Sunday, September 18, 2016

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部『イティテンディア』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:郷原玲
出演:長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部

観劇直後,私が思ったことはただ一つ。(どうぞ関東へ行ってらっしゃいまし…。) でした。笑

私の,美須々で上演されている郷原先生作品の感想を過去にお読みくださった方はお気づきになられているかと思いますが,私どの作品もストレートにはフィットしなかったんです。それがストーリーなのか設定なのか作品選びなのかは毎回違いましたが,なんか (んん?) と感じるところが必ずあって。でも今回そういうのが全くなかったんです。なぜか。もうやりたいことをご自由にどうぞと思ってスルーしてる訳でもなく。シンプルなものにシンプルな方法で迫れば,案外ストンと落ちるんだなと思いました。(哲学の先生がアイデンティティを扱う時点で興味深かった…。) 2014年から観た美須々の作品の中では,一番よかったなぁ。 

幕が上がった瞬間,ぱっと舞台を観て, (あっ,りょーこちゃんだ) って思いました。衣装も立ち位置も,なんとなくりょーこちゃんを思い出すような感じでした。でも,もちろん『B面』ではなくて。そして1時間。2014年に当時1年生だった彼女達が,2年経って演技の幅を広げ,たくさんの後輩に囲まれ,凝ったセットを組んで大きく動いている姿を見ていると,時の流れや「高校生」という時間の短さを感じました。なんとも言葉に表しがたい,親戚のおばちゃんのような気持ちです。彼女達と郷原先生の美須々での3年間の集大成を観られたなと思います。同時に,郷原先生お芝居もこの子達のこと大好きなんだなーと実感しました。
以前は, (あの子達ああいう演技以外できなくなっちゃうんじゃないかな~) と思いながら観ていたこともあったんです。役柄も,見せ方も。そりゃ同じ役者さんがやるのだから,そう見えるのはある意味当然なのかもしれないけど,それにしても別作品なのにお芝居の仕方としては同系すぎるところがあって。でも今回の作品を観ていて, (あぁ,もうそこを徹底的に伸ばすのもアリなんだなぁ) と思いました。どの部員さんも5教科を万遍なくできるのも大事かもしれないけれど,得意な3教科をみんなが持ち寄れば,結果強いカンパニーになるんだなと。得意なものを得意ですと見せつけられるのも,やられた感があっていいですね。笑

そう。幕が上がった瞬間, (りょーこちゃんだー) とも思ったんですけど,やっぱあの舞台装置にはびっくりでした。すごいぞあれ。どーやって作ってるんだろう~。木曽青峰の『深い河』もおおっと思ったんですけど,美須々はそれ以上の傾斜だった…。しかもあれがぐわっと開いちゃうから,面白かった~。魅せる舞台装置としてかなり成功してる気がする!
あと,後ろに2本幕があるなーとは思っていたんですが,まさかの投映に使われるとは…。文字が出てきた時,昨年観たKERA・MAPの『グッドバイ』を思い出しました。いいですね…。私はあのフォントも好きです…。ああいうことする学校って,長野県でいつ出てきてくれるんだろうと思ってたんですが,やっぱここでしたね…。
装置関係で言うと,おばあちゃんがひっくり返すちゃぶ台がたまらん。なんだあれ。愉快ですね。

あとあと,お芝居観てて, (彗星×入れ替わりって,最近そういう映画観たな~) って途中で気づきました。笑 いや絶対偶然なんでしょうけど。でもタイムリーだったんで面白かったです(´ω`)

あとあとあと,これで郷原先生の作品は『B面』と『木の葉に書いた歌』と『話半分』『あくしょん!』に続いて5作目になるのですが,徐々に郷原作品あるあるが掴めてきた気がします。笑
不思議な力を持ってるおじいちゃんおばあちゃんとか,親とうまく意思疎通が図れない主人公とか。コミュニケーションとディスコミュニケーションが常に作品のどこかにある気がして,でもそれって私達の人生そのものだよねと思うと,普遍的なことをエンターテインメントに仕立て上げて伝えられるこの人の力ってすごいなーなんて感じます。←コミュニケーションとディスコミュニケーションなんてお芝居では当然じゃんと言えばそうなんですけど,ストーリーの中にそれがあるというよりはそれそのものが題材というか。うまく言えない…。

でもって,この作品の中で言うと「オシャレしようと思ったけどやめました」「私はいつでも私から遠い」みたいなシーンが印象的でした~。女の子だからこそああいうせりふだと思うんですけど,なんとなく作者の性別と登場人物の性別が違うから書けたような部分な気もして。ああいうところって誰もが通るけど,どっぷり振り返るってちょっと厳しい気もするから。そこがアイデンティティを確立する時期ともどんかぶりな訳なので,避けて通れないとは思うのだけど。もしあそこに出てくるメインの子が男の子だったら,郷原先生はどんなせりふを書くんだろう。なんてことも思いました。

