原作:杉森久英
脚本:森下佳子
音楽:羽毛田丈史・やまだ豊
◇CAST
佐藤健/黒木華/桐谷健太/柄本佑/高岡早紀/佐藤蛾次郎/芦名星/森岡龍/石橋杏奈/ 坪倉由幸/浅野和之/木場勝己/天野義久/林泰文/森田哲矢/東口宜隆/鈴木亮平/武田鉄矢/ 和久井映見/麻生祐未/加藤雅也/日野陽仁/大島さと子/美保純/杉本哲太/小林薫
2015年4月~7月にTBS系列で放送,4~10月に鑑賞
近年TBSのドラマばかりはまっている気がします。
なんでも今年TBSは60周年だそうで,この『天皇の料理番』は超気合いが入っている作品みたいなので,観ることにしました。でも全然日曜夜9時には観てなくて,スイッチが入ったときに再生していたので今日までかかってしまいました…。
はー。なんか,一人のひとの生涯を追う作品って,終わったあとは何とも言えない気持ちになりますね。一緒に生きたような感覚。2010年代では珍しく12話もあるし,1話1話も尺が長いし,とってもボリューミーな作品でした。
やっぱりドラマもお芝居も脚本が命だと思うのだけど,そこもぐいぐい見たくなるつくりだったし,キャストさんがとっても魅力的だった…。
私,佐藤健のお芝居ってまともに観たことなかったんです。『るろ剣』とかも。あとなんか,なんだろ。すごい個人的な話で,一瞬付き合ったひとに雰囲気似てて。笑
お別れしたら佐藤健が直視できなくなって。笑
…まぁそんな投映をしちゃうひとだったのですが,今回がんばって観たら見慣れてきました。笑
でももしかしたら,長髪(とか普通の長さ)の佐藤健になったらわからんかも。いや長さじゃない。こんなに不器用なひとの役でなかったら,まただめになってしまうかもしれない…。
いやそんな個人的な話は超どうでもよくて,とにかく初めてまともに観たのだけど,こんなに吹っ切れたお芝居もできるのか佐藤健!というのが今回の大発見でした。あんなにイケメンなのに。できるじゃんこのひと!という感じ…。笑
(とにかく“笑”を乱用している…。)
あとやっぱり黒木華が素敵だよね。昨年の朝ドラ『花子とアン』でじっくりお芝居を観たのですが,雰囲気がほわ~っとしていて吉高由里子とは違う華がある女優さんだなーと思っておりました。映画『小さいおうち』も早く観たいです。
あのお顔と福井弁(というのだろうか。)がすごく合ってて。和装も合ってて。もう「その時代にいましたよね!」ってオーラが画面から溢れてました。笑
俊子自体もしっとりした性格のひとだと思うのだけど,episode5で俊子の感情が爆発したところは,本当に見入ってしまいました。
俊子「うちはもう,篤蔵さんの子なんて生みたくないって言ってるんです。」
篤蔵「あぁ…。ほんなにつらかったんか。」
俊子「つらいって…。」←ここ!!ここの目がとても素敵!!!!!
篤蔵「わしには…わからんさけ。」
俊子「ほんな…ほんなん,つらいに決まってるやないですか。…どんなんやったか教えてあげましょうか。ひと月半。うちがどんなんやったか教えてあげましょうか。どんな思いやったか教えてあげましょうか。辛かったですよ。うちはもう,ずっとつらかったです。…篤蔵さんに出て行かれた時も,戻る気はないって言われた時も,辛かったです。…ああ,この人は,うちのことなんかどうでもいいんやって。それでもうちはこの人を好きなんやからって。それでいいんやって。こんなうちを貰ってくれたんやから,それていいんやって。ずっと,ずっと辛抱ばっかり。けど,うちは,本当は,…本当はもっと,大事にされたかったです。普通に,穏やかに暮らしたかったです。」
篤蔵「そやさけこれから大事に…」
俊子「ほんならもう,東京なんか行かんといて。料理人やめて,松前屋継いでください。」
篤蔵「ほれは…」
俊子「できんでしょう。結局,篤蔵さんはうちを大事になんかできん人なんです。口先ばっかり。ずるくって,身勝手で,考えなしで,仕事は食堂の小僧で。いくらうちでも,もう少しましな人がおると思います。お願いですから,もううちの前から消えてください。二度と,うちに関わらんといて。」
何度もリピートして書き起こしたので違うところもあるかもですが,そしてせりふを文字にすると間合いとか空気感とか全然伝わらなくてつらいのですが,「つらいって…。」とか「できんでしょう。」とか,そのあたりにこのひとの心の動きがすっごい出ていて,引き込まれました…。はぁ…。うっとり。
