Wednesday, December 31, 2014

***わたしの2014ねん~映画編~***

「わたしの20○○ねん」シリーズ,2014年がようやくまとまります…。今回は映画編。

社会人になってホイホイお芝居に出かけることができなくなった分,映画を観ることが増えました。
職場の同僚の方から「映画は映画館で観るもの!」と教わってから,映画館で観て初めて映画になるんだなーということも,なんとなくわかってきたような気がします。舞台を劇場で観るのと一緒。
そしたらば,私の胸を打ったベスト3も,全部映画館で観た作品になりました。

ではでは,myベスト3+αをご紹介!

『STAND BY ME ドラえもん』
監督:八木竜一/山崎貴
脚本:山崎貴
原作:藤子・F・不二雄

ドラえもんって子どものための作品だけど,この作品は大人のための作品のように感じました。
「のび太の結婚前夜」や「帰ってきたドラえもん」なんて王道すぎる作品に,リアルになった表現方法(CG)!もうワクワク感が半端じゃなかったです。

そう。ワクワクしたのです。
これから生きる日本なんて,少子高齢化は進むし消費税は上がるし大きな地震はやってくるし,何に期待して何を楽しみに生きれば良いのかわからない。お先真っ暗!って本当に思うのに,ドラえもんの未来は,ワクワクさせてくれる。それは街の外観だったり,乗り物のような技術だったり。それを見て「うわぁ~」ってなってるのび太くんの表情がまた素敵で,その世界で生きている大人しずかちゃんの生活が素敵で,胸がときめきました。そんなふうに生きていけたら,なんていいんだろう。

見ていて魅力的だったのは,やっぱり表情!「嬉しい」とか「くやしい」とか,ひとつひとつの表情に血が通っていて,キュンとしました。アニメーションなのに,細かい表現に大人のこだわりを感じられて,本当に素敵でした。

大切なひとがいるからがんばれる,大切なひとの成長が日々のしあわせ。
そんなことを感じられる,愛おしい作品でした。


『永遠の0』
永遠の0 Blu-ray通常版
脚本:山崎貴/林民夫
監督・脚本・VFX:山崎貴

これこそ本当に映画館で観る作品!スケールの大きさに圧倒されました。
あと岡田くんの演技ってまともに観たことなかったけど,良かった…。
ラストのあの表情がとても良かった。①の『私の男』もそうだけど,そのワンシーンのためにすべてがあるような気がします。

なんか,最近,時代のうねりに巻かれずに自己を主張するひとを(作品の中で)よく見る気がします。

『花子とアン』の蓮子様だったり,『赤い月』の波子だったり。この宮部もそう。現代で生きる私達だったらとても自然なことなのだけど,その当時にそうすることが,どれだけ勇気と覚悟のいることだったのだろうと思うと,本当に強いひとなのだろうなぁと思います。

「愛することが生きること」だとしたら,私もまだまだ死ねない…。
今年の3月には向井くん主演でテレ東がこのドラマ版を放送するらしいので,それも楽しみです。


『私の男』
監督:熊切和嘉
脚本:宇治田隆史

濃密な蜂蜜を一気飲みしたら見えるような世界観。

『永遠の0』以上に,最後のあの表情のためにあった129分。何があっても,誰と生きていても,深いところでつながっているんだろうなと思いました。

二階堂ふみの化けっぷりが,スゴイ!中学生から大人になるまで演じ切っていますが,自他の未分化のドロドロしたところも,自立して凛としたところも,きちんと見えて。力のある女優さんなんだなと実感しました。

あと,北海道の曇天or雪!という天候も,ふたりの閉鎖的で濃厚な世界観を引き立てていて素敵でした。うまくいえないけど,日本映画っぽい質感の画なのも,ちょっと昔っぽい感じがあってきれいでした。

浅野忠信の不器用さ,三浦貴大の健康っぷり,山田望叶ちゃんと二階堂ふみの妖艶さ…。とても良いキャスティングでした。酔いしれるって,こういう映画のことなのかなと思いました。


☆番外編『秒速5センチメートル』
監督:新海誠
脚本:新海誠

2007年に劇場で観て,そして今年DVDで観返しました。
初めて観た時は鈍行で栃木に行ったこともなければ,豪徳寺や三軒茶屋にも行ったことがなかったのだけど,今は全て果たしました。

主人公のような経験はないけれど,切なくてくるしい思いを抱えて大人になっていくあたりは,少しは似ているかもしれない。
初めてこの作品を観た時は,第二話と三話の間あたりに私がいたような気がするけど,今はもう三話のど真ん中だなーって感じました。観る年齢によって,感じる気持ちや思い返すあれこれが全然違うんだろうなーとも思います。

甘くて切ない,くるしい気持ちをそっとしておいてくれる。それでもそれぞれのスピードで世界がめぐっていくことを教えてくれる。そんな作品です。


+++

これでようやく,2014年を終えられる気がします…。笑

一時期真木よう子作品を制覇しようとがんばってましたが,途中で断念しちゃいました。
2015年はこれを目標のひとつとして,私の心をピピっと打つ作品に出会えたらな~と思います。
おわりー。

Tuesday, December 30, 2014

映画『神様のカルテ』

◇STAFF
監督:深川栄洋
原作:夏川草介「神様のカルテ」(小学館文庫刊)
脚本:後藤法子
音楽:松谷卓

◇CAST
櫻井翔/宮﨑あおい/要潤/吉瀬美智子/岡田義徳/朝倉あき/原田泰造/西岡德馬/池脇千鶴/加賀まりこ/柄本明

(2014.12.30 テレビで鑑賞)

この原作が長野県の松本市が舞台ということはずいぶん前から知っていたのだけど,読んだことも,映画を観たこともこの日までありませんでした。ただ,原作は3まで出ているし,映画も2まで作られているので,人気(?)はあるんだなぁと静かに感じ取っていました。

で,せっかく年末年始で帰省しているし,実家のテレビに録画してあるので,観てみようかな~と思って再生してみました。

特に大きな事件や何かがあるわけではないのだけど,じんわりする,良い作品でした。
一止の心の葛藤が見えて,とてもよかったです。
あと,周囲に頼れる親類がいない中で病気になったときの恐怖や不安,孤独を少し感じることができたように思います。加賀まりこ,よかった…。

そうそう。私あのあたりがリアルに地元なのです。
思春期を信大付近で過ごし,女鳥羽川のあたりも数えきれないくらい歩きました。
そこが風景の一部として写り込んでいると,なんだかくすぐったい,不思議な気分。

あとあと。
はるなさんの一止に対する接し方がうまいな~と思って見てました。
夏目漱石を愛しているがためにあの話し方だと言うけど,あの固さを見ると,多分一止はマイルドなアスペさんだと思うのです。話し方,身体的な接し方含めて,はるなさんだから一止は穏やかに仕事や日々の生活を続けていられるのだろうなと思いました。そういう意味でも良い映画。

思わず続編を観たくなっちゃいました。
池脇千鶴や岡田くんは,私が小学生のときすごい好きだった女優さん・俳優さんだったので,いいポジションで見られてよかったです(笑)。

映画『女帝[エンペラー]』(日本語吹き替え版)

◇STAFF
原作:ウィリアム・シェークスピア『ハムレット』
監督:フォン・シャオガン
アクション監督:ユエン・ウーピン
脚本:フォン・シャオガン
美術:ティム・イップ
音楽:タン・ドゥン

◇CAST
チャン・ツィイー(魏涼子)/グォ・ヨウ(後藤哲夫)/ダニエル・ウー(東地宏樹)/ジョウ・シュン(弓場沙織)/ホァン・シャオミン(加藤康之)

(2014.12.30テレビで鑑賞)

チャン・ツィイーが出てるから観ました。今年は『初恋のきた道』もテレビで観たので,1年間で無垢な少女からアジアンビューティーになった彼女を拝むことができました。笑

『SAYURI』も含めて,ツィイーが出てる作品は3作目なのですが,吹き替えを観るのは初めてでした。
…ので,なんだか違和感!いや,きっとツィイーに限らず,映画は原語がいちばんだなぁ。
でも!吹き替えでよかったことも!ジョウ・シュン演じるチンニー役の吹き替えが,『ゴシップガール』のブレア役の弓場沙織さんじゃありませんか♡ブレア好きな私としては満足…☆ブレアと違ってはっちゃける役じゃなかったのに,ちゃーんと声だけでわかりました。
(というか魏涼子さんも弓場沙織さんも,ツィイーの吹き替えをやられたことがあるんですね…。『初恋のきた道』は弓場さんなのですね…。気になる…。)

ともかく,ツィイーの美しさは痛いほど伝わってくる作品でした!
あと,ジョウ・シュンがきれいでかわいかったです!(ちょっと大島優子に似ている気がする!)

