Sunday, November 29, 2015

第32回長野県高校演劇合同発表会 長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部『木の葉に書いた歌』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@東御市文化会館サンテラスホール

作:郷原玲
出演:長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部

2日目午前中最後の公演。私はこの公演を観て会場を出てしまったので,私の中では2015年の長野県大会最後の演目。中信地区大会に続いて観劇しました。(地区大会の感想はこちら。)

郷原先生の作品は昨年から合わせて3作拝見したことになるんですが,改めて思いました。
長野県の中ではパンチ強いなということと,
現代の高校生の人たちは,このひとの作品が好きなんだなということと,
先生自身がお芝居をやりたいひとなんだろうなということ。

私は力動を味わえるようなお芝居が好きで,言葉をスルメのように味わえるお芝居が好きで,シチュエーションや派手なビジュアルで魅せる舞台も新鮮で刺激的なのだけど,舞台の世界のスピードに私の心が追い付かなくて。なので郷原先生の作品って多分すごいんだよなってことはわかるんですが,ハマれるかと聞かれるとそうではないなということも,この舞台を通して再認できました。これを好みの問題と言われたらそうなのかもしれませんが,何が私の心にフィットしないかを改めて考えるとこういうことなのかなと思います。私は宝塚も四季もすごいと思うけど,どハマリはしないです。それと一緒です。多分。

先生自身がお芝居を…ってところに関しては,この前の日に茅野を観ていて,茅野がすんごい美須々感あったなーと思って。なんでかなと考えた時に,世界観が似てるんだろうなと思って。脚本でカンパニーを作者の色に染めるって,ある意味すごいことじゃないですか?きっと,この先郷原先生がどんな学校に赴任されても,だいたい似たテイストのカンパニーに仕上げてくるんだろうという気がして。もちろん,学校が持っているDNAみたいなものがあるから全く一緒という風にはならないと思うけど,「指導」とか「演出」とか言うよりは,きっとご自身がお芝居をやりたいひとなんだろうなって。うーん。うまく伝わるかしら。きっと先生と生徒でモチベーションを同じところに持ってこられたら,強いカンパニーになるんだろうと勝手に思ってます。

さて,この作品を通して見えた,私が再認した思考の話は置いておいて。
前回は,(言葉をテーマにした作品なのに言葉が客席に届いてこなくてもったいなーい!)という印象が強くあったので,そこをメインに書いていきたいと思います。

あ,いやその前に。それ以上にとっても気になっていた舞台上の暗黙のルール問題(と勝手に命名)!これについて書かねば!
地区の感想の9月26日の追記で書いたところの話です。同一のキャストが複数の役を演じる場合,演じている人は一緒でも役としての人格は別物だよねという暗黙のルールがあると私は思っているのです。この作品は中盤あたりで看護婦と編集が副業(?)してる同一人物だということがわかるんですが,地区大会ではその看護婦と編集を演じているキャストさんはさらに別の人格の登場人物も演じていたので,(エッ,そっちは同一人物なのですか!?)となってしまって,ルールから逸れてしまった感がすごーくあったんです。
がっ,今回はそのキャストさん,人格のある役はその2役に絞られたぽかったので,この問題はきちんと解消してました。すっきり~。なんか改めて観てみると,最初から結構副業してることをチラつかせてたんですね(笑)。でもきっと私は私でここが気になって観てたので,この2役が「そのほか」の中でもそこそこ目立ってて,初見のひとからするとどう見えるのかな~なんてことも考えちゃいました。

次にあれです。言葉。その,前回は舞台上だけで完結しているように聞こえてしまったから。
今回は朝イチとかではなかったので,きちっとクリアに聞こえたなという印象です。もちろん,2回目だからということもあるけど。でもさむらごーちさんとかもちゃんと存在感あって,良かった良かったーって思いました。笑 なんだかんだ言ってここが疎かになってしまうと,どんなお芝居でも破綻に繋がってしまうなーと思います…。

あとあと。今年は地区から全国までいろーんなレベルの高校演劇を観てしまったので私の目も知らず知らず鋭くなっていて,正直ドキッとするお芝居をする役者さんが,この県大会ではいなかったんです。美須々の公演までは。
葉子さん…。葉子さん役の方。すっごい,ぞくっとしました。なんと言うか,低音なのに響く声ってものすごいインパクトがあると思うのですよ。宇多田ヒカルの『Flavor Of Life』で言うところの「友達でも恋人でもない中間地点で 収穫の日を夢見てる青いフルーツ」。あの部分みたいな感じ。(伝わるのだろうか!謎!)せりふが正確じゃないかもしれないのですが,「そうね…。そうだったわね…。」みたいな,章太郎に向かって出しているけど自分に言い聞かせるようなせりふ。あれがものっすごく心に響いて,たまらなかったです。元々のお声が高めなのに,あんな低くて響くせりふを出せるなんて。ギャップも含めて,やられました。この一言が聞けただけでも,県大会来てよかったなって本当に思いました。まじで。
(さらに超個人的ですが,私も最近肺を患ったので,より一層葉子さんに重きを置いて観てしまいました。肺はつらいよ…。笑)

でも,それにしてもなぜ,美須々のときだけあんなに床が滑りまくったんでしょうか…。笑
舞台には魔物が住んでるって言いますが,なんかほんと見えちゃいましたね…。誰かヘアスプレーでも散布しちゃったのかしら…。←小学生の時に家でやってしまってコケたことある人。
特に葉子さんは痛そうだった…。でもでもお姉ちゃんの「大丈夫!?」のフォローは咄嗟なのによく出てきたなぁ…。
でもでもでも,私達は舞台で起きることを観ることが全てなので,そこは幕間で触れなくてもいいかなとも思ったり。ふと,自分が現役だった時に「客は君たちの言い訳を聞きに来てるんじゃない。芝居を観に来てるんだ」と顧問が言っていたのを思い出しました。笑

蟻高のところでも書きましたが,私は中信のニンゲンなのでどちらかでも関東に行くことを強く強く望んでいました。叶わず残念です。が,きっといろんなひとの記憶には残る舞台なんだろうなと思います。夏にはサマフェスにも出て県外の方にも観ていただいたと思うので,それで満足と思うことにします。また来年に期待です。
美須々の皆さん,お疲れ様でしたー。

(あぁっ!書き忘れた。やっぱりラストの群唱(この単語を覚えたから2歳児並みにアウトプットしてみる)は今回も圧巻でした!声帯の質感?声の質感が揃ってていいよね!あとその声の主達が女子高生なのがいいよね!はい,以上!笑)

第32回長野県高校演劇合同発表会 長野県松川高校演劇部『ホルのいた森』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@東御市文化会館サンテラスホール

作:舟山雄也
出演:長野県松川高校演劇部

この公演の4ヵ月前には全国大会に出場していた松川。全国に出場した場合,その年度の地区大会は自動的にパスできるルールが長野県にはあるようなので,今回の新しい演目に関する情報は昨年同様ほぼなく,県大会まで謎のベールに包まれていたのでした…。
(というかあれか。9月はオープン参加?で地区大会でも『べいべー』やってるみたいなので,4ヵ月で作ったというより2ヵ月でここまで持ってきた感じなのかな。)

全体を通して…。やっぱり,全国大会に2年連続行くって…言葉にすれば簡単だけど,私じゃ想像が及ばないくらい大変なことなんだろうなぁと,お芝居が終わって真っ先に思いました。
そして今年に関して言えば,3年生の方々(と,その3年生を育てた昨年度卒業された方々)が部全体を支えていたんだろうなぁと改めて思いました。松川の学校の規模とかわかんないですけど,いや知ったところでアレですけど,よくあのメンバーが同じ学校の部活に揃ったなぁとしみじみ。大会を勝ち抜くのって運と実力の両方が揃わないとダメだと思っているんですが,2015年の関東大会はスタッフもキャストも最強のメンバーだったんだろうなー…と。

その最強の人たちを見て育った1,2年生の皆さんが自分達の力で頑張ってる。

今回は,そんな過程を追えたお芝居だったように思います。
特に,2015年度版『べいべー』のキャストさんだった2年生お二人が舞台を引っ張っているのがよく伝わってきました。この二人が出てくると,安心して観られるというか。

先輩を見て育った,それ食べてその栄養摂取したらそうなる,と特に感じたのは,下手の大木と衣装。写真でしか見たことないですが,2014年度の全国大会作品では舞台セットすごーいという印象がありました。今回もあんなどでかい木を作って持ってきちゃうとは!どうなってるんだろあれ!ってすごい気になりました。高校演劇の木ってどうしても規模が小さくてちゃちく見えちゃうと思うんですが,さすが松川という感じでした…。吊りものの布は針葉樹の連なりのようにも見えたり。
衣装も,ホルの白と男の赤が印象的でした。そうそう。ホルってどんな衣装でも持ってこられると思うんですが,あえての白ワンピ…。なんかキョーイクテキカンテンとか考えるとどこまで言っていいかわからんのですが,ホル役の方はスタイル良くてとっても素敵でした…。白ワンピが映えますね…。
そう。そこ2人が現実的というか,ある意味その衣装でそこらへん歩いても全然問題ないです!みたいな恰好だったのに対して緑女さん達はしっかりファンタジーファンタジーしてたので,ギャップが激しくてちょっとびっくりしちゃいました。あと着れるものというよりは着たいものだったのかなという印象で,頑張って作った感はものすごく伝わってきたのですが,再考の余地ありなのかなという感じがしました。(スカートの中が見えないように穿くものも衣装の色と揃えられたらもっといいかも。)

