@千曲市更埴文化会館あんずホール
作:青山一也
潤色:長野県松川高校演劇部
出演:長野県松川高校演劇部
県大会で観た時,(全部持っていかれた…)と感じた松川高校の『べいべー』。あれから3ヵ月。一週間前には自主公演も打たれていて,どんな風に成長されているかとっても楽しみでした!(ちなみに県大会の感想はこちら)。
県大会の幕間講評では,舞台の上下にあった六角形の…オブジェ(?)について講師の先生から指摘されていたので,ここは絶対変えてくるんだろうなと思っていました。
幕が開いて注目してみると…六角形が,球体に!
後々出てくるもも&たかし&さくら&かりんそれぞれのイメージカラーの球体が上下に2つずつ。ぱっと見てすぐ,たまごだなー。卵子だなー。ほわほわ感だなー。って感じました。それがみょーんって奥の…オブジェ(??)とリボンみたいなものでつながっていて。全体的にカーブしてるラインが多くて,優しい印象を受けました。
なんかもう,一度観ているのでストーリー面ではワクワク感はなかったのですが,前回より近く&センターで観たら新たな発見があって,ワクワクできました!
それは…さくらちゃん!
へその緒が絡まってたエピソードが後で出てきますが,ちゃんと本当に首に痕があるではありませんか!細かいなぁ~と思って,感激しました(*゜▽゜*)きっと後ろの席から観たら,あってもなくても同じなのだろうけど,ちゃんと作り込んでいることが見えて…なんというか,嬉しい気持ちになりました。
あ,ワクワクではないけど,(あれ?県大会ってどうだったっけ?)って思うところがありました。
たかしともものオムツのシーン。あの効果音ってありました…っけ!?もうどうだったか忘れちゃいました。あんなにインパクトがあるシーンなのに…!
県大会の茅野でも思いましたが,そういう効果音や楽曲で笑いを取れるってすごく高度だと思うのですごいです…。視覚的にも聴覚的にも,一度観ているのにやっぱり度肝を抜かれました。笑
この舞台を観ていると,「笑っちゃう」とか「面白い」って,せりふによるところだけではないんだなーと改めて思います。たとえばさくらちゃんがたばこを「ふん!」とへし折って,ドタドタ寝床に戻って,何事もなかったかのようにぱっと眠りにつくところ。そういう間とか態度の豹変っぷりとか,本人はいたってマジメなのに,周りから見るとそれがかえって面白かったりとか。そういう空気感とか,ノンバーバルな面を楽しめるのがお芝居なんだよな~と,改めて感じました。
アンサンブル力がある,と講評でコメントがありました。うんうん。よくわかります。けんたの「さあ僕の胸に飛び込んでおいで」の4人のべいべー達の動きとか,相当狙ってこれになってるんだろうなーというのが今回よーくわかりました。4人の表情が見えるようなポージングだったり位置取りだったりをきちんとされていて,「!!」ってなりました。過剰さを感じないのにさらりと決まっているのは,演出の力なんだろうなーと思います。
あと,たかしくんのプロポーションをセンターでお楽しみたいな(笑)と思って,今回はどセンターを確保していたのですが…センターって,ちゃんとお芝居を観るためにはやっぱ一番良いポジションであることを再認!(笑)
そうだ。講評といえば,あともうふたつ。
1個目は,「せりふから舞台上にいない親を想像できた」というもの。そう言われて(私もそうだー!)ってなりました。自然すぎて,気づきませんでした。笑
やっぱりお芝居って想像力で魅せるものでもあると思うのですが,『べいべー』は4人の向こうにそれぞれの両親がいることが思い描けたんです。もちろんせりふが良い・台本が良いのかもしれないけれど,それをうまく調理したキャストの力が大きなものだったんだろうなぁと思います。想像する楽しみを観客に与えるということができた時点で,この舞台は成功しているんだろうなぁ。
2個目は,「芝居のテンポが安定している」こと。県大会でも言われていたの…かな?
