@千曲市更埴文化会館あんずホール
作:野口夏実
出演:作新学院高校演劇部
作新といえば私が現役の頃から有名で…いやそれより前からおそらく有名だったんですが,とにかくそのせいで(?),10年前に私はここの作品を観た気になっていました。パンフレットの過去の記録を見て,(あ,観てなかった)と気づきました。笑
実は関東大会の前に,たまたまTwitterでどこかの学校のすんごい舞台セットの写真を見ていたんですが,幕が上がった瞬間(ここだったんだー!)とわかってテンションが上がりました。
ななな,なんなんだ作新!リアルすぎる!特にドアの質感!ドアの質感!!!(大事なことなので2回)
今年度の長野県でも,松本美須々ヶ丘高校『B面セレナーデ純情奇譚』で横開きのドアがあり,おうちの雰囲気がかなり出ていたなーと思ったものです。ドアである程度その空間がどんなグレードなのかがある程度わかるな~と感じました。
でも作新はそれを上回るというか…ほんとにどっかのおうちから一階部分を持ってきたんですかと聞きたくなってしまうくらいのリアル感で,圧倒されました。あれを20分で撤去して次の学校が立て込んでると思うと…スゴイの一言。
パンフレットにも書いてあるようにすごく大きな何かがあるわけではないし,居間以外で物語が進むわけではないのだけれど,でもこれが世の中に生きる大半のひとの日常なんだろうなと思うと,連続体である日々の切り取りとクローズアップの仕方が素敵な舞台だなと思いました。
なぜおばあちゃんは土偶を…。大事なものにしても,なぜその(設定の)セレクトが土偶だったんだ…と思ったんですが,それもある意味私達の日常をリアルに写し取ってるんだろうなと,今は思います。他人にとっては共感しづらいものでも,当人にとっては本当に大事なもので溢れてるんだろうな。世の中。きっと我が家も実家のタンスとか開くと,そういうものだらけなんだと思います。笑
だからお兄ちゃんは自分にとってはどうでもいいものでお金を作ろうとするし,おばあちゃんは心臓が切り裂かれるような思いになるんだろうな。
そうそう。これだけ舞台セットがリアルなのに,時計は動かないんだな~と思って見てました。舞台上に流れる時間と本当の時間にはズレが出るだろうから,(演出の都合かなぁ)なんて見てたら,本当に止まってる設定だったので,納得。
“壁掛け時計”っていうところが,良いよね。
現代ですから,各々携帯電話を持っているから壁掛け時計なんてなくてもいい。家族全員が同じものを注視する必要がない。家族全員で,“同じ”を見るものが,ない。
職業柄,「共同注視」をいう言葉を思い出しました。赤ちゃんってまず,目の前の母親と視線を合わせて関係を成立させる。で,そのあと赤ちゃんが別のものを指さして,母親がその指さすものを追って,同じものを見る。それによって二者関係から三項関係に移行できる。外界と関わりを持てる。だけどこの家族の中には,“同じ”を見るものが,ない。象徴的で,すごくよかったです。
だから最後はどうなるんだろうと思っていたけど,また針が動き出して安心しました。「家族の時間が止まってた。それがまた動き出した」のではなく,それぞれ進めていたけれど,家族というイニシアチブを取り戻したのかなーっという印象を受けました。
お芝居のことで言うと,みなさんよく声は出ているのに,表情があんまりついてきてないような…そんな感じがしました。もう少し表情を見たいのになーって。なんだろう。まゆかな…。まゆが動いてないのかな…。
あと,父親とお兄ちゃんのガチバトル。良かったのだけど,もっと本気でいけるんじゃないかと私は期待してしまいました。笑 だって父親と息子ですもの。それこそ壺がひとつ割れる勢い(あくまで勢い)で,ぶつかってほしかったなーなんて思います。
それでは,秩父○工の皆さんとの合コン,楽しんできてください(違)。
私立の質感リッチなお芝居を観られて,とても刺激的でした…。世の中にはこんな高校もあるのだなぁと,新しい高校の作品を観るたび思います。有名有名と言われている学校の作品を今回拝見でき,とても満足です。
作新のみなさん,お疲れ様でしたー。
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