あと講師の先生も仰っていましたが,もう少し光で森を見たかったなーという気持ちがあります。実写とかじゃなくてアニメーションになっちゃいますが,今年DVDで観た新海誠監督の映画『言の葉の庭』がすごく印象的だったので,このお芝居を観ながらこの作品のことを思い出しました。DVDなので作品にまつわるインタビュー映像も入ってて,「顔に緑色を塗るなんて抵抗があったけどやってみたら良かった」みたいなことを新海さんが話してて。確かにそこは本編見た時に私もびっくりしたんですよね。でもキラキラして眩しい世界を表現するには,それくらいあってもいいのかなって。……なんかこのお芝居と話がずれちゃいましたが,光がほしかったという話です。←無理矢理まとめる人。笑
多分だけどホルがいる森のゾーンって鬱蒼としているより,なんだろう…『もののけ姫』で言うところの,シシ神様がいるあたりだと思うんですよね。…うーん。伝わるのだろうか…。

終始しっとりしているお芝居だったので,ごめんなさい。途中目をつぶっちゃったところもありました。すみません…。ホル役の方も男役の方もしっかりせりふは出ているんですけど,なんだろうな…。感情のやりとりというか,心の動きというか,そういうものがもう少し見えたらよかったなーというのが率直な感想です。(私はそういうものが見たい人なので。)例えばホルが男の顔見て「きれいな顔…(みたいな感じの言葉)」って言ってるところとかが何度かあったと思うんですが,なんかもっとときめいてほしいなとか。笑

思ったことをぽぽぽーんと書き連ねちゃいましたが,そんな感じです。
県大会前に演目を知って,どんな話なんだろうーってググってみたんですが,もとは北海道の学校がやっていた作品なの…かな?でもってホルはアイヌ語でオオカミって意味なの…ですか?検索かけても情報がほとんどなかったので,謎が残ります。笑
昨年の『べいべー』もそうですが,作品の掘り当て方(という表現をあえてしてみる)が松川は面白くて,私は好きです。高校演劇って時代や地域のブームとか定番作品とかあると思うんですが,私もどちらかというとマイナーなものが好きなニンゲンなので,どう引っ張ってきているんだろう~って気になります。笑

今更ですが改めて,全国大会お疲れ様でした。そこから先の第一歩を拝見できた気がします。これからどういう道をこの学校が開拓していくかが楽しみです。
松川の皆さん,お疲れ様でしたー。

第32回長野県高校演劇合同発表会 長野県上田千曲高校演劇班『超弱い百子 ~新・今昔物語絵本 鬼のかいぎ~』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@東御市文化会館サンテラスホール

原作:立松和平
脚色:中澤祐太・長野県上田千曲高校演劇班
出演:長野県上田千曲高校演劇班

昨年の県大会に続いて観劇。2年連続県大会出場って,すごいことだなーとしみじみ思います。昨年拝見したときはチームでお芝居を作っている感じがすごく伝わってきたので,今年も楽しみにしていました。

最近原作のあるお芝居を観るたび,(あー原作読んでおけばよかったー)と思います…。最近だったら太宰治の『グッドバイ』とか三島由紀夫の『近代能楽集』とか。この作品もまたそうでした。立松和平さんの絵本も『今昔物語』をベースにしてるので,なんかもう引用の引用とかは調理され過ぎてて,もったいないことしたなーと思いました。よくわかんないですが,こちらの主人公の百子ちゃんの「百」は百鬼から取ってるのかな。

緞帳が上がってぱっと目についたのは,去年の舞台セット,木の箱!昨年の『ふぁみりあ!』で出てきた一人一箱(側面はそれぞれのモチーフ,♪とかの形で穴が空いてる。うまく文章にできない…。)が印象的だったので,見てすぐ昨年のものだとわかりました。一つの作品にきちっと舞台セットを揃えてくる・作り込んでくることももちろん大切だと思うのですが,一つの道具を使い倒すというか使い込むというか,そういうことができるのも大事なことだと思うので,いいなぁ~と感じました。

なのですが。お芝居が終わって,(……ん?)という感じが残りました。なんだろう~。なぜそうなったんだろう~。思い返すと,なんだかお芝居が形式的すぎて,多分私の心にはあんまりフィットしなかったんだと思います。いかにもせりふっぽいというか。そんな感じで出しているせりふが多かったからかな。身振り手振りとか。

あときっと,もったいない…と思ったところがちょこちょこあったのが(……ん?)の原因かも…。講師の先生も仰っていた上手の“鬼”のロゴ?とか。字体とかかっこいいし,何かに使うのかと思いきやそのまま60分過ぎてしまったので,(あれはなぜあそこに…)という感じがして。舞台上に在る以上意味はあるはずなのに,意図が伝わってこなくて残念でした。
他にもクヌちゃんヌギちゃん。木が人間という発想は面白いのだけど,本当にストーリーテラーに留まってしまった感があって。なんかもっと他のアプローチがあったような気がして(でも例えば何?って聞かれたら言えないのだけど…),んんんー。という感じです。クヌちゃんヌギちゃんの声の質感は素敵だったな…。

『超弱い百子』というからには百子の内面の話なのかと思いきや,結構外的な環境の話(両親がいないとか)で進んでいるところもあって要素が盛りだくさんだったのも,どこに照準を合わせて観れば良いか迷ってしまった要因かも。やっぱりタイトルって中身を集約したものだと思うので,超弱い百子の超弱い部分をもうちょっと見たかったなと思いました。(だから超弱い子が強い子…までいかなくとも,何らかの変化が見られたら,それはすごい成長だと思うし。)

きっと狙いはたくさんあったのだと思いますが…!という感じで,トータルしてやっぱりもったいなかったです。あ。でも4人でふぁさっと着物羽織るあたりのところはきっと狙ってて,きちっとハマったんだろうなと思います。あとホリゾントで作るシルエットがきれいだった!(着物とかが掛けてある棒?のシルエット。)

勢いがあるカンパニーだということはすごーく伝わってくるので,その勢いが詰まってしまったり細分化されないように,すっきりしたお話だったり魅せ方だったりでお芝居が作れると,きっとこのカンパニーの良さがちゃんと出るんだろうなと超勝手ながら思います。きっと東信を引っ張る力のある学校だと思うので,今後も期待していきたいです。
上田千曲の皆さん,お疲れさまでしたー。

Saturday, November 28, 2015

第32回長野県高校演劇合同発表会 長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部『君に想う夏』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@東御市文化会館サンテラスホール

作:髙山拓海・長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部
出演:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部

地区大会に引き続いて2度目の観劇。蟻高がこの作品をまつもと市民芸術館で上演した時,間違いなく会場はノックアウトされていて,私もそのうちの一人で,県大会はもちろん,(もしかしたらこれ関東に行くんじゃ…)と本気で思っていたのでした。結果は残念でしたが,候補の6作には挙がったようで,中信地区のニンゲンとしてはとても嬉しく思いました。
私は蟻ヶ崎のひとでもなんでもありませんが,今の中信ができることを県大会の場で披露してもらえたような気がして,満足でした。

なんかもう,地区大会の時の感想でもうほとんど書ききった感じがするので,そちらを読んでいただければと思います。以上。笑

あ。でも。地区で気になっていたところに対して,蟻高がレスポンスを出してくれたのでそれを書かないと。
60分で出てくるせりふの中で,私は「もう一人は嫌だ!」みたいなせりふですっごい拍子抜けしてたのです。地区大会で。確かにそうなんだろうけど,でもそこなんですかという気がして,お芝居に限らず普段の生活の中でも,いざというときの一言って難しいな~と思っていたのです。
今回は「俺はどうしたらいいんだ!」みたいなせりふになってて(←わたくしの記憶がいろいろ合っていれば…),あぁよかったーと思いました。混乱した感情を混乱したまま抱えるってすんごいしんどいしつらいと思うのだけど,それを表出できるって力だなーと思うので。イケメン吉野の迷う部分に人間味があって,良かったです。

そうそう。講師の中屋敷さんが言ってて私も気づきました。イケメンだよね,吉野。笑←隙が見えないという意味で。
中屋敷さんのイケメンコメントを受けて,例えば『永遠の0』は,宮部の評価が真っ二つなのがいいんだろうなとしみじみ思いました。一部の人からはダメダメ人間の評価を受けまくっていたけど,別の人から見れば超強くてあこがれの存在だった!みたいな二面性が見えることで立体的な人間として立ち上がってくるんだろうな~って。そうか。蟻高のこの作品がクリーンに見えるのはそういうところかと思わせてくれたので,中屋敷さんすごいです。笑

