脚本:坂元裕二
音楽:得田真裕
◇CAST
有村架純/高良健吾/高畑充希/西島隆弘/森川葵/坂口健太郎/浦井健治/福士誠治/安田顕/大谷直子/田中泯/柄本明/高橋一生/松田美由紀/小日向文世/八千草薫
2016年1~3月にフジテレビ系列で放送,1~5月に鑑賞
自分の意思で第一話から月9を観たのは生まれて初めてかもしれない…。
放送開始前から「月9に坂元裕二!」と知り合いと共に盛り上がっていたのだけど,徐々に録り溜め族になり,気づいたらGWに入っていました。笑
…ので,一気に観ました。きっと一話一話,一週間を待ちながらじわじわ観ていたら,ヒリヒリした感じで冬の季節を過ごすことになったと思います。作品のつめたい温度に私もやられていたと思うので,そういう意味ではちょっとあったかくなった時期にまとめて観て良かったです。
放送開始前から直後は,渋谷駅の山手線外回りの階段下に,この(↑)超巨大広告がどどーんと貼られていたのだけど,全話を視聴して改めて見ると,なんともいえない気持ちになります。だって作中,一度もこんな幸せそうな表情をすることがなかったのだもの。2人とも。きっと音ちゃんも練くんもこんなふうになりたかったんだろうなと思うと,なんだか苦しいです。
田舎を出て東京で生きていく,生きていこうとする音ちゃんは,苦しさの度合いは違えども,年齢も含めて私とかぶるところがちらほらあり,うぐぐぐ…と思いました。笑
特に,自分の部屋が欲しいの,すごーくわかる。本当はマイホームがいいけれど,せめて賃貸でも自分の力で手に入れたスペースで,安心したい。そんな感じとか。
地元から離れたところで生きていく作品って,地元に焦がれるパターンと捨ててきたパターンの二つに分けられると思うのですが,私は焦がれるパターンが好きじゃないので,この作品は…見てて苦しいところはもちろんあったのですが,冷たい冬の空気感と地元への思いが繋がっている感じで,良かったです。
では,ここで私のぐっときたシーンやせりふをどうぞ。(唐突)
#4
練くんと佐引さんが仕事先でぐちゃぐちゃ言い合い始めて,結構やばいかもとなってきたあたりで同僚にぐちゃぐちゃを見られた瞬間の,佐引さん(高橋一生)の
「愛し合ってたんだよ,ばか」。
→この切り替えがとんでもなく鮮やか。胸ぐら掴んでる勢いなのに,高橋一生が高良健吾をハグして彼の背中をぱふぱふしてる風味に見せてしまうところが,この人のアグレッションの出し方の怖さだなーとしみじみ。同時に高橋一生の演技力の高さにぐわっときました。笑
#5
「片想いなんて扁桃腺とおんなじだよ。何の役にも立たないのに,病気の元になる。僕を好きになりなよ。僕だったら,君に両思いをあげられるよ。」
→西島隆弘演じる井吹さんのせりふ。そうかぁ。扁桃腺なのかぁ。でも,なかったら病気になれないんだよなとか。両想いってもらえるもんなんですかって思ったりとか。
「私,一度人を好きになったら,なかなか好きじゃなくならないんです。好きになってほしくて好きになった訳じゃないから。たとえ片思いでも,同じだけ好きなままなんです。」
「はい。僕も同じ意見です。」
→こここここ,これ!!!!!!昨年同じ時期にTBSでやってた『問題のあるレストラン』と一緒のせりふなんですが!!!!!坂元さんがそんな人なのかな!!!!!「なかなか好きじゃなくならない」という表現が素敵すぎて苦しい。そして「同じ意見です」とか返されたらどうすればいいんだろうという感じになるじゃないの…。
#7
「どうして,何の用ですかなんて聞くの。何の用ですかぁなんて。用なんかあるわけないじゃないですか。用があって来てる訳ないじゃないですか。用があるぐらいじゃ来ないよ。用がないから来たんだよ。顔が,見たかっただけですよ。」
→音ちゃんのせりふ。その通りすぎて。笑 好きなひとにこんなの聞かれてしまったら,私もつらいなぁ。
#9
「練の好きは買えないよ。練の好きはお金で買えるようなものじゃないの。何かと交換できるようなものじゃないの。」
→練のことが好きな小夏ちゃんのせりふ。手切れ金を断る言葉選びが,まっすぐで刺さりました。一般的に「好きって気持ちは買えない」じゃなくて,「練の好きって気持ちは買えない」って,固有名詞出してるあたりもなんだか素敵。
「かっぱなんか作ったって楽しくないし。」
『何をするかじゃなくて誰とするかだと思うけどなぁ。』
「え?」
『楽しんでくれる人がいれば楽しくなると思う。僕はこなっちゃんとだったら何をしてても楽しい。』
「晴太ってさぁ,何で普通に好きって言わないの?」
『ん?』
→同じく小夏ちゃんと,小夏ちゃんのことが好きな晴太くんの会話。3つめの,『僕はこなっちゃんとだったら何をしてても楽しい』というせりふはとても説明的で,初めて聞いたときは坂口健太郎がせりふに喋らされている感がしたのだけど,小夏ちゃんの返しを聞いてそっかそっかとなりました。普段素直に表出を出せない晴太くんの,精一杯だったんだなぁと思って。
「会いたいです」と音ちゃんが練くんにメールを打つのだけど,そのあと
“私もあい”→“会えません”→“今はまだ会えません”
と打ち直して練くんに送るシーン。メールって温度が伝わりづらくて,相手に届く“結果”しか見えないものだけど,結果に至るまでもプロセスってちゃんとあるんだよなぁと改めて感じました。どんなことを考えてこの文章を作ってくれたのだろうって。考えたら楽しいんだろうなって。
#10
「私はもう決めて…」
『決めることじゃない。恋愛って決めることじゃない。いつの間にか始まってるものでしょう?決めさせた僕が言うことじゃないけど。』
→#9のかっぱのくだりもそうだけど,きっとこのあたりが坂元さんらしいんだよね。恋愛を改めて言語化して,気づきを促すようなこの感じ。しかもこの『決めさせた僕がいうことじゃないけど』ってせりふを,わりかし淡々とした口調で西島くんが言っちゃうのもなんだかずるい。笑
あとやっぱりいろんなキャストさんの中でも,高畑充希が良かったです~。早く舞台で拝みたい~。笑
この人の,無理してるあたりと素っぽいあたりの変化がとても丁寧で,素敵なのですー。
音ちゃんと仲良くなっていくあたりもホントに2010年代の20代女子がわちゃわちゃしてる感じで,好きでした。笑
でもって第一話に出てきた柄本明が怖すぎて怖すぎて,頭から離れない…。本当に一話しか出ていないのに,この作品の中でも結構なトラウマレベルです。コワイヨ~。大切なひとのお骨がトイレに流されるとか本気で恐怖です。これをやってのけてしまった養父の柄本さん,さすがです…。
作品の時代が結構前から始まっていて,東北も舞台で出てきたときに考えるのは2011年の3月11日で,これも関係するのかと思いきや…作品中では確か全く触れなかったので,世の中で重要なことと個人にとって重要なことってやっぱり全然違うんだなぁと改めて思いました。
月9の視聴率としてはあまりよろしくなかったみたいですが,私は春を待つ東京で生きていく彼女や彼をじんわり味わえて,満足なドラマでした。
坂元裕二作品を観るぞーと意気込んでいる割に,『私たちの教科書』でストップ状態なので,なんとかしたいと思います…。
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