いろいろ書きましたが,久しぶりに高校演劇界でエンターテインメントだと感じるお芝居を観た気がします。
夏に『話半分』をやると知った時は,なんで茅野がやった半年後にこれ持ってくるんだろう。すごい思い入れがあるのかなーと思っていたんですが,観た直後は正直とりあえず感を感じてしまったのですね。ちょっとがっかりした瞬間もあったのが事実で。でも,このためだったんですね。県大会でもこの作品ではじけてきてほしいです。笑

美須々のみなさん,お疲れさまでしたー。

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県松本県ヶ丘高校演劇部『WITHOUT 保護者!』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:ろくみつるた
潤色:長野県松本県ヶ丘高校演劇部
出演:長野県松本県ヶ丘高校演劇部

  • 一言で表すなら,健気な舞台。保護者に置いてきぼりにされたネグレクト4人きょうだいって言うと,映画『誰も知らない』を連想したんですが,全然違いました。セクシャルマイノリティと思春期の子の揺らぎが見られて,そういうものを題材に扱おうと思った県の皆さんがすごいなと純粋に思いました。
  • 健気と言うのは,4人で必死に場転してるあたりとか,日向と山浦先生の両立とか。笑  すごいがんばってましたね。でももう少し物理的に,使う間口を狭くしても良かったのかなと思います。去年の『三人そろえば』でも思ったかも…。
  • ただセクシャルマイノリティに対して音響さんが過剰に反応しすぎてるような気がしたのと,セキ先生は私と同業なだけに(うぐぐ…)となりました。そして超現実的なことというか重箱の隅をつつくようなことでアレですが,多分お父さんの帰宅日を今日にしたかったから逆算して個人面談が8月なのだと思いましたが,一般的には夏休み前が多いかなと。でもそれぞれのキャラが素敵な60分だった!練り直してもう一回観たい!

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県田川高校演劇部『トランプする?』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:幸撫弘子
出演:長野県田川高校演劇部

  • パンフレットに"物語もおもしろく目が離せない"って書いてあるから,もっとポップな話なのかと思いました。タイトルとかからしても。…が!タイトルとストーリー,内容と演出のギャップが激しすぎて,どう味わっていいかすんごい困った!というのが率直な感想です。結構しっかりどシリアス(の比重が大きい。)なのに衣装なんかはファンタジックで,うそうそーん!という感じでした。
  • でも巨大な本に挟まれるとか,最後に積むレンガが光るとか,やりたいことや見せたいことはわりかし明確なんですよね。だけどそこに行くまでがぼやっとしてしまった気がするのと,脚本に演じさせられている感が否めませんでした。悪い意味でせりふしか出してなくて,もっと…お父さんが帰ってきたら娘は声を上げて歓迎するだろうし,その他のシーンでも自然と出しちゃう声ってあると思うんですよね。そういうのがきれいに無くて,演じさせられている感。
  • メンバーをはじめとする資源にはものすごく恵まれている環境だと思うんです。ただ,プランが感じられない。責任持って舞台を客観的に見るひとがいないなと近年の田川を観ていると感じます。いい味持ってる部員さんが多そうなだけに,超もったいないです。今後に期待です。
  • また後日まとめ直します。

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県松本深志高校演劇部『杯中蛇影』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:九国光
出演:長野県松本深志高校演劇部

  • 昨年観客の私としては切ない思いで深志を観ていて,その後も『あくしょん!』と文化祭公演を拝見し,深志のお芝居への向き合い方やメンバーが少なくなることがなんとなくわかったので,地区大会はどうなるかな~と思っていたのです。「普通」に,「普通」に公演が打てていて,安心でした。
  • もしかしたら地区大会でオール男子のお芝居って初めてかもしれない!先月の全国大会とか,今年の1月に観た駒場高校の『ガンジス川を下る』以来かな。なんとなく学校のレベルも似てるので,『ガンジス川』の彼らのことを思い出しました。笑  でも彼らと今回の何が違うって,今回は既成ということ。男の子3人で60分ってそもそも既成脚本の数自体が厳しいのかな。彼らだったらなんとなく創作もアリな気がしたのだけど,あえての既成だったのかな。
  • 男子3人という,下手したらキャラ被りまくりになってしまうけど,タッパとか声でみんな独立していたので良かったかな。個人的には野田秀樹系ボイスの彼・レイクくんが気になりました。
  • また後日まとめ直します。

Saturday, September 17, 2016

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部『月華』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:高山拓海・長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部
出演:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部

