@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
作:小池志織
出演:栃木県立宇都宮女子高校演劇部
初!宇都宮女子!この記事を書くために,演劇部なのか演劇クラブなのか確かめるべく高校のwebサイトを確認したのですが,宇都宮女子高校って公立高校では最も歴史が古いんだとか…。おぉぉ…。また一つ賢くなりました。笑
さてこのお芝居。すんごい主観なのですが,今年度全国大会で最優秀を取った,大分県立大分豊府高校演劇部の『うさみくんのお姉ちゃん』を連想させるようなわちゃわちゃ感がありました。場転なしで話が進んで,60分経ったときに登場人物達の気持ちがなんだかちょっと変わっていて,観ている側としてはほっこり出来る感じ。そこが。観てて楽しかったですー。
とりあえず年越し系(?)のお芝居ということはわかっていたのですが,幕が開いてびっくり!
私,プロアマ高校演劇問わず,舞台でエレベーターが出てきたの,初めて観ました!!!!!
すっごい!しかも,めっちゃ手動!!!(多分エレベーター扉の横でスライドさせている人がいる!笑)この質感に,まずやられました。笑
そう。このお芝居,質感がとても好きでした。緑のたぬきとか,ちゃんと中身入ってる(ように見える)し。配管とか。門松の竹とか。本物があるだけで,舞台が本当に落ち着いて見えました。マンションも今どきの…というよりは,90年代くらいに建ったんだろうなーと適度にくたびれてる感じがあって,そこがまた栃木っぽくて(←失礼だったらスミマセン。良い意味で都会っぽくないという意味です)素敵でした。
ただ,講評のときに舞台美術の伊藤先生から「配管はパネルとパネルのつなぎ目に配置すればよかったのに」という一言は目から鱗というか(そんなやり方があるのかー!)と,非常に新鮮な情報でした。いやー。今後使えそうな知識です…。使える場所があるかは別として。笑
平田オリザさんの『わかりあえないことから』を読んで以来,私はマイクロスリップ(えっと,あの,その,あれだよね…みたいなやつ。必要な情報の他に出てくる,人間らしい音声。)というものを意識してせりふを聞くようになったのだけど,宇都宮女子のお芝居は心地良いスリップがたくさんあって,なんというか,人間の温度が感じられるようなお芝居でした。特に作者さんが演じていらっしゃったタカジョウさんが私は魅力的だなーと思って,この方すんごいマルチだなと感じました…。お芝居作れて演じられるひとって,ホントにいるんだなと…。
観ていて,栃木も十分関東だよと上京当時は思っていたのですが,なんとなくそうでもないのかなという気もしてきたここ数年。私は長野県から東京に憧れ上京した田舎者ですが,栃木もそんな感じがあるのかな。
「東京じゃなきゃだめなの?」みたいなせりふはすごーい,ものすごーーーーーい,しみました…。カサハラさんも人生の迷子の一人です。笑
私も高校の先輩と地元で飲み会を開くたびに,「カサハラにはまだ東京で頑張っていてほしい」と言われます。やっぱり自分にとって大切な人が期待してくれるのは嬉しいし,その期待に応えたいと思うし,再会したときに相手にとって“会って嬉しいひと”でいたいと思う。だからきっと,夢が破れて地元に帰るというのは,自分の夢を諦めると同時に周りの大切なひとの期待を裏切ってしまう気持ちになるというか,そういう意味合いもある気がして。そしてその状況を自分自身で受け入れるのが難しくてアリサちゃんは嘘をついてしまったんだろうと思うと切ない限りです…。「東京じゃ…」という場所の問題というより,そういうものなんだろうと思います。なんとなく,2014年に観た映画の『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を思い出しました。
あれだけ時間かけてるのに,門松ができないのは本当に歯がゆかったです。出来途中の門松がボロッと崩れるたび,何度(あぁーっ!)と思ったことか。笑
出来上がったらお芝居が終わっちゃうことはわかっているんだけども,またか!またか!と,若干心が挫けそうになりました。でもこのうまくいかなさこそ人生なのだと思います…(壮大)
あと細かいところとして,携帯の着信音が中島みゆきの「時代」だったり,エレベーターの閉まろうとする(けどタカジョウさんの荷物が邪魔で閉まれない)やつがいいなーと思いました。そう。あえての「時代」,良いですね…。笑
でも除夜の鐘は途中で鳴り終わった感じで,また鳴り始めちゃったように聞こえたのでちょっと残念でした。聞かせたいところで流してるのかなと思ったのだけど,聞かせたいところ2箇所の間もバックでうっすら聞きたかったなぁ。
講評にもありましたが,最初から安心して観ることができました。どう観て良いかわからない高校演劇も少なくないですが,はっきりルールが明示されるのってありがたいですね…。
宇都宮女子の皆さん,お疲れさまでしたー。
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