でもなんだか,初見のインパクトが大きかったので,今回は(あれ?)っという感じがしちゃいました。なんでだろう~。
最初のラフマニノフが気持ち小さくてあんまりガツンと来なかったとか,間合いが微妙にズレてる気がしちゃったとか(これはあくまで私の気),前回すぐ切れちゃったと思った曲が長くかかってて良かったといえば良かったのだけど,やっぱり聞かせる箇所は地区大会のタイミングだったなとか,細かいのだけど。でもそういうところの積み重なりなのかな。
多分地区大会が完成形すぎて,そこにさらに稽古を重ねて外れちゃった感じ。うまく言えなくてすみません…。(元々の質が高いからこそ感じることなんだと思います。)

あと改めて,作・演出・出演を一人の生徒さんが担当されるって才能がないとできないなと思いました。
私達は高校時代これだけには手を出さなかったので未知の領域です。客観的に観るひとが内部にいないと作品が迷子になっちゃうだろうなというのが私の昔からの感覚で,中学の先輩が高校に進学されてこれをやってたときには(どやどやしててものすごい自信だわ…)と思っていたのを思い出しました。良い悪いとかではなくて。野田秀樹以外にもできる人いるんだーって。笑
私の愛する競技・フィギュアスケートで言うと自分で曲を決めて振付して衣装作って滑るようなものなので,なんと大変なことなのでしょう…。今回の蟻高はものすごいどやどや感…は感じませんでしたが,じわじわとした自信は感じられました。高校演劇で3役兼任は賛否両論あると思いますが,メンバーが覚悟してOK出してもらえるなら,続けられると良いですね…。とりあえず私にはできないワザです。笑

中信のニンゲンとしては関東に行けなかったことはすごーく悔しいですが,県大会の舞台でこれを拝見することができたことには,とても満足です。12月末には恒例?のMウィング公演もあるらしいので,良いまとめの舞台になりますよう。
蟻高の皆さん,お疲れ様でしたー。

第32回長野県高校演劇合同発表会 長野県屋代高校演劇班『A・R ~芥川龍之介素描~』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@東御市文化会館サンテラスホール

作:如月小春
潤色:長野県屋代高校演劇班
出演:長野県屋代高校演劇班

今年の8月に北信地区大会デビューしてしまった私ですが,デビューに至った一番の動機としては長野東の公演を観たかったこと。その次の動機を挙げるなら,屋代の『A・R』を観たかったこと。だと思っています。昨年から同じこと何度も言ってますが,この学校はカサハラホイホイな学校です。(過去の屋代の記事をご参照くださいまし…。)

北信地区大会をパスしたと知ったときは,納得半分意外半分という感じでした。キャストさんに力があるのは文化祭公演でも地区大会でもすごーく感じたのですが,演出がすんごいごたごたしていて,(なんだかカオスだしもったいない…!)という印象があったのです。例えばせりふの出どころと照明当たってるところが全然違ったり,多分屋代が見せたいところと私達に見えているところにギャップがあったりとか。その混沌さそのものが「作家」の内的世界なのかもしれないけれど,私は(うぅ~ん…)と思っていたので,お芝居の評価っていろいろあるなーと改めて思ったのでした。笑
しかし県大会が決まったということで,ホール版の公演を2回観たら何か私の中で変わるものがあるのかなというところと,地区では平台がものっすごーく上り下りしづらそうだったので,そこをどう改良してくるんだろうという期待を持ってこの時間に臨みました。

まず幕が開けて,真っ先に気づいたのはやっぱり平台。
超!超平べったくなっているーーーーー!!!
地区ではあの半分の高さで良いのではと思ったのですが,半分どころかもっともっと低くなってて,役者さんも移動しやすそうでした。笑
あとで屋代の役者さんに伺ったのですが,あの平台の設計図は北信地区大会で講師の先生として審査されたわこ先生が屋代の皆さんにプレゼントしてくださったのだとか。私は先生の超教育的・超支援的な姿勢に驚きを隠せません…。なんというひとなの…!(そういうエピソード聞いちゃうから,わこ先生と一度お会いしてみたいというかお話を伺ってみたいというかお酒の席にご一緒したいという私のぷち夢が膨らんでゆくのよ…)

そして県大会の講師の先生は「作家さんって女の子ですよね?」みたいな確認をされていて,なんか改めて私も彼女の幅の広さに気づかされました。私もここは文化祭のパンフレットを見た時点で(え?)と感じていたのですが,お芝居が始まったら全然気にならなかったな…ということを思い出しました。多分他のキャストさんでは成立しないというか,あの生徒さんが演じるからこそ成立したんだろうなーと思います。

屋代版『A・R』を3回観て思ったのは,今回が一番すっきりして見えたかなーということ。でもやっぱり惜しいなと思うところがあったということ。昨年の『南京』みたいに,一歩一歩確かに「おっ」と思えるいいとこポイントが増えていくのだけど,何か惜しいところが残る(ように見える)なという印象です。

今回の一番もったいなかったポイントといえば,間違いなくセンターにあるコロガシ。なんか,あのひと(ある意味,ひと。笑)がどセンターを陣取って他のキャストさんがよけよけして演技しているように見えて,もったいなーい!と何度思ったことか。笑
照明の使いどころとしては効果的なのだと思うのだけど,置く場所とか角度とか,もう少しすっきりしてると良かったなと思います。

すっきりと言えば,階段状の台がいろんなシーンで出てくるのだけど,細かい話(『羅生門』のエピソードとか『良秀』のエピソードとか)のあとに挟まれるぷち場転が,私はなーんかずっと(文化祭とか地区とかから)気になっていて。次のシーンが始まってるのによいしょ~と動かしているのがすんごく目立って見えてしまって,むむむーと思っていたのでした。(動かしてるひとが照明の光の中に入っちゃってるのも,むむむと思ってしまう要因)
わざとというより緻密さを欠いている感じで,そこがより一層混沌さを増していると思うと,シーンとシーンの区切りをきちんとつけるって重要だわ…と思いました。

そうそう。『羅生門』で思い出した。今まで,あそこのエピソードの入り口は作家の妻が担当(?)してたと思うんですが,今回は子ども達なのが良かった!
文化祭や地区のときは(ただそれだけのために着替えて蝋燭持ってたんですか!?)という無駄さというか効果的でない感じを見ていたのでむむむむと思っていたんですが,子どもが導入になるの,良いですね。自分の父親がどんな仕事をしているか興味を示しているのもわかる気がして。うん。良かった。

あとはもう3回も観ちゃってるので,その足音が観客にどう聞こえるかとか把握しているのだろうかとか,階段落ちが遠くて残念すぎるとか,良秀がとち狂って絵を描きまくってみんなばしゃーんと倒れるあたりはやっぱりおぞましくて良いなとか,作家の妻役の方の目が今回も素敵だったとか,歯車の映像は文化祭の天井投影がいちばんインパクトあったとか,上下の着替えやスタンバイの美意識よとか,いろいろ思っていても見慣れてしまった感があるので,自分でもよくわからなくなりつつあります。すみません。笑
でも,文化祭~県大会のパンフレットを見てみると毎回人の名前が違ったり配役が違ったりしていて,一公演一公演打つのが大変なカンパニーさんなのかなと思うと,お芝居として毎回一定の質に仕上げているあたりは,この学校の力なのかなと思います。

あの『南京』と言い今回の『A・R』と言い,2000年代の中信のひととしてはとっても気になる作品をセレクトしてきた屋代さんが今後どういった舞台に取り組まれるのか,ひっそり見守っていきたいと思います。
屋代のみなさん,お疲れ様でしたー。

第32回長野県高校演劇合同発表会 長野清泉女学院高校演劇部『宇宙の子供たち2015』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@東御市文化会館サンテラスホール

作:クリアウォーター
出演:長野清泉女学院高校演劇部

(あれ。地区と今回ではタイトルも作者名も変わっている…!)

