Thursday, August 14, 2014

映画『思い出のマーニー』



◇STAFF
監督:米林宏昌
原作:ジョーン・G・ロビンソン「思い出のマーニー」
脚本:丹羽圭子/安藤雅司/米林宏昌

◇VOICE CAST
高月彩良/有村架純/松嶋菜々子/寺島進/根岸季衣/森山良子/吉行和子/黒木瞳

(2014.8.14 劇場で鑑賞)

高2くらいのときから,ジブリ作品は母と観るようにしています。母は自分のために娯楽の予定を立てるということを滅多にしないひとなのです。反対に私は好きなお芝居にバンバン足を運んでいて,なんだか心苦しい…と思ったのと,母はジブリが好きなので(たぶん),せめてこれくらいは…と思って。
なので確実に行く!ということがわかっていたので,人生で初めて映画の前売り券というものを買いました。前売り券も↑の絵なのですが,この絵,素敵。

さて,公開してから一ヵ月弱くらいしてから行ったのですが,あんまり…あんまりメディアなんかでは取り上げられてなくて,CMで「満員御礼」とか言ってるけどほんとかいな,と正直思っていたのです。

がっ。

ジブリは「トトロ」や「魔女宅」みたいに明るい話ばかりではなく,じっとりとした部分にもきちんと目を向けているカンパニーであることを,改めて思い出しました。たとえば「ぽんぽこ」とか,「思ひ出ぽろぽろ」とか。あ,一番は「火垂るの墓」ですね。
公式HPにも“さびしさのさきにある,かけがえのない宝物をみつけた少女たちの物語”とありますが,決してにぎやかではない,決して底抜けに明るいわけではない,くるしい,にがいものを乗り越えて何かをみつける,とっても素敵なおはなしだったと思います。

全然その予定がなかったのに,泣けてしまいました。
杏奈が,おばさんが自治体からお金をもらってるということをマーニーに打ち明ける場面。
(うわぁなんかわかる…)と,じわじわきました。
別に私はもらいっこでも両親が不在でもないのだけれど,お金で愛を得ているんじゃないかとか,お金のために自分がここにいるんじゃないかとか,そういうことに対するかなしみ,というのかな,不安なのかな…。そんな思いは,わかる気がします。
この年頃の子って,きっと自分の価値について考える時期で,価値を測るものとして「お金と自分」って,どうしてもつながってしまうものなんだと思います。
私も(きょうだい3人の中で一番の金食い虫は自分だ)と思っていた時期があったし,というか今でも思ってるんだけど,それですごーく落ち込んだというか。でもどうしようもないからただただ苦しく感じたことがありました。なので杏奈のヒリヒリした気持ちが,切なく伝わってきました。


そんでもって,この映画を観終わったときに,私の中でキーワードが浮かんできました。
・イマジナリーコンパニオン
・「私は,私が嫌い」
・「あなたのことが大すき」

物語が進んでいくと,やっぱり「マーニーって何者なの?」って気になってくるんです。
それに対して私は,杏奈のイマジナリーコンパニオンなんじゃないかと思ったのです。
イマジナリーコンパニオンとは,空想上の友達のこと。小さい子にはよくいるらしいです。夢にも出てくるし,起きてるときにも心の中にふっと現れる存在。それが大きくなってもいると,それはそれでちょっと問題らしいのだけど…。

話の冒頭で,「私は,私が嫌い」と言っていて,マーニーには「大すき」と言う。
自分にないものを全て持っている,あこがれの存在マーニー。
あこがれであると同時に,なりたい自分というか,そうでありたい存在なのかなぁと。だから常に杏奈とマーニーは正反対なのかなぁと。

ラストで,マーニーは実は自分のおばあちゃんで,自分が小さいときにおばあちゃんが昔のことをいろいろ話してくれていたことがわかるのですが,それだけの存在ではないように私は感じました。
おばあちゃんの思い出の場所に来たら,それが再現されるようになっただけじゃなくて,自分の見え方思い方を「友だち」という視点から再構成させてくれたのがマーニーなんだろうなと思いました。
(例えば…「自分を引き取ってくれたおじさんおばさんこそ本当の親切(という表現だったっけ?)じゃないかしら」とマーニーが杏奈に言うところとか。それは杏奈がそう思いたいことであって,それをマーニーに言わせて,それを杏奈は客観的に聞いて,自分のおじさんおばさんへの思いを再構成している,という感じ)

黒木瞳は公式HPで,「(この映画は)“愛される事”に焦点をあてた愛の物語であると思います」と書いていて,すごく納得しました。


さらに美術に関して言うと,北海道の透き通って,少し寒そうな空気感が伝わってきました。本当に細部までこだわった,きれいな作品だと思います。お屋敷のすりガラスとか,すごいです。


決して華やかではないけれど,すごく瑞々しくて切なくなる,オリラジのあっちゃんも言ってたけど今の監督とプロデューサーだから作れる,そんな映画でした。

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