  • 発声が抜群に良かった!所作や身体表現なんかも,おそらく今日一番。ちゃんとトレーニングしてる身体ってこういうもの…というところがきちんと感じられました。さすが蟻高という感じ。
  • 作品は,なんとなく日下部先生の『砂漠の情熱』を読み込みまくってるんだろうなと思いました。構成や展開共に,先生へのリスペクトを存分に感じられました。言い回しとかほんとに,似てる感じ。作者の高山くんがどこまで意識しているかは別として。
  • しかし!役者さんがうまいことはすごく伝わってくるのに,二人の距離感(関係性)の変化とか,情緒の揺れみたいなものがじっくり味わえなくて残念…!カグヤが2つの次元にいて,ついていくのがちょっと大変でした。んー。もう少しすっきり観られるとよかったなぁ。それでも,文化祭~地区大会で別作品を書いて仕上げちゃうあたりはすごい!
  • また後日まとめ直します。

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県穂高商業高校演劇部『志望理由書』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:いぐりんとその仲間達
潤色:長野県穂高商業高校演劇部
出演:長野県穂高商業高校演劇部

  • 昨年の『青春舞台2015』で本家のドキュメンタリーを観ていて,ストーリーも粗方把握していたので楽しみにしていました。そして下手にネット台本ではなく,きちんと作られた既成を選んでいるあたりにも穂商の力を感じました。
  • 大半は1年生さんみたいですが,逆にどなたが2年生さんなのかわかりませんでした。登場人物のキャラクターとキャストさん達がものすごく自然で,脚が痛いのは設定なのかキャストさんご自身の都合なのかわからないくらいでした。あとほめてるんですが,事務の室田さんは体型が良かった。リアリティありました。←見回りのところとかインパクトあった!おいしい!!
  • 裏表と前後のニット事件はご愛嬌。まさかの二人とも。笑
  • また後日まとめ直します。

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県明科高校演劇部『オレンジ色の世界』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:九国光
出演:長野県明科高校演劇部

  • おかえりなさい明科さん!一度出なくなってしまうと復帰って大変だと思うんですが,またお目にかかれて嬉しいです!一昨年の作品でも思いましたが,明科は男性役をきちんと男の方がやられているので,それだけで雰囲気が全然違いますよね。素敵です。
  • 下手の喫茶店パネルがオシャレでした~。色味とか好みでした。が,舞台セットの向きがとても残念!!!私はあれを180度回したところから観たかったです!みかこの表情,こうきの表情をもっと見たかった!あずさは自由に動けるひとなので,接客するときだけ背中向けるような配置でも良かったのかな~。
  • 時間軸が単純でないので,後半ちょっとついてくのが大変でした。いきなりファンタジーになってしまった感じ。そしてみかこの口調的に,こうきは死んでしまったのかと…。失恋どんべこみの話だったんですね…。
  • また後日まとめ直します。

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県豊科高校演劇部『夏の詩』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:遠野尚
潤色:長野県豊科高校演劇部
出演:長野県豊科高校演劇部

  • パンフレットに場転が多いと書いてあったけど,本当に多くてびっくり。そしてそれが全部必要な場転かと言うとそうじゃなかったと思います。多分がんばれば豊科が暗くした回数の1/4に押さえられる!遊んで→場転→遊び終わり…のシーンとか,普通に遊んでそのまま続けちゃえばいいのに!と思いました。もったいなかった…!
  • 衣装が良かったです。冬の重い感じと,夏の裸足のコントラストが。名前とリンクしているような夏の衣装の色も素敵だったな。←黒のキャミワンピは少し重かった気もするけど。 そして田舎の小学生の無垢な感じがキラキラしてて,懐かしい感じがしました。あの子達小2,3くらいかなー…。
  • 童の最後は,なんで降りてきてしまったんだー!(>_<)という感じ…。ラストなのに急いでる雰囲気で,あそこはたっぷり時間を取ってほしかったなと個人的に思いました。
  • また後日まとめ直します。

第31回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2016~ 長野県塩尻志学館高校演劇部『海の時代』

@まつもと市民芸術館 (主ホール)

作:たかのけんじ
出演:長野県塩尻志学館高校演劇部

  • 『海に流れる河』のオマージュかと思いきや2010年代版のそれでした。たかの先生が2004年に提出した卒論を,12年かけてジャーナルに載る論文に仕上げてきたような感覚です。21世紀に生きる私達にとって,9.11も3.11も避けては通れない歴史なのだとしみじみ。当時は若干眠くなって,ラストシーンとか「はて?」ってちょっとなったんですが,今回はカオリの絶望も悲しみも苦しみも,愛も,あそこに全部詰まっているのが感じられました。私も大人になりました。
  • 再演や練り直しの公演を観ると,私はオリジナル版がやっぱいいと思うタイプなのですが,今回の志学館のメンバーでのこの芝居の方が,04年度の美須々より断然良かったです。キャストに恵まれた感じ。
  • 今年の志学館の文化祭公演でも思いましたが,ビジュアルにこだわるのってやっぱり大事です。衣装も舞台装置も本当に丁寧でした。強いて言うのであれば,移植コーディネーターで赤のゴツいヒールはアウトだと思うのと,看護師さんの髪の毛はポニーテールではなくお団子が良いかと。
  • また後日まとめ直します。