しかしながら!

作品としては「???」になってしまいました…。ぶぇぇ…。『ハムレット』自体,アレンジしたものしか観たことないので人間関係がよくわからず…(´-`)
そこでこの作品観ても,自分の中ではよく深まらず…(´-`)残念…。
もう少し,ツィイーの揺れ動くところを見られたらよかったなー。

あと,中国のこういうアクション映画(に入るの?入れていいの?)ってまともに観たことなかったのですが,(なぜここから!?)っていうところから出てきたり,(そう移動するの!?)っていうふうに動いたりして,何というか…見せたい画の前後の流れはあまり気にしていないつくりになっているんだなーと思いました。エンターテイメントといえばそれまでだけど,こういうところが中国っぽいのかな?とも思ったり。


できればツィイー作品は制覇したい!と思っているので,来年も言語&余裕があれば吹き替えで楽しみたいと思います。

映画『赤い月』

◇STAFF
原作:なかにし礼『赤い月』(新潮社刊)
監督:降旗康男
脚本:井上由美子/降旗康男
音楽:朝川朋之

◇CAST
常盤貴子/伊勢谷友介/香川照之/布袋寅泰/反田孝幸/斉藤千晃/佐藤勇輝/大杉漣/山本太郎/エレーナ・ザハロヴァ/ヴァレリー・ドルジェンコフ/蟹江一平/山中聡/糠信義弘/瀧本武 他

(2014.12.30 テレビで鑑賞)

公開された当時からずーーーーーーっと観たいと思っていた作品。
あっという間に10年経ってしまったけど,今観られてよかった。常盤貴子が好きなので観たかったのですが,当時見たらこの豪華メンバーのすごさには気づけなかったことでしょう。伊勢谷友介とか,2010年代に入ってから知ったので…。

なかにし礼の自叙伝的な作品らしいです。これ。
きっと常盤貴子演ずる波子の次男・公平がなかにしさんなんだろうと思います。公平の,あの緘黙っぷりがいいよね!表出は少ないけれど,目で物語っている!!啓介の禁断症状と波子が闘っているところとか,波子と啓介のセックスシーンを見てしまったところとか(というかここ,あの年齢の子にとって外傷的すぎる。←もちろん作中のキャラクターの話),表情がなんともいえないなぁ。いいなぁ。今どんな子になってるんだろうなぁ。

あと,今よりちょっぴり若い香川照之が見られてよかったなぁ♡笑
「覚悟」とか「正義」とか,魂の見せ方がいかにも当時の人で,見ていて(ギヤーーーッッ)てなりました。小指自分で切り落としちゃうとことか。しかもそれを自社製品(お酒)に漬けちゃうとことかっ!ギャワワワワ心臓に悪すぎるよォォォ。しかも「自分よりひとつ年下の者が働いて自分が働かないとは」っていうあたりも,良くも悪くも日本人らしい。自分の小ささを自覚しているけど,大きなひとでいたい…というようなお芝居が本当に合う役者さんだなーとしみじみ思います。

でもって,エレナ役のエレーナさん(こ,これはたまたまなの!?笑)が美しくてうっとり…(´▽`人)♡♡♡
欧州のひとってどうしてこんなにきれいなんだろう~。
高校生の時に観た『ヒトラー 最期の14日間』に出ていたアレクサンドラ・マリア・ララとかも同じように思いました…。その作品くらいしか日本では知られていないけど,インパクトのある女優さん。…みたいな。

そして!肝心の常盤貴子!
はぁぁ…。(ためいき)
ああいう,我が強い女,合いますね…。
全部通して観てみると,なんだこの女と思ってしまうのですが,その時々で出てくる言葉は(うむ確かに)と思ったり。でもそこに騙されてしまうんだろうな男たちは…とも思ったり。
「公平,子どもだからって母さんに頼ってばかりではだめよ。自分で逃げるの。」とか。はっとしました。

でも「あなたたちの命と母さんの命はつながっているの。ひとつの命なのよ。私が死んだらお前たちも死んでしまう。だから私は生きなければいけない。そして生きるためには愛し合う人が必要なのよ。」は,おいおいまじかと思ったり。さらにそこで母親に対して嫌悪感を抱いていた娘が波子に歩み寄ったりしていて,まじかーと思ったり。きっと,言葉で鼓舞するのがうまい人なんだろうな。

あと,この人を見ていて,『花子とアン』の蓮子様を思い出しました。長男が出征していくときに,「万歳なんてできない」って言ったり。「生きたい」と話していたり。時代に惑わされず,自分で判断して生きていたひとなんだろうと思いました。だから最後のせりふも,「ありがとう満州」だったんだろうな。


2003年の作品なのに画がちょっと昔っぽかったり,スタッフロールの氏名がみなさんの手書きだったりして,そういうところに温かみを感じました。
生きるためには愛し合う人が必要…という言葉がぐぐっとみぞおちを突いてきた,鋭さのある作品でもありました…。

Saturday, December 27, 2014

長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部 自主公演『Nippon, cha cha cha!』

(長野県松本蟻ヶ崎高校webサイトより)

@松本市Mウイング

作:日下部英司・長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部
出演:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部

まさかの!4回目の観劇!
今まで同じ年に同じカンパニーで同じ作品を観た記録は最高3回だったので,更新…!

7月から半年くらい追わせていただきましたが,率直に言って今回が一番良かったです。
この間一巡してまた戻ってきた(ように見えた)ところや,新たに取り入れられたところもあって,これが今の蟻ヶ崎の皆さんが私達に示したいものなんだろうと思いました。ここまでくるのに,これだけの時間が必要だったんだろうとも思います。

今回は自主公演ということで,部員のみなさんが全ての広報を担当しなければならなかったと思うのですが…,ポスターがすごーく良かったです!あれだけ描ける方が部にいるってすごいですね。強みですね。
でも素敵だったからこそ,パンフレットにお名前がないのはもったいないように感じました。←描かれたご本人の意思もあるかと思いますが…。
それにしても,ドラクロワの絵がこんなにもうまく当てはまるものなんですね…。

さて中身の話です…。最近,登場人物が怒(いか)ってるお芝居(ミナモザの『みえない雲』)を観て,ふと気づかされたことがあります。
(そっか,怒るとか,感情を出すって,こんなふうに全身から溢れ出るものだよなー)って。怒りも,喜びもそう。あと,伝えたいという意思があれば,自ずと体が動くものだろうと。思うのです。後付けの,小手先の芝居…という訳ではなく,自ずとついてくるもの。それがこの『Nippon…』にはないなーって!ミナモザ観て気づいたんです!
せりふは出ているのに,伝わってこない(ここまで届かない)気がしちゃうのはなぜ!?って思ったときに,(あ,声と表情しかないからか…)って。後付けする演技と,結果としての表出は全く別物だけど,後付けする演技を過剰に嫌って,表出をセーブしている演出のように感じました。例えば言いたいことがあるのにうまく言葉に出来ないときって,考える前に手とか動いちゃうじゃないですか。ああいうのがなくて,頭で考えて行動をセーブしている感じなのかな~。←反対に,後付けしまくってる(とりあえずノンストップで動く)ものの典型が,今年の中信地区で言うところの美須々なのかなと思います。もちろんどちらが良い悪いではありません。

あとは,やっぱりこのくらいのサイズのハコと床の色がいいですよね。黒い道具が見えますよね。

あと普天間南の部長さんの衣装が赤×白ボーダーじゃなくて安心しました(笑)。でも福島からやってきた安達さんはすっぽり黒タイツになってしまったので(前は7分とか8分丈のレギンスだった),体のライン(下半身?)が消えていました…。残念です…。

はっ!残念と言えば,せっかくの自主公演なのだから,カーテンコールで一言お聞きしたかったです~…。パンフレットにはもちろん書いてあるのですが,生の想いをお聞きしたかったなという気持ちがあります。

さらに残念と言えば,最後の最後の音響はあれで良かったのでしょうか…?なんだかしっくり来なかったです…。それ(オペレーションミス?)によってラストの解釈も違ってくるかなと思います。

反対に「おっ」と思ったのが,蟻高のラスト。前はだらっと見えていたんですが,今回は完全はける方へ行ったので,私は見やすかったです◎
あ,でもせっかくドラクロワポスターがあるから,先生お手製の観光の旗とか作ってパタパタしながらみんなを引率していったら楽しそうだな~。(←遊びたい人。笑)


4回目にして,楽しそうにしてる部分が増えたなーと思いました。微笑ましかったです。(でも本質じゃありません。どちらかというと,こここそ小手先に入るやつ。妄想の観光の旗パタパタもしかりです…!)

