Saturday, August 30, 2014

長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部 自主公演『Nippon, cha cha cha!』

@長野県松本蟻ヶ崎高校同窓会館

作:日下部英司
出演:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部

あの…まず…すみません、タイトル間違って認識してました。“cha! cha! cha!”かと思ったら、“cha cha cha!”だそうです。そんなに元気のあるタイトルじゃありませんでした(笑)。文化祭パンフレットがびっくりマーク3つだったので…。
文化祭公演のタイトルも修正しておきました。(文化祭公演の感想はこちら。)

地区大会前に拝見できるというので、お邪魔してきました。
場所は蟻ヶ崎の同窓会館。すごーい。同窓会館とか、歴史のある学校だからあるんでしょうね…。会場は2階でしたが、1階の机とか椅子とか素敵でした。あと草間彌生の作品が壁にかかってました。すごーい。
…といっても、思い返せば2011年にも『神々の国の首都』の通し稽古を拝見させていただいたときにお邪魔した場所でした…。

一度観た作品を短期間で、キャストやスタッフがほぼ変わらず観るのは久しぶりです。
文化祭の時はできたてほやほや!(それでもだいたい出来てる。小鹿だけどもう立ってる感じ。)だったのが、今回は小鹿がてけてけ安心して歩けるようになってました。うまく言えなくてごめんなさい。

全体的に、洗練されてきた!という印象です。

前回一番気になっていたホンの部分、蟻ヶ崎の終わり方(まとめ方)ですが、一つの答えを見られたように思います。空港のホームルーム、なんだかぐっと来ました。
でも蟻ヶ崎→普天間南の切り替えは、心なしかだらっと見えてしまったような。体のキレなのかな?慣れの問題なのかな?
すごい(言い方悪いですが)平板な終わり方なのかなと一瞬思いましたが、最後の最後はいろいろ想像できてよかったです。今この文章を書いていて、2008年に観た長野県田川高校の『もやしの唄』のラストを思い出しました。(←目の前にいる・あるものと、聴こえる音の次元が違う感じが。)
照明と、それに合った音響がつくのが楽しみです。

そうそう。今回一番見入ってしまったのが、蟻ヶ崎の担任役の方!前回は別のキャストの方だったので新鮮でした。
艶っぽくて素敵ですね…♡
目で演技できるって、素敵ですね…♡♡
間の取り方とか、すごくよかったです。
前回の方が、雰囲気が日下部先生だとすると、今回の方はせりふは日下部先生だけど、きちんと自分の物にできていた感じでした。
茶目っ気のある先生で、生徒に好かれそう…。
でも口紅の色が、もう少し若い色でもいいのかも。私の好みですが。

あとあと、今回2度目を観て自分の中で発見だったのが、安達祐実役の方の普天間南版の方で、ワークショップをやってるシーン。
安達祐実としての被災の状況を聞いているので、ワークショップで苦しんでるのもなんとなく自然なんですけど、いやいやこれは違う人だ、と思って。そうするとこの子は、米兵さんにレイプとかされた経験があるのかしら…とかふと思ってしまいました。
そういう発見です。

今回気になったのは、最初の「普天間南高校の人ですよね」でぱんつが見えてしまったので、本番の下着の色は大事だなということと(笑)、音響でしょうか…。

はじっこで観ていたのでスピーカーが近くにあったんですが、(あぁ…このタイミングで…流れるん…ですね?)と感じる箇所がいくつかありました。
(きっとここで流したいんだな)というシーンの直前に流している感じで、取って付けてるような印象も…。そうすると浮いて聴こえてしまって。ちょっと残念でした。
でも拳銃の音は良くなってました!重みのある音に!『MOZU』みたいな感じで良いです!

