◇STAFF
監督:吉田大八
脚本:早船歌江子
音楽:緑川徹
◇CAST
宮沢りえ/池松壮亮/大島優子/田辺誠一/近藤芳正/石橋蓮司/小林聡美
(2014.11.30 劇場で鑑賞)
『アナ雪』か『マーニー』か何かで予告を観て,びびびっと来ていた映画。
この年になってから,「映画は映画館で観るもの」とようやく思えるようになってきたので,おでかけしてみました。
この…ポスターの表情が良いですよね…。うっとり。
監督は『桐島,部活やめるってよ』の方らしいのですが,私まだこの作品チェックできてないのです…。観ます…。
んもーーーーーー,キャスティングが秀逸でした。
宮沢りえは,私にとっては映像より舞台のひとで,映画の中の彼女を初めて観ました。
顔の,表情だとか,しわとか,くすみとかが,恐ろしいほどはっきりばっちりわかって,やっぱり彼女も40代なんだとしみじみ思いました。
私は,顔はその人の人生をよく表しているものだと思ってます。電車に乗ってると本当にそう思います。もちろん人は見た目だけではないけど,それでも眉間に深いしわなんかがあると,(なんかムズカシイことが多いのかな)とか。そんなファンタジーがわくのです。
さて映画の宮沢りえは……う,うつくしいのだけど,幸せそうかと言われると,謎…!!!
仕事もソツなくこなすし,角が立たないように人と接しているのだけど,何のための仕事なのか,誰のための家事なのか,よくわからない。誰かと心が通っているように,見えない。
そこに色を与えてくれたのが,池松くんなんだろうなー。
宮沢りえは,与えたかったし与えられたかった人だと思うのです。中学時代の彼女は「シスターは与える方が幸せと仰いましたよね(みたいな感じのせりふ)」と言っていたけど,やっぱり彼女は与えた人に与えられたかったのかもしれないし,与えてくれた人に与えたかったのかもしれない。きっとあの“プログラム”も,ありがとうの手紙が来なければ,一度の支援で終わっていたんじゃないかなって思います。与えた人に何かを与えられたから,のめりこんでいったのではないかと…。
でも,大人になった宮沢りえのプライベートでは何かが一方的で,双方向にはなれなかった。きっと「夫婦とはこういうものだ」と思うようにしていたんだろうけど,透明な水の中にカラーインクが一滴落ちたら,もう透明には戻れない。そんな感じ。そのカラーインクが田辺さんではなくて,池松くんだった。
だけど,双方向のやりとりってごく当たり前に望むことだよね。
それにしても宮沢りえの考えることと技術がすごかった…。証書?をプリンターで複製したり,プリントゴッコで判をつくるあたりは(おぉぉ…!その手が…!)って思いました。この映画は中学生なら観られることになってますけど,今の子とかプリントゴッコ知らないでしょ…。って思いました。笑
(どうでもいいけど,私は大学1年の時にプリゴを買った。しかし1回しか使用せず,廃棄してしまった…。パソコンでは成し得ない手作り感と重ね技が好きだった…。)
中盤,ピンチハンガーに証書?が干されたりしてるのが映ってるあたりは主婦っぽくて面白かったです。笑
池松くんのことは『MOZU』で知り,以来ファンです♡
先日放送していた「情熱大陸」で,俳優とは思えないほどのフリートークの喋れなさに驚き,(きっとこの人は職人のようなひとなんだろうな~)と思うようになりました。言葉よりその技を見た方が,そのひとの人となりがわかる感じ。
目が…良いですよね…♡そしてすごくピュアなのに,やたら色気も感じる…。そして何より声がいい!怪物だわ,怪物!!笑
しかし,おじいちゃんちで一回会ったっきりなのに,なんで宮沢りえのこと気になっちゃったんだろう~。そのあたりがもう少し見れたらよかったんですが,同年代の女の子にちょっと飽きてた時期だったのかな。今回私と一緒に映画を観に行った人は,「ああいう大学生いるよね」って言ってましたが,なんかほんとにそうなんだろうな。お金を出してくれる年上の女の人と,ちょっと火遊びしたかったっていうか。もちろん,母親役割も兼ねてだと思うけど。
黄緑と黄色の棚があるマンション(池松くん用に借りたとこ)で,宮沢りえが「何か買ってきて作ろっか」って言ったのに対して「言われてみたかった」って言ってたのは,きっと本心なんだろうな。今までちゃんと料理作れるひとと付き合ってこなかったか,ちゃんと家事をしない(できない)母親で育ったか。だろうな。多分。
だからお金で用意したハード(家・パソコン)だけでは耐えられなくて,ソフト(同世代の女の人)を連れ込んだんだろうな。(「あの部屋にいるとときどきたまらなくなる」っていう池松くんのせりふの意味するところは,そういうところなのかと…)
だがしかし,徐々に金銭感覚が狂っていく池松くんも愚かしくて良いですね…。「これちょっとずらして」っていうのなんて,特に。
良い意味で今っぽい大学生で,とてもよかったです。池松くん。
そして私はAKB48で一番好きな子が大島優子でした。2年連続で部屋のカレンダーは大島優子です実は!(いらない情報)
彼女は元々女優志望なので,これから応援していきたいところです。
他の方のレビューにもありましたが,良い意味でAKBの大島優子っぽくてよかった。無邪気というか。周りから見られていることを常に意識して,梨花にとってはかなりの刺激だったんだろうなーと思います。無意識ではあるのだけど,梨花をそそのかすあたりの目が,とってもよかった。
あとは「ありがち」という言葉を使って自分の罪を薄めようとしたり,社会的な立場が危うくなる前に地元に帰るあたりとか,世渡りうまい…ですね…。
あとあと!このひとの存在感半端ない!小林聡美!!!