今年は本当に…何を思ったのか北信地区大会にまでお出かけしてしまった私…。2日目しか観なかったのですが,清泉を観た時は嬉しいような切ないような,なんとも表現し難い気持ちになっていたのでした(地区の感想はこちら)。

そう。私の中では印象に残った作品だったのですが,北信地区大会のパンフレットってフシギで,キャストさんの名前もスタッフさんの名前も載っていなければあらすじも何もなく,タイトルとイメージ画しか情報ありません…みたいな感じの学校が多くて,清泉も例外ではなかったのです。なのでお芝居以外の情報がほぼなくて。今回やっと役名とマッチしたみなさんのお名前がわかりました…。

おそらく地区から県の間でキャストやスタッフに変更はないと思うのですが,ほっとんど1年生さんなんですね…。ちょっとびっくりというか,2年生がすごくがんばったんだろうなーと,パンフレットを見てまず思いました。自分の学年の倍以上の人数の後輩…!たたた,大変…。
でもってお姉さんとかお母さんのエイリアンとか民生委員カグヤとか,地区で観た時は1年生感が全然しなかったので(そのひとが実際何年生であっても,感じるのも変な話だけど。笑)これまたびっくり…。
←あ。あと今回のパンフレットには,11年前のものがベースになってるという記載がしっかりあったので,もやもやがなくなりました。笑

一度観ているのでストーリーがアタマに入っている分,(あぁこのせりふは既にそういうことを意味してるのね…)というのが今回たくさんわかりました。月のご近所会議とか。笑
うさぎマダム達が「見ちゃったのよォ~」みたいに言ってるところの,ケンジの察した感というか,目がとても良かった…。自分達にとって不快な響きの言葉を彼らはきちんとわかっていて,そこから弟を守るお兄ちゃんは私の胸を苦しくさせていました…。
あ。今回は地区よりも前の席で観たので,新たな発見…。タダシの足にちゃんとアザというか,内出血的なものが見えたので,細かい~と思いました。(松川高校の『べいべー』のさくらちゃんの首のよう…。“の”がいっぱい…。笑)あとワッペンがロケットなのがとても素敵。

そう!話がわかってるからなのかわからないのだけど,結構しょっぱなから2人がネグられてることがばっちりわかってしまっていて,見ようと思えば話の結末って見えちゃうのかも。とも思ったり。前半にもうちょっと,そんなこと思いもよらない!というくらいテンション高くて楽しくてもいいのかなーとか思ったり。実はかなりネグられてましたは,もう少しあとでわかっても良いのかなとも思ったり。裏切られたいなと思ったり。でもこれはストーリーがわかってしまっているからそう感じるのだろうかー。うーん…。マッチ売りの少女じゃないけど,マッチの炎を見ている瞬間はどっぷりその世界(寒くも空腹でもない世界)に浸れたら,前半と後半で温度差のあるお芝居になるような気も…。いやいやしかし…。うーん…。(もんもん)

技術的なところで言うと,ロクスケとお姉さんの登場は,やっぱりもう少し前がよかったなぁーと思いました。全体的に,清泉の皆さんの声量がなんだか惜しい感じで,気持ち,もう少し大きめで聞きたかったなと思います。それであの奥行きなので,客席の後ろの人はちゃんと聞き取れたのだろうかとか考えちゃいました。視覚的にも聴覚的にも,もっとばばーんと来てほしいです!だって本来もっと面白いだろうから!笑 関東に期待です…。

はっ!技術といえば!
タダシのムーンウォークはすごかった!(北信でもやってた…?と思うのですが,なんか今回はおぉ~って思ったんですよね。なんでだろう。今回は会場全体がおぉ~ってなってたからかな。)私,不器用の塊なので…。絶対ああいうのできないので…。身体表現できるひとって本当に尊敬しちゃいます。

でもって,高校演劇であろうがプロのお芝居であろうが,私は演劇が演劇である必然性が見えるお芝居が好きなのです。映像ではなくて,今ここで演じることに意味があるもの。演劇にも限界があるから,それよりは映像で表現した方がいいものも,必ずある。演劇は万能じゃないと思うので。
清泉のお芝居はちゃんと必然性が見えて,それはお母さんがケンジとタダシにカレーライスをふるまうところに集約されているかなーと思います。空想の世界に浸りたい・浸っている幼いタダシと,空想の世界に浸りたくても,限界を感じているケンジ。私達観客も2人が空想の世界を生きていることはわかっていて,ただの椅子や電話やラジオを宇宙ステーションや宇宙船に見立てて2人の世界を見守っているのだけど,ケンジが決定的に醒めた瞬間に私達も醒めてしまうというか,空想の限界を自覚してしまうというか。それは映像では感じ得なかった感覚だろうと思います。
(…という文章を書きながら,もしかしたら郷原先生の作品って映像化とかできるんじゃないかとふと思ってしまった。シチュエーションを描いている作品が多い気がするから。)

ぽんぽん思いつくままに書いててすみません…。
あとはケンジとタダシの「うわぁ~!」って表情が子どもらしくてとっても素敵だなと思ったのと(ほめてる),最後の星空含めたラストシーンが素敵だったのと。ケンジとタダシ役の方がホントにボーイッシュなショートヘアなので,気合いも感じますよね…。県大会の記事で何度か「男性が男性役なのが素敵」と書いてはいますが,やっぱり小学生男児は女子高生でも全然いけますね…。というか女の子だから,弱さとか,脆さがより表現できているのかな。北信地区大会の時の感想とかぶっちゃいますが,やりたいこととやれることの一致って,自分達を見せる上で重要だなーと思います。

パンフレットをざざっと見ただけですが,9年ぶりの関東ですか…?ながみねさんやてらにしさんも喜ぶだろうななんて勝手に思ってます…と思ったら,お二人は清泉じゃなくて日大ですね。あぁ…私の北信=私立の意識が強すぎる…。笑 とにかく,私は清泉がバリバリ強い時代のニンゲンなので,帰ってきたなという感じです。
長野県らしい作品だなとこれまた勝手に思っているので,それをさいたまで出してきてもらえると嬉しいです。あと,長年観よう観ようと思って向き合ってこなかった映画『誰も知らない』を,関東までにはちゃんと観たいなと個人的に思います。
長野清泉のみなさん,最優秀&関東出場おめでとうございます。そして,お疲れ様でしたー。


(2015.12.9追記)
タダシくんの足について。
この学校の生徒さんによると,なんとアザは偶然のようです~。笑
でもそれが彼女達の意図したものでなくても,私にはキャストさんのものではなくタダシのものに見えたのだから,それでいいのです。(なるべくしてそこになったんだと思います。アザ。)

第32回長野県高校演劇合同発表会 長野県上田染谷丘高校演劇班『カラクリヌード ~わたしはわたしを改造スル~』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@東御市文化会館サンテラスホール

作:すがの公
潤色:上田染谷丘高校演劇班
出演:上田染谷丘高校演劇班

高校演劇を観るようになって今年で15年目。地元の中信地区をはじめ,いろんな学校のお芝居をちょこちょことかじってきた私ですが…

初!上田染谷丘!県大会に何度も出場されている学校ですが,タイミングが合わず今までずーっと観られずにいたのです。今回出場校と演目が決まって,中信の若者達(高校生)がTwitter上で「上田染谷は『カラクリヌード』やるんだ!」みたいに言ってて,(うぉぉ,知ってるひとは知ってる作品なのか!)と思ったのを覚えています。

お昼休憩前の最後の枠。私のお腹も空いてくる中での観劇。
でしたが。
お腹が鳴っても全く問題ないくらいの,

シャウト!!!!!!(゜゜)シャウト!!!!!!!!(゜゜)(゜゜)(゜゜)

ものっすごい,ものっすごい熱量でした。どびっくり!
しかもそれがほぼ60分続くので,なんてアドレナリン出まくりの舞台なんだ!
(私は個人的にシャウト系がだめなのでヒャーと思いながら観ていましたが,やりたいことは強く強く伝わってきました…。)

すんごい,せりふが弾丸のように客席に刺さってくるのですよ…。幕開けから,ものすっごい。前の枠が茅野で,会場も茅野に魅せられた感が溢れていたのですが,一気に染谷モードになったのが感じられました…。
弾丸のようなスピード感あるせりふって,聞きとれなかったら元も子もないと思うのですが,ちゃんとバシッと聞き取れたのでさらにびっくりでした。しかも一人が言うせりふではなくて,群唱(って言うの?複数人で同じせりふ言うやつ)でキレイに揃っていたから,おぉぉ~っと思いました。

あ。舞台装置の話を…。一校目が終わったあたりでお手洗いに寄ったのですが,その近くが大道具スペースになっていたようで。「上田染谷丘」って書いてあったエリアにはダクト?みたいなものが置いてあって,(おぉぉ。なんだなんだ。)と思っていたのですが,幕が開いて納得…。衣装も含めて舞台全体が黒っぽかったのですが,そこに銀の歯車やダクトが映えていてよかったです~。
そう,黒って全部潰れちゃうから結構チャレンジな色だと思うのですが,モグラの皆さんとかが衣装で積極的に使っているから,攻めの姿勢を感じました。逃げの,「とりあえず黒」って使い方ではなく,質感とかシルエットにこだわりがあって,いいなーって思いました。

そうそう。舞台装置も衣装も抽象的で,せりふを追わないと今ここがどこなのか危うくなる舞台なので,油断してると(あれ。これどこの何のシーン!?)ってことになりかけて大変でした…。一人で何役もやっているし,似たような衣装だし,若干迷子になりかけた…という,報告です。笑
きっとこの抽象具合がこの作品の魅力で,どこでもなくてどこにでもなるから,地下6,000メートルでも月の見える場所でも超越できるのだろうと思いました。

