Tuesday, October 21, 2014

映画『私の男』




◇STAFF
監督:熊切和嘉
脚本:宇治田隆史
原作:桜庭一樹
音楽:ジム・オルーク

◇CAST
浅野忠信/二階堂ふみ/高良健吾/藤竜也/モロ師岡/河井青葉/山田望叶 他

(2014.10.21 劇場で鑑賞)

このポスターを一目見たときから,ずーっと観たかった作品。
大学の先輩からは,「レイトショーくらいがちょうどいいよ」と言われていたのだけど,
朝の10時半から観てしまいました…。(多分先輩は,料金のことを言っていたのだと思う。)



濃厚な蜂蜜を一気飲みしたら,こんな世界なのかもしれない。



そんなふうに思いました。



何かの評で,「徐々に“私の男”になっていく」という言葉を読んだのですが,まさしくその通り…。

二階堂ふみの演技が,ほんとうにいいよね。

中学生の,ドロドロして自他が未分化の状態から,
大人の艶っぽさと落ち着きを手に入れるまでが,ほんとうに…化けてる。

婚約者が出てきて,「どうしたのその格好」と浅野忠信に聞いているのを観て,(あぁこのひとはこの男を捨てて生きていくのかな)と思ったんですが…。やってくれましたね…。
ラストの二階堂ふみのどアップが,たまらなくよかった。

うん。未分化なんだよ。二階堂ふみ。
混沌としてて,愛も正義も罪も脆さも,ぜんぶ抱えて生きている感じ。
でも大人になって「(浅野忠信のことが)わからなくなってきた」って言ったのは,きっと少しずつ分化してきたからなんだろうな。

あと,山田望叶ちゃんが良かった。
あの黒目の大きさはなんなんだろうか…。笑
もちかちゃんと言えば『花子とアン』のはな役のイメージしかないのだけど,深い演技もできる子なんだなと感じました。
あの子が二階堂ふみになるのかと思うとフクザツな気持ちですが,もちかちゃんの声で「キスして」というせりふが出てきたとき,何かがつながっていく感じも。
(そういえば今回の役も「花」なのね,もちかちゃん…)


いちばんインパクトのあったところは,やっぱり淳悟と花の血まみれのセックスシーン。
実際にはありえないのだけど,ふたりの世界観がよく表れていて,すんなり観れました。
服も髪も血まみれになっていくにつれて,ふたりが堕ちていくのがくるしいくらい伝わってきました。

その前にも小町と淳悟がセックスしているシーンが結構長めにあるのだけど,対照的に見えたなぁ。
ある意味形式的な小町と,心を埋めるための花。やっていることは同じようなことなんだけど,質が全然違うというか。うまく言えないけど。
あと,河井青葉さんて今回初めてまともに見たのだけど,体が超絶きれいじゃないですか…。
裸の後ろ姿とか,同性としてすっごいうらやましすぎる…。笑
なんとなく雰囲気が深津絵里に似てますね…。


浅野忠信は,とても不器用なニンゲンの役がぴったりですね…。
もちかちゃんにかける声の,第一声があれなのか,と。
でも車の中で手をぎゅっと握るところなんかは,ノンバーバルでもちゃんと彼の気持ちが流れているように思いました。
徐々に自分が老いていって,二階堂ふみが自分の届かないところに行ってしまうと感じている退廃的な部分が,観ていて切なかったです。高良健吾を脱がして,二階堂ふみと同世代の男ってどんなもんなのか確かめて。それで「お前には無理だよ」って言う。なんてしがみつく男なんだろうと思いました。
でも,「俺は親父になりたかった」って言ってて,あぁそうなんだ。とも。
本当に不器用で,他の方法を知らないひとだなと思います。
親として子どもを育てていたというより,男として小さな女の子をずっと育ててきたんだろうな。
そういう意味では,現代版『源氏物語』なのかもしれない…。

瞳が,とてもよかった。浅野忠信も,二階堂ふみも,山田望叶も。
あと,三浦貴大の健康度の高さが際立っていた…。笑
彼はああいう役がほんとうに合うと思いました…。

そうそう。最後に脱線すると,ドボルザークの「家路」が多用されていて,思わず2013年7~9月にやってたドラマ『Woman』を思い出しました。あれにも二階堂ふみ出てたから。
私も好きな曲なので,よかった。メインで使われる部分と曲の終わりの部分で,雰囲気がちょっと変わっていいな。

そんでもって,私北海道に行ったことはないのだけど,あの常に曇天か雪という環境から,内にこもる世界の人々の心情と生活がわかるような気がしました。
自然が,美しかった。ほんとうにその世界に生きているんだなって,思わせてくれました。


ラストの二階堂ふみと浅野忠信の顔を観るためにあった129分。
劇場で観てよかったです。

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