Sunday, June 28, 2015

長野県飯田高校演劇班 第60回高松祭公演『リンゴ並木リンゴ紛失事件』


(高松祭公演パンフレットより)

@長野県飯田高校小体育館

作:横前光
潤色:長野県飯田高校演劇班
出演:長野県飯田高校演劇班

行ってきました飯田高校。
素敵な素敵な高校でした…。

そして観てきました演劇班。
“班”って,中信地区のニンゲンからするとなかなか耳慣れません…。

飯田高校と言うと,2000年代半ばまで中信地区の松本筑摩にいらした木村哲先生が異動された高校ということと,南信で一番偏差値が高いところというイメージしかありませんでした…。
そうそう。なので私は2006年に木村哲先生作の飯田高校『朝顔物語』を観ているはずなのですが記憶からすっぽり抜け落ちていて,9年ぶりの飯田高校作品!と言っても…。と言っても…。という感じなのでした。苦笑

なのになぜわざわざ飯田高校に…と言うと,
昨年南信の地区大会で飯田高校は『回転木馬とジェノサイド』を上演しておりまして。
この作品も木村先生の作品で,2005年度に松本筑摩高校が上演しているのをリアルタイムで観ていたのです。私。
かなりかなり衝撃的な作品で。なぜならば①関東大会まで行ってる②10~30代の部員で構成されているからで。

注目すべきは②!松本筑摩は当時全日制と定時制の高校で,いろいろ合わせると10代・20代・そして主婦の30代さんがいらして,なんかもうふつーの高校のニンゲンからするともうどうしようもない部分で,(何も言えません…)と思いながら観ていたのでした(笑)。カンパニーの実情に合わせたお芝居作りが大事だと思う…ということは昨年あたりからこのブログで何度か主張していますが,この学校のこの作品もまたそうだったなーと今改めて思っています…。

とにかくあの作品に挑む学校が10年弱経って出てきたとは!
どんなセンスを持っている学校なんだ!と気になって気になって,
それに加え私がTwitterでフォローさせていただいている方の中にこの班の方がいらっしゃって,いつもふぁぼってくださるのでさらに気になって気になって(笑),

往復10時間くらい掛けて行ってきました(・∀・)←
相当ぶっ飛んでいることは,自分がよくわかってるのでご安心ください。←


前置きが長くなりました。さてお芝居の話です…。
いやお芝居の前に…。

まず,「文化祭公演」って大変だよなとしみじみ思いました。
今回会場は小体育館だったのですが,高松祭のパンフレットをぺらりとめくると,開演の30分前までは邦楽班?の発表があるではありませんか…。
なので12時を過ぎると浴衣姿の女子達&おそらくその保護者の皆様がお琴やらマットやらを担いで小体からゾロゾロ出てくる…。

30分で撤去&立て込み…!めっちゃ大変…!もはや大会だわ…!

でもきっとこういう学校って結構あるんだろうなぁ。もちろん文化祭の期間中特定のスペースをもらえてそこを独占しっぱなしできる学校もあるだろうけど,そうじゃないところは他との兼ね合いや制約も多い中で発表しなくちゃで,発表そのものだけに注力できる訳じゃないんだなと思うと…。大変。大変だわ。

そして演劇の発表って,吹部や軽音との発表が被らないように調整したりだとか,外の騒音と闘ったりとか暑さ対策したりとか,意外と苦労が多いんだよな~なんてことも思い出しました。大変。大変だわ。


はい,お芝居の話に移ります!

“潤色”ってあるから既成なのかな?と思ったんですが,もしかしたら創作なのかな??
地名に飯田とか出てきたので,そのあたりが潤色なのかな~と思ってたんですが,どうなのかな。
飯田市に着いて,そこかしこにりんご(的な何か)があるのが目に入り,りんご推しの街だなと思っていたのですが,ここでもりんごだったので…。

班員が4人でキャストも4人!なのに照明も音響もつけなきゃいけない!入り口で当日パンフレットを配るひともいなきゃいけない!
なのでお手伝いさんがいらしたんですが,その数がものすごく多くてびっくりしました。
お手伝いといっても実際公演に携わるので生半可な気持ちではできないし,ある程度の覚悟が必要だと思うと引き受けるってなかなか難しいのでは…と思います。なのにこの充実っぷり…。班員の皆さんのお人柄とか,手伝いたいと思わせる力とか,そういうものなくしては成し得ないんだろうなと思います。それだけで,このカンパニーの質を感じられたように思います。

そして開演…。
思いました。私思いました。
(きっとこのひとたち人生迷ってるんだろうなー…)と。
このひとたちとは,キャストのみなさんそれぞれのこと。
ラストの一人一人のモノローグは,もしかしたら役柄を越えたキャストさんの叫びなのかもしれないななんて思いながら観ていました。
でもって叫んだあとジャンプして舞台から飛び降りて,小体の外まで突っ走っていくの,いいですね…。すごいですね…。緞帳が降りるときに,まさかのキャスト0状態…!