抽象的な話のついでに,マイムのことを…。いろんなシーンでモグラ達が各々自分の仕事をしているんですが,あのモグラ達の動きが良かった…!マイムがキレイだと私は(わぁぁ♡)となるんですが,なりましたよね…。あぁいうキチキチっとした動きって,神経をピンとさせないとできないし,甘く体を動かしてると一発でわかるのですが,このモグラさん達は良いお仕事をしていました…。思わず見入ってしまった…(´v`)

あと,他の学校でも思いましたが,男性役を男性ができるってとても良いと思うのです…。演劇というと女子っぽいイメージがあるようで,実際女子ばっかの学校もありますよね。あとあと,やりたいこととやれることで折り合いつけるのって大変だと私は思っているのですが,今回の染谷さんはロク助も権藤も男子生徒さん!やりたいこととやれることがきちんとマッチしている!だからリコを奪い合う(?)ところなんかも非常に見応えがありました。素敵なカンパニーですね…。貴重な男子部員…。やれることすごく多そうですね…。いいなーって思いながら観てました。笑

はっ!そうだわ。照明の話もしなければ。
光が,光が素敵なお芝居だったのですよ,これ!
私も昔は,舞台の照明は「暗くなってしまわないように」つけるものだと思っていたんです。
が,2008年に世田谷パブリックシアター制作の『春琴』を観てから価値観がガラリと変わり,暗さには意味があると思うようになったんです。今回の染谷も,地下6,000メートルを光量で表現していて,このあたりにもこの学校の攻めの姿勢が強く見えました。普通だったら「暗いわ~」と思われてしまうところだと思うんですが,かなり攻めてた!暗いからこそサイリウムもカラフルで効果的でした…。(ももクロの色しか出てこないなと思っていたら,そのうちそれ以外の色も出てきたので安心しました。笑)

講師の先生も仰っていたように,発信する力はすんごくあるカンパニーなので,キャッチする力も見えてくるともっといいだろうなぁと思います。遠いから叫ぶのでしょうけど,届けたいから叫ぶのでしょうけど,聞こえていること,届いていることを信じて発信できたなら,そのやり方もちょっとずつ変わってくるんじゃないかな。このあたりはまだまだ伸びしろがありそうです。

染谷の方によると3月末に再演があるようなので,ここからどう改造スルのかが楽しみです。笑
県大会作品をちゃんと練り直して世に出すって,とっても大切なことですね。ひとつのものをきちんとまとめて収めるって,大事な力だと思います。きっともっと洗練された舞台になるんでしょうね。
上田染谷丘のみなさん,お疲れ様でしたー。

第32回長野県高校演劇合同発表会 長野県茅野高校演劇部『話半分』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@東御市文化会館サンテラスホール

作:郷原玲
出演:長野県茅野高校演劇部

2010年代の長野県を引っ張る茅野高校のお芝居を初めて観たのが昨年の県大会。あれから1年。今年は諏訪地区の代表が一校になってしまったようなのですが,また県大会で茅野のお芝居を堪能することができたのでした。

『話半分』は昨年松本美須々ヶ丘高校が文化祭でやっていたということ,そしてもっと昔に茅野が上演していた…ということだけ知っていました。戦争モノというか,そういう時代の話ということも辛うじて知っていて,あとは未知数でした。

…なのですが,幕が上がった瞬間,
(あの中に美須々のひといるんじゃないだろうか…)
と,本気で思ってしまいました…。
9月の中信地区大会で美須々の『木の葉に書いた歌』を観ていたので…。あれもほぼ同じ時代の話だったので…。

昨年茅野の『夜長姫と耳男』を観た時も(美須々っぽ~い!)と思ったのですが,今回も思ってしまったのです…。なんだろう。雰囲気?演出の仕方??

多分,多分の話ですが,きっと郷原先生が演出されても,今回に近い舞台になったんじゃないかと思います。
何が言いたいかと言うと,3年生の皆さんがしっかり郷原先生の本をモノにしていたということです。
実質1年くらいしか一緒に活動する期間はなかったと思うんですが,それでもちゃんと,郷原先生の栄養を摂取して,育ってる。そんな感じがしました。今年の中信地区で言えば松本蟻ヶ崎高校みたいな感じ。そういう栄養のシャワー浴びたらそう育つよね,って。ニュアンスがうまく伝われば良いのですが,ほめています…。

講師の先生も,演出や舞台セット,衣装,照明にきちんとプランナーがいるとお話されていましたが,私もそれを感じました。スタッフががっちり3年生の皆さんなので,意図も明確だし,魅せ方がわかっているし,3年生の集大成の作品になっているなと感じました。ここがしっかりしているから,キャストの半分が1年生さんでもがっちりしていて完成度が高いんだろうなーと思います。
(とっても個人的な話ですが,私もその昔3年生で県大会出させてもらいましたが,私はほわほわしてて,後輩達に連れてってもらった感がすごいあったんです。でも茅野は,3年生が連れてきたなという感じ。3年生がしっかり責任果たしてて,すごいなーと思いました。)

そうそう。舞台セットの話。ちょっと脱線しますが,私,今年の9月にKERA・MAPの『グッドバイ』を観たんです。長野県と東京都の高校演劇地区大会の翌日に観た久々の商業演劇だったので,とにかく規模に圧倒されたのを覚えてます。この『グッドバイ』にはドラマや映画みたいにオープニングがちゃんとあって,キャスト一人ひとりの名前や作者名,タイトルなんかが映像でババーンと出るんです。さすがケラさん。
そんでもって,『KERA・MAP #006 グッドバイ』と出た時に,(こういうことやる高校演劇ってあるんだろうか。タイトルとかキャストの名前とか出す高校演劇って。)とかって思っていたのでした。

あれから2ヵ月。まさかの!茅野,舞台上にタイトルが出る!!!!(゜゜)

視界に入った瞬間,ハッとしました。超かっこよかったです。いつか来るのだろうかと思っていた日は今日だった!みたいな。笑
いやー。たまらなかった。
茅野の部員さんのTwitterをフォローさせていただいているのですが,その方によるとタイトルは偶然の産物だったっぽいです。お金をかけなくとも,高校生の自由な発想であんなに素敵なものができちゃうなんて。すごいなぁと思いました。

さてはて中身の話へ…。
去年耳男として狂気をぶちまけていた方が今年も大活躍していました…。タッパもあるし,男性が男性役やってるっていいなーって思います。演出もできるし役者さんもできるって,あの生徒さんすごいな…。(しみじみ)
そうそう。やっぱり兵隊さんって男っぽいひとがやる方が,映えるよね(タッパとか体格とか)。役柄によるのかもしれないけど,今回の場合は何というか,シゲル役の方がちゃんとシゲルを掴んでいた感じ。終始このひとに魅せられたなぁ。プロ兵士(職業軍人?)じゃなくて,出征するまでは普通の学生やお仕事してるひとで,本当は人殺しなんて怖くてできないという人柄…みたいなものが,表情から見えたなと思います。背伸びしてない感じが自然体で良かった…。
でもって男のひとがやるからこそ,下ネタが面白い。笑 仮にどんなにカッコイイ女の子がシゲル役でも,下ネタって女のひとがやったら成立しないんだろうな~なんてことも思いました。

あと,私はキャストさんの髪が伸びた具合を見て(あぁ月日が経ってる~)と思うことがあるのです。例えば松川高校の『べいべー』ではさくらちゃん役の方が関東から全国の間で髪型チェンジしていて,ひとつに結わえてるところを見たときなんかに感じました。(なんかここだけ読むときもちわるい人ですね。)今回はハツエ役の方がそんな感じで,高校3年間の貴重な時間の一部を切り取って見ることができたような気持ちになりました。前述したように今回の茅野のキャストは1年生の方が半分だったので,ハツエさんがとっても安定して見えました。
はい。それだけ。オチも何もなくてごめんなさい。笑

魅力的な舞台だっただけに,やっぱり全てにスピードがついちゃってるというか,大切にすべきところが落っこちてしまうのはもったいないなぁというところもありました。
例えばひのまる銭湯のご近所の着物マダムが出てくるシーン。早替え大変なんだろうな~とはわかるのだけど,一回ものすごーく着崩れちゃってるところがあって,見ているこちらがアワワワとなってしまいました。演技は落ち着いて見られるのに,その他の部分で意識は持っていかれたくないなーというのが正直なところでした。
あとシゲルが敵と戦うシーンはもう少し丁寧に見たいなとも思いました。ミドリが母親に「息子さんはただ逃げてただけじゃない」と伝えるところがあったのですが,ミドリちゃんがそういうからにはどれだけ勇気を振り絞って戦ったんだろうと,観客としては気になったわけです。が,なんか敵に襲い掛かったーと思ったら回想シーン終わり!!!…みたいになった感じがして,(え!これで終わり!?)って思っちゃったのです。やるんだったらきちっと結果まで見たかったなと思ったり。全体的に生き急いでいる感があったのですが,見せたいシーンはたっぷり尺を取って良いように思います。講師の先生も仰ってましたが,幕開きであれだけ見せてくれたので。

