年生さんでもがっちりしていて完成度が高いんだろうなーと思います。
(とっても個人的な話ですが,私もその昔3年生で県大会出させてもらいましたが,私はほわほわしてて,後輩達に連れてってもらった感がすごいあったんです。でも茅野は,3年生が連れてきたなという感じ。3年生がしっかり責任果たしてて,すごいなーと思いました。)

そうそう。舞台セットの話。ちょっと脱線しますが,私,今年の9月にKERA・MAPの『グッドバイ』を観たんです。長野県と東京都の高校演劇地区大会の翌日に観た久々の商業演劇だったので,とにかく規模に圧倒されたのを覚えてます。この『グッドバイ』にはドラマや映画みたいにオープニングがちゃんとあって,キャスト一人ひとりの名前や作者名,タイトルなんかが映像でババーンと出るんです。さすがケラさん。
そんでもって,『KERA・MAP #006 グッドバイ』と出た時に,(こういうことやる高校演劇ってあるんだろうか。タイトルとかキャストの名前とか出す高校演劇って。)とかって思っていたのでした。

あれから2ヵ月。まさかの!茅野,舞台上にタイトルが出る!!!!(゜゜)

視界に入った瞬間,ハッとしました。超かっこよかったです。いつか来るのだろうかと思っていた日は今日だった!みたいな。笑
いやー。たまらなかった。
茅野の部員さんのTwitterをフォローさせていただいているのですが,その方によるとタイトルは偶然の産物だったっぽいです。お金をかけなくとも,高校生の自由な発想であんなに素敵なものができちゃうなんて。すごいなぁと思いました。

さてはて中身の話へ…。
去年耳男として狂気をぶちまけていた方が今年も大活躍していました…。タッパもあるし,男性が男性役やってるっていいなーって思います。演出もできるし役者さんもできるって,あの生徒さんすごいな…。(しみじみ)
そうそう。やっぱり兵隊さんって男っぽいひとがやる方が,映えるよね(タッパとか体格とか)。役柄によるのかもしれないけど,今回の場合は何というか,シゲル役の方がちゃんとシゲルを掴んでいた感じ。終始このひとに魅せられたなぁ。プロ兵士(職業軍人?)じゃなくて,出征するまでは普通の学生やお仕事してるひとで,本当は人殺しなんて怖くてできないという人柄…みたいなものが,表情から見えたなと思います。背伸びしてない感じが自然体で良かった…。
でもって男のひとがやるからこそ,下ネタが面白い。笑 仮にどんなにカッコイイ女の子がシゲル役でも,下ネタって女のひとがやったら成立しないんだろうな~なんてことも思いました。

あと,私はキャストさんの髪が伸びた具合を見て(あぁ月日が経ってる~)と思うことがあるのです。例えば松川高校の『べいべー』ではさくらちゃん役の方が関東から全国の間で髪型チェンジしていて,ひとつに結わえてるところを見たときなんかに感じました。(なんかここだけ読むときもちわるい人ですね。)今回はハツエ役の方がそんな感じで,高校3年間の貴重な時間の一部を切り取って見ることができたような気持ちになりました。前述したように今回の茅野のキャストは1年生の方が半分だったので,ハツエさんがとっても安定して見えました。
はい。それだけ。オチも何もなくてごめんなさい。笑

魅力的な舞台だっただけに,やっぱり全てにスピードがついちゃってるというか,大切にすべきところが落っこちてしまうのはもったいないなぁというところもありました。
例えばひのまる銭湯のご近所の着物マダムが出てくるシーン。早替え大変なんだろうな~とはわかるのだけど,一回ものすごーく着崩れちゃってるところがあって,見ているこちらがアワワワとなってしまいました。演技は落ち着いて見られるのに,その他の部分で意識は持っていかれたくないなーというのが正直なところでした。
あとシゲルが敵と戦うシーンはもう少し丁寧に見たいなとも思いました。ミドリが母親に「息子さんはただ逃げてただけじゃない」と伝えるところがあったのですが,ミドリちゃんがそういうからにはどれだけ勇気を振り絞って戦ったんだろうと,観客としては気になったわけです。が,なんか敵に襲い掛かったーと思ったら回想シーン終わり!!!…みたいになった感じがして,(え!これで終わり!?)って思っちゃったのです。やるんだったらきちっと結果まで見たかったなと思ったり。全体的に生き急いでいる感があったのですが,見せたいシーンはたっぷり尺を取って良いように思います。講師の先生も仰ってましたが,幕開きであれだけ見せてくれたので。

あ。あとあと,ミドリちゃんのお芝居がちょっと癖っぽいというか,ちょっとへっぴり腰というか,視線が若干斜め上のモノローグなのはそういう仕様なのだろうか…とも思ったり。変な意味で「郷原先生の舞台っぽい感じ」になっている気がして,むむーと思ったり。←私が正面で喋るお芝居がそこまで好きじゃないので。好みの問題なのかと思ったり。
あとあとあと,ムズカシイかもしれないけどもうワンサイズ小さいセーラーがあればいいな~とも思ったり。
(でもミドリちゃんが片耳不自由という設定だったのは面白かったです。最初は集中が苦手の空想好きさんなのかと思いきや。意外でした。普段難聴含めいろいろな障害をお持ちの方とお会いしている仕事のひととしては,その年まで本当に気づかなかったんかーいと思ってしまいますが。笑)

2年連続の関東って,運と実力がなければできないと思うのですよ…。どちらもしっかり持っている茅野高校,スゴイです。本当に,この舞台は3年生の力(3年生の皆さんがもともと持っている力と1・2年を育てた力,そして育てられた1・2年生の力)がよーく見えるお芝居でした。卒業の約1ヵ月前までお芝居できるなんて。いいなぁ。長野県に与えた衝撃を,さいたまの地でも与えられますよう…。
茅野のみなさん,優秀賞&関東出場,おめでとうございます。お疲れ様でしたー。

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