これからまた新しい作品に取り組まれると思うのですが,感情を適切に表現していくことが今後の蟻ヶ崎の皆さんの課題になるのかなと勝手に思っています。出せないことがある意味「いい子」と呼ばれる訳なので,一作品の演出としての課題なのかキャストさんご自身の課題なのかは謎ですが,もっと表現できる自由というか,そういうものを体感できると幅が広がるんだろうな~と思います。

この半年,ひとつの作品に丁寧に向き合う皆さんを追わせていただくことができました。成長していく作品を観客のひとりとして見守ることができ光栄でした。
蟻高のみなさん,お疲れ様でした。

Friday, December 26, 2014

***わたしの2014ねん~テレビドラマ編~***

「わたしの20○○ねん」シリーズ,今回はテレビドラマ編です。
もともとは舞台とか出来事とか写真とか,ざっくりした区分で始めたシリーズなので,ここまで細かくするなんて自分でびっくり。

でも,ちゃんと日々の雑記の中だけではなく,きちんとまとめておきたいなーっと思ったので綴りたいと思います。

来年の充実につなげるべく,テレビドラマ編はじまりはじまり~。


⑤NHK『聖女』(8~10月・全7話)

脚本:大森美香
演出:日比野朗/水村秀雄
音楽:吉俣良

デビュー当時から広末涼子は知っていたけど,彼女のちゃんとしたお芝居とか観たことないのです。『おくりびと』とか。
この年齢の彼女でしか出せない魅力に溢れる作品だったなーと思います。
感想の本文でも書いているけど,このひとの表情がとても良いの。とっても。
少し歪んだ,でも必死に笑おうとしてる顔とか,好きだった人に再会できてすんごいキュンキュンしてる瞳とか,表情ひとつで多くのことを物語れる女優なんだな…と実感。

あと,せりふがよかった。
「愛なんて,なんであるんでしょうね。そんなものなければよかったのに。そんなものなかったら,もっと上手に生きられたのに。」
「あなたを愛したこと,それだけがあたしの失敗だった。それだけが,本当のあたしだったのかもしれない。」
“上手に生きる”とか“失敗”とか,言葉のセレクトが秀逸だなぁと思う訳です。

ずいぶんと遠回りしてしまったけれど,純粋に誰かを愛していた。それだけのこと。不器用な肘井基子が,愛おしかったり疎ましかったり。
女の幸せについて考えさせられた作品でした。


④CBC『月に行く舟』(10月)

作:北川悦吏子
演出:堀場正仁

昨年の『月に祈るピエロ』が良くて,今年もこのシリーズに期待していました。
あたり。

舞台は岐阜の,全然栄えていない土地なのだけど,それが作品の中で良く映えていたというか,作品そのものを引き立てていたなぁと感じます。ただの観光的なロケではなく,その土地で生きるひとの空気みたいなものが見えた気がします。

大人のための大人のドラマでした。じわじわきました。
最後に“におい”を託すところとかたまらないし,好きな人を待っていたいし,待っていてほしい。大人でも,そういう夢を見たい。
そうそう,映画『冷静と情熱のあいだ』に似たじわじわを感じました。静かに胸を打つ作品でした。


③テレビ東京『なぞの転校生』(1~3月・全12話)
脚本:岩井俊二
監督:長澤雅彦

岩井俊二さんが脚本だというので,気になって観てました。
この時期は他のドラマも観ていたのですが,気づいたら一番集中して観てました。でも実はまだ最終回を観ていない!だけどそこ抜きでも,印象的な作品。

ショパンの「雨だれ」がとても素敵だった。もうテーマソング。
手ぶれ風カメラワークも良い。映像の質感もすっごい好み。
中村蒼も桜井美南も本当にみずみずしい演技で,キュンとしてしまいました。桜井美南は視線が,目が良い!!そして本郷奏多のサイボーグっぷりがいいなぁ。
あとは杉咲花ちゃんだよね。もう『MOZU』とは全然違うお芝居。幅が広い女優さんだな~と思います。

とにかく,早いところ最終回を観たいです。


②TBS『Nのために』(10~12月・全10話)

脚本:奥寺佐渡子
演出:塚原あゆ子/山本剛義/阿南昭宏
音楽:横山克

もう…最終回を観たとき,本当に胸がいっぱいでした。良いものを観ました。
もっとがっつり語りたいので,早く単体の感想を上げられるように努力します…。

『花子とアン』で共演した賀来賢人と窪田正孝の再共演♡
榮倉奈々×横山克♡♡
あーーーーー,本当によかった。
よかったドラマとは,最終回を観た後にもう一度見返したくなる作品のことなんだろうなーと個人的に思います。観たくなりました。

榮倉奈々が高校生からアラサーまでを演じているのだけど,3年前にやっていた『蜜の味』でも中学?くらいからそれくらいの年までを演じていて,この人ほど自然に年齢を超越できる女優はそういないなーと思っていたのです。高校生姿の榮倉奈々に,何の不自然さも感じられないのだもの!

「守りたいひとのために隠し続ける」という純粋さ,究極の愛が,本当にくるしく,きれいで,ある意味美しいな…と思いました。

OPの色彩も本当に良い…。主題歌も良い…。あぁ,ほんとに,早く単体の記事書きたいです。笑


①TBS・WOWOW『MOZU』(4~8月・Season 1,2計15話)
監督:羽住英一郎
脚本:仁志光佑
音楽:菅野祐悟

2014年で最も私の心を奪ったテレビドラマは,『MOZU』!!!

お芝居を観る私にとって,生以上のものはないと思っていたし,最近のテレビドラマはつまらないと思っていました。

いやぁ…TBSとWOWOWの本気を観た気がしました。
申し分なさすぎる…。
そしてこのコンパクトな部分にこの作品の魅力を書くことは難しいので,単体の記事へどうぞ…。

杉咲花ちゃんが輝きまくっている…。あのドスの効いた声が素敵すぎる…。池松壮亮くんも良すぎる…。

(Season 1が民放→2が有料放送と来たら,次は映画かな!)と思っていたのですが,本当にそうなってびっくり。今から公開が楽しみです。


+++


はぁ。満足。笑

でもドラマって大概連続モノだから,それを短文にまとめるのはとても難しい…。
そして書いているとまた観たくなってくる…。

本当に,ドラマだから出せる世界観とか,ボリュームがあるなぁと改めて感じました。
来年も舞台とは違う魅力で魅せられる作品に出会えるといいなぁ。

Tuesday, December 23, 2014

映画『STAND BY ME ドラえもん』

◇STAFF
監督:八木竜一/山崎貴
脚本:山崎貴
原作:藤子・F・不二雄

◇CAST
水田わさび/大原めぐみ/かかずゆみ/木村昴/関智一/妻夫木聡 他

(2014.12.23 劇場で鑑賞)

この年でドラえもん…。ひとりドラえもん…。

ちょっと葛藤しましたが,でも好きなので観たかったんです。ドラえもん。
祝日とだけあって,大半は親子連れでした。本当に,世代を超えて万人に愛されている作品なんだなーとも思いました。

