Wednesday, December 10, 2014

***わたしの2014ねん~高校演劇編~***

さて,師走に入って早10日。
そろそろ今年もこの季節がやって参りました。「わたしの20○○ねん」シリーズ。
これはジャンルごとに一年間を振り返り,来年の充実につなげるものです。

今まで舞台作品はひとくくりに扱ってきましたが,今年は地元の高校演劇を割とがっつり観に行ったので,独立して高校演劇編を書いてみたいと思います。
(まだ観劇予定はあるのだけど,もう新作は観ないのでまとめます。)

ちなみにタイトルをクリックしていただければ,感想の記事にばばーんととべます。

5長野県長野東高校演劇部『銀河鉄道の夜~吉里吉里国ものがたり~』
作:清水信一
@ホクト文化ホール/11月

ひっさびさに,キレイな高校演劇を観たと思いました。
20代半ばのカサハラにとっては,かなりの癒し効果がありました。笑
私が初めて観た高校演劇の作品は,暗転がものすごーくきれいだったのです。きれいというか,美しかった。衝撃でした。高校演劇ってスゴイなと思いました。
でも近年は,魅せる場転というものに長らく出会っていませんでした。暗転自体なくしてしまう作品も増えてきた印象があります。

が,しかし!出会えたのです!!それが長野東!!!

場転も作品の一部なのだと,改めて感じました。場転の時間は,ただ舞台セットや人の配置が換わるものじゃない。暗転する前の場面の余韻を味わう時間なのだなーと,思ったのです。

あと,感想の本文にも書きましたが,『銀河鉄道の夜』っていろんなカンパニーがこれでもかというほど扱っている題材だと思うのですが,登場人物とキャストの年齢にギャップがあるような気がして,いまいちストンと落ちてきたためしがなかったのです。私。

でも!落ちてきたのです!!それが長野東!!!

早替えとか,鮮やかな場面転換も含めて見応えがありました。心が洗われました…。
カンパニーの現状に合わせた作品作りができているあたりも,成功しているなと思います。
そんなわけでピックアップさせていただきました。


4久留米大学附設高校演劇部『女子高生』
作:附設高校演劇部・岡崎賢一郎
Eテレ「青春舞台2014」にて鑑賞/9月

生で観ていないのでこの作品をどう扱うか悩んだのですが,やっぱり面白かったので。
あえてもう一度感想を書かなくとも,9月の記事に十分記したので割愛します。

このお芝居を観てから,長野県の中信地区大会や長野県大会に足を運びましたが,やっぱりカンパニーの実状に合わせた作品作りは戦略のうちに入るのだと,しみじみ思いました。
それが久留米の場合男女の逆転だったのだけど,演劇だからこそ成立してるというか,カンパニーの強みと演劇ならではの表現,どちらもおいしいとこ取りができていて,ストーリーや演技以上に評価できる点が多くあるなーって思うんです。

たとえば,テレビドラマや映画で男の子が女子高生の格好してたら,それはやっぱり女装なんです。『MOZU』の宏美ちゃんとかね!
でも,演劇でそれをやっても,「女装」にはならない。そこにいるのは「女子高生」。“見立てること”が可能な演劇という手法だからこそ成立してると思うんです。

そういう,「戦略勝ち」。ただやりたいものをやるのも大事だけど,カンパニーに合う手段を見つけて深めていくのも大事。それを両立したやつが,これ。なのかな。


3長野県松本蟻ヶ崎演劇部『Nippon, cha cha cha!』
作:日下部英司
@長野県松本蟻ヶ崎高校/7月・8月
@まつもと市民芸術館/9月

ちょっと社会派だったり,せりふがきれいなところはいかにも日下部先生作品なんですが,なんて言えばいいんでしょう…。誤解を恐れず言うと,蟻ヶ崎高校への遺作というか。先生が7年間この学校にいらした証拠というか。やっぱり先生はアタマの良い生徒が好きなんだろうなというか。
この先生は,あえて高校生が出る作品を選択されてこなかったし,ご自身も書かれなかった。それなのに,この作品には「蟻ヶ崎高校の生徒」が出てくる。これはもう,先生は悟りを開いたとしか思えないのです(笑)。
きっとこの作品は,外に出すための作品というよりは,蟻ヶ崎の高校生(演劇部・そうでない人含めて)に投げかけている作品なんだろうなーと思います。部外者から観ると,若干フクザツな気持ちになりますが,でも先生だからいっか,という感じ(笑)。もしかしたらちょっと附設に通じる部分があるのかも。