あ。あとあと,ミドリちゃんのお芝居がちょっと癖っぽいというか,ちょっとへっぴり腰というか,視線が若干斜め上のモノローグなのはそういう仕様なのだろうか…とも思ったり。変な意味で「郷原先生の舞台っぽい感じ」になっている気がして,むむーと思ったり。←私が正面で喋るお芝居がそこまで好きじゃないので。好みの問題なのかと思ったり。
あとあとあと,ムズカシイかもしれないけどもうワンサイズ小さいセーラーがあればいいな~とも思ったり。
(でもミドリちゃんが片耳不自由という設定だったのは面白かったです。最初は集中が苦手の空想好きさんなのかと思いきや。意外でした。普段難聴含めいろいろな障害をお持ちの方とお会いしている仕事のひととしては,その年まで本当に気づかなかったんかーいと思ってしまいますが。笑)

2年連続の関東って,運と実力がなければできないと思うのですよ…。どちらもしっかり持っている茅野高校,スゴイです。本当に,この舞台は3年生の力(3年生の皆さんがもともと持っている力と1・2年を育てた力,そして育てられた1・2年生の力)がよーく見えるお芝居でした。卒業の約1ヵ月前までお芝居できるなんて。いいなぁ。長野県に与えた衝撃を,さいたまの地でも与えられますよう…。
茅野のみなさん,優秀賞&関東出場,おめでとうございます。お疲れ様でしたー。

第32回長野県高校演劇合同発表会 伊那西高校演劇クラブ『人と生まれた悲しみを知らないものは…』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@東御市文化会館サンテラスホール

作:伊那西高校演劇クラブ
出演:伊那西高校演劇クラブ

昨年に引き続き,やってきました長野県大会!昨年は2010年代の長野県事情についていくのがやっとだったんですが,今年は長野県内の9校の文化祭におでかけしちゃったり,地元中信に加え北信地区大会におでかけしちゃったりして,かなりがっつり追い付いた感がある中での県大会でした。

そうそう。昨年のパンフレットでは,伊那西は3年連続3.11系のお芝居をやっていると書いてあったと思うのです。それを読んだ私は(しんどいのによくがんばるなー)と思った反面,(いつまで続けるのかなぁ)とも思ったのを覚えています。現実に目を向けるのはとても大切なことなのだけど,もしそれに縛られていたとしたら,それはちょっとつらいことだろうなぁと。
でも大会前に長野県高校演劇連盟のwebサイトを見てみると,今年はどうやら違う感じだったので,ちょっと安心しました。でも,文章がなんだかムズカシイ!タイトルもなんだかムズカシイ!…もう流れに身を任せて観ることにしました。笑

2004年の『π』や昨年の『千年神社』で, 伊那西=セットすごい のイメージがあったので,今年はどんななんだろう…と思いながら観たのですが,とってもシンプル!ああいう組み合わせられる箱とかリバーシブルなやつ,好き!コンパクトに舞台を回せていいですね…。

そしてなんといっても,組み合わせると「大」「脳」「皮」「質」とか「海」「馬」とかってなる傘が面白かった~!一つの傘にどーんと一文字,「大」とか「馬」とか書いてあるのです。「馬」の傘とか,ホントに馬描いてあるし…。あぁぁ正面から見てみたかった。(あれ描くの面白そうだけど,大変そうだな…)(蓄光塗料とかで描いても楽しそうだな…)
でも選んでいる言葉はすごくピンポイントで,大脳皮質と海馬のセットが2つずつだったなと思うんですが,どうせなら前頭葉とか側頭葉とかもあったらもっと楽しそうだなーと思いました。いくつか傘が集合してくるくるするシーンが何回かあったと思うのですが,集まってる何かで一語ができているのかと思いきやそうでもなかったので,集合すると「海馬」「側頭葉」とか有意味語になるとハッとなった…かも…しれない…。
傘っていうモチーフ自体はとても素敵でした…。くるくる回ると過去の記憶を呼び起こすような,暗示的なものに見えたり。つらいものから守ってくれるものになったり。

あと視覚的なところで言うと,みかんちゃんが弾に当たってしまった瞬間の赤いハラハラが落ちてくるところ!!あそこが印象的でした!きれいだけど残酷で,でもやっぱきれい!はっとする瞬間でした。それだけ言いたかったです。笑

お芝居の中身の話にいくと…りんご役の方って,去年も『千年神社』に出てた方…ですよね?手元に昨年のパンフがないので確信が持てないのですが,昨年もおばあちゃんらしさがあるスゴイ方だな~と思っていたのでした。決して老けているという訳ではなくて,声の質とか,細かい所作がそれっぽく見せてるという感じで,いいもの持ってるな…って。高校生がおじいちゃんとかおばあちゃんって難しいなぁといつも思っているのですが,自然と本気でおばあちゃんに見えてくるから,スゴイ。笑 車イスの操作も鮮やかで,こなれてる感がしてよかったです。

あとみかんちゃんもよかった…。ロボットだけど感情がある…と,人間と何が違うのか?ってなっちゃう可能性もあると思うんですが,みかんちゃんはなぜかちゃんとロボットに見えました。なぜだろうか。姿勢が良かったのかも。背筋がピンとしてるからそう見えたのかも。私は姿勢わるわるなので,ちゃんとキープできるのってすごいなと思います。

ただ講師のいわいのふ先生も講評で似たようなこと仰っていましたが&私も昨年から…いや2004年のときも思ったのですが,せりふがちょっと癖っぽい感じがして,そこは好き嫌い分かれるところかなと思います。いかにも舞台!という喋り方。うまく文章にできないけど。変に抑揚がついてしまうと逆に感情移入しにくくなっちゃう感じが私はするので,もう少し自然なせりふの出だと聞きやすくなりそうだなーと思いました。

今改めてパンフレット見返してみたんですが,伊那西ってこれで6年連続の県大会なんですね…。すごいですね…。きっと長年培ってきたノウハウとかお芝居のつくりかたみたいなものがあるので,それに手を加えるのはとっても大変だと思うんですが,意図せずついてしまった癖であれば取れていけると良いのかなと思います。上伊那は小さなブロックで,一校一校の影響って大きそうなので,どこかの学校がボトムアップすればブロック全体のベースの力も上がる気がします…!そのどこかが伊那西さんになっていけると良いなぁなんて,部外者ながら思っております。

…なんて出しゃばったことも書いてしまいましたが,毎年一定レベルで公演が打てるってすごいなと改めて思いました。でもって私は仕事でアタマのこと(記憶とか認知とか学習とか)を考えたりしていて,そこから(人を人たらしめるのは記憶だな…)とうっすら思っているので,この作品はとってもとっても興味深く拝見することができました!私の最後の記憶は何になるのかななんて考えちゃいました。
伊那西の皆さん,お疲れ様でしたー。

Friday, November 13, 2015

パルコ・プロデュース公演『オレアナ』

(PARCO劇場公式webサイトより)

作:デイヴィッド・マメット
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也

出演:田中哲司/志田未来

この公演情報を知ったときから,びびびびーっときていて,観たいーーーー!!!と思っていた作品。

だってだって
①志田未来ちゃん出る
②田中哲司出る
③マメット!!!

この三拍子揃ってて,観ないわけがないのです。

①私…。志田未来ちゃんが好きで…(*´艸`*)ドラマ『14才の母』にはまってリアルタイムで観ていたのですが,主人公が未来ちゃんじゃなかったらはまらなかったかも。声と,ひたむきな演技がとても印象的だったのです。子どもにとって父親役の三浦春馬くんがなんだか棒読みな演技だったので,余計未来ちゃんが際立っていて。笑 私の中で2006年のあのシーズンを乗り越えられたのは,このドラマがあったからと言っても過言ではありません!

②いやもう,好きなのですよ…。近年は映像にもいろいろ出てますが,でもやっぱ舞台のひとだと思うので。最近観た作品だと葛河思潮社『背信』がたまらなく素敵で,キュンキュンさせられたものです。笑
その田中哲司が志田未来ちゃんと化学反応を起こしたらすごい濃密な時間になるに違いない!と思いまして!

③マメット作品は,2年前に世田谷パブリックシアター制作の『クリプトグラム』を観ていたのですが,あれは言葉の仕掛けがあるホンで,2回観たのだけどつまりなんなのか掴めないまま自分の手をすり抜けていった気がして,そもそも翻訳してる時点で言葉の仕掛けに気づけるのだろうかとか思ったりして,もにゃもにゃしていた作品だったのでした。
そのマメットがディスコミュニケーションを描く…。面白いに違いない!