あぁ…泣けた…。

“ドラ泣き”と言われていたけど,本当にだふだふと涙を流してしまいました。最近泣いてなかったので,一度涙が出るとなかなかとまらなくて大変でした。笑

何がいいって,表情ですよね。
なんて生き生きしていて,愛らしいんだろう。ドラえもんも,のび太くんも,しずかちゃんもみーんな。
本当に,心から嬉しいってああいう表情のことを言うんだろうな。満たされているひとの心に触れることができたような気がしました。それがたとえアニメーションであっても。
あと,大人しずかちゃんがすんごい美しかった!うっとり!あんな女性になりたい!!笑

さらに観ていてワクワクしたのは,タイムマシンと未来の世界!
普通のアニメのドラえもんでは表現していないような,タイムマシンもメカ感(うぃーんとか,がしゃんがしゃんとか,発車?前の準備段階の動き!)があって胸がわぁぁ~☆ってなりました。足元のペダルを踏み込む瞬間のペダルの抵抗とか。ちゃんと質感があって,すごーくリアルでした。
未来の世界も,未来なのに“FUN TO DRIVE”とか今のTOYOTAのキャッチフレーズが街にどーんってあったり…。そうそう。TOYOTAとかPanasonicの広告が街中に溢れていたり,デパートみたいな建物に“KOROSUKE”とか書いてあって,大人の遊び心も溢れていて観ていて楽しかったです。うん。きっとこの映画を作ったひとは,楽しく作っていたんだろうなーということが作中から伝わってきました。ふふ。

しかしこの映画を観るにあたり,我々大人が乗り越えなければいけない問題が,声!!!
キャスト陣の,声!!!

2006年くらいでキャストが総とっかえになって,絵の感じも大幅に変わったと記憶してます。
私がちょうど高校生のときでした。その後も何回かドラえもんを見る機会はあったけれど,絵も違うし,なんだかドラえもんは頼りないキャラクターになってしまったように見えたし,私の知っているドラえもんじゃなくなったなーとしみじみ思ったものでした。
でも,不思議なことに水田わさびの大山のぶよ感が以前より増しているように聞こえました。近づいているのでしょうか…。いや大山さんになってほしいわけじゃないんだけど…。なんでしょうね。CGだから絵が違うもなんもないので,それで比較的観やすかったんでしょうか。でもやっぱりのび太のママがセーラームーンなんて信じられないです…。笑
とにかく,ドラえもんは愛らしく,しずかちゃんはかわいくてよかったです。あと妻夫木くんが大人のび太として出演しているあたりもニクイところです。

私達は時空を超えることはできないけど,「未来は変えられる」というメッセージはしっかり受けとることができたように思います。今やることによって,未来が少しずつ変わっていくことがこの作品の中にもあって(のび太の嫁がジャイ子からしずかちゃんになる…とか),ちょっと勇気をもらった気がします。

またへこんだときとかに観て,元気とピュアな気持ちをもらいたいと思います。そんな作品でした。

Saturday, December 20, 2014

***わたしの2014ねん~舞台編~***

高校演劇編から始まった今年の「わたしの20○○ねん」シリーズ。今回は舞台編です。
このシリーズは,ジャンルごとに一年間を振り返り,来年の充実につなげるものです。

今年,高校演劇を除くと,お芝居は14本観ました。社会人になり観られる本数が本当に減ってしまって切ない限りです。
それでも心揺さぶられる舞台に出会えたので満足!

ではmyベスト5をご紹介~。(作品のタイトルをクリックすると感想の本文に飛べる記事もあったりなかったり。)

5Spinnin Ronin Japan『SKY RUNNER』 (Bキャスト)

演出:加世田剛
脚本:亀山らく
@d-倉庫/10月

出演者の一人,横山真希ちゃんが中学時代の部活の同期なので,彼女が出ている舞台はできるだけ足を運ぶようにしています。
「知り合いが出ている」から観に行ったところが大きいのだけど,それ抜きにしても観てよかった!目の前のひとたちが本当にキラキラしていて,疾走感が半端じゃなかった。あと群舞が超かっこよかった。

身体表現の美しさを改めて実感できたな…。踊れるって素敵だな…。


4tamagoPLIN 『さいあい~シェイクスピア・レシピ~』


作・演出・振付:スズキ拓朗
@シアタートラム/2月

「老若男女楽しめる作品」ってチラシに載ってたんですが,その通りでした。
誰でも楽しめる作品=良い作品ではもちろんないけど,でもこれはきっと,観るひとの年齢によって響く部分が違うんだろうな。

“愛”を知るために純粋に生きていく野菜たちがとてもキュートで,愛らしくて,どこかうらやましくて,きゅうーっと締め付けられるような気持ちになりました。

あと,舞台とともに書き進められていく書がよかったー。既に演劇というパフォーマンスが,お客さんと一緒に完成を目指していくものなのに,ダブルで進んでいく「リアルタイム」があって面白かったです。
なんか,生きていくって踊っていることなんだろうなーとふと思った作品でもあります。


3ミナモザ『みえない雲』













原作:グードルン・パウゼヴァング
訳:高田ゆみ子(小学館文庫)
上演台本・演出:瀬戸山美咲
@シアタートラム/12月

私が中学~高校時代に最もよく観ていたプロの劇団は燐光群。
めちゃくちゃ社会派で,めちゃくちゃ難解でした。でもやっぱり,私こういう作品が好きなんだなと再認できました。初めてミナモザを観た『エモーショナルレイバー』も,すごく印象的だったから。

3.11以降,「それ」を彷彿とさせるようなものや,ダイレクトに描いているものもあったけど,私はなんだかそれが…嫌,というか,(あぁまたですか…)という感じがどこかしていたんです。

この作品は今まで私が観てきたものの何が違ったかというと,ちゃんと「過程」を描いているところかなと思います。動揺だったり,混乱だったり,恐怖だったり,怒りだったり,悲しみだったり。(そっかぁ,3.11後を扱ったものばっか観てたから,なんだかなぁだったんだー)ってことに気づけました。
私はやっぱり心の動きっぷりが観たいので,いくらお芝居の中で回想を語っていても,それはもうライブではないなと。あくまで回想のライブだなと。そう思うので。ちゃんと,ライブで心が動いているところを観られて,感じられて,よかった。それに尽きます。


2現代能楽集Ⅶ 『花子について』 能「葵上」・狂言「花子」・三島由紀夫作「近代能楽集『班女』」より


作・演出:倉持裕
@シアタートラム/2月

「古典作品が今でも上演されているのは,現代にも通じるものがあるから」なんてもう何度も聞いたこと。作品の神髄は,もうみんな知ってる物。
だったらどう魅せるか,どうブラッシュアップしていくかって,古典に取り組むときの永遠の課題になるのかなーなんて,ぼんやり思います。

この作品を観て,(え,これが能や狂言なの?三島由紀夫作なの??)と疑ってしまいました。
なぜならめっちゃ面白かった!

片桐はいりさんの舞台は2度目なのですが,唯一無二の存在感…。スゴイの一言です…。
あと,元Noismの宮河愛一郎さんが出ていたのも素敵ポイント♡いやー,よかった…。お面つけてたからお顔は拝見できなかったけど,おぞましさを存分に感じられました。

“現代能楽集”って企画自体は,やっぱり公共劇場ならではなんだろうな。
改めて,公共の強みを感じた作品でもありました。


1葛河思潮社『背信』










作:ハロルド・ピンター
翻訳:貴志哲雄
演出:長塚圭史
@東京芸術劇場/9月

初めて観たピンター作品。
9月に観た時点で,今年のベスト3だなと思っていましたが,そのままぶっちぎりました。笑

人を人たらしめているものが記憶だとしたら,それに支えられて生きているのだとしたら,私たちはそれを美化したり,良いように解釈して当然なんだろうなと思います。
だから誰かが記憶している(ことになっている)私との思い出や,私が記憶している(ことになっている)あなたとの思い出が真実とは違うものになったとしても,それが生きていることなのだと思えるようになりました。

それから,お芝居の醍醐味をたーっぷり味わえました。
舞台と客席で,空間を共有すること。
これに勝る魅力なんて,ないと思うのです。
ほんとうに,観て良かった。今年のベストに留まらず,私の人生に影響を与えた作品です。