あ、残念といえば、肉まんのところは私としてはいまいちでした。いまいちというか、私の処理が追いつかなかったです。すいません…、

いろいろ書きましたが、みなさん間が確実によくなっていて、安心して観られました。これだけ人数がいるのに、悪目立ちする人がいないってすごいです。(ほめてます!)
あと高校生のキラキラ感がまぶしかったです。
あと蟻高うらやましいなーって思いました(笑)。
あとあと最後に、上演後の部長さんのあいさつが素敵でした。
メインのお客さんであるおばさま方に、「お気をつけてお帰り下さい」が丁寧だなーと思いました。とっさの一言かもしれませんが、素敵な心配りですね。

蟻高のみなさんの地区大会の成功、お祈りしています。

Thursday, August 28, 2014

テレビドラマ『MOZU』 Season1・2



◇STAFF
監督:羽住英一郎
原作:逢坂剛『百舌の叫ぶ夜』『幻の翼』
脚本:仁志光佑
音楽:菅野祐悟

◇CAST
西島秀俊/香川照之/真木よう子/伊藤淳史/池松壮亮/長谷川博己/石田ゆり子/小日向文世/有村架純/生瀬勝久/吉田鋼太郎/蒼井優/佐野史郎

(2014年4月~8月にTBS・WOWOWで放送)

毎週特定の曜日が来るのがこんなに楽しみだったドラマは,『家政婦のミタ』以来かも。
「テレビドラマでは収まりきらない,映画でもない,『MOZU』というジャンル」っていうふうに出演者の誰かが言ってたような気がするけど,まさしくそんな感じ。
TBSとWOWOWの本気を見たような気がしました。

恋愛モノでもなければ単なる刑事ドラマでもないのに,どうしてこんなに胸を鷲掴みにされるんだろう。
脚本と演出,役者の力ってほんとうにすごいな。

そう。出演者が,すごいよ。

西島さんの一途さが,すごいよ。こんなにブレない人,すごい。
Season 1は妻そのものを知るための作品,Season 2は妻の見えない部分を知るための作品だったように思います。
妻を追い求めることそのものが愛だったし,追い求めた先に愛があったな…と,15話観て思いました。

香川さんは西島さんとは別の要素でキュンキュンしました…♡笑
せりふのテンポが絶妙ー!一生懸命だから笑えてしまったり,西島さんと徐々に距離を詰めていったり,真木よう子と二人になったりするあたりとか,好きでした。外野で振り回されていると知りながらも駆け回っているのが素敵だった。あと娘とのやりとりもぐっときた…。

真木よう子は,『南部高速道路』でちゃんと演技を観てから好きになり,それから初めてまともに観た作品がコレでした。いやー素敵だった。
特にSeason 2で西島さんと再会するあたりの声の高さ!!!!!!!!!
めっちゃキュンキュンしてるじゃないですかーーーーーー!!!
そんな真木よう子に,キュン…♡笑
Season 2最終回の,西島さんのタバコを奪って吸うあたり,真木よう子の精一杯が見えて,本当に胸がときめきました。大人のキュンをありがとうございました…(*´∀`*)

池松壮亮くんは今回のドラマで初めて観たんですが,すごい方ですね…。
今年映画が8本くらい公開されるそうですね。実力の証ですね…。
宏美ちゃんも和彦も猟奇的で,出てくるたび「キャー!」と思いながら観てました。
印象的だったのは,和彦が崖から落ちるときに「ごめんな宏美」だったのに(確か),宏美が死ぬ時は「ありがとう和彦」だったこと。
宏美ちゃんと和彦は,本当にロミオとジュリエットのようですね。
ていうか池松くん不死身すぎる。

長谷川博己は『家政婦のミタ』からちょこちょこ観ていましたが,今回は他と比べ物にならないくらいぶっ飛んでいて,すごく良かったです♡
さっきからすごく良かったとか素敵だったとか,そんな言葉ばかりでぺらぺらした感じになってますが,でも本当に良かったです♡
twitterで呼ばれているように,私も途中から長谷川博己のことを「チャオ様」と呼ぶようになりました。
Season 1では屋上でカッコつけただけのチャオ様…。Season 2では雪山でへんな車に乗ってやってきたときがめちゃくちゃ面白かったです。
これから長谷川博己を見る目が変わりそうです。キモカッコイイチャオ様,本当に良いスパイスでした…。

石田ゆり子は決してリアルタイムで出てくる人ではなくて,いつでも誰かの回想の中の人で,ほぼ毎話出ているのに,なんだか不思議な人でした。
子どものことは,くるしかったろうなぁ。人生の罪と罰について,考えさせてくれました…。
あと,あんまりせりふのある役じゃなかったので,その分表情で魅せてくれたなぁと思います。
グラークα作戦のあとの,調査?映像の沈黙とか,たまらなかったです。