あ,そうそう。飯田高校の小体すごくって。
緞帳があるんですよ!すごくないですか!?(誰に言ってるの)
普通に,上から下に降りる緞帳があるのですよ!上がり下がりするときに,結構音は出ちゃうんですけど。でもお芝居始まる!終わる!がハッキリするという意味では良いですね…。歴史のある学校のつくりだと思いました…。

ただやっぱり,(特に高校演劇の出来の6割7割は脚本だな…)ということも改めて感じました。
テーマはわかるのです,テーマは!
なんとなーく,「これってやってみたらどうなるんだろう?」というふんわりした動機に突き動かされて,共感はされなくても自分の中で達成感を得られる何かをしてみたいという10代後半のひとの気持ち,わからなくもないの!カサハラさんも高校生やってて,演劇やってるけど将来は?ってふと立ち止まって考えたかつての10代後半のひとの一人です。
でもなんだか,話がふわっふわしたまま進んでいたような。私の吸収不足なのかもしれないけど。

場面がいくつかあるのですが,リンゴ並木のシーンと航海に出ているシーン,現実の中に仮想が突然割り込んできて,(なんだなんだ!?)と思いました。いや演劇的でそれ自体はアリなのだけど,いきなり感が強くて。なんだろう。何があればよかったのかな。照明に変化があったのでわかったんですが,でも(なぜここにこのシーンが?)という感じはあったかも。

舞台の設定は2000年なのですが4人は「1999年の設定でいこう!かっこいいから」みたいに言っていて,(なぜ2000年…)というところは置いておいても,(なぜ1999年…)というところは私の中では解決できませんでした。なんだろう~。99年の秋といえば,ノストラダムスの予言が当たらなくて数ヵ月経った頃だと思うんですが…。当たらなくて,(あーぁ生き残っちゃった。これからどうしよう)みたいな感じなのかな。なんかもっとあるのかな。良くも悪くもあえて99年に持ってきているから何かしらの連想はするのですが,私の中ではそこに意味を見出せなくて消化不良になってしまいました。うぅーん…。

あとこれも脚本の問題なのですが,文学っぽい表現と口語の表現が混ざっていて,すーっと耳に入ってきづらかったかもしません。本の言葉をそのまま使ってる印象で,それが役者さんの体に馴染んで発せられているかと言われると,何とも言えず…。特に弥尋ちゃんのせりふで感じました。(あくまで脚本の話です)


演技のことで言うと,光くん役の方が素敵でした!舞台をうまく回していたなぁ~と思います。自然にせりふが出ていて聞きやすかったです。(あと演技じゃないけど,衣装が柄×柄で斬新でした…。心のゴチャゴチャ感がよく出ていた…。)

ですが(光くんに限らず)全体的に,せりふらしくせりふを出していて,ちょっとテンポが悪かったかなと思います。相手が言い終わるまでしっかり待ってしまうことが多かった気が。いやいや実際の会話だったらそこは途中で会話をぶった切ってまで言うだろうとか,間髪入れず反応するだろうと思う箇所がちょこちょこあったので,せりふのキャッチボールがもっとできるようになるとぐいぐい引っ張れるお芝居になれるだろうなと思いました。

あと,せりふに忠実すぎたというか,ノンバーバルなリアクションが多かったのも気になりました。特にアスカちゃん?くん?がそうだったかも。アワアワしているところとか,とても愛らしかったのだけど,もっと声に出してリアクション取るとせりふも出しやすくなるのかなとか。せりふとして書かれている言葉だけが出てくる音声ではないし,書かれているせりふが出るためにどういった心の動きがあるのかなーと考えてみるともっと音声としての反応が出てきてもいいのかも。そうでないと,いわゆる小手先の演技というか,取ってつけた中途半端な動きとしてのリアクションになっちゃいがちなので。キャラがすごく素敵な方だったので,思い切りはじけられるとさらに素敵なのでは…と観ていて想像しちゃいました。