+++


あぁ,こう振り返ると,今年も充実した1年になれたなと思います(笑)。

来年はついに!NODA・MAPの『エッグ』再演!!
未来を連れてきた作品になってしまったよ,『エッグ』…。
オリジナルキャストでの再演,今から胸がときめいております…。
あとは産休明けの松たか子のお芝居のチケットを全力で確保したいと思います。

観劇予定に生かされている,私です…。

来年も素敵なお芝居に出会えますように。

Sunday, December 14, 2014

ミナモザ第16回公演『みえない雲』


@シアタートラム

原作:グードルン・パウゼヴァング
訳:高田ゆみ子(小学館文庫)
上演台本・演出:瀬戸山美咲

出演:上白石萌音/陽月華/塩顕治/中田顕史郎/大原研二/浅倉洋介/橘花梨/石田迪子/つついきえ/佐藤真子/間瀬英正/大森美紀子


(どうしようかな~。行こうかな~…)と思っていたこの舞台。
以前観たミナモザの『エモーショナルレイバー』がとても印象的だったこと,上白石萌歌さんのお姉さんが出るということで,迷っていました…。

よし行こうという決め手になったのは,このフライヤーの表情がとっても素敵だったのと,
『エモーショナルレイバー』に出演されていたハマカワフミエさんが「ミナモザの中で一番良かった」みたいなことをTwitterでつぶやかれていたこと。

あぁ…観てよかった…。
衆議院選挙の当日に観られたのも,偶然じゃないかもしれない。

上演時間が2時間20分(休憩なし)ということで,ちょっとしんどそう…と思ったのですが,一度始まるとガーっと見入ってしまいました。


そう。私上白石姉妹は,妹さんの存在を先に知り,あとからお姉さんのことを知りました(当日受付に妹さんもいらっしゃった…)。
妹さんはドラマで見たりCMで見かけたりということがあったのですが,お姉さんの萌音さんのお芝居は,今回が初めて。



…とっ,透明感が,やばい!!!




まず出演者がばーっと出てきて,(あの人…?)と思っていた人がいたのですが,ちいちゃい人がサッと現れて(あの子だーーーーーっ!)ってなりました。笑
びっくり!ちいちゃい!!Wikipediaで調べたら,152センチだそうです。ちいちゃい…!!

でもって,声の透明感にびっくり。すっごい。あの年齢だから出るの!?すごくきれいな声で,びっくりしました。
あと,感情の爆発っぷりがすごい。“怒っている”ところは,本当にすごくて,思わず涙が出てきました。こらえたけど。
言うことを聞かないウリに対して叱るところとか,
嘘を言った看護師に対して叫ぶところとか,
やり場のない“怒り”がいろんなところで見えて,生身の人間らしさを感じられました。
体がしなやかで,本当に,全身で感情を出せる女優さんなんだな~と思いました。

と同時に,私,今年は長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部の『Nippon, cha cha cha!』を何度か観ていまして。
あの作品に足りなかったのはこういう部分なんじゃないかと…ふと思いました。
『Nippon…』は「私にとって身近なことはあなたにとって遠いこと」というようなテーマで,沖縄の基地のことや,福島の原発のことを織り交ぜながら高校生があれやこれや現実と向き合う話なのですが,せりふありきというか,“感情”が見えなくて。
ひとつひとつのシーンは確かに“きれい”だったり,会話のキャッチボールが見えるのだけど,全体的に一環した感情が見えなくて。シーンが細切れなので仕方ないのかもしれないけど。見える前に次のシーンに行ってしまうのかな。でも,見えなくて。感情が見えることが,お芝居の魅力だと思うのに。もっとあの子たちも怒っていいのに…って,この作品を観て思いました。

はい。脱線脱線…。

あとヤンナの弟のウリがとても魅力的なの。見た目は人形なので表情は全く変わらないのだけど,ちゃんと身振りや声で感情が見える。無邪気さが魅力的。「しゅたっ」とか,本当にかわいくて素敵だった…。
だからこそ喪失感が大きかったです。事故の遭い方も,(おぉ~)っと思いました。カーテンコールでヤンナがぎゅっと抱きしめてあげるところとか,もし一人で観に行ってたら本気で涙腺崩壊したかもしれない…。はぁ。(溜息)

魅力的といえば,アイゼとヤンナのやりとりが良かった。女子女子してて。脱走とか,ボーイフレンドの話とか,10代の女の子という感じたっぷりで,素敵だったなぁ。

素敵といえば,ヘルガおばさん…!(笑)
まさかの男性…!最近,今年観た高校演劇のまとめとして書いた記事の中で,久留米大附設の『女子高生』の「見立て」について語ったばかりだったので,(おぉぉ…!)と思いました。いやー,効果的だったー。「息がつまるおばさん」というのがすんごい出てて良かった…。だけど家から出ていったヤンナを追ってきた&誕生日を祝いにきたヘルガおばさんからは,不器用なりに彼女を愛していることがほんとうによく伝わってきて,胸がくるしくなるシーンでした。
アルムートの家を去った後とか,背中から滲み出てくるものがありました…。はぁぁ…。きっとこれはヤンナにも伝わっているはず…。

あと,これは私だけかもしれないのだけど,アルムート役の大森美紀子さんが,燐光群の中山マリさんを彷彿とさせました…。あのハキハキッとした喋り方とか,声の質なんかが。

舞台の話をすると,照明が効果的だったなぁーって思います。いろんな場面になって,いろんな場所になって,空間がコロコロ変わるのだけど,ついていけたのは照明の効果が大きいと思います。基本的にドアは上手の照明で区切ってたり,場転は暗めの照明が入るのに,一度きちっと暗転にしてたり。繋がっているけれど,切るところは切る。思わず意識して照明を見ちゃいました。
あと,アイゼが亡くなる直前の人のシルエットはどうやったんだろう~。すごく気になる!

音響というか,曲も気になりました。特にヤンナとウリが自転車を漕ぎ始めた時に掛かってた曲は何なのか知りたい~!メインテーマは書下ろしなのだとか…。いやぁ…すごい…。


そうそう。これは現代と東ドイツを行き来している作品で,ときどき「私」が登場しているのですが,最後らへんであんなふうになるとは思わなかった。この問題を語るにあたり,きれいな言葉だけでは表せないのだということが,ひしひしと伝わってきました。ハマカワさんの言ってたような「代弁」とは,このことを言うのだと思います。
「諦めたわけじゃないけど疲れた。」「東京のひとがこんなこと言っててごめんなさい。」というようなニュアンスのせりふは,東京に住む私だから響いた気が…するな。

そんでもって,ミナモザのwebサイトを見てみると,
  「小さな子どもから大人まで、日本に暮らす人から世界の人まで、
    誰もが「自分のこと」として受け止められる作品を目指します。」
と書かれているのだけど,その目標は,きっと達成できたのだろうと感じます。

「未来を連れてくる芝居」にときどき出会いますが,場合によってはこの作品も,未来を連れてきてしまうかもしれない。

3.11そのものを扱ったり,それを思い起こす作品もいくつか観てきましたが,どこかしっくりこない自分がいました。なぜかはわかりません。感覚の問題なので。
でも,「架空の話」だからこそ,今回はすーっと入ってきたように思います。
瀬戸山さんと3.11がぶち当たってるのを舞台の上で観られたことも,要因としてあるかもしれません。劇作家が“言葉は話した途端に腐っていく”なんてフレーズが出てきたのも,衝撃的でした。そうかぁ。消えるんじゃなくて,腐っていくのかぁって。
彼女の書く作品は,やっぱり気になります。


長くてまとまってない文章になりました。

が,ヤンナのほとばしる感情や,生きているひとの姿や,葛藤する瀬戸山さんと,時間や空間を共有できたような気がするので,それで満足です。

久々に,原作を読んでみたいなと思う作品に出会えました。

Wednesday, December 10, 2014

***わたしの2014ねん~高校演劇編~***

さて,師走に入って早10日。
そろそろ今年もこの季節がやって参りました。「わたしの20○○ねん」シリーズ。
これはジャンルごとに一年間を振り返り,来年の充実につなげるものです。

今まで舞台作品はひとくくりに扱ってきましたが,今年は地元の高校演劇を割とがっつり観に行ったので,独立して高校演劇編を書いてみたいと思います。
(まだ観劇予定はあるのだけど,もう新作は観ないのでまとめます。)

ちなみにタイトルをクリックしていただければ,感想の記事にばばーんととべます。

5長野県長野東高校演劇部『銀河鉄道の夜~吉里吉里国ものがたり~』
作:清水信一
@ホクト文化ホール/11月

ひっさびさに,キレイな高校演劇を観たと思いました。
20代半ばのカサハラにとっては,かなりの癒し効果がありました。笑
私が初めて観た高校演劇の作品は,暗転がものすごーくきれいだったのです。きれいというか,美しかった。衝撃でした。高校演劇ってスゴイなと思いました。
でも近年は,魅せる場転というものに長らく出会っていませんでした。暗転自体なくしてしまう作品も増えてきた印象があります。

が,しかし!出会えたのです!!それが長野東!!!

