脚本:足立紳
音楽:福廣秀一朗
演出:榎戸崇泰
◇CAST
門脇麦/広瀬アリス/本田大輔/与座よしあき/塩野瑛久/富田靖子
2015年3月17日・10月25日にNHKで放送,10月再放送時に鑑賞
土曜の深夜,もう寝ようと思いつつチャンネルを回していたら,やっていたのが『佐知とマユ』。以前門脇麦のことをWikipediaで調べていたときにちらーっと作品名だけ目に入っていたので,(あれ?)と思ったらやっぱり門脇麦が出ていた!…ので,目が冴えまくって観ちゃいました。
50分ドラマなのに観始めたのが放送開始して15分くらい経ってからだったので,多分最初のいいところを結構落としてしまったんですが,なんとかついていけました。(多分マユが一度佐知の部屋から出て行って,戻ってアパートの前で待ってるところから観ました。)
門脇麦,広瀬アリスが主演のドラマですが,この2人が本当に良かったーーーーー。
特に2人で餃子食べるところは,非常に引き込まれました。
佐知「それから今日まで会ってない。」
マユ「何それぇ置き去りじゃあん。猫捨てるようなもんじゃん,人間じゃないよねそれ。」
佐知「だからぁ…,あんたも生んだら人間じゃないよ。捨てちゃうんだから。」
マユ「……。」
佐知「……。」
なんかせりふ書いても全然臨場感が伝わらず悔しいですが,マユは佐知の母親のことを指摘しているのに,それはマユ自身のことだと佐知から跳ね返されて「あっ」となるマユの動揺がちゃんと丁寧に見えたので,好きなシーンです。
あとこのシーンの手前には,佐知が母親から捨てられた時の回想シーンが入るのですが,観覧車の軋む,ちょっと怖い音が大きくて,母親がいなくなって不安と恐怖の佐知の心をうまく煽ってるなーなんて思って。細かーいところが効果的なドラマだなぁ。
そしてもうひとつインパクトあるシーンが,母親と再会した佐知の反応よ…。
母親「面影,あるもん。」
佐知「…何だお前。」
母親「何?」
佐知「おも…,お前なんか人間じゃない!」
この,(え?面影?)っていうところから,「お前なんか人間じゃない!」が,舞台でも他のドラマでも聞いたことない声で,度肝を抜かされました。
こんなにアグレッションあるひとなのに,いざマユの子どもが生まれそうとなるとぼーっとしちゃって自発的に動けないあたりはこのひとの弱さなんだろうな…。(私どちらかというとこっちだわ…。)
「帰れ!」って叫んだ後に「おい。おい!」って母親を呼び止めるあたりとかも,不器用で,感情ぐちゃぐちゃなところが見えて胸を打たれました…。はわわ~。
あと広瀬アリスのお芝居って全然観たことなかったんですけど,こんな体当たりな演技ができるなんて!どびっくりでした。出産シーンにこのひとの見せ場が全て詰まっている…。
こういう役柄っていうのもあると思うんですが,痛みを感じないように生きているお芝居ができる女優さんですね…。この強さは,妹にはまだ出せないなーと思いました。もっとこのひとの体当たりなお芝居,観てみたいかも。
マユは17歳で母親になることになりますが,多分このひとは頑張れるのでは…。私が大学院のとき,同期で虐待の世代間連鎖について研究されてた方がいて,それによると自分に被虐待経験があっても子どもには虐待していないという母親の思っていることとしては,マユが話していたように「自分がされなかったことをしてあげたい」とか,そういうところが大きかった…ような…。(うろ覚え)
いくつで生むかは若すぎたり高齢だと気になる問題ですが,それよりも母親になる覚悟を持って生めるかどうかなんだろうなと思います。最初は「生んだら捨てる」とかあっさり言っちゃうひとですけど,「変わりたい」と思えたマユは良いギャルママになるのだと思います…。
乱暴な言葉も出てきますが,せりふが全体的にきれいだったり音が効果的だったり,コンパクトな作品でも芸術的というか,質の高さを感じました。あと多分“サチ”は音的に“幸”でもあるので,佐知ちゃんにも幸せになってほしいものです…。観られて良かった一本です!