小日向文世さんをきちんとドラマで観るのは久しぶりかもしれない…。
最近の小日向さんといえば『K.ファウスト』のあの役で,ピエロな格好で「もうすぐ還暦だよ~♪」と言いながらでんでん太鼓をふりふりしているイメージがあったので,すんごいひとだよ小日向さん…。180度違うじゃないか…。
きっと一話から観返していけば,「君はまだそれを知る立場にない」とかって真木よう子に言ってる言葉の意味がわかるんだろうなぁ。今だったら。

有村架純はSeason 1における浄化剤のようなポジションだったなと思います。
あのピュア感が,より一層悪いおじさんたちを悪く見せていて…よかったです(笑)。
新谷さんと待ち合わせしてて,新谷さんと目があって,道行くひととちょっとドンっとぶつかって,あーごめんなさいってなってまた新谷さんの方を見た時に,新谷さんがいなくなってた…ってシーンが印象的でした。

生瀬さんはあんな悪者になってしまうとは…。
いい人そうな人が実は…ってやつが,一番コワイなぁと思います。
誰かがtwitterでつぶやいてたけど,この物語は「娘」がテーマでもあるって書いてあって,あぁそうだなーとしみじみ思いました。
あの愛しい人を守り抜く力と,社会を根底から覆したい野望が共存しているのがすごいよ。

吉田綱太郎のド変態っぷりが爆発していて,Season 1はとても魅力的でした。
この方といえば松たか子が出ていた『Sisters』で悪者だったイメージがあったので,正直印象はよくなかったんですが,このぶっ飛び具合が本当に好きでした。
あと話は逸れますが,私の職場の上司に顔が似ていることが途中から気づき,仕事が楽しくなりました。
職場のひとに「上司が吉田綱太郎に似ている」と言いふらしたら若干名に共感していただけたので,とても満足です。笑
ナース宏美ちゃんを見て笑ってる吉田綱太郎に笑ってしまった…。宏美ちゃんとの決闘も,最後までぶっ飛んでいてとてもよかった。

蒼井優の演技というものを今までまともに観たことがなかったことに,このドラマを観て気づきました。
すごくいい!相手を飲んでいく感じが見える!自分のペースに巻き込んでいく会話術と笑顔がいい。コワイな,蒼井優。これからもうちょっと,彼女の作品を観てみたいと思いました。

佐野史郎は『いとこ同志』以降まともにじっくり意識して観ていなかったのだけど(だから超昔),こういう役いいなー!生瀬さんとは違う悪役感。悪い人!っていうのがにじみ出まくってていいなぁ…。


他にも特にいいなと思ったのが,杉咲花ちゃん。Cook DoのCMのイメージがあったのですが、あんなにもドスの効いた声が出せるなんて!声と目で芝居ができる子!素敵!
auのCMで先輩の頬をビンタして「蚊です♡」って言ってるのとかも、声質が全然違って素敵ー!

あとは宏美ちゃん和彦くんの子ども時代役を演じた佐藤瑠生亮くん!(るいきって読むらしい)
あのにんまりした裏のある笑顔がたまらなく良いですね。
今後が楽しみ。あとSeason 1の最後の最後で儀式っぽいことやってた2人も素敵。

さらに音月桂さんでしょうか…。ドラマが始まってから,彼女のファンになりました…。
カッコかわいい~。真木よう子の姉妹にぴったり。

あと官房長官役の池谷のぶえさん!これまたぴったりや…。貫禄…。


もう,役者について語り出せばきりがないのでここまでで…。
でも本当に,本気と実力が見えるドラマで,見応えがありました。
思わずサウンドトラックとか借りちゃいました…。笑

Season 2が10月からTBS系列で放送されるので,もう一度MOZUワールドにハマれると思うと楽しみで仕方ないです。

Thursday, August 14, 2014

映画『思い出のマーニー』



◇STAFF
監督:米林宏昌
原作:ジョーン・G・ロビンソン「思い出のマーニー」
脚本:丹羽圭子/安藤雅司/米林宏昌

◇VOICE CAST
高月彩良/有村架純/松嶋菜々子/寺島進/根岸季衣/森山良子/吉行和子/黒木瞳

(2014.8.14 劇場で鑑賞)