場転も作品の一部なのだと,改めて感じました。場転の時間は,ただ舞台セットや人の配置が換わるものじゃない。暗転する前の場面の余韻を味わう時間なのだなーと,思ったのです。

あと,感想の本文にも書きましたが,『銀河鉄道の夜』っていろんなカンパニーがこれでもかというほど扱っている題材だと思うのですが,登場人物とキャストの年齢にギャップがあるような気がして,いまいちストンと落ちてきたためしがなかったのです。私。

でも!落ちてきたのです!!それが長野東!!!

早替えとか,鮮やかな場面転換も含めて見応えがありました。心が洗われました…。
カンパニーの現状に合わせた作品作りができているあたりも,成功しているなと思います。
そんなわけでピックアップさせていただきました。


4久留米大学附設高校演劇部『女子高生』
作:附設高校演劇部・岡崎賢一郎
Eテレ「青春舞台2014」にて鑑賞/9月

生で観ていないのでこの作品をどう扱うか悩んだのですが,やっぱり面白かったので。
あえてもう一度感想を書かなくとも,9月の記事に十分記したので割愛します。

このお芝居を観てから,長野県の中信地区大会や長野県大会に足を運びましたが,やっぱりカンパニーの実状に合わせた作品作りは戦略のうちに入るのだと,しみじみ思いました。
それが久留米の場合男女の逆転だったのだけど,演劇だからこそ成立してるというか,カンパニーの強みと演劇ならではの表現,どちらもおいしいとこ取りができていて,ストーリーや演技以上に評価できる点が多くあるなーって思うんです。

たとえば,テレビドラマや映画で男の子が女子高生の格好してたら,それはやっぱり女装なんです。『MOZU』の宏美ちゃんとかね!
でも,演劇でそれをやっても,「女装」にはならない。そこにいるのは「女子高生」。“見立てること”が可能な演劇という手法だからこそ成立してると思うんです。

そういう,「戦略勝ち」。ただやりたいものをやるのも大事だけど,カンパニーに合う手段を見つけて深めていくのも大事。それを両立したやつが,これ。なのかな。


3長野県松本蟻ヶ崎演劇部『Nippon, cha cha cha!』
作:日下部英司
@長野県松本蟻ヶ崎高校/7月・8月
@まつもと市民芸術館/9月

ちょっと社会派だったり,せりふがきれいなところはいかにも日下部先生作品なんですが,なんて言えばいいんでしょう…。誤解を恐れず言うと,蟻ヶ崎高校への遺作というか。先生が7年間この学校にいらした証拠というか。やっぱり先生はアタマの良い生徒が好きなんだろうなというか。
この先生は,あえて高校生が出る作品を選択されてこなかったし,ご自身も書かれなかった。それなのに,この作品には「蟻ヶ崎高校の生徒」が出てくる。これはもう,先生は悟りを開いたとしか思えないのです(笑)。
きっとこの作品は,外に出すための作品というよりは,蟻ヶ崎の高校生(演劇部・そうでない人含めて)に投げかけている作品なんだろうなーと思います。部外者から観ると,若干フクザツな気持ちになりますが,でも先生だからいっか,という感じ(笑)。もしかしたらちょっと附設に通じる部分があるのかも。

この作品は小さいスペースでやるのがちょうどいいと思います。3度拝見しましたが,最後に観た地区大会は惜しいところがちょこちょこあって,観客としても不完全燃焼です。タイミングが合えば,年末の公演に足を運べたらなーなんて思います。


2長野県松川高校演劇部『べいべー』
作:青木一也
@ホクト文化ホール/11月

附設の作品がEテレで放送される前には,全国大会のドキュメンタリーが放送されていました。そこには生徒の評議委員みたいなひとが,作品について語り合っている様子も映っていました。
それを観て私は,「高校生らしさ」があることが評価の基準のように思えたし,全国に行く作品は創作が多いなというか,創作だから評価されているんだろうなと感じました。
私もかつて既成作品で関東大会まで出させていただきましたが,それを観ていると元々評価の土俵に乗れていなかったんじゃないかと思いました。実際,今年の長野県大会の評価理由の中で「松川は創作ではありませんが…」といったフレーズがあって,やっぱり純粋に,舞台でのパフォーマンスの結果だけでは評価されていないのかと思いました。教育の一環としての高校演劇だからでしょうか。私にとっては謎の基準です。


だけど,

お芝居で観客の心を動かすのに,既成も創作もない。


それを改めて体感できたのが,松川の『べいべー』です。



1長野県木曽青峰高校演劇部『砂漠の情熱』
作:日下部英司
@まつもと市民芸術館/9月
@ホクト文化ホール/11月

附設の部分で,「見立てる」ということについて述べました。
演劇なら,男が女の役をやっていたら,それは女装なんかじゃなく,ほんとうに女のひとになれる。

もし,お芝居というものの醍醐味をふたつ挙げるとするならば,ひとつは「物を見立てること」,もうひとつは「あなたとわたしで間合いを共有すること」。私はこれを挙げるだろうなと思います。そしてこの醍醐味は,高校演劇とかプロとか,そういったものは関係ないこと。

たーっぷり,味わえました。ひとのこころが動くようすが,見えました。

現代って忙しいから,早くレスポンスしないと罪悪感感じたり,置いてきぼりにされちゃうような気持ちになるけど,ほんとうに言葉や思いを伝え合うなら,主張の結果ばかりを追っていてはだめで,主張という結果に至るまでのプロセスを,もっと大事に扱うべきだと思うんです。
心の動きを見なくちゃいけないし,見たいなぁと思うんです。
それが見えるお芝居。

あと,ずいぶん前からこの作品を舞台化したいという先生のお考えを耳にしていたので,今年それが叶って,純粋に嬉しいです。
今年の蟻ヶ崎みたいにフクザツで難解なお芝居も見応えがあるけど,日下部先生は言葉を大切にされる先生だと思うので,こういった作品の方が,それが映えるように思います。…とか勝手に言ってみます。笑


そして番外編。

ハート長野県屋代高校演劇班『南京の早春賦』
作:小川幸司
@ホクト文化ホール/11月
11年ぶりにこの作品を観て,とても懐かしい気持ちになれました。
同時に,誰かの心に残って,その後の人生のどこかに色をつけていく作品って本当にあるんだなぁと思いました。例えばこの高校の顧問の先生に,とか。
そしてまた,屋代のこの舞台を観たひとが心の奥を揺さぶられていたら。そうやって時代はめぐるし,作品は生きていくし,何かがつながっていくんだなと思います。

スペード長野県木曽青峰高校演劇部『right eye』
作:野田秀樹
@長野県木曽青峰高校/7月
木曽で土砂災害があって,1週間くらいでの公演。3.11直後の東京を思い出しました。
何を優先し,何を選び取るか,考えさせられました。当時三谷幸喜も「公演をやっても中止にしても,どちらも正しい選択だ」というようなことを述べていました。音響がなくても,思うような効果を使えなくても,それでも上演することを選んだことを尊重したいと思います。


