Monday, July 11, 2016

パルコ・プロデュース公演『BENT』

@世田谷パブリックシアター

作:マーティン・シャーマン
翻訳:徐賀世子
演出:森新太郎
出演:佐々木蔵之介/北村有起哉/新納慎也/中島歩/小柳友/石井英明/三輪学/駒井健介/藤木孝

「佐々木蔵之介が出る」「同性愛者の役」「ナチス政権下の話」という,非常にざっくりした情報のみで観たーいと思って,高校の部活の同期と同じ日に合わせてチケットを取った『BENT』。他に観たかった舞台のチケットが取れなくて,浮いた分こっちを観るかーという感じで本当にふわっと決めた観劇だったのだけど,今のところ2016年に観た舞台でぶっちぎりの作品になりました。

私の中で佐々木蔵之介といえば,昨年観た『マクベス』(これもパルコプロデュースだわ!)。あの超大人数の登場人物がいるマクベスを,まさかの一人舞台でやっちゃうのが衝撃的でした。マクベスのリビドーが痛いほど伝わってきて,舞台上には一人なのにものすごいエネルギーを感じた作品でした。

今回の『BENT』もまた,このひとのエネルギーがぐわーっと伝わってくる舞台でした。パンフレットを買うかどうかは終演後に決めよう~と思っていたのだけど,休憩の時点で買おうと思いました。笑

演劇の魅力のひとつが「見えないものを感じること」なのだとしたら,このお芝居はそれがものすごく伝わってきました。
収容所に送り込まれたマックスは何の役にも立たない石運びの仕事(というか作業)に就かされて,そこにホルストを呼び寄せるのだけど…仕事の時間だから二人は話すこともできないし,目を合わせることもできない。当然触れることもできない。(まぁ実際は作業の傍ら,ぱっと見で話していないように話しているのだけど。)

相手を見つめることもできないのに,周囲を気にすることなく喋ることもできないのに,抱きしめることもできないのに,愛してるひとのことを感じたり,感じてもらえたりする。それって多分むずかしいこと。
でも,マックスとホルストがお互いのことを感じているということが,観客の私に感じられたのです。劇中の「3分間の休憩」でふたりは想像上のセックスをするのだけど,それがものすごくって。うまく言えないけど,そういう行為って心とか,魂とか,そういうものが繋がっているのを確かめることなんだなとじんわり思いました。身体的な触れあいだけじゃなくて。尊くて,愛おしいシーンでした。うろ覚えだけど,そのシーンの前後で出てきた「セックスだってできる。生きてるってことだろ。死んでたまるか。」みたいなせりふが胸に残りました。

そうそう。エグかったからか佐々木蔵之介の力かって言われたら,どっちかっていうと後者なんですけど,収容所に入って最初のあたりで,マックスとホルストが再会するシーンも印象的でした。二人は同性愛者だから本来どっちもピンクの星をつけさせられるはずなのだけど,マックスはどうして黄色の星なんだというところ。「取引き」についてマックスが語るところ。
なんていうか…佐々木蔵之介の語りから情景が浮かんでしまって,うぅぅ…と思ってしまいました。でもお芝居のせりふにあるっていうことは,実際にもあったことなんだろうな。同性愛者ではないと証明する方法。うぐぐ…。この俳優さん,すごいわ…。

すごいといえば北村有起哉も素敵で。“演劇馬鹿”の代表として佐々木蔵之介の相方に選ばれたらしいのだけど,本当にどストレートだよね!マックスへの思いも,何もかも。真顔で愛を語って,それがお客さんの笑いを誘ったと思いきやそこで泣かされるっていう。(泣かなかったけど。)ラストの左眉を撫でるシーンが,本当にたまらなかったなぁ。今回のこの役のために10キロ体重を落としたっていうエピソードも,真っ直ぐすぎです…。

あと私は一昨年の朝ドラ『花子とアン』で中島歩のことがお気に入りだったのだけど,こーんな役で舞台に出てる彼を拝めて楽しかったです!やだー。なにあれ超似合うー!笑 ああいうオネエいそうだよね。うん。感情的で,かまってちゃんで,でもマックスのことが大好きで。子犬のようなルディがとてもかわいらしかったなぁ。

あとあとグレタ役の新納慎也。キレイすぎてびっくり。そしてバトンで飛ばされててびっくり。歌声もキレイでびっくり。あんな使い方できるんですねバトンって。所作とかうっとり。女装している人のドロドロしたところが短時間でもちゃんと見えて,このひとの力を感じました…。まだ『真田丸』の17日放送分を観てないので,楽しみです…。

そして今回観ていて,ユダヤの人達がまるで高待遇のように見えてくる錯覚がありました。今回このお芝居を観るまで,同性愛者の人達がこんなにも虐げられていたなんて知らなくて,衝撃だったと同時になんだか恥かしい気分になりました…。
歴史の面でもお芝居の面でもとても刺激的で,森さんの演出で観られてよかったなーという思いです。今まで森さんの演出作品は観る機会があったはずなのに,パスしてきてしまった自分に激しく後悔…。今後は目を光らせて,情報をキャッチしていきたいと思います!

とにかく久しぶりに演劇の醍醐味を味わえる舞台に出会えました。満足!回転舞台もすきだった!充実した時間になりましたー!

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