高2くらいのときから,ジブリ作品は母と観るようにしています。母は自分のために娯楽の予定を立てるということを滅多にしないひとなのです。反対に私は好きなお芝居にバンバン足を運んでいて,なんだか心苦しい…と思ったのと,母はジブリが好きなので(たぶん),せめてこれくらいは…と思って。
なので確実に行く!ということがわかっていたので,人生で初めて映画の前売り券というものを買いました。前売り券も↑の絵なのですが,この絵,素敵。

さて,公開してから一ヵ月弱くらいしてから行ったのですが,あんまり…あんまりメディアなんかでは取り上げられてなくて,CMで「満員御礼」とか言ってるけどほんとかいな,と正直思っていたのです。

がっ。

ジブリは「トトロ」や「魔女宅」みたいに明るい話ばかりではなく,じっとりとした部分にもきちんと目を向けているカンパニーであることを,改めて思い出しました。たとえば「ぽんぽこ」とか,「思ひ出ぽろぽろ」とか。あ,一番は「火垂るの墓」ですね。
公式HPにも“さびしさのさきにある,かけがえのない宝物をみつけた少女たちの物語”とありますが,決してにぎやかではない,決して底抜けに明るいわけではない,くるしい,にがいものを乗り越えて何かをみつける,とっても素敵なおはなしだったと思います。

全然その予定がなかったのに,泣けてしまいました。
杏奈が,おばさんが自治体からお金をもらってるということをマーニーに打ち明ける場面。
(うわぁなんかわかる…)と,じわじわきました。
別に私はもらいっこでも両親が不在でもないのだけれど,お金で愛を得ているんじゃないかとか,お金のために自分がここにいるんじゃないかとか,そういうことに対するかなしみ,というのかな,不安なのかな…。そんな思いは,わかる気がします。
この年頃の子って,きっと自分の価値について考える時期で,価値を測るものとして「お金と自分」って,どうしてもつながってしまうものなんだと思います。
私も(きょうだい3人の中で一番の金食い虫は自分だ)と思っていた時期があったし,というか今でも思ってるんだけど,それですごーく落ち込んだというか。でもどうしようもないからただただ苦しく感じたことがありました。なので杏奈のヒリヒリした気持ちが,切なく伝わってきました。


そんでもって,この映画を観終わったときに,私の中でキーワードが浮かんできました。
・イマジナリーコンパニオン
・「私は,私が嫌い」
・「あなたのことが大すき」

物語が進んでいくと,やっぱり「マーニーって何者なの?」って気になってくるんです。
それに対して私は,杏奈のイマジナリーコンパニオンなんじゃないかと思ったのです。
イマジナリーコンパニオンとは,空想上の友達のこと。小さい子にはよくいるらしいです。夢にも出てくるし,起きてるときにも心の中にふっと現れる存在。それが大きくなってもいると,それはそれでちょっと問題らしいのだけど…。

話の冒頭で,「私は,私が嫌い」と言っていて,マーニーには「大すき」と言う。
自分にないものを全て持っている,あこがれの存在マーニー。
あこがれであると同時に,なりたい自分というか,そうでありたい存在なのかなぁと。だから常に杏奈とマーニーは正反対なのかなぁと。

ラストで,マーニーは実は自分のおばあちゃんで,自分が小さいときにおばあちゃんが昔のことをいろいろ話してくれていたことがわかるのですが,それだけの存在ではないように私は感じました。
おばあちゃんの思い出の場所に来たら,それが再現されるようになっただけじゃなくて,自分の見え方思い方を「友だち」という視点から再構成させてくれたのがマーニーなんだろうなと思いました。
(例えば…「自分を引き取ってくれたおじさんおばさんこそ本当の親切(という表現だったっけ?)じゃないかしら」とマーニーが杏奈に言うところとか。それは杏奈がそう思いたいことであって,それをマーニーに言わせて,それを杏奈は客観的に聞いて,自分のおじさんおばさんへの思いを再構成している,という感じ)

黒木瞳は公式HPで,「(この映画は)“愛される事”に焦点をあてた愛の物語であると思います」と書いていて,すごく納得しました。


さらに美術に関して言うと,北海道の透き通って,少し寒そうな空気感が伝わってきました。本当に細部までこだわった,きれいな作品だと思います。お屋敷のすりガラスとか,すごいです。


