Tuesday, August 12, 2014

映画『秒速5センチメートル』



◇STAFF
監督:新海誠
脚本:新海誠
製作総指揮:新海誠
音楽:天門

◇VOICE CAST
水橋研二/近藤好美/尾上綾華/花村怜美

(2007.8.2 劇場で鑑賞,2014.8.12 DVDで鑑賞)

今回レンタルして観直したのは,ある人を弔うためです。
その人は,この映画を観ないかと誘ってくれたひと。
2007年春のこと。私が東京に来て,本当に,まだ間もない時のこと。
残念ながら私は大学の入学ガイダンスが夜までかかり,一緒に観ることはできませんでした。

その年の夏,セレクトした作品を上映する映画館でこの作品をやると知り,観に出かけました。
開始が21時とか,それくらいで,20時にバイトが終わるとすっ飛んで帰ったことを思い出します。

ひとりで,映画館で,いろんな思いを巡らせながら観ました。
誘ってくれたひとのことも,思い出していました。

いつかまた会うときが来たら,「観ましたよ」って言って,感想を言いあいたかった。

でもそれは,私がこの世にいる限り,無理なようです。



初めて観たのが2007年で,当時はまだ家と大学の往復ぐらいしか,東京を知らなくて,東京から鈍行で栃木なんて,行ったこともありませんでした。

あれから7年。作中に出てくる豪徳寺にも,ホワイトボードに書かれてる三軒茶屋にも出かけたし,私も鈍行で栃木に行きました。
それからこの作品を観返すと,何とも言えないリアリティがひたひたと迫ってきます。
あかりが「東京の蒸し暑い夏も好きでした」と言っていたのが,なんとなくわかるような気もします。

新海さんは,この作品は「スピード」を表現していると,DVDのインタビューで仰っていました。
電車のスピード,あかりがたかきに近づいていくスピード,ロケットが宇宙へ向かうスピード,カブのスピード,メールを送るスピード,読むスピード…。
人生にはいろーんなスピードがあって,大きさが違う歯車が少しずつ動いて,世界が回っているのだと,生きているのだと,時間が先へ向かって流れていくのだと,しみじみ思いました。


「永遠とか,こころとか,たましいが,どこにあるのかわかった気がした」

「それでも,明日も明後日もどうしようもないくらい好きなんだろう」


…みたいなせりふが,それぞれ,第一話と第二話にあるのだけど,

幸せなせりふだなと,思います。


第一話が,好きです。私の中にある,永遠に叶わない願いが,そっと昇華されていくような気がするから。

第二話も,好きです。私の中にある,永遠に叶わない願いを,そのままにしていて良いのだと思わせてくれるから。

第三話は,そんな幻を抱いて眠る私のことを,起こしてくれるような気がします。


何とも言えない甘美な気持ちと,冷たい絶望のふたつが共存する,恐ろしい作品だと思います。
酔いしれてしまう。あの日に思いを馳せてしまう。
そんなふうにさせる作品だと思います。


今,新宿駅の青い路線の特急は9番線と10番線から出ます。作中の5番線6番線は,2007年頃の話です。

この作品の「リアリティ」も,徐々に古いものになっていくのでしょう。
それでも『秒速5センチメートル』は,私を2007年や大学生の前半に引き戻してくれる。
会いたかったのに会えなかった,会いに行ったのに会えなかった,くるしくてたのしかった,あの時期に引き戻してくれる。

折に触れて,この先も観返したい作品です。



キャッチコピーの

“どれほどの速さで生きれば,きみにまた会えるのか。”

この答えは,まだ出ません。

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