Saturday, August 15, 2015

映画『出口のない海』

◇STAFF
監督:佐々部清
脚本:山田洋次/冨川元文
原作:横山秀夫
音楽:加羽沢美濃

◇CAST
市川海老蔵/伊勢谷友介/上野樹里/塩谷瞬/柏原収史/伊崎充則/黒田勇樹/平山広行/尾高杏奈/永島敏行/田中実/高橋和也/平泉成/香川照之/古手川祐子/三浦友和

製作国:日本
公開:2006年
上映時間:121分

(2015.8.15 テレビで鑑賞)

夏休みに観た映画の感想を書こう第3弾。『出口のない海』!
高校生の時にこの映画のタイトルだけは知っていて,あと青の映像がとてもきれいで,観たいと思っていたのにそのまま大人になってしまいました。
昨年のお盆の時期にWOWOWか何かでやっていて,録画だけして今年ようやく鑑賞!

やー。今この年になってから観て正解だったかも。
映画『八日目の蝉』を観直した時にも,(ちょっと昔の映画っていいな~)と思ったのです。今人気の俳優さん女優さんがちょい役で出ていたりするから。
今回の発見は,桐谷健太!公式サイトにも作品のウィキペディアにも名前が出てないくらい端っこの役なんですが,ちゃんと喫茶店で存在感を残している!(あれ桐谷健太?)と思って観てて,最後エンドロールで名前を見つけた時はよっしゃ☆という感じがありました。笑

あと市川海老蔵は明大生の役なのだけど,もし高校生の時に観ててもあまり親近感なかったかも。私は明大卒でもなんでもないけど,“大学生”を経験したことがあるから,あのふっつーの毎日から“兵隊さん”になっていく目まぐるしさというか,アイデンティティの変容というか,自分が自分でなくなっていく感覚というか,そんなものはなんだかくみ取れるような気がして。

今でこそ市川海老蔵はギロッポンであわわわなことがあったり,今まで付き合った女性のまとめがネットに載ってたりと,いろんなイメージを世に放つひとですが,そのイメージを持った上でこの映画を観ると,なんだか…こそばゆくなるというか……。こんな,一人の女性に真摯に向き合えるんじゃないかと思わせてくれる映画です。笑 年齢的なことを差っ引いても,もう今の海老蔵にはできない役!!!笑

鑑賞する前にネットでどんな映画なのか調べたのですが(←本当にタイトルと戦争モノということしか知らなかったので),今まで観てきた戦争モノとは切り口が全然違って,面白かったです。ネットにも載っていたけど,戦争映画なのにほとんど戦闘シーンや血が出てこない…。異色だと,思います。

戦闘シーンや血の代わりに,“今は海軍だけど元々大学生”という気の弱さとか,自分の夢(オリンピックとか野球)を時代に奪われた怒りだとか,家族を思う気持ちだとか,そういうものが丁寧に描かれていたなーと思います。

NODA・MAP『エッグ』で,野田秀樹は二十世紀は戦争と音楽とスポーツが大衆を動かしていたみたいなことを言っているけど,本当にそうだったんだろうなということも,この映画から感じられました。伊勢谷友介なんて特にマラソンでオリンピックを目指していたし,そのオリンピックが無くなった今何を目指すのかと考えた時に,「戦争に行く」になるよねという…必然性が見える感じ。大学生って社会に出る一歩手前だから,そんなときに夢を叶えるとか仕事に就くなんて状況じゃなくなった時,どうやって世の中にコミットしていくか考えると,まぁそういう道に進むんだろうな(進まざるを得ないな)と思いました…。

「丁寧」ってさっき書きましたが,この映画は「戸惑い」がしっかり見えて,とても良かった!垣間見える一瞬の隙に,人間らしさが描かれていると思うのです。軍人でも,その前にパーソナリティーを持つ人間だということが伝わってくる。だからこの映画はちょっと温かい。そんな気がします。
例えば海老蔵が初めて回天に乗り込んで,海に出て練習します!っていうシーン。彼としてはちゃんと手順通りに操作して,さぁ発進!ってガコッと最後の手順を踏んでも,全く動かない。気合いが入った表情から一変して,(え?)とか(やべやべ!)みたいな表情になるところがたまらなく素敵でした。愛おしいよね。こんな海老蔵,2010年代じゃもう観られないよ…。笑

伊勢谷友介も,自分がコールされてこれから御国のために全て捧げてきますというところで,エンジンが不調で発進できない。今生の別れだと思って仲間に挨拶するのに,のこのこと回天から降りて戻って来てしまう。感情の高低差がものっすごい見えて,こうしたところでも精神ってすり減っていくんだなぁということがじっとりと伝わってきました。

あとあと,香川照之の中間管理職的な葛藤も見えてとても良かった…。香川照之的にはお仕事をしてるだけなんだけど,きっとその命令もスプリットした気持ちを経て下してるんだろうなと思うと,つらいだろうなと思います…。

海老蔵は敵艦にぶつかりに行く訳じゃなかったのに,あんなにあっけない死に方しちゃうなんて。
回天の授業中の「こうなると死んじゃうからなー」っていう“ダメな例”で命を落としてしまう。でもそれって戦争に限らなくて,「まさか」が起きるってこういうことだよねというか,人生の儚さというか,そんなものを感じました。そして出陣したいしたいと思っていたひと(伊勢谷友介)が生き残る。人生って矛盾だらけで思うようにいかない。そういうものだよねということも,感じました。

そういえば今回の映画を観てて,妹役の尾高杏奈ちゃんが素敵だなーと思いました。あどけなさがあって,お兄ちゃんの恋人や友達を慕ってて,かわいらしい妹ちゃんという感じ。今もドラマなんかに出演されているみたい。大人になった杏奈ちゃんのお芝居,観てみたいです(*´∇`*)
あと杏奈ちゃん繋がりで,今回この『出口のない海』を観ていたら,2008年の映画『ラストゲーム 最後の早慶戦』を思い出しました。いや観たことはないんだけど。でも状況がなんだか似てる気がして。杏奈ちゃん,これにも出てるし,いつか観たいなーと思います。


この映画を観るまで人間魚雷があるなんて知らず…。改めて,戦争って究極なことを人間に考えさせて,恐ろしいもの作らせちゃうなと思いました。そして登場人物達の見せる「隙」がたまらなく愛おしい,そして切ない作品。幻想的なタイトルも素敵だけど,絶望的。そんな映画でした。

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