ということで,気合いを入れてチケットを確保してしまいました。
偶然にもアフタートークが付いている回で,残って聞いていこうか迷ったんですが,翻訳の小田島さんとゲストの湯山玲子さんの話を聞いてようやくこの作品の輪郭がつかめてきたような気がしました。

まず…期待の未来ちゃん。あぁぁ,初舞台とは思えない!
やっぱり声が素敵で,ちゃんと通る声で,でもそこだけじゃないので,舞台でも通用する女優さんなんだなと思うことができました。最初の小鹿のようなぷるぷるした感じから,知識と言葉を身にまとった二幕三幕(でいいのかな?)あたりの未来ちゃんは強くて強くて。化けっぷりを体感することができました。あと目も素敵で,視線一つでキャロルの心の動きが見えて,堪能できました…。笑
そして最後の絶叫もトリハダ立ちました。あぁぞわぞわ。(ほめてる)

アフタートークで小田島さんは田中哲司演じるジョンのことを,「どうしても田中さんの人柄の良さが役ににじみ出ちゃう」みたいにお話されていたんですが,私はあまり田中さんの素って知らなくて,これまで観てきた作品も『SISTERS』とか『背信』とか,ドラマだと『雲の階段』とか,なんかちょっと癖があってやな感じの役が多かったので,今回もそんな感じで観ることができちゃいました(笑)。自分のことが大事で,控えめだけど確かにどやどやしているから,自分がどこでミスしたかを俯瞰して見ることができない感じのひと。
あ。そうそう。電話が何回もかかってくるけど,家族との関係も決して滑らかではないことがちゃんと伝わってきて。実力のある俳優さんなんだなぁということを改めて感じました。

ディスコミュニケーションを取り上げているお芝居ということだけど,確かになんだかとっても噛み合って,ない!!!!!笑

言葉だけ追っていくとわけわからんことになるので,雰囲気を味わおう~と思って観ていたのですが,なんか,(え。その言葉のその部分取るの!?)みたいなことの繰り返しで,何がどう噛み合っていないか説明できるかと聞かれたら多分できないのだけど,細かい部分の拾い合いというか,(聞きたかったのはそこじゃない!)の繰り返しで,言語面のディスコミュニケーションっぷりを感じることができました。
それに加えて,本人が意図していないノンバーバルな部分がメッセージとして乗っかって相手に届いて,そこが「セクハラ」になったのだろうと思います。例えばジョンの,女学生に対する無意識的に軽くあしらっている態度とか。さらにキャロルは家も財産があるお家とは言えないから,より一層彼女としては不快なものを受け取ってしまう。ジョンはそんなつもり全くないのに,要素要素を繋ぎ合わせると本人が全く予想だにしていなかった事態に陥っている…みたいな。

アフタートークの内容も借りると,女性は感情を揺さぶる役割を持っているから,そこに知的な要素を組み合わせるとものすごい強い存在になるというのはなるほどーと思いました。そしてそういう存在に追い詰められていくと,暴力とか社会的にアウトな行動になって出てきてしまうのは,現代の日本にも世界各地にもあることなんだろうと思います。あぁこわい。例えばマララさんとかもこういうのに当てはまるのかしら…。

今回のパンフレットには,海外を含めた主要な公演履歴が掲載されていて,この期間とか回数を見ると,作品を観る側としては激しくインパクトのある作品なんだろうと思います。(日本では過去に長塚京三と永作博美がやったらしい。いいな…。なんかリアルだな…。)
でも,じゃあ,どうすればいいのか。この作品から何を学ぶのかと問われた時に私はまだうまく言語化できなくて,そこはちょっと宿題かなと思っています。こんなに文章書いたのに。笑
すみません…。

はっ!あと!
舞台装置がとっても素敵でした~。重厚感たっぷりで。
あと奥の給湯室的な場所の使い方がいいよね。照明で影絵だけになるやつ。影が怖くていい。
椅子やソファからその大学の質がわかる気がしたし,ラストのラストで積み上げてる本がだだだーっと倒れてくるのもよかった。一瞬時間が止まったような錯覚。プロのお芝居ならではの作り込みだったなと思いました。


初舞台の未来ちゃん,お疲れ様です♡
フライヤーやパンフの未来ちゃん,素敵です♡
実は意外とちっちゃい未来ちゃんが,おっきめの哲司さんと並ぶと超かわいかったです。笑
また舞台をやるときは,足を運びたいです!
あとあとパンフ読んでて,ハロルド・ピンターがこの作品の演出をやったらマメットが怒って不仲になったというエピソードも,なんかかわいくて笑っちゃいました。もう仲直りしたのかな…。←

Monday, November 9, 2015

世田谷パブリックシアター 現代能楽集Ⅷ『道玄坂綺譚』

(世田谷パブリックシアター公式webサイトより)

@世田谷パブリックシアター

原作:三島由紀夫 『近代能楽集』「卒塔婆小町」「熊野」より
作・演出:マキノノゾミ
企画・監修:野村萬斎

出演:平岡祐太/倉科カナ/眞島秀和/水田航生/根岸拓哉/富山えり子/粕谷吉洋/神農直隆/藤尾勘太郎/奥田達士/長江英和/田川可奈美/一路真輝

気になる気になるーと思っていた作品。観に行ってきました。
昨年もシアタートラムで『現代能楽集Ⅶ 花子について』を観ていて,超面白い~と思っていたのでした。
三島由紀夫が能や狂言を近代のものにブラッシュアップしたものを,さらに現代の演出家が今の世の中に向けて磨き上げるという試みが奥深い!と思っていたので,今回も出かけてきました。
そうそう。前回がトラムだったので,今回もそっちかなと思ったら会場違いました。超凡ミス。笑

観てみて。

こ,これは,三島由紀夫の元を読んでおくべきだった…と思いました。
目の前で起きていることはわかっても,元々のベースがわかっていないからイマイチ作品の奥深さに気づくことができず,もったいないことしてしまったと感じました…。しょんぼり。
なのでこの記事を書くにあたってWikipediaで「近代能楽集」について調べたのですが,あぁそういうことだったのあのシーンは…。と思うところがたくさんあり,なんとなく消化できたような,そうでもないような。「卒塔婆小町」の方は(あぁ~)となったのですが,「熊野」の方は(……はて?)という感じが残らないでもなくて。笑 す,すみません…。

この作品自体の入り口は「卒塔婆小町」なのだけど,まさかの舞台がネットカフェで,ももクロの「サラバ,愛しき悲しみたちよ」のボーカルなしverだったので(!!)ってなりました。私もこの曲好きで,収録されてるアルバムをももクロの中では唯一ウォークマンに入れてます。ぎゅいんぎゅいんでカッコイイよね。
そうそう。三島由紀夫の方では舞台は公園らしいのだけど,現代はネットカフェというのもなんだかわかる気がします。目的は様々で,いろんなひとが集ってくる場所。公園なんて明るく朗らかな場所なんかじゃなくて,ビルの一角に入ったネットカフェ。現代的だな,と。

今回楽しみだったのは倉科カナ。テレビドラマ『名前をなくした女神』や『ファーストクラス』をちらっと観た程度なのですが,きょるんとした感じ(うまく言えない…)がいい味出してるなと思って,舞台だとどうなるんだろうと気になってたんです。声が特徴的な女優さんなので,舞台でも存在感あって良いなーと思いました。あとサイズが小柄(それでも158センチあるのですね。意外!)なので,そこも舞台で輝くポイントになるだろうなーと…。今回だったら未成年という役がとっても馴染んでいて,後半の『熊野』とのギャップが良かったです。

作品の中で…。老婆とネットカフェの店員の男が話してるシーンかな。“人生は長く”みたいなせりふがあったと思うんですが,そこはうーむと考えさせられました。“長い”ことがいいのか,“深い”ことがいいのか。
私だったら…深い,なのかなぁ。何かがっつり,のめり込むものがあれば,人生を捧げるとか,人生を賭けるとか,そんなものがあれば,いいのかなぁ。そしてパッタリ死んでしまいたい感じ。
だけどラストシーンの,老婆を深草が起こしに来て,きゅっと抱きしめて終わるあのシーンはとてもきれいで,うわぁやられたって思いました。長く生きていたのはそのためだったのかなと思える感じ。きゅんときました。

ただ3階席だったので,特に男性キャストは誰が誰なのかいまいちわからんところがたびたびあり,残念でした…。キャストというより作品に惹かれて観た作品だったので,余計見分けに苦労しました。笑
できるものなら,キャストと同じ目線で観られたら良いなぁと思いました。

東京の,三軒茶屋で観るからこそ「道玄坂」が身近に思えて,過去と今がつながっていることをなんとなく実感できた気がします。舞台セットもシンプルなのに効果的で面白かった!水色の目つぶしライト(客席に向かってぱーっと出てたやつ)もキレイでよかった。
商業演劇にはない,三島由紀夫とじっくり向き合った作品だなぁと思えた舞台でした。

Saturday, November 7, 2015

映画『劇場版 MOZU』

◇STAFF
監督:羽住英一郎
脚本:仁志光佑
原作:逢坂剛
音楽:菅野祐悟

◇CAST
西島秀俊/香川照之/真木よう子/池松壮亮/伊藤淳史/杉咲花/阿部力/伊勢谷友介/松坂桃李/長谷川博己/小日向文世/ビートたけし

製作国:日本
公開:2015年
上映時間:116分

(2015.11.7 劇場で鑑賞)

