Saturday, November 28, 2015

第32回長野県高校演劇合同発表会 長野県屋代高校演劇班『A・R ~芥川龍之介素描~』

(長野県高校演劇合同発表会パンフレットより)

@東御市文化会館サンテラスホール

作:如月小春
潤色:長野県屋代高校演劇班
出演:長野県屋代高校演劇班

今年の8月に北信地区大会デビューしてしまった私ですが,デビューに至った一番の動機としては長野東の公演を観たかったこと。その次の動機を挙げるなら,屋代の『A・R』を観たかったこと。だと思っています。昨年から同じこと何度も言ってますが,この学校はカサハラホイホイな学校です。(過去の屋代の記事をご参照くださいまし…。)

北信地区大会をパスしたと知ったときは,納得半分意外半分という感じでした。キャストさんに力があるのは文化祭公演でも地区大会でもすごーく感じたのですが,演出がすんごいごたごたしていて,(なんだかカオスだしもったいない…!)という印象があったのです。例えばせりふの出どころと照明当たってるところが全然違ったり,多分屋代が見せたいところと私達に見えているところにギャップがあったりとか。その混沌さそのものが「作家」の内的世界なのかもしれないけれど,私は(うぅ~ん…)と思っていたので,お芝居の評価っていろいろあるなーと改めて思ったのでした。笑
しかし県大会が決まったということで,ホール版の公演を2回観たら何か私の中で変わるものがあるのかなというところと,地区では平台がものっすごーく上り下りしづらそうだったので,そこをどう改良してくるんだろうという期待を持ってこの時間に臨みました。

まず幕が開けて,真っ先に気づいたのはやっぱり平台。
超!超平べったくなっているーーーーー!!!
地区ではあの半分の高さで良いのではと思ったのですが,半分どころかもっともっと低くなってて,役者さんも移動しやすそうでした。笑
あとで屋代の役者さんに伺ったのですが,あの平台の設計図は北信地区大会で講師の先生として審査されたわこ先生が屋代の皆さんにプレゼントしてくださったのだとか。私は先生の超教育的・超支援的な姿勢に驚きを隠せません…。なんというひとなの…!(そういうエピソード聞いちゃうから,わこ先生と一度お会いしてみたいというかお話を伺ってみたいというかお酒の席にご一緒したいという私のぷち夢が膨らんでゆくのよ…)

そして県大会の講師の先生は「作家さんって女の子ですよね?」みたいな確認をされていて,なんか改めて私も彼女の幅の広さに気づかされました。私もここは文化祭のパンフレットを見た時点で(え?)と感じていたのですが,お芝居が始まったら全然気にならなかったな…ということを思い出しました。多分他のキャストさんでは成立しないというか,あの生徒さんが演じるからこそ成立したんだろうなーと思います。

屋代版『A・R』を3回観て思ったのは,今回が一番すっきりして見えたかなーということ。でもやっぱり惜しいなと思うところがあったということ。昨年の『南京』みたいに,一歩一歩確かに「おっ」と思えるいいとこポイントが増えていくのだけど,何か惜しいところが残る(ように見える)なという印象です。

今回の一番もったいなかったポイントといえば,間違いなくセンターにあるコロガシ。なんか,あのひと(ある意味,ひと。笑)がどセンターを陣取って他のキャストさんがよけよけして演技しているように見えて,もったいなーい!と何度思ったことか。笑
照明の使いどころとしては効果的なのだと思うのだけど,置く場所とか角度とか,もう少しすっきりしてると良かったなと思います。

すっきりと言えば,階段状の台がいろんなシーンで出てくるのだけど,細かい話(『羅生門』のエピソードとか『良秀』のエピソードとか)のあとに挟まれるぷち場転が,私はなーんかずっと(文化祭とか地区とかから)気になっていて。次のシーンが始まってるのによいしょ~と動かしているのがすんごく目立って見えてしまって,むむむーと思っていたのでした。(動かしてるひとが照明の光の中に入っちゃってるのも,むむむと思ってしまう要因)
わざとというより緻密さを欠いている感じで,そこがより一層混沌さを増していると思うと,シーンとシーンの区切りをきちんとつけるって重要だわ…と思いました。

そうそう。『羅生門』で思い出した。今まで,あそこのエピソードの入り口は作家の妻が担当(?)してたと思うんですが,今回は子ども達なのが良かった!
文化祭や地区のときは(ただそれだけのために着替えて蝋燭持ってたんですか!?)という無駄さというか効果的でない感じを見ていたのでむむむむと思っていたんですが,子どもが導入になるの,良いですね。自分の父親がどんな仕事をしているか興味を示しているのもわかる気がして