引き込まれたといえば,episode10に出てきた篤蔵の長男,一太郎を演じた藤本飛龍くんもよかった!あの,小学4,5年生っぽい(←実年齢はわからないけど)絶妙な表情がたまらなく素敵でした…。親に甘えたいけど世間のこともそれなりにわかってきて,反発してしまうようなところを,丁寧に表現してたなぁと…。でも震災後に皇居内で篤蔵と再会したときのあの反応が,一太郎の本当の姿なんだろうなと思いました。
そうそう。10歳過ぎたあたりの子の,親の職業ってやっぱり気になるもんなんだなぁと再認…。それこそ“料理人”への評価は当時と現代では違うけど,「社会的に見て」とか気にできる年だし,気にしちゃう年だし。親が隠せば隠すほど子どもとしては不信感抱いちゃうよなぁとか思ったり。体調不良になった俊子から離れるために夜家を出ていく篤蔵に放つ一言とか,たまらんかったです。
将来楽しみな子役さんだと思うけど,あの顔のあの声のあの表情はepisode10でしか味わえないと思うと,あのタイミングであの役を演じていた彼を観ることができて良かったなぁと思います。
職場ではしばしばドラマの話題がお昼の時間に出るのですが,このドラマに関しては「主人公に全く共感できない…!」というのが先輩達と一致している意見でした。笑
飽きっぽいしすぐキレるし女のひと(ていうか嫁)の扱いひどいし,彼のどこに応援したいと思わせる要素があるのか…ということに随分悩まされました…。観てるとめっちゃADHDっぽいわーと思ってしまいます。後半になってようやく落ち着いてきたので安心しました…。
そしてようやく(?)最終話でぐっとくる篤蔵のせりふが!
「食べ物というのは,結局は魂が食らうんです。だからこそ,今アメリカに食わすもんは,最大限の真心を込めて作らねばならんのですよ。」
「わしは,わしは片田舎の厄介もんでした。ここまでやってこれたんは,支えてくれた人がたくさんおったからです。父や,兄や,母や,嫁や,師匠や,友人。わしはみんなに夢を叶えさせてもらったようなもんです。わしは夢を叶えさせてもらったもんには夢を叶え続ける責任があると思います。御上の料理番として,力の限り励み続ける責任があると思うんです。皆さんは違いますか。(中略)ほんひとらぁに恥ずかしくないように,勤めたいと思いませんか。やれることはやったと,精一杯の真心尽くしたと言いたくありませんか。」
はー。なるほどー…。
「ここまでやってこられたのは支えてくれた人のおかげ。夢を叶え続ける責任がある」というのは,なんだか今の自分にじーんときました。
私も,今の仕事に就くまでは学部→修士で専攻を変える必要があったし,そのための予備校も行かせてもらったし。修士を出て仕事を続けていられるのも,親や周囲の理解や支えがあったからこそで。だから私は取る資格は取らなきゃいけないし,資格がないと働けない仕事にも就きたい。夢を叶えていきたいし,叶えなきゃいけない。篤蔵に言われたなーと思いました。
そうそう。最終話は私も泣けてしまいました。池のシーンで。
その,佐藤健はイケメン枠の俳優だと思っているので,あれをやるんかとか,あんなに言われて観ている私も悔しくなっているのにそこをそう切り抜けるんかとか。桐谷健太と柄本佑もやっぱり本当に仲間だったなーってことも感じられて。良いシーンだった…。はぁ。
他にもぐっとくるところはいっぱいあって,
宇佐美さんはいいところでいつもやってくる。裏を返せばやっぱり篤蔵はひとを惹きつける力のあるひとなんだろうな。
あと俊子の看護編は静かな夫婦愛に満ちていて,先が見えるけどずっと続いてほしい時間だなとか思ったり。
あとあと俊子が亡くなっても,というか亡くなったからこそ,篤蔵の中で俊子の存在が大きくなったような気がしたり。
人と人とのつながりや,仕事への情熱,何のために生きるかとか,そういう大きいこと。そんなものをたーっぷり感じさせてくれるドラマでした。去年の『MOZU』もそうでしたが,TBSの本気が見えるドラマでした!ゆっくりペースでも,観てよかった。
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