以上,myベスト5+αでした。
来月は関東大会に行ってしまう予定です。初めて南にもお邪魔しちゃおうと思ってます。

来年も心ときめくお芝居に出会えますように☆

Sunday, December 7, 2014

第8回塩尻市民演劇フェスティバル 長野県塩尻志学館高校演劇部『ボクのじゆうちょう』

@塩尻市レザンホール

作:てらにしかつえ
出演:長野県塩尻志学館高校演劇部

今回,塩尻市民演劇フェスティバルがあると知っても,
そこに志学館と田川が出ると知っても。
志学館がこの作品をやらなかったら,来場は見送っていたかもかもしれません…☆

何を隠そうこの作品は,私が中1のときに文化祭でやるかやらぬか,最終候補まで来てた作品だったのです。私もこの作品推してました。がっ,多数決に勝てず別作品に。

でも私も姉が演劇部だったので。
というか演劇部に姉がいたので私も入ったようなもんで。
雅ちゃんにすごい感情移入してたなぁ…。(しみじみ)


あ,姉の話は置いておいて,とにかく上演こそなかったものの,思い入れのある作品だったのです。
それを志学館がやるというではありませんか!見なければ…!
…ということで,7時ちょうどのあずさ1号に乗ってやって参りました。笑


そして気づくと,今年度は美須々,木曽青峰,蟻高,田川を複数回拝見したのですが,志学館もそうでした!いやぁ…今年は本当にがんばってしまった…。
ちなみにその複数拝見した中で別作品に取り組まれていたのが木曽青峰,田川,そして志学館。同じカンパニーが別作品をやっていると,複数の作品の出演されているキャストさんの演技が,役作りの上での演技なのか,それともキャストさんご自身のパーソナリティが強い演技なのか,よくわかります…ね☆←

しかし!なんということでしょう!最近,今年の地区のパンフレットが家の中で行方知れずなのです…。さらにフェスのパンフの志学館の欄…役名も何も書かれてない…(むんく…)
なので地区大会の記録と自分の記憶を頼りに書き進めたいと思います。うぅ…。

地区の記事でも書きましたが,私の中で志学館と言えば,ドリーミン☆な印象を持ってるカンパニーでした。私が拝見した過去の志学館の記録も見返すと,2004年の『夏芙蓉』以外に学校が舞台のものがないかも…。今年の地区も一応学校が舞台だけど,登場人物にニンゲンじゃないものが出てきてるので。

それが今回は高校が舞台!出てくるのも一応ニンゲン!ドリーミンなカンパニーがどうこのホンを調理するのか!が,気になってました。

いかんせん私のアタマの中に台本が入ってて,イメージ映像というか(もしやるんだとしたらこんな感じかな…)みたいなプランがあったので,その上で観ると私のイメージが非現実的なのか,良くも悪くも(こうなるのか…!)(・_・)という感じでした。

実際目の前で作品が動いているのを観て気づいたんですが,吹部と生徒会って意外と一人二役でいけるんですね。というより,どっちも演劇部の敵だから,同じキャストで演じることに意味があるのかも…なんて思いました。長野日大のオリジナル版はどう演じたんだろう~と純粋に気になります。

そうそう。確か音響の響ちゃんは三つ子で,照明の照さんとか舞台装置の舞さんがいたような気がするのですが,志学館の現状に合わせて構成しなおしてても,ちゃんと話として成立してたので良かったです。三人の中でも音響を残したのは正解だなぁ…と。

ホンのレベルがもともとあるから,あとはどう味付けするかということになってくるんですが,詰めがあともーちょっと!という感じでした。全体的に。

舞台装置の話をすると,舞台上で見切れているというかパネルとパネルに隙間があって→裏にいる役者さんの姿が見えてしまって→話に集中できなかったのが一番残念でした…。
装置にはすべて効果があって,役割があるはずだと思うのですが,その効果が意図したとおりに働かなかったり,意味をなさないのであれば,差し替えるとかいっそのことなくすとか,改善しなきゃだと思うんです。翻って今回の舞台装置は,本来見せなければならないところに視線が向かなくなってしまったので,段ボールの置き方なりパネルの置き方なりに改善の余地があったのかなーと思います。
(そういえばたまたまですが,段ボールから出入りといえば今年の田川の地区じゃないですか…!段ボールっていうか,洗濯機とかですが。)
でもって,正面のパネルが上手にはなく,空間の境目があいまいになってしまったなーという印象です。ぼんやりというか。もう少しパネルできちっと区切るとか,パネルの数がないのであれば他の方法で空間を仕切ることができればよかったなと思います。

次に照明の話をすると,なーんか…なんだか…全体的にトーンが暗かったような気がします。志学館の10分前に別作品を観ていたので,それと比較すると暗さが目立ったように思います。顔当たりがあったようななかったような…。シューティングのときに客席の遠くの方からも確認するとよかったのかもしれません…。

さらに演出の話をすると,細かい台本の部分は忘れてしまったのですが,冒頭の悲しげな音楽,あれはなくて良いのでは…。
『夏芙蓉』ではないですが,明るく楽しく盛り上げた分,真実がわかったときの落差にこちら(お客)は愕然とする・なれると思うので,そこまで象徴的な曲でなくても良いのかなと思いました。

あと衣装やメイクの話をすると,かりんちゃんとゆかりちゃんが私の中で混ざって混ざって…。せりふをしゃべってくれたらわかるのだけど,ふたりとも上がブラウスで下がジャージになってしまった日にはもう…(´ロ`)たとえばどっちかはブラウスの色を変えるとか,ベストなりカーディガンにするとか,視覚的な工夫がほしかったです。あと髪型を一人がおだんごでもう一人がダウンヘアとか。安易ではありますが,でも効果的だったりします…。
そうそう。あと前髪が目にかかる人が多くて,表情が見えにくかったです。普段稽古してると,演出さんって下からキャストを見上げることが多いと思いますが,前髪って意外と影になっちゃうので…。これもリハなどで,客席から確認できると良いですね◎

肝心のお芝居の話をすると…
役作りというよりは,キャストさんご自身の演技の癖が出ている方が多かったのかな?という印象です。
地区大会のときから,一定の間がある方がいらしたり,小手先のお芝居が目立つ方がいらっしゃいましたが,今回もそんな印象を受けて,んんんー…という感じです。全体的に,聞かせたいせりふと発するせりふの区別がついていなかったり,台本に書かれていることだけを喋るのでは足りない部分があると思うのですが,きっちり台本通りだったり,そこに変にアドリブをつけてしまったりして,ちょっとアンバランスなせりふの出し方だなーというところが率直な感想です。
聞かせたいもの,出さなければいけないもの,出さなくてもいいものを整理すると,もう少しすっきりできるのかなーと思います。


そしてご縁あって(?)終演後に顧問の先生とお話できる機会があったのですが,(もったいない…!)という気持ちが抑えられなかったです。(お話しているときは抑えた)
地区大会で他校と同作品になる可能性があったので,大会作品を変更した…とのことなのですが,だからと言って引く必要って,私はないと思うんです。県大会まで行くと作品がかぶることはよくあることですし,地区でかぶったとしても,ガチで比較されるとは思いますが,良いものはきちんと評価されるし。フィギュアスケートだって,違う選手が同じシーズンに同じ曲を使うこともありますが,その選手にしか出せない世界観があるし!
でも屈せずここで持ってこられたことに拍手したいと思います。


あとは…そうですね,先生のスカートの丈が本気で気になったり(足開いてるときとか,すごいオロオロしちゃいました…),裏に入ってもコツコツとヒールの音がしたのが気になりました。
あとは演劇部の子たちや吹部,生徒会のみなさんがパネル裏で音や声を出してから登場するまでの間をあともーすこし詰められると観やすかったな,と思います。


ほんとに…12年以上前に出会った作品がようやく目の前で展開しているのを観られて,とっても満足でした…☆
塩尻志学館のみなさん,ありがとうございました。

第8回塩尻市民演劇フェスティバル 長野県田川高校演劇部『審査員』

@塩尻市レザンホール

作:池田政之
出演:長野県田川高校演劇部

今年度,田川のお芝居は文化祭地区→そして今回…と結構追って観てしまいました(笑)。
でも今回は文化祭・地区とは別作品だったので,初めて拝見する役者さんも…。

きっと4ヵ月後には,新しく入学した高校生が部員として演劇部に入って,そうしてまた1年お芝居を作っていくのでしょう。そう思うと,高校演劇の公演一回一回ってなんて貴重なんでしょう。このメンバーでお芝居できるのは,次(だと思われる)の新歓までなんだろうなぁとか。そんなことを終演後に思いました。

そうそう。どうして今回わざわざ田川&志学館を観に,性懲りもなく始発のあずさに乗って来てしまったかというと…
田川→ただただ気になった
志学館→演目で!
でした。

この2校は今年度地区大会で大会の発表は終わっています。
当たり前の話ですが,各校一年で何回も公演がある中で,一番気合いを入れて臨むのは地区大会だと思います。それが終わって,一発目の公演(時期的にはクリスマス公演とか12月前後にやる自主公演とか)って,今後のカンパニーの方向性を占う,結構重要な公演だと個人的には思っているのです。

田川を見たかったのは,それをどういう方向に持ってくるかを直に感じたかったというところが大きいです。

そして開演して…
ショーゲキ!(゜ロ゜)

たたた,確かにパンフレットには“舞台装置に凝らないシンプルな作品になりました”とあるけれど,幕開けしてどびっくり!

