Tuesday, May 5, 2015

テレビドラマ『永遠の0』


◇STAFF
脚本:櫻井武晴
監督:佐々木章光
音楽:栗山和樹

◇CAST
向井理/桐谷健太/広末涼子/多部未華子/尾上松也・柄本明/中村蒼・伊東四朗/渡辺大・竜雷太/工藤阿須加・山本圭/満島真之介・近藤正臣/中尾明慶・笹野高史/千原せいじ・津嘉山正種/石黒英雄/澤部佑/賀来賢人・小林克也/金井勇太・石橋蓮司/大和田健介/木下隆行/上月左知子/高畑淳子・渡邉このみ/山口馬木也/原田泰造

2015年2月にテレビ東京で放送

映画版は昨年5月に劇場で観ていました。私はお芝居でもテレビドラマでも映画でも,“はじめて”に勝る感覚はないと思っています。だから映画を先に観てしまった以上,そちらが本家本元だと思うし,それを基準に(ある意味比較しながら)テレビドラマ版を観ていたことをあらかじめ記しておきたいと思います。ちなみに映画版の感想はこちら

一時期,テレビ東京のある神谷町に通っていた時期がありました。1年間くらい。(※テレ東には通っていない。)
昨年の夏くらいから,改札とホームの間の階段にべべべっとこの作品のポスターが貼られるようになりました。インターネットのニュースで,放送は2015年3月頃であることを知っていたので,(こんなに早くから宣伝するのか!)と驚きました。(気合い入ってるな…)と。
この記事を書くにあたりテレ東のwebサイトを開いて知ったことですが,撮影に半年かかっているそうです。テレビドラマで!開局50周年の記念ドラマとは知っていたけど,本当に熱を入れて作っていたんだなーと思いました。

映画は約2時間半。今回のドラマは約2時間半×3日間。映画では描かれなかったあれこれが盛り込まれるということも知っていたけど,本当に分厚くなっていた…!複数の人物の証言からたった一人に迫っていく…という構図は,今年の1月に観た千葉県立成田国際高校演劇部『繭の中』を連想させました。
映画は主に4人の生存者から宮部に迫っていったけど,今回は本当に多角的に迫っていったので,より一層宮部がどんな仕事を戦場でしていて,どうひとに思われていたのかがくっきりしてきたように思います。特に通信兵のお仕事なんかは初めて知る情報だったので新鮮というか…。聴覚的に訴えられてきたなと感じました。宮部も,もちろん通信兵達も,あの音で苦しめられてきたんだろうな。とか。
(あと脱線するけど,白人のヌード写真とかはいろんな意味で生々しくて良かった。映画版はどこか爽やかな感じがするけど,こういう人間じみたシーン,良い。笑)

“事実と事実の間に何があったのか”というところを桐谷健太と広末涼子は知りたくてあちこち足を運ぶのだけど,「どうして?」という疑問とそれを知りたいという貪欲さが映画版より強く見えたような気がします。点と点との間で,そのひとの心がどう動いたかに思いを寄せることこそ,そのひとに近づくことだなとしみじみ感じました。そしてそれは,私達の日常生活においても大切なことなんじゃないかなとふと思いました。それがそのひとの真実と違うものでも,大事なことは「考えること」なんだろうと思います。一人,また一人と聴く話が増えるたびに桐谷健太と広末涼子の推測が揺れ動いていくあたりはとても人間的で,丁寧な描写だなと思いました。

ただ,2時間半×3夜なので尺としてはかなり長くて,それゆえか繰り返しのシーンが若干多かったかなと思います。回想するたび結構がっつり回想してて,(これ観たな…)みたいな。笑 もうちょっとコンパクトにできたような気もしたり…しなかったり…という感じです。

そう。これだけボリュームはあるのだけど,私の中で(あぁ残念…)と思ったのは,もうちょっと病んでいく宮部を見たかったなーというところと,戦後の松乃の精神的な困窮さをもう少し見たかったなーというところがあるかな。
宮部の方は映画版の岡田くんの演技が良すぎたのもあるかも…(部屋の隅っこで廃人になりかけてるあのシーン)。でも向井理ってどちらかというと元々ニュートラルなひとで,この作品の芝居に限らず目から闘志が見えにくいひと,振り幅があんまり大きくないひとだと思うので,沈むときは思い切り沈まないとニュートラルな状態とあんまり大差ないというか…そんなひとだと思うので,もう少し深いところまで見たかったなと思います。
松乃も多分映画版の井上真央が良かったのが影響してるかも…(箒を握って,大阪まで尋ねてきた大石くんをやっつけようとするとこ)。でもエピソード的に男に対してもっと警戒すべきなんじゃと思ったんですよね。騙されたこともあったし,ヤクザの囲い者になったりもしているから…。…と思ったけど,この文章を書いていて,そういえば二人の出会ったシーンでは大石くんは宮部の外套を着ていて,松乃は宮部が帰ってきたと思ったのだから,気が緩んで当たり前…なのかな?どうなんだろう。でもそうなのかも。(このシーンに出てくるからついでに書くと,渡邉このみちゃんがいい演技してた!)

あとは個人的に賀来賢人くんが好きなので,あの整備士って立場から宮部さんのこと慕ってる感じが良いポジションでキャスティングぐっじょぶと思ったり(笑),
柄本明の若かりし頃は柄本佑とか時生じゃないのか~と思って残念だったけど,尾上松也くんの演技を観てあの役は悪い顔のひとじゃないとできないわと思ったり(笑)。←ひげ生やしてると尾上くんだって気づけないね。でも叫び声がめっちゃいい声してたから,やっぱ伝統芸能のひとなんだと思った。笑

そうそう。これ書き忘れるところだった。この2時間半×3日間で一番ぐっと来たシーンを書き残さねば!
宮部が大石くんに戦闘機を交換してもらえないか頼んで→断られて→一度自分の戦闘機に戻ったとこで,松乃と清子の写真を見て,ぎゅうう~っとした表情になってるとき。向井理,そんな顔できるのか!って思いました。ほめてます。私の胸もぎゅうう~っとなりました。はぁ。苦しい決断をしたね。宮部がただカッコイイ男じゃなくて,悩んで苦しみぬいて生き切った男であることが激しく伝わってくるシーンでした…。


2月に録画しておいてずーっとそのままになっちゃってましたが,まとめて観ることができてよかったです。映画版もレンタルしてもう一度観たくなりました。ひとの心の揺れ動くさまが描かれていて,とても良かったです。あと第2夜の中村蒼のクレジットが「飛行学生A」というテレ東の配慮も良かったです。笑

はー。生きよう…。

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