この作品は小さいスペースでやるのがちょうどいいと思います。3度拝見しましたが,最後に観た地区大会は惜しいところがちょこちょこあって,観客としても不完全燃焼です。タイミングが合えば,年末の公演に足を運べたらなーなんて思います。


2長野県松川高校演劇部『べいべー』
作:青木一也
@ホクト文化ホール/11月

附設の作品がEテレで放送される前には,全国大会のドキュメンタリーが放送されていました。そこには生徒の評議委員みたいなひとが,作品について語り合っている様子も映っていました。
それを観て私は,「高校生らしさ」があることが評価の基準のように思えたし,全国に行く作品は創作が多いなというか,創作だから評価されているんだろうなと感じました。
私もかつて既成作品で関東大会まで出させていただきましたが,それを観ていると元々評価の土俵に乗れていなかったんじゃないかと思いました。実際,今年の長野県大会の評価理由の中で「松川は創作ではありませんが…」といったフレーズがあって,やっぱり純粋に,舞台でのパフォーマンスの結果だけでは評価されていないのかと思いました。教育の一環としての高校演劇だからでしょうか。私にとっては謎の基準です。


だけど,

お芝居で観客の心を動かすのに,既成も創作もない。


それを改めて体感できたのが,松川の『べいべー』です。



1長野県木曽青峰高校演劇部『砂漠の情熱』
作:日下部英司
@まつもと市民芸術館/9月
@ホクト文化ホール/11月

附設の部分で,「見立てる」ということについて述べました。
演劇なら,男が女の役をやっていたら,それは女装なんかじゃなく,ほんとうに女のひとになれる。

もし,お芝居というものの醍醐味をふたつ挙げるとするならば,ひとつは「物を見立てること」,もうひとつは「あなたとわたしで間合いを共有すること」。私はこれを挙げるだろうなと思います。そしてこの醍醐味は,高校演劇とかプロとか,そういったものは関係ないこと。

たーっぷり,味わえました。ひとのこころが動くようすが,見えました。

現代って忙しいから,早くレスポンスしないと罪悪感感じたり,置いてきぼりにされちゃうような気持ちになるけど,ほんとうに言葉や思いを伝え合うなら,主張の結果ばかりを追っていてはだめで,主張という結果に至るまでのプロセスを,もっと大事に扱うべきだと思うんです。
心の動きを見なくちゃいけないし,見たいなぁと思うんです。
それが見えるお芝居。

あと,ずいぶん前からこの作品を舞台化したいという先生のお考えを耳にしていたので,今年それが叶って,純粋に嬉しいです。
今年の蟻ヶ崎みたいにフクザツで難解なお芝居も見応えがあるけど,日下部先生は言葉を大切にされる先生だと思うので,こういった作品の方が,それが映えるように思います。…とか勝手に言ってみます。笑


そして番外編。

ハート長野県屋代高校演劇班『南京の早春賦』
作:小川幸司
@ホクト文化ホール/11月
11年ぶりにこの作品を観て,とても懐かしい気持ちになれました。
同時に,誰かの心に残って,その後の人生のどこかに色をつけていく作品って本当にあるんだなぁと思いました。例えばこの高校の顧問の先生に,とか。
そしてまた,屋代のこの舞台を観たひとが心の奥を揺さぶられていたら。そうやって時代はめぐるし,作品は生きていくし,何かがつながっていくんだなと思います。

スペード長野県木曽青峰高校演劇部『right eye』
作:野田秀樹
@長野県木曽青峰高校/7月
木曽で土砂災害があって,1週間くらいでの公演。3.11直後の東京を思い出しました。
何を優先し,何を選び取るか,考えさせられました。当時三谷幸喜も「公演をやっても中止にしても,どちらも正しい選択だ」というようなことを述べていました。音響がなくても,思うような効果を使えなくても,それでも上演することを選んだことを尊重したいと思います。


以上,myベスト5+αでした。
来月は関東大会に行ってしまう予定です。初めて南にもお邪魔しちゃおうと思ってます。

来年も心ときめくお芝居に出会えますように☆

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