決して華やかではないけれど,すごく瑞々しくて切なくなる,オリラジのあっちゃんも言ってたけど今の監督とプロデューサーだから作れる,そんな映画でした。

Tuesday, August 12, 2014

映画『秒速5センチメートル』



◇STAFF
監督:新海誠
脚本:新海誠
製作総指揮:新海誠
音楽:天門

◇VOICE CAST
水橋研二/近藤好美/尾上綾華/花村怜美

(2007.8.2 劇場で鑑賞,2014.8.12 DVDで鑑賞)

今回レンタルして観直したのは,ある人を弔うためです。
その人は,この映画を観ないかと誘ってくれたひと。
2007年春のこと。私が東京に来て,本当に,まだ間もない時のこと。
残念ながら私は大学の入学ガイダンスが夜までかかり,一緒に観ることはできませんでした。

その年の夏,セレクトした作品を上映する映画館でこの作品をやると知り,観に出かけました。
開始が21時とか,それくらいで,20時にバイトが終わるとすっ飛んで帰ったことを思い出します。

ひとりで,映画館で,いろんな思いを巡らせながら観ました。
誘ってくれたひとのことも,思い出していました。

いつかまた会うときが来たら,「観ましたよ」って言って,感想を言いあいたかった。

でもそれは,私がこの世にいる限り,無理なようです。



初めて観たのが2007年で,当時はまだ家と大学の往復ぐらいしか,東京を知らなくて,東京から鈍行で栃木なんて,行ったこともありませんでした。

あれから7年。作中に出てくる豪徳寺にも,ホワイトボードに書かれてる三軒茶屋にも出かけたし,私も鈍行で栃木に行きました。
それからこの作品を観返すと,何とも言えないリアリティがひたひたと迫ってきます。
あかりが「東京の蒸し暑い夏も好きでした」と言っていたのが,なんとなくわかるような気もします。

新海さんは,この作品は「スピード」を表現していると,DVDのインタビューで仰っていました。
電車のスピード,あかりがたかきに近づいていくスピード,ロケットが宇宙へ向かうスピード,カブのスピード,メールを送るスピード,読むスピード…。
人生にはいろーんなスピードがあって,大きさが違う歯車が少しずつ動いて,世界が回っているのだと,生きているのだと,時間が先へ向かって流れていくのだと,しみじみ思いました。


「永遠とか,こころとか,たましいが,どこにあるのかわかった気がした」

「それでも,明日も明後日もどうしようもないくらい好きなんだろう」


…みたいなせりふが,それぞれ,第一話と第二話にあるのだけど,

幸せなせりふだなと,思います。


第一話が,好きです。私の中にある,永遠に叶わない願いが,そっと昇華されていくような気がするから。

第二話も,好きです。私の中にある,永遠に叶わない願いを,そのままにしていて良いのだと思わせてくれるから。

第三話は,そんな幻を抱いて眠る私のことを,起こしてくれるような気がします。


何とも言えない甘美な気持ちと,冷たい絶望のふたつが共存する,恐ろしい作品だと思います。
酔いしれてしまう。あの日に思いを馳せてしまう。
そんなふうにさせる作品だと思います。


今,新宿駅の青い路線の特急は9番線と10番線から出ます。作中の5番線6番線は,2007年頃の話です。

この作品の「リアリティ」も,徐々に古いものになっていくのでしょう。
それでも『秒速5センチメートル』は,私を2007年や大学生の前半に引き戻してくれる。
会いたかったのに会えなかった,会いに行ったのに会えなかった,くるしくてたのしかった,あの時期に引き戻してくれる。

折に触れて,この先も観返したい作品です。



キャッチコピーの

“どれほどの速さで生きれば,きみにまた会えるのか。”

この答えは,まだ出ません。

Monday, August 11, 2014

映画『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』



◇STAFF
監督・脚本:キム・ソンス
原作:司城志朗『ゲノムハザード』(小学館文庫刊)
音楽:川井憲次

◇CAST
西島秀俊/キム・ヒョジン/真木よう子/浜田学/中村ゆり/パク・トンハ/イ・ギョンヨン/伊武雅刀

(2014.8.11 DVDで鑑賞)

西島さん×真木よう子という組合せに惹かれ,さらに『国語の時間』に出てた中村ゆりもいるなんて知ったら,借りずにはいられませんでした…(笑)