声に関しても,皆さん出てはいるのですが喉から出ているというか体幹を感じにくい声だったかも…と思います。このお芝居を観る前日に日芸のお芝居を観て(しっかりトレーニングされてるー)と感じたばかりだったので,余計気になってしまいました(笑)。
1,2年生の方が大半を占めているようなのでこれからかもしれませんが,基礎を頑張ってほしいなと思いました。

そうそう。話がコロコロして申し訳ないのですが,アクティングエリア。平面というか,ほぼみんな一列!なのはもったいなかったです。特に話すときとか,のっぺりして見えてしまって。もちろん小体育館のステージなので限度はありますが,もう少し奥行きは感じたかったかも。最後のモノローグではギリギリまで客席に詰めてましたが,もう少し本編(?)でも。リンゴの木が奥にあるのでそっちに集まってしまうのは仕方ないかなとも思うのですが。

さらにさらに照明について。照明頑張ってた!のがよく見えました!スタンドのやつをよく駆使されてたな…!と思います。花火のところ(超深夜だろうに,なぜ花火なのかも脚本的にアレ?ってなりましたが…。現実の花火ではなくて彼・彼女の心のイメージなのでしょうか…。)は,最初は大きさと当てる相手に迷いまくっているのだろうかと思ってハラハラしていたのですが,ちょっとして花火を表現しているのか!とピピっときました。なるほど…。
あとコロガシ?なんて言うのかな。リンゴの木用の4つのライトが素敵でした。私の好きな青だったのでさらに。笑
懐中電灯を持ってお芝居するシーンが2箇所出てくるのですが,最初の方はリンゴ用のライト(だった気がする)もついているし懐中電灯もついているしで,なんだか懐中電灯の効果が薄れてもったいなーい!と思っちゃいました。後のシーンは懐中電灯オンリーだったのですが,最初からそれでもよかったのかななんて思います。


いろいろ書いちゃいましたが,人生の露頭に迷っているひとたちが,実りきらない,熟しきっていない,知恵の象徴でもあるリンゴを,あるエリアから根こそぎ奪うという行為そのものが自滅的だなと思ったし,でもその中から自己を見出そうとしていて,その苦しさがひたひたと伝わってくる作品でした。
大学生のアスカも「人生迷ってます」みたいなこと言っていて,(え,多少なりとも選んで大学入ってますよね?)と一瞬思ったけど,思えば私も大学生になったからこそ人生迷って専攻を学部から修士で変えたので,ひとのことは言えんなと思いました。笑
そういう意味で,南信のトップ校らしい作品でした。きっと今の飯田の皆さんだからこその舞台なんだと思います。

はー。飯田市初上陸もできたし,吹いてくる風は心地よかったし,校舎もかなり素敵だったし,実際飯田高校に足を運ぶことができてよかったです!いつも小体でお稽古しているわけではないと思いますが,そのカンパニーのホームにお邪魔するっていいな~と改めて思いました。

飯田高校のみなさん,ありがとうございました。
特に3年生の方は,今まで本当にお疲れ様でした!お芝居ではないかもしれませんが,今後のご活躍をひっそり応援しております。

(あっ,パンフレット裏表紙の過去の上演作品の一覧が素敵でした!6年間分出すって,歴史を大事にしている感じがしてとっても好感!あとちゃっかり次の宣伝するのも大事…!)

+++

2015.7.1追記。

Twitterでフォローしている班員さんに教えていただきました。この作品は既成のものだそうです。

そして書き忘れ!
↑でリアクションのこと(主にせりふ)を書いていますが,表情!表情のことも言いたいです。
ざっくり一言でまとめると,顔の筋肉が使われていなくて残念…。言葉は出ているけど顔が追いついていない気がしちゃって,もったいなかったです。
意外と…自分の中では「表情変えてる!」って思っても,ビデオなんかに撮って見てみると変化が小さいなんてことがあるので,一度録画してチェックすると一歩引いて観られそうだなーと思いました。

あとあと,カーテンコールが丁寧でとっても素敵だったということを書き加えておきます!
一番最後に班長さんのお名前が呼ばれたときは,なんか本当にこの日初めてお目にかかった方なのに泣きそうになっちゃいました…(;o;)
引退って尊いなぁなんて,しみじみ思いました。

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