(PARCO劇場公式webサイトより)
@KAAT神奈川芸術劇場 ホール
作:W. シェイクスピア
翻訳:松岡和子訳『マクベス』より
演出:アンドリュー・ゴールドバーグ
出演:佐々木蔵之介/大西多摩恵/由利昌也
思えば『マクベス』は,いろんな形で観てきました。
2006年には劇団☆新感線の『メタルマクベス』を観ました。マクベスの世界とヘヴィメタバンドの世界の二重構造になっている作品。宮藤官九郎が脚本を書いて,いのうえひでのりが演出というなんともゴテゴテのカッコイイお芝居。当時高校生だった私はこの世界に震えました。マクベスは内野聖陽。マクベス夫人は松たか子。
2010?年と2013年には世田谷パブリックシアター制作の『マクベス』を観ました。シェイクスピア作品を日本の伝統芸能とコラボさせる試みを野村萬斎はずーっとしていて,この作品も和を感じさせる舞台づくりをしていました。5人でマクベスって回せるんだ~と驚いたものです。マクベスは野村萬斎。マクベス夫人は秋山奈津子。
同じく2013年には長塚圭史演出の『マクベス』を観ました。思えば3作品中この演出が最も原作に忠実だったかも。観客がダンシネインの森として緑色の傘をふりふりする演出があったのですが,私は見事その傘の席に当たり,わーいと思って広げたのでした。マクベスは堤真一。マクベス夫人は常盤貴子。
そして思いました。
私,『マクベス』好きだわ。
この,なんとも愚かしい人間の話が,私好きだわ。
自分が小さいことを,思い知らされるわ。
だから今年,佐々木蔵之介がほぼ1人で『マクベス』の登場人物を演じきると知ったときもぴぴーっと反応してしまいました。
しかも設定よ。場所は精神病棟。佐々木蔵之介は患者だというではありませんか。
私の職業的にもものすごーく気になる設定でありまして,先行でチケットを確保してしまいました。
パルコのプロデュースだからホームのパルコ劇場で観るという手もあったのだけど,なんとKAATも会場に♡
未だKAATデビューできずにいた私は(これは運命!)と思ってこちらの公演に行くことに。無事デビューできました。わーいわーい。縦にどかーんと長くて,エスカレーターでぐんぐん上っていく劇場でした。座席もぱきっとした赤でカッコイイ!
うっかり関東圏の楽日に行ってしまったせいか,そうでなくてもこうなのかはイマイチわからなかったですが,物販の営業が恐ろしかったです…。
なんかアイドルのコンサートみたい。すんごい騒がしくてちょっとヒィーって思っちゃいました。笑
その物販の列に並び,パンフレットを買い,席に着いてぱらり。
おや!このお名前は!( ·_· )
なんと今回のお芝居は佐々木蔵之介の一人芝居ではなく「ほぼ一人芝居」で,女医役として大西多摩恵さんが出演されていました!←知るタイミングが遅すぎる。
この方,その昔私の部活が関東大会に出てたときに審査員だったよ!!(ぱっと思い出せた自分がちょっと怖い。)
なんか,ああいう大きい大会の審査員の先生って,「俳優」とか「舞台美術」とか肩書きがあっても,実際どんなお仕事されてる方なのかイマイチわからなくないですか…。私はよくわからんです。
10年以上経ってようやくそのひとのお仕事ぶりを拝見できたというか,こういう方だったのか~というところが体感できてよかったです。
さてさて中身のお話に…。
この作品はもともとスコットランド・ナショナル・シアターが制作したようで,2012年が初演なのだそう。
今回はオリジナル版の美術・衣裳・照明・映像・音響デザインで舞台がつくられていて,オリジナル版の演出家アンドリュー・ゴールドバーグもついている。つまりキャストとメインのスタッフは日本人でも,外枠がオリジナルそのまんまを観られるなんて!すごーい!