最後にまともにこの方のお芝居を観たのが,2009年のテレビドラマ『赤鼻のセンセイ』だったので,すんごい久しぶりでした。あぁ,すごいブレーキ。
またまた他の方のレビューにもありましたが,この人の感情を爆発させることはできないのでしょうね…。「一緒に来ますか?」と宮沢りえに言われて,多分すごく動揺しただろうけど,行くことができなかった。それがこの人なんだと思います。
宮沢りえがブラウスの中に書類を隠した瞬間にピシッと「何してるの?」って聞いてくるあたりとか,本当にスリリング。締めてくれるなぁ…。
ラストも,この人で締まってると思うんです。「お金なんてただの紙なんだから,お金で自由にはなれない(みたいなせりふ)」が,ぐっときました。あともっとびびびっときたせりふもあったと思うのだけど,忘れてしまった…。
嫌味なひとと言えば嫌味なひとなんだけど…,ねじれているというよりは…うーん,正論を真正面からぶつけてくるひと,なんだと思います。宮沢りえも真面目なのだけど,小林聡美はまっすぐなままの真面目なんだと思います。そうか。ねじれてる真面目は宮沢りえの方か。
パスコのCMも良いけど,女優としての小林聡美の力をじわじわと感じさせられました。
この作品のキーというか重要小物に,“腕時計”があると思います。
宮沢りえが契約社員記念にペアで買った腕時計
田辺誠一が免税店で買ってきたカルティエの腕時計
宮沢りえが池松壮亮に贈った腕時計…
自論ですが,腕時計は指輪よりも重いものだと思います。
だって時間を贈るんですよ。時間を知らせるもの。その人の腕を縛るもの。
しかも,伴侶でなくても相手に贈ることができる。着けるたび,見るたび,贈ってくれた相手のことを思い出す。
時計にこだわるひとそうでないひともいるけど,ある程度価値を示すものでもあるし…。田辺誠一が「ゴルフの時に着けるよ」と言ったあたりなんて,宮沢りえとの価値観の違いを徹底的に表している!
ペアで買った腕時計に対してカルティエの腕時計が来たときは,私もすんごく苦しくなりました。ペアの時計,いらないって返されるようなものでしょ。あぁつらかった。
だからもう一度,相手を変えて池松くんにプレゼントしたのかな。宮沢りえ。ストレートだけど象徴的な小物だったなと思います。
あとは音楽が効果的だった!
讃美歌が余計,罪深さを浮き立たせてたなって思います。
本来清められるような気持ちになるはずなのに。「今」を知っている分,強いギャップを感じました。
讃美歌以外でも,音楽が!良い!!
心のスイッチが入った時のノイズ音とか,大きなことをしでかしてるときの音楽とか,池松くんと遊んでるときの音楽とか。
宮沢りえの心のON・OFFが音からも直接的に伝わって来て,よかったです。
スローモーションの映像×バンド的な曲とか,もうよかったー。かっちょいいー。サントラが出たらレンタルしたいくらい!
非常に非常に,効果的でした。
効果的といえば,最後宮沢りえががしゃーんってやるときの音とか,びっくりした。画的にもとてもよかった。
最後といえば,青りんご?果物?をかじるとこ。なんでかじるんだと一瞬思いましたが,そうすることで現実を味わっていたんだと思います。夢なのか,そうじゃないのか,確かめるために。
はっ!書く順番が前後しまくって非常に申し訳ないのですが,以前この映画の特集をテレビで観た時に,電車を振り返るシーンが大変だったと宮沢りえが言っていたのですが,あのシーンが拝めてよかった。確かにタイミングがバチッと合っててキレイだった!
以上!(笑)
宮沢りえと池松壮亮の「今」を感じることができて,とても良い作品でした。
良い悪いというより,ただ与え与えられたかったために生きていた女の人の話だったなと思います。私は,これまた良いのか悪いのか,「悪いことはだめ!」っていう感覚があんまりないひとなので(ニュートラルってことです!笑),じっくり味わうことができました。
私も,与える幸せと与えられる幸せを人生の中で感じたいものです。横領以外の方法で。