作:日下部英司・長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部
出演:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部
今回穂高商業高校さんのお芝居は拝見できなかったので,私の中ではこれが地区大会最後の作品。
地区大会なのに,なぜか3回目の観劇…!(ちなみに今までの感想はこちら。)
そう。3回目なんです。
なんですが,蟻高の敷地の外で観るのは,これが初めて。
そして今回感じたのです。
(この作品って,もしかして小さい箱用の芝居なのでは…)と!
コンパクトな芝居だから,コンパクトに見えるようにパネルや幕を使うのは大事なことだと思います。例えば今回の地区大会で言うと,木曽青峰,明科,南農も,コンパクトに分類される作品をやっていたと思います。
そう見える努力ももちろん必要なんですが,もしかしたら箱に合う芝居を作ることも,どこかで必要なのかもしれない…と感じました。
でも,それはあくまで「大会」として見たときの話であって,上位大会へ行くための評価を得るための見方であって,「この作品はもともとこうで,たまたま今回の会場が広かった」というスタンスを貫くなら,それはそれで良いと思います。
それでも,短い時間でパパっと場面が変わってパっと照明が点くことが魅力でもある作品だと思うので,オペレーションに苦労する会場なんだろうなという印象は受けてしまいました。
この作品が小さい会場向けなのではと思った瞬間が,他にもありました。
蟻ヶ崎のHRの時間です。
前回同窓会館で拝見したときは,「沖縄の高校生はどこに修学旅行に行くんですか?(←確かこのせりふだったはず。違ったらすみません。)」って質問している裏には,隣の席の生徒が「お前聞けよ」的な催促を入れてるから,という流れがあったことに気づけてとても楽しかったのですが,あの劇場の距離だとまず気づけない…だろうなぁと思います。
聞かせたいせりふと発するせりふは必ずしもイコールではないのですが,この距離があることで,置いてきぼり感もちょっと感じられたんです。舞台で流れる時間と,客席に流れる時間のスピードが違う気がして。
あと普天南の方。多分,審査員席より前で観ていた人は,部員1が上に乗られてフラッシュバック起こした瞬間に気づけないのでは…と思います。目線の問題で。(初見の人からすると,気づいたらストップモーションになっている気がする。)
予想はしてましたが,せっかくのシーンなのに顔が見えなくて残念…。前後のチームを入れ換えた方が良いかも。なんて思いました。
→なので再度主張。多分,近くで観た方が面白い作品です。これ。
さてパンフレットを見てみると…
はっ,名前が!役の名前が変わってる!(゜ロ゜)
もともと創作作品らしいキャラクターの名前がついていたんですが,シンプルになってました。でも,たとえば「安達祐実」って書いてあるより「福島からの転校生(安達)」の方が,確かにわかりやすいかも…。
こういう,一人の人間が複数の次元の演じ分けをするときって,表記が大変そうだなぁといつも思います。
前回観ていて,肉まんのくだりがわかりにくかったのですが,今回は一回観た助けがあってか,わかりました。トランスフォームBさんがニヤリとAさんを見てから「6個」って言うから,わかりづらかったんだろうな,前回。
見ちゃうと,関係性ができちゃうから。見ないなら,「私は私,あなたはあなた」だなーって確かに思うんですが。でもこの作品のことを考えると,見て(相手の存在や主張を知っている上で)「6個」って言うから意味があるのかなとも思います。
あと,「普天間南高校の人ですよね」からの拳銃,私はぱんつの色が何色なのかとてもドキドキしながら見ていました。(へんたいではありません。しんぱいだっただけです。)
…が!右(舞台奥)から出てきたので安心しました!(笑)
そうだよね下平くん右利きだよね…。(た,たしか!)
そしてそして,今回一番おおっと来たのは,普天間南の子がテレビに出てて,部長?副部長?が橋本進次郎に向かって怒鳴って黙らせる最後の一言!(全てがぼんやりした表現でごめんなさい!)ドスが効いてて非常によかった。ぐっときました。
というのも,舞台上で演じ分けている以上,その上に素の自分がいるんじゃないのかなと思うんです。だから本当にその役になりきって舞台上にいるというよりは,その素の自分が舞台上でA面B面を演じ分けているんじゃないかと思って。あとやっぱり,そのキャラクターを味付けするようなせりふが少ない役は,あんまり個が立たなくて,それで(あの子今何考えてるのかな)って思ったのかな。うまく言えないですが。
さらに大島先生は「必然性のある黒なのか」と尋ねていましたが,私からしたらずいぶん舞台に色がついたんじゃないかと思います。服で…。
日下部先生のこれまでの作品は,積極的な黒というより逃げの黒(とりあえず黒。「とりあえず生」みたいな…?ちょっと違うか。)という使い方をしているように私も見ていたんです。セットも黒,衣装も黒+αなものも何作かあったので。
それと比べたら,衣装で色味はついたなーと思います。(普天間南の部長役の方の衣装が変わってたけど,赤と白のボーダーって意外と強いな…とも感じましたが。)
でも小さい箱(みんなが使いまわすやつ)とかは,考えても良いのかも。まつもと市民芸術館は床が黒なので,本当に真っ黒に見えるんですよね。他の会場に行ったら,その使いまわすやつの黒が映えるのかもしれないけど,「この会場」として見た時に合うかどうかも,戦略のうちなんだろうなと思いました。
あー!あとあと!これは蟻高の問題じゃなくてアナウンスの問題で,
私すっっっっっごく疑問なんですが,終演後に「○○高校による『××』でした」ってアナウンス,あれ必要なんですか?昔はなかったのに。幕間講評がなくなったからあのアナウンス入れて締めてるんですか?
今回みたいに,終わってないのにアナウンス入れちゃうと作品ぶち壊しになっちゃうと思うしくどいので,そのまま終わりでも良いのでは?と,強く思いました。
3回目ということで他の高校の感想と比べて切り口が全然違っちゃいました…。3回目だからこその感想です…。
きっと,諏訪地区の茅野とか,大きな力を持った先生が異動された後の高校の1年目って勝手も変わるし,いろいろ大変なことが多いんだろうなと思います。
その中で無事幕が上がって,無事降ろすことができたのがすごいなと純粋に感じました。
そして本当に,この芝居に携わっているみなさんにこそ,沖縄に行ってもらいたいです。
高校生のうちに行けなくても,いつか。
重厚な作品でした…。
蟻高のみなさん,お疲れ様でしたー。
(つけたし。
終演後,自分の母校の現顧問探しで会場の裏に回ったんですが(笑),一世代上の蟻高のOGの方が複数名でいらして,とっても素敵だなーと思いました。
←『花を摘む』や『ひとりぼっちの南吉か』に出ていらしたあたりの方々!お顔でわかりました!
多分あのOGさん達は今の部員さんと直接関わっていらっしゃらないと思うのですが,あんなに複数人で地区大会に来てくれる部活ってうらやましいなーと思います。押し付けのOBOGの訪問はしたくないなーと思いますが,できる範囲で私も現役の子たちを見守れたら良いなと,彼女たちを見て思いました。
OGさん達が無事現役生や顧問の先生とお会いできたことを願います…。)