私は大学院生の頃精神科に実習に行ったことがあるのだけど,入院施設は持っていない病院だったからこういうところには行ったところがなくて。どこまでホンモノっぽいのかわからないけど,でもこの舞台セット,とっても好きです。無機質で,良い意味で温度が感じられなくて。タイルだけど角は丸っこいので,どこかソフトな感じもして。
あと,監視カメラが本当に動いたりモニターに写っちゃったりするからすごい…!
それ以上に本当にバスタブにお湯張ってるのがすごい…!本気で徹底的な舞台だな…と感じました。
そして蔵之介さん。
私舞台でちゃんと蔵之介さん観るのは初めてだったんですが…ぶっとんでる具合がすごーい!
あの,出だしの,スーツを少しずつ脱いでいくひっそり感と,監視カメラに視線ぶつけてくるあの姿が同じ人物だと思えない…!
やっぱりわかってはいたけど,目力がある役者さんだな…ということを目の当たりにしました。引き込まれるー。圧倒されるーーーー。
パンフレットの星野概念の言葉も読んだのですが,あんなにぶわーっと膨大な言葉が溢れてくるなんて,私も最初この人はサヴァンなのかと思ったんですが,(カメラを意識して視線送ることってできるのかなぁ)とか,そんな疑問が徐々にわいてきました。要所要所で女医と看護師が入室して必要な措置を取りに来るんですが,ちゃんと落ち着けるし何かを訴えるように後追いしてくるあたりも,なんとなく違うような気がして。
そうするとやっぱり統合失調症とか,そういうあたりになるのかなとか思ったり…。例えば,今目の前にいるのは英米文学が専門の大学教授とか,シェイクスピアの専門家か何かなのかなとか思ったり。
一人の男の口から二十数人もの人格の言葉が出てきて物語が進んでいるように見えるけれど,逸脱した瞬間はハッとしました。紙袋から出てきた子ども用の服を,バスタブに沈めるところ。おそらく患者の体験したことの,再現。
どうしたの。何があってそうしたの。
その子は誰なの。あなたは誰なの。
わからんけど,わからないけど,その場を共有することで,この患者の悲痛な心が垣間見えたように思いました。
なんかあと,マクベス夫人がマクベスに殺人を唆すところも,あぁここはそういうシーンだったんだって思いました。あれはマクベスを演じているのか,患者のリビドーが出たところなのかわからないけど,でもこのお芝居,本能というか欲求をものすごく出してくる。通風孔から鳥の死骸を出してきて,それを鏡の破片で解剖して中からいろいろ(めきょっとしたやつとかびろびろ長いやつとか)出してきたときは,うおおおお…と思ってしまいましたが…!
とにかくこのひと,欲求のコントロールが徐々に不能になっていって,怖かったです。それは本当にマクベスにも重なって。何か荒廃していく感じも見えて。それはマクベス夫人だったり。
最後のバスタブに浸かりまくるあたりは,あれどーなってんのと本気で思いました。あれ,蔵之介さん本気で潜ってます…よね!?1分近く死んだようになってました…よね!?あそこですっごいドキドキしちゃいました。蔵之介さん,生きててよかった…。笑
そうそう。最初の方の入浴シーンはまさかの完全に全裸だったのでぎゃわわ…!ってなりました。←
やばーい。蔵之介さん超キレイな身体してる…!うっとりしてしまいました。←
あとあと,音楽がすごいスタイリッシュでなんだこれ!オリジナルかな!って思ってたんですが,パンフレット観て納得。マックス・リヒターでした。2013年に風琴工房の『国語の時間』で使われていて,とってもインパクトがあったのです。以来私は彼のファンに…。どのアルバムから引っ張ってきた曲なのかわからないのですが,いつか探し当てたいと思います。
もう一回味わって観たら,また見えてくるものがありそうだな。何が彼にマクベスを語らせたのか。まだぴぴっと来なくて,自分の中で反芻しています。
シェイクスピアの『マクベス』の流れがわかっていることが前提になる舞台で,とっても現代的な作品でした。蔵之介さんの狂気じみてるお芝居にどっぷり浸かることができた,充実した時間でした…。
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