@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
作:野口夏実
出演:作新学院高校演劇部
昨年の関東大会に続いて作新のお芝居を拝見しました。あれですね。昨年の『発足!復興委員会』と同じ学校だと思うと,人と人との繋がりへの関心が大きいカンパニーさんなのかなって気がしますね。
タイトルをぱっと見て,思わずAKB48の3枚目のアルバムのジャケット写真が思い浮かびましたが,全く違いました。全く。笑
この作品を観てというより,「合唱が好きなのか,合唱部が好きなのか,この違いに気づけるか」という講師の先生の講評を聞いて,この話の“そもそも”はここかー。とようやく気づきました。同時に自分自身に対する理解も深まりました。笑
私ももちろんお芝居は好きだったけど,演劇か演劇部かというとどちらかというと演劇部が好きだったのかもしれません。だから自分の進路を考えるときに,お芝居の道なんて一切考えたことがなく,高3の授業も,大学で日本文学をやるなら日本史を6時間取るべきだし,教育学をやるなら世界史を6時間取りたい…で悩んでいました。なんか,そういう悩み方。
あと現役時代,私が朝練係だったこともあって,「7時50分までには部室からタンバリンとラジカセを持って格技室にいなければ!」みたいな思いが強かったなーということも思い出しました。朝練なんてお芝居の稽古をするわけでもなんでもなくて体を動かすことがメインだったから,正直出なくてもお芝居を作ることそのものには何ら影響なかったな…と今思えばわかるんですけど,当時の私は(朝練に来ないなんて!)と先輩同期後輩に対して内心ぐつぐつ思っていたのでした。「部活の枠」を守ることに必死だったのだろうと思います。
そう思うと,マコちゃんはまさに「部活の枠」を守ろうと孤軍奮闘していて,次第に合唱が好きな子達と対立してしまう。お互いに正しいと思うことが衝突するってこういうことだろうなーと思うと,お互いが大事にしたい信念(みたいなもの)と,そのために取っている行動が何なのかということをわかろうとしなければ,平行線のままになってしまうのだろうと思います。
なのでマコちゃんがキーキーしている姿を見ると,(あぁぁぁ…!)とアワアワしてしまいました。多分マコちゃん的には合唱を楽しくやりたいひとたちは「部員」として見るとたるんでいるように見えて,合唱を楽しくやりたいひとたち的にはマコ先輩超ヒステリーなんだけど…みたいに見えちゃうんだろうと思います。
できればお互いのズレに当事者達が気づけて修復していけたらお話的にも優秀(あえてこの表現)なんでしょうけど,そこは一歩引いた3年の先輩が助け舟を出してくれたと言う感じなのかな。でも,メール一通で解決に向かえるくらい単純なものなのかなとか,一通でそのキーキーと楽しくやりたいが和解できると思うと,この芝居は何だったんだ感も若干あって,メールならメールを踏まえて本人達の思いを聞きたかったなぁという感じもしました。言葉なしで繋がり合えるのが合唱と言われたらそこまでなのだけど…。
あと私はあの舞台セットの箱は面白いなぁと思って見てました。いろんなものに使える・見えるって,多分私も好きな使い方です。でもその箱一個だからこそ,何色にするかって結構重要なんだろうなと思います。多分どの色にしてもつっこまれるし,正解はないと思うんですけど,あの水色は単純にキレイだったなぁと思います。台所に行く(はずな)のに階段を下っていくのは「アレ?」って感じもしましたけど。笑 でもってもう少し,上手でもお芝居が生まれるといいなぁと思いました。全体的に下手に寄っている気がしたので。
今どきの言葉で表現すると講師の先生が仰っていた「部活あるある」なお話だと思うのですが,もっといろんな考えのひとがいていいだろうし,部長の思いを汲もうとするひとが内部にいてもいいだろうし,人の数だけ力動があると思うともっと細やかな描写ができそうなお芝居だろうなー!と思いました。稽古を重ねていくとリアルな自分達と重なってくるところもあってイヤになりそうな気がしなくもないですが,練り直せたらもっと分厚い作品になるんだろうなと思いました。
はっ。そして最後にタイトル…!タイトルはやはり全体を集約したり中身を表現するようなものであってほしいなと思うのですが,ちょっとぼんやりしすぎていて,うぅーんという印象がしなくもなかったです。AKBなら「“ここ”って秋葉原の劇場ね!」とかって想像がつくのですが,作新の場合「“部活”にいること」と置き換えると…。うううーん…という気持ちです。タイトルって難しいけど,センスが試されるなぁと常々思います。
この作品を通して,この年になって改めて自分への理解が深まりました。笑
作新学院の皆さん,お疲れさまでしたー!
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