そもそもこの言葉ってほめてるんですかケチつけてるんですかどっちですか…?
これだけ聞くと,(え,安定してちゃいけないの?)って思います。ただでさえアマチュアの高校生がやるお芝居なんだから。安定にたどり着くこと自体難しいんだから。高校演劇には未熟さが求められるのですか…!?(究極)
安心して観られるという意味ではとても良いことだと思います。安定って。
でも「安定すること」と「役者が慣れてしまうこと」は別物だろうなって思います。稽古を重ねて,相手の次のせりふが自分の体にしみこんで,「今ここ」で起きていることに対しての反応ができなくなってしまうようでは,だめなんだろうなと思います。でも私は,今回そこまでは感じませんでした。
ところで…今2月でしょ。で,全国って半年後でしょ。そこまでひとつの作品を温めるのって精神的にも本当に大変だろうなーと思います。「再演」という感覚ではないだろうし,でも今のキャストスタッフがまるまる続けられる訳でもない。どうやって気持ちも含めてキープしていくかがどこも課題になるのかなぁなんて勝手に思ってます。
この作品に関して言えば,キャストスタッフをシャッフルしてどこかで公演してみるのも面白いんじゃないかな~と,これまた勝手に想像しています。スタッフも含めてシャッフルして,自己演出とかお遊び気分で楽しく再構成するのです。…楽しそう!新たな発見がありそう!(あくまで私のアタマの中の話)
はっ,お芝居の話に戻ります!最後の最後なんですが,県大会ではステンドグラスの方に照明が行ってしまって,べいべー達はほとんど見えなかったんです。しかし今回は!後ろ姿にうっすら照明が当たっていて,(あぁよかったー)って思いました。笑
作新の『発足!復興委員会』で共同注視の話をしましたが,やっぱり誰かが何かを見ている視線は追いたくなるし,一緒に同じものを見ていることを共有したいなと思うので。
3年生の方が何人かいらっしゃるので,今の松川のスペシャルメンバーで作る『べいべー』はこれが最後だと思うと,また観に来た甲斐がありました。十分元が取れたし,おつりが出る勢いです。
ちなみにこのお芝居の後に,松川の演劇部を復活(?)させた小川先生にお会いすることができましたー!先生は部を再建する際にこのお芝居に取り組まれていたのです。私は松本深志の『ベルゲン・ベルゼンの空の下で』とか『南京の早春賦』を観て育ったので,小川先生×コメディなんて全っ然想像つかなかったんですが…
「復活させるときは,楽しいものに取り組んでモチベーションを上げないとね」
みたいなお言葉を聞き,ほほー!(゜O゜)と思いました。そうですね…。顧問の先生だったり部長だったり演出だったり,何かを提案する側のひとの中にやりたいことがあっても,出す順番があるよなぁなんて思いました。(だから新歓は在校生の好きなものをやるんじゃなくて,新入生が観て楽しいものを作るに限ると個人的に思っている。)
叶うものなら,小川先生版の『べいべー』も,観てみたかったな…。
はいっ,そんな感じです。
改めて,全国への出場おめでとうございます。2年連続なんて!長野県の快挙じゃないですか!
私はずっと,(関東まで行けても全国に行くのはやっぱり「常連」と言われるあんな高校やこんな高校なんだな)なんてうっすら思って生きてきましたが(笑),そうじゃない時代が来たのかもしれません。長野県も,ちゃんと全国に通用するんだ!ということがこの結果から実感できて,とても嬉しく思います。
それから,松川は南北合わせて選出される枠での出場決定なのですが,南で優秀賞を獲得した4作品は全て観ているので…その中から選ばれたので,本当にすごいなーと思っています。ぜひ,楽しんでお芝居してきてください。
松川のみなさん,お疲れさまでしたー!
No comments :
Post a Comment