観てきました観てきました~!『劇場版 MOZU』!!!
『MOZU』Season2の最終話で予告が出た日から楽しみにしてました。
公開初日に映画館に行くなんて,もしかしたら初めてかもしれません…。それだけこの作品にどっぷりはまってしまったんだなーと,自分でも再認しました。

私はそこまで多くの映画を観たことないのですが,こんなに圧倒的なスケールの映画は初めてです…。どひゃー。
普段はお芝居ばかり観ていて,“演劇である必然性がある舞台を観たい”と常に思っているのですが,この作品は海外ロケの映画じゃないと成し得ない表現だったなーと思います。テレビドラマの枠には収まらない,重厚な画ばっかりでした…。

なんか,観終わって,
(あれ?結局どうなった??)
という感じがあって,劇場版によって見えた部分もあれば,そうでない部分もあって。でも改めて劇場版のwebサイトを見てみると,あえて余白を残して,無限ループになるようなつくりにしてあるようで…。混沌とした部分が残るところも含めて『MOZU』なんだなと思うことにします。
←いやでも本当に,シリーズ全体のあらすじを追おうとするといろいろありすぎてついていけん!ってなるので,倉木の,この瞬間のhere and nowにどっぷりしよう~と思って作品を楽しみました。

ペナム共和国にやってきて,高柳がいるでかい船をどーんと見上げている倉木の画を観て,改めて,(なんでこの人こんなところにまで来たんだろう…)と思う自分がいました。笑
妻の真相,娘の死の真相のためなら,本当に身一つでどこまでも行ってしまうんだなと思うと,この人怖いもの知らずというか。本当に,怖いものなんて何もないんだろうな。

今回特に素敵だな~と思ったのが,杉咲花ちゃん。Season1のときから輝いてるなーと思っていたのですが,この子本当に,声でもノンバーバルなところでも感情がびしばし伝わってくる女優さんで魅力的だなと改めて感じました。事務所を権藤が奇襲してきたところとか,ペナム共和国で解放されたあたりとか。お父さんに嫌気は差すけど,それでもやっぱり大切に思っている10代の女の子らしさが出ていて,観ていて愛おしかったです…。はわぁ…。

そうそう。その大杉さん。香川照之も素敵だったー。胸がときめきました。エンドロールはSeason1と2の良いシーンを集めた映像だったのだけど,Season1のサルドニア共和国の子を抱えてガラスの壁ガシャーンって割って2人で脱出した直後にどかーんってなったシーンが含まれてて,改めてこのひと“子ども”を守ってる姿がいいよね…って思いました。サルドニア共和国の子守ったり。ペナム共和国の子と自分の娘守ったり。いいね…。笑
きっと娘からしたら,約束守らないし自分勝手だし嫌なお父さん!って感じだと思うのですが,そのがむしゃらさというか一生懸命さというか,そういうところが私の胸を打ちます…。
あとラストの,美希とゴハン食べてちょっとお酒回ってるところも良かったです。我々視聴者も含め誰も突っ込めなかった「倉木のことが好きなんだろ」って美希本人に聞けちゃうのも,あのひとだからこそだなと思うと,いいポジションのひとだわ…と思います。

あと香川照之とは別の意味で素敵だったのが長谷川博己!ちゃんと外国でも「チャオ」してくれたので安心しました♡
カーチェイスのシーンで仮面を取って倉木にごあいさつ…のところは,愉快で愉快で笑いこらえるのに必死でした。何あれ何あれ何あれ!(´艸`)超ぶっとんでるひとだけど,「さすが俺の倉木」とか倉木のこと大事にしてるし。火とかシチュエーションつけて血みどろの倉木の写メぱしゃぱしゃ撮ってるし。しかもその携帯倉木に渡してるし。何したいの,みたいな。笑
最後らへんでこのひとのモノローグが出てきたのは意外でした。でも倉木とおしゃべりしてるので,まさか天国での会話なのか!?と思ったんですが,またそれも違ったみたいで。しかしなぜ裸足だったのか謎で,でもこのひとだからいっか…みたいな感じで見守ってました。

そしてやっぱり真木よう子にきゅんきゅんしました…☆久しぶりに倉木に会うときの表情とか,最後大杉とのゴハンのシーンで,空席(倉木の席)を見つめる目とか!もう,なんて切ない目をしているの!!!
あと人質にされてるめぐみ(花ちゃん)と話すシーンも印象的で,「(お父さんと会えなくて)寂しくないの?」と聞くめぐみに「大人だから」と返す美希がこれまた愛おしかったです。「お父さんは家族を裏切ったりしないよ」みたいなせりふの,「~よ」っていう語尾とか,相手のことを思いやっている話し方ということがじんわり伝わってきて良かったなぁ。
あとあと,雨の中倉木にもたれかかる美希とか!ギャーッてなりました。心の中で。あぁぁぁ。しかももたれかけさせておいてフイッと行っちゃう倉木さん何なんですか…。あのひと目的に向かってまっしぐらで,あとのことはほっとんど気にしてないから罪深すぎる…。←

あとは悪役の松坂桃李くんがよかったけどそれに負けないくらい池松くんもやっぱりよかったとか,小日向さん死ぬの早すぎるとか,エレナ役の子かわいかった(そして知的障害というふんわりした説明で終わってよかった。自閉も入っていると思うけど。)とか,いろいろ,いろいろありますが,最後の最後のシーンで倉木が電話に出て「倉木だ」って言うところの表情にノックアウトされすぎたので,もういいです…。何あの表情…。ときめきすぎる…。笑


(『MOZU』は絶対夜に観る映画だ!)と思っていたのでレイトショーで観て正解でした。血みどろな映画でしたがその分超見応えがあって,満足満足…。上演時間を知ったときに意外と短いなと思ったんですが,ちょうど良い尺でした。
あぁー。本当に映画館で観るのにふさわしい作品でした…。最近のテレビドラマは甘くみてたのですが,『MOZU』シリーズは映像だからこそはまったなと思います。TBSとWOWOWの本気を存分に楽しめました。まんぞくー!

Monday, November 2, 2015

『映画 ホタルノヒカリ』

◇STAFF
監督:吉野洋
原作:ひうらさとる
脚本:水橋文美江
音楽:菅野祐悟

◇CAST
綾瀬はるか/藤木直人/手越祐也/板谷由夏/安田顕/松雪泰子

製作国:日本
公開:2012年
上演時間:110分

(2015.11.2テレビで鑑賞)

実家でずーっと録りためていたのですが,友人の結婚式で帰省したときに勢いで再生しました。
普段は「人の力動が見えるやつが好きだ」とか言ってますが,たまにはこんな,ハッピーな気分で観られる映画も良いですね。

私,『ホタルノヒカリ』はドラマでしか知らなくて,しかも2から観始めたのですごい中途半端なかじり方なんですが,それでもちゃんと楽しめました。綾瀬はるかのお芝居をじっくり観たのもこのドラマが初めてかもしれない…。

とにかく,綾瀬はるかがキュート。あんまりこの女優さんのドラマとか映画は見たことないのですが,地の綾瀬はるかがすごく良く役に滲み出てる感じがします。なんか,語尾に「~ですにゃん」とか「ぶちょお~」とかいかにも漫画ちっくなせりふが出てきても,綾瀬はるかが言うとすんごいすんなり聞こえちゃうからスゴイ…。例えば“嬉しい”も“不安”も,全部ストレートというか体当たりというか…素直に出しているところが,綾瀬はるか演じる蛍ちゃんの魅力なんだろうな~。そんなことがじんわり伝わってくるお芝居。

あと松雪泰子が良いよね…。葛河思潮社の『浮漂』や『背信』とか観ると,しっとり大人の女性…という感じなのですが,干物っぷりというか人生やさぐれてる感というか,そういうギャップのあるお芝居が面白かったです。見た目は干物なのに,それでもどこか品があるから,やっぱり美しかったです。
(それと比べて綾瀬はるかの干物姿は,なんだかものすごい親近感…。あの親しみやすさが支持されるのだろうな…。笑)

そうそう。綾瀬はるかと松雪泰子の2人でぶちょおを探し出すところとかは,ちょっと強引だろとかイヤそれはないっしょとか思ったりもするのだけど,こういう映画だからまいっか的な。。。笑

あと移動するので当然風景も変わるのだけど,イタリアの景色とか,おしゃれな街の外観がサラリと組み込まれていていいなーと思いました。ホテルからの景色も好きだなぁ。
映画『冷静と情熱のあいだ』を観て以来,イタリア行ってみたいなーと思っているので,いつか果たせるといいなと思っています。

肩ひじ張らずに楽しく観られる&ハッピーエンドが約束されている映画も,気持ちを切り替えるには良いですね。キュンキュンしながら観られた110分でした。私も分類的には干物なはずなので,蛍ちゃんのようになれるはずと思いながら日々仕事に励みたいと思います。笑

(あ。あと音楽が菅野祐悟なんですね。『MOZU』との振り幅の大きさを実感しています…。)