でも…ムズカシカッタ…。

サスペンスということで,「謎!」と思いながら観てました…。
いや…謎でした…。もう一回観たらわかるのかな…。

でも,今の私は西島さん×真木よう子といえば『MOZU』なので,思わずそんな目線で観てしまったのですが,CGとかがたまにチープに見えてしまって,アワワワ…という感じでした。
西島さんの本気の演技がどこか浮いて見えるという切ない事態が…。

真木よう子のヒロイン感が素敵でした。黒い車に乗って,右手をスッと出してるところなんか,儚げで儚げで!うっとり…。
ラストシーンのやっと会えた感も,幸せの中に切なさが滲み出ていて,よかったです。

うっとりといえば,中村ゆり!「韓国でも日本でも通じるようにユリ」というせりふがあったけど,それって本気で中村ゆりさんのことではないですか…。今フジテレビでやってる『若者たち2014』でも満島ひかりが佐藤ひかり役をやっているけど,演じ手と役名が同じって,なんだか不思議な気分です。
そう。話ずれましたが,中村ゆりの雰囲気が好きなのです。私。しっとり美人で艶っぽくて。今回も良かった…。美しいよね。真木よう子とは違う美しさ。うっとり。


カン・ジウォンの「記憶がなくなっても,思い出はどこかに残ってるものですから」みたいなせりふが印象的でした。坂手洋二さん作の『いとこ同志』でも,「私たちが約束を忘れても,約束が私たちを忘れない」ってせりふがありましたが,あれを思い出しました。


お約束?の西島さんサービス(=上半身裸)もあり,体当たりのアクションもあり,ていうか演技そのものが体当たりで,それだけでも満足満足でした。ふぅ。
他にも真木よう子の映画を借りてきたので早く観たいです。
いや,むしろ早くお盆に帰省して,実家で録画してある『MOZU』season2を観たいです…。

Saturday, August 9, 2014

映画『源氏物語-千年の謎-』


◇STAFF
監督:鶴橋康夫
脚本:川崎いづみ/高山由紀子
原作:高山由紀子『源氏物語 悲しみの皇子』

◇CAST
生田斗真/中谷美紀/真木よう子/多部未華子/芦名星/蓮佛美沙子/榎木孝明/東儀秀樹/甲本雅裕/尾上松也/室井滋/佐久間良子(特別出演)/田中麗奈/窪塚洋介/東山紀之

(2014.8.9 DVDで鑑賞)

何を隠そう!私はジャニーズで誰が一番好きかと聞かれたら,迷わず生田くんと答えます!

そう,生田くんが,好きなんです!!!!!!!!!笑

山Pと風間くんと3人で並んで歌ってる時期とか…ピークでした…。(オーバーオール着て「ネコネコロケット」とか歌ってたあたり…。)

まさかこんな立派になっちゃうとは…。←


なので,観たい観たいと思っていたのです。はい。

あと,私「源氏物語」自体も好きなのです。大和和紀の「あさきゆめみし」も,高校生の時に国語の先生からコミックス全巻どーんといただいて(笑),そこからどっぷりはまりました。あ,でも宇治十帖編は全部読んだか微妙かも…。

まぁとにかく好きなもの×好きなものなのだから,テンション高かったです。鑑賞中。


いやー…キャストが良かった…。
(中谷美紀じゃなかったらこの役は誰だろう?大竹しのぶとかかな?)とも,観ながら考えたんですが,中谷美紀の艶っぽさと気高さは他の誰にも出せないのだろうなと思いました。

あと!意外だったのが田中麗奈!まさか彼女が六条の御息所なんて!なんか…地味に(そういう年になったんだァ…)と思いました。やっぱり「あさきゆめみし」のビジュアルがイメージとしてあるので,もっと年上な感じがあったんですが…そうか,当時の結婚年齢とか考えると,それくらいが妥当なのかもしれない…。
呪ってるのにきれいでもあって…不思議な映像でした。葵の上が出産時に憑りつかれて,声が御息所になってるあたりとか,よかったです。「多く愛した方が負け!」っていうせりふを聞きたかったけど,それに似たせりふがあったので満足。

そして真木よう子…。桐壷であっさりと死んじゃって(えっ,うそーん!)と思っていたら,藤壷もやっていたので納得。桐壷が正妻に首絞められた時のドスの効いた声が,たまりませんでした…。(好き!)