だってガチのサラ舞台だったんだものー!!!!!

つ,ついに田川もここまで来てしまったのか…(;ω;)と若干ショックまで受けていたのですが,違いました(笑)

ここから舞台のセッティングを始めるというお芝居でした…。面白いな…。
作品の雰囲気が,なんとなく三谷幸喜の『Show must go on』に似ていたと思います。お芝居を作るひとびとの裏っ側。すったもんだ。本気でやってるからなんだかカワイイ。そんな感じが。
あとなんだかんだホンがモノを言うので,良いものをセレクトされたなぁという印象です。


しかし…!

舞台が始まって第一声を聞いて,しょんぼり。声が…サラ舞台に吸収されている…!
そして県大会の屋代高校を連想してしまいました。(→KA・TSU・ZE・TSU☆)

厳しいこと言うようですが,部全体の滑舌の悪さと,部全体のゆるさはある程度関連しているのでは…と思います。舌の構造とか,そういう器質的な部分でどうしても乗り越えられないものを持っている方はどこの部にもいらっしゃるのではと思うのですが,出るひと出るひとみんな悪いと,それはやっぱり自分に対する甘えだったり,それを詰めない部の甘えかな…と。
逆にそこが良ければもっと伝わるのに。すごくもったいない!(><)
明日から!ぜひ頑張ってください!!!(><)(><)全体的に口が縦に開いてない方が多かったので,開け方も意識してみてください!!!お芝居は「1年生だからこれからだよね」って言えるかもしれませんが,滑舌は関係ないと思うので。

あと,これも文化祭のときから気になっていたのですが,音響がイマイチ…ううーん,しっくりこないのです。もちろん好みの問題もありますが,
・選曲
・かけるタイミング(切るタイミング)
・ボリューム
がみーんな気になっちゃって。音響をつける良さが,あんまり感じられなくて。
滑舌のこともそうですが,なんとなくみなさん“雰囲気”でお芝居してるように見えたんです。雰囲気。音響も,“なんとなくかけておくか…”でかけているような気が…しなくもないかも…。例えば吉野牛が舞台上に飛び込んでくるところとか。本当にあれがあのタイミングでかかる必要があるのか,もう一度疑ってみる余地はあるのかなと思いました。

あとあと,これは地区大会で気になったのですが,間。
文化祭で良かったところが地区大会で(あれ?)って思ってしまったところがあったりしたんですよね。制限時間に追われているというよりは,必要な間(リアクション)が流されてしまっている印象。
で,このお芝居は会話を聞かせるお芝居だと思うのですが,今思うと(というか志学館の『ボクのじゆうちょう』を観ているとき感じた)会話が全部だーって流れてたな~と…。例えば,なぜふじの亜虎が一方的に作品を切ったかが暴かれていくときとか,もっとふじのがどういう反応してるか,みんな見て,気にしていいと思うんです。というか気になるはずなんです。あとふじのももっと考えていい。言うか黙るか,言うならなんて言うか。もっと葛藤していいはずなんです。でもそれが見えない。結果「間がない」。…残念!(カサハラさんは心の動きっぷりを見たい人だからー!)
世の中スピードが求められる時代だから,メールにせよSNSにせよ素早いレスポンスが求められるけど,直の会話はそうじゃない。受け取って,味わって,それで返すから,そのプロセスを大切にしてほしいなぁと思います。
…そうそう。部でキャッチボールとかどうですか?野球のキャッチボールが無理なら,ドッヂボールくらいのボールでもいいです。お芝居の稽古とかでも,あえて取り入れてるカンパニーとか,あるらしいです。きっと田川のみなさんなら,効果があるんじゃないかと思います。

“雰囲気”ってちょっと前に言いましたが,それを象徴しているのが多数決のときにふんわり出てくるお姉さんかなーと思います。
(作品の進行上,必要だから出てきてますよね,お姉さん…)と思いながら観てました。笑
このあと出番がなくなるからはけてる!ってところもあって,前後の脈絡(出てくる必然性,いなくなる必然性)が見えなかったです。
あとホワイトボードも,お姉さんとどんかぶりしちゃって見えなかったです。事務の人なのだから,さささっと黒子的な役割が求められるのではと思うのですが,一歩引いて見る人がその場面にはいなかったのかな…という印象です。
あとヒールに履きなれてなさそうで,(お姉さん大変だな…)と変なところで気になってしまいました。舞台のキャラクターとして必要だったというよりは,キャストさんご自身が履きたかったのかなと思います(今年の地区の志学館のマントとか,県の東海大三の衣装のような感じ…)。
もう少し演出さんや舞監さんがチェックできると良かったかもしれません。

というか…
やっぱ男性陣が濃いですね。すごいですね。今年の田川。
高校演劇で,男性役を男性が演じるということがどれだけ大変なことか…!
特に審査員のメンズが良かったです。衣装とか,それっぽいな~って。
個人的に鷲生さんの飄々とした感じが好きです。笑
あと皆さん地の声が良くて,うらやましい…(前述した通り,きちんと出ているかは別として)。
だけど宝の持ち腐れ感も否めなくて,やっぱり発声って重要…。
そして椅子に座っているところがほとんどなのだけど,立ち姿になるととたんに体の使い方がわからなくなってしまう(ように見える)人もいて,ぜひそこは自分の姿を一度録画して観察してほしいな~と思いました。伸びしろはありまくると思うのです!

女性陣で言うと,ふじのさん役の方,ああいう役合いますね…。そしてよくあの衣装と出会えましたね…。見た目だけでやな感じがちゃんと出てて,よかったです。ほめてます。
前回の『ぬけがら』にも出演されていた方が何名かいらしたかと思うのですが,こう別の作品を複数見ると,それがキャラクター作りの結果としての演技だったのか,キャストさんご自身の癖のようなものなのかがわかるのですが,後者で演技されている印象を全体的に持ちました。もっとニュートラルな状態をおひとりおひとりが見つけられると,きっと味付けしやすくなるんだろうなと思います。
あ。あと女の子は前髪下してる人が多くて,それが影になってしまって目がほっとんど見られなかったのがもったいなさすぎる!(森さん役の方は特に厚みのある前髪だったのでさらに!)リハ時などでメイク・ヘアメイクが効果的に出てるかも見られると良いですね◎

実は全体的に(演じているというよりキャストさんが全面に出ている人が多いな…)と思っていたのですが,鳩山さん役の方がすごーく素敵でした!!!
せりふ回しがすごく自然で,必要な間(つまりリアクション)がちゃんとあって,抜群の安定力でした…。役のキャラクターも俯瞰的に見ている人なので,それも相まって。なんか,私それまで若干プルプルしながら見てたんですが,全部持っていかれた感じがしました。次が気になる役者さんだと思います…☆

あとは…吊り物の字がめちゃくちゃキレイで惚れ惚れでした。笑
あと顧問の先生が出てきて笑っちゃいました。笑

田川の「今」を実感することができた60分でした。
部員が17人ということで,部長さんや先生はマネジメントが大変かと思いますが…力がつけば本当に素敵なカンパニーになると思うので,まずは滑舌,がんばってください!応援してます。

田川高校のみなさん,ありがとうございましたー。