@長野県木曽青峰高校同窓会館
原作:遠藤周作
脚本:日下部英司
出演:長野県木曽青峰高校演劇部
パンフレットがないので記憶を頼りに書きたいと思います。そもそもタイトルやクレジットがこれでいいのかもよくわからない…。もし違ったらきっと誰かが教えてくれると思うので,それまでそのままにしておきたいと思いますー。
中信地区の文化祭2週目はこちらにお邪魔しました。だって演目がこれなんだもの。
私も高3の冬とかに,政経の時間に堂々と読んでたな,『深い河』…。←ダメ生徒
もうウィキペディアのアタマに書いてあるような,そんなことしか覚えてないけど。
(ちなみに私が宇多田ヒカルの曲の中で一番好きなのは,3rdアルバムの表題曲にもなっている『Deep River』。読んで聴くとじりじりくるよね。)
さて今回の話を…。
あ。そうそう。私木曽青峰に行くのは3回目なのですが,今までずっと体育館公演だったのに,初めての同窓会館公演!趣のある,とっても素敵な建物でした!が,「エアコンがある」って情報だったのに,開演すると切られてしまったので,途中から暑かった…。笑
木曽青峰に来ると思い出すのはやっぱり2014年に起きた南木曽の土砂災害。なのでこうしてきちんと公演が打てていることが素晴らしい!…と,改めて思います。音響もあるし!
そう。開演前の話になるんですが,じっと開演を待っていると,まるで演劇部の友達の鑑と言うべき生徒さんの会話が私の隣から聞こえてきました。
生徒さん1「まつもと市民芸術館って知ってる?」
生徒さん2「え。どこそこ。」
生徒さん1「松本駅からまっすぐ行ったところにあるんだけど。地区大会がそこであるの。プロの劇団とかもそこでお芝居やるんだよ。」
生徒さん2「へぇ~」
生徒さん1「私去年観に行ったんだけど,すごかったの~。今年も予定が合えば行こうかなーって思ってて。」
生徒さん2「そうなんだー」
…みたいな。生徒さん1…。なんていいこなの…。わざわざ木曽から芸術館に行くなんて…。そういう友達がいる木曽青峰,素敵…。
この日のお客さんとして,高校生の皆さんはもちろん,木曽青峰の先生かなって方が結構いらしていて,開演直前に部長さんがあいさつしているのを温かい雰囲気で聞いていました。この地域の人達というかこの空間というか,それがとっても受容的で,なんかすごいな…と思っちゃいました。うー,文章にすると全然うまく伝えられないな。でもなんか,地域性みたいなものを感じたのです!
さて今度こそお芝居の話を。
舞台を観てまず驚いたのが,八百屋舞台。でかいぞ!ただの黒じゃなくて,光沢のある黒で仕上げてたのでかなりインパクトある舞台でした。これ,まつ芸に持っていけるのかな…。(ついそういう現実的なこと考えてしまう。笑)そう,まつ芸の床も黒いから,まっくろくろな舞台になりそうだなぁ~。
じゃあ舞台セットの話をしてしまったので,この斜めが一番活きた&私のレーダーが反応したところを挙げると…そりゃもちろん,お金ぶちまけるところだよね!もうあれくらいやってほしい。硬貨が銀色だったので,舞台に映えたな。個人的に1円より50円とか100円くらいの音の方が好きだけど。笑
あー。もう一度ぶちまけるの見たかったな。(この記事,中信地区大会の日程確定後に書いてます…。)
でも逆に,斜めゆえに大変そうだな~と思ったのは,妻の病床のシーン。寝て起きてがあるから動きにくそうだった…。地区に向けて美しい所作が見られるといいなーと思いました。
あと今回面白いなーと思ったのが,冒頭やラスト,中盤で身体表現が入ること。日下部先生の作品(演出含む)では珍しい…って書こうとしたんですが,そうでもないか。でも久々に観た気がするな。冒頭とラストのあれ,私は嫌いじゃないです。全員ぴっちり揃えるんじゃなくて,あえてちょっとバラバラしてる感じが良かった。冒頭の方では気づいたら右手から左手に移っていたので,ラストでもう一回見えてよかったです。でも今回の文化祭公演では客席と舞台が近かったから5人一直線でよかったのかなと思ったのだけど,まつ芸に持って行ったらどう見えるのかな~。立ち位置とか変えてみてもいいのかなぁとも思ったり。
でもって中盤のブリッジや開脚は(おぉぉ…)と思いました。開脚で舞台がずれちゃったのが残念…。柔軟さは伝わって来たので,その前後も含めて滑らかにいけるとするする観られそうな気がしました。
役者さんのことについて書くと,やっぱり
去年の『南吉』に出ていたメンバーが,強い!強いっていうか,なんだろう。伸びたし安定してるー!というのが,ものすごく伝わってきました。去年兵十をやっていた生徒さんなんか,すごく素敵な雰囲気。あの子の磯辺,引き込まれました。あと髪の毛が伸びてたというのもあるんだけど,去年祖母をやってた子がいることに気づくのにかなり時間がかかりました。笑 すいません…。こちらの生徒さんも安定感を感じました。高校生の1年って本当にあっという間だな…。(しみじみ)
あとは私からすると初めてのキャストさんだったんですが,妻役の方の雰囲気が良かったなぁ。付き過ぎない表情が何考えてるかわからなくて良かったです。(ほめてる。) 正直『深い河』を高校生にできるのか?とも思ったんですが,心の温度が落ち着いてるキャストさんだったので,なんか観れちゃいました。(ほめてる!)
そうそう。音楽のこと。「弦楽のためのアダージョ」を多用していて,昨年観た蜷川さんの舞台
『NINAGAWA・マクベス』を思い出しました。私もこれ好きなのだけど,若干重い気もして。私だったらMax Richterの“On The Nature of Daylight”を流したい舞台だなと個人的に思いました。笑 (←ちなみにこの曲はアンドリュー・ゴールドバーグ演出の佐々木蔵之介主演
『マクベス』で多用されてた曲。)
あとは衣装かな。今回は完成系の衣装ではなかったので,今後詰めると思うのですが…舞台が黒なので,何をどう合わせてくるのかな。作品的にコットンとか麻とかで攻めてくるのかな。しっかりめの素材で質感が出るといいなーなんて思いながら観てました。
あ。それ以上に脚本かな。こう,元の原作があってもゼロから何かを組み立てるにしても,起承転結というのはやっぱり意識する必要はあるだろうと思うのです。かっちりしてなくても,お芝居の中の物語が転がっていく様を追いかけたい。でもどこかこの話は…磯辺と妻に絞って書いている本だからというところもあると思うのですが,なんだか淡々と進み過ぎている感もあって,どこをどう味わえばいいか途中で迷ってしまう瞬間がありました。とりあえずその世界観に浸れたら,それはそれでいいのかもしれないけど。開演前の部長さんのあいさつでは,せりふ浸透率が7割くらい?という申告があったのでこちらもそのつもりで観たのですが,きちんと入ったバージョンで,脚本も少し手直しが入った状態で,もう一回観て味わいたいなと思った舞台でした。
本当に,高校生がこれやるってすごいわ…。私ももう一度原作読み直したくなりました。
中年の空虚感というか退廃的な感じとか,アラサーの傷つきとか,そういうものを高校生が出すってとってもムズカシイとは思うのだけど…でも,その挑戦作を観てみたいなと思うし,もう一度一緒に味わいたいなって気持ちもあります。地区までにどう深化するのかな。
木曽青峰の皆さん,お疲れさまでしたー。お邪魔しました!