藤壷の,「愛しいあなたを地獄へ落とすわけにはいかない」でずきゅーんとやられてしまったのに,
源氏の「もう落ちている」でばきゅーんと,トドメを刺された気持ちです。
なんだあれ。
なんだあれ!(大事なことなので2回)


確かに,あーーーーーーんな超大作を書いた理由,書き続けた理由って考えた時に,
虚構と現実が交錯していくという発想は面白かったです。
文学でも,絵でも写真でも,あるいはお芝居でも,やっぱりつくるものってそのひとの「子ども」で,思いが詰まってる「生き物」だと,思うんですよね。
紫式部が生かした「子ども」に思いを寄せると,いろんな想像が働いてきそうです。

でも,鬼になる前に自分で収束できた紫式部は,よく自分をコントロールできているなとしみじみ思いました。
「源氏物語」に出会ってから,私はこの中だったら誰みたいなんだろうなと考えることがあるのです。どこかで御息所っぽい要素があるなーと正直思うので,誰かを呪い殺さないように気をつけなければ…。

あ。それからそれから,やっぱり源氏と藤壷のような恋は「地獄」なんだなと。
昨日観た映画も,この恋は地獄だと渡部が表現していたので,昔から地獄ってあるし,そこで苦しむことに関しては今もそう変わりないんだなと感じました。

Friday, August 8, 2014

映画『夜明けの街で』



◇STAFF
原作:東野圭吾「夜明けの街で」(角川文庫)
監督:若松節朗
脚本:川 いづみ

◇CAST
岸谷五朗/深田恭子/木村多江/石黒賢/黄川田将也/田中健/萬田久子/中村雅俊

(2014.8.8 DVDで鑑賞)

2年前にテレビで再放送してた『八日目の蝉』(NHK版)を観て→そこに出てた岸谷五朗にキュンキュンしてしまい→いつか観たい!と思っていた作品。横浜のデートって素敵そう…(´∀`*)と思いながら観ました…。このジャケット写真…好きです。表情がいいです。

こんなにも,一度ハマるとこんなにも,するするするっと堕ちていってしまう渡部が,愚かしくてかわいくて,愛おしかったです。いい年した男の人が,メール一通であんなにも嬉しくなってしまうのね。笑
あと社内メールってサーバーにデータとか残っちゃわないのかなって。そういうソワソワもあったり。
パソコンの画面も,横から後ろから見られちゃわないかな,とかって。

深キョンの演技ってあまり観たことないけど,渡部より一枚上手だなーと常に思って観てました。転がしようがいいですね…。
「逃げるの?」と聞いておきながら,最後は「逃げてね」というあたりとか,なんだか切なくなりました。あと,「夢を見ちゃいけない」のモノローグも,さらっと言ってしまうけど実はすごく重厚だったり。ちゃんと触れるといろんな思いが出てきちゃうから,そうやって流そうとしていたのかな。

あと,木村多江が良かった…。
「出張」とか「お通夜」とか,そういった嘘を渡部はばれやしないかとドキドキしながら言うのに,その受け流しっぷりはやっぱり夫婦だな,とか。
でも深キョンと一緒で,触れると出てくるものがあるから,卵の黄身を針でつつかないようにごまかしていたのかもしれない。いや途中から,きっとそうなんだろう。ずっと長いこと平穏を保ってきた夫婦だもの。気づかないわけないもの。妻ってやっぱすごいな。
最後のシーンで,黄色いストールを巻いてる木村多江のせりふが本当にすごかった…。

「何が済んだの?何も済んでないと思うけど。あなたと私の中で,一生済まない話だと思うけど。」

これを笑顔で言う木村多江の深さが…スゴイ…。


人生の罪には人生の罰が下るということをじわじわ感じた映画でした。


あと,他の方のレビューを読んでて,確かに殺人事件は取ってつけた感が私もしました…。原作の問題なのか脚本の問題なのかはわからないけど…。
もっとがっつり容疑者容疑者してるのかと,ミステリー要素があるのかと思ったのだけど,あんまりそうじゃありませんでした。んんん,残念。

でも,横浜の夜景ドライブデートがどうやら素敵らしいということがわかったので,いつかしてみたいものです…。おわり。