監督・脚本・製作:是枝裕和
音楽:ゴンチチ
挿入歌:タテタカコ『宝石』
◇CAST
柳楽優弥/北浦愛/木村飛影/清水萌々子/YOU/韓英恵/加瀬亮/平泉成/串田和美/岡元夕紀子/タテタカコ/木村祐一/遠藤憲一/寺島進
製作国:日本
公開:2004年
上映時間:141分
(2016.1.14 DVDで鑑賞)
この映画が公開された2004年。カンヌ国際映画祭で柳楽くんが最優秀主演男優賞を獲得したというニュースはかなり大々的に報道されていて,印象に残っています。柳という字と楽しいという字で「やぎら」と読むということも,このひとの名前で知りました。
だけど何がどうすごいのかわからないまま,映画への興味よりも日々の身近なことへ熱中していた私は,そのまま何年もこの映画に触れず過ごしていました。
2009年。多分そのくらい。大学生の同じ学科のまゆみちゃんと話していたときに,この作品の名前が出てきたのです。
「ネグレクトのお話だよ。YOUがお母さん役なんだけど,家を出てっちゃって,きょうだい4人で生きていくって話。」
『はー。それそういう話だったんだぁ。』
当時教育学をべんきょうしていた私は,この作品に興味を持たなかったわけではなかったけれど,それでもレンタルして観るというところまではいかなかったのでした。
そして2015年。高校演劇に再び目覚めた私は,長野清泉女学院高校の『宇宙の子供たち2015』を観ました。地区大会,県大会と続けて観ましたが,どうやら『宇宙の…』はこの作品にインスパイアされている部分があるらしいということを知ったので,関東大会前に観ておきたい!と思ってレンタルしたのでした。公開されてから12年。干支が一周回ってしまった…。
でも,観てよかった。
救われない映画だけど,観てよかった。
胸がとてもヒリヒリする映画でした。
「柳楽くんの表情がいい」という前評判を聞いてから観ましたが,ホントそうで。彼の表情が全てを物語っていました…。
長女の京子もそうだけど,いや次女のゆきや次男の茂もそうだけど,みんなやっぱお母さんのことが好きじゃん。きょうだいのことが好きで,家族のことが大切じゃん。それが全てだから,サヴァイヴするにも優先順位が「きょうだい一緒に」だから,児相や警察の存在を知っていたのに明はそこには一切触れないし,タイトル通り誰にも知られないまま生き延びようとする。無理が来ることをどこかでわかっているのに,突き進もうとする。そもそも無戸籍だから行政も彼らの存在を見つけられない。なんて苦しい世界なんだろうー。うぅぅ。
コンビニで賞味期限切れのお弁当やおにぎりをもらってきているあたり,他者にヘルプを出すスキルが明にないわけじゃないのに,そういうヘルプの出し方なのかと思うと,とても切ない。切ないのです。
でもって,子ども達の生命力がものすごかった。
母親に捨てられて,ガスも電気も水道も止められて,そしたら外へ資源を探しに出かける。ペットボトルに公園の水を入れて持って帰ったり,何かの種を採集してカップ麺の鉢に植えたり,小さな何かをすぐにおもちゃに換えてしまう,遊びに換えてしまう子どもの発想力や柔軟性には圧倒されました。きっと4人だから生まれたパワーなんだとも思います。捨てられたのが子ども一人だったら,ここまで生き延びられなかったのでは…。きょうだいの力って,本当にすごいなぁ。にょきにょき生きていく姿がたくましかった…。いい土なんかじゃなくて,肥料もなくて,カップ麺の鉢なのにどんどん伸びる植物の姿と子ども達の姿が重なりました。
だけどやっぱりニンゲンだから,茂なんかは苦しさを遊びで発散しようとするし,明も野球に誘われたら嬉しくなってやっちゃうよなーとも思います。ある意味当然の反応というか…。そうそう,空腹だから外に出たのに,兄の明に発見される頃には知らない友達とわちゃわちゃ遊んでる茂の姿とか見ると,遊びの力って偉大だわと思います…。明も必死で堪え忍ぶけど,我慢できなくなって下の子達に当たってしまうあたりも,とても人間くさくて,生々しくて,切ないけれどぐっときました。本当にドキュメンタリーじゃないかというくらい,生々しい映画。
また母親がYOUなのもとても素敵…(ほめてる)。確かに育児放棄しそう…(勝手なイメージ)。
冒頭はちゃんと子ども達を愛してるっていうシーンがあるけど,でも自分中心なんだよね。お酒飲んで帰ってくると,寝ていようが何していようが子ども達起こしちゃうところとか。子どもというより,同居人のように扱ってる感じ。確かに愛でているけど,守るべき対象ではない感じ。子どもというより,お金が必要な小さな大人として見ている感じ。なのかな。だからきっと,心の中では「お金送ってなくてやばいかも☆」とは思っても,どんな苦労を子ども達がしているのかは想像できていなかったのかも。わからないけど。あときっと,やばいと思っていても向き合う覚悟が,このひとにはなかったのかも。とにかくハマリ役で,怖かったです。
いろいろつらつら書いてしまったけど,やっぱり子ども達の表情が素敵でたまらなかったです。柳楽くんと北浦愛ちゃんの,思春期入りかけたあの表情。本当は甘えたいのに素直に出せないあの表情。あの年齢のお子さんにしか出せない表情だと思うと,子どものあの一瞬って本当に貴重だな~と思います。1年くらいかけて撮影しているっぽいのだけど,1年経つと清水萌々子ちゃんも木村飛影くんもぐっと大人っぽい表情になっているから純粋にびっくりでした。柳楽くんに至っては声変わりまでしてるし!なんて良い時期に撮影をしたんだこの映画は…。子どもの成長に嘘がなくて,本当に貴重な貴重な映画だなーと思います。
嘘がないくらいダイレクトに感情が伝わってくる映画だから,本気で苦しかったです。目を何度も逸らしたくもなりました。そのたび,(この数年後,柳楽くんは高校で豊田エリー先輩に出会って恋にお落ちて結婚して幸せになるのだわ!!!)と念じていました。笑 明は救われないけれど,柳楽くんは救われる。そう思っていないと観ていられませんでした。あぁつらい。つらかった。是枝監督,すごいです…。
あと特筆すべきこととしては,串田さんが超若く見えてびっくりしちゃうのと,同郷のタテタカコがこんなにも活躍していて嬉しい♡ということ。
12年前なのに。2004年とかに私串田さんの出てるお芝居観てたのに。ということはそのときだってこれくらいだったはずなのに。なんだかものすごい年月を感じました。
子ども達の素直な反応や表情から,ヒリヒリした心の痛みや彼らを取り巻く場の温度が伝わってくるような,生々しさがある映画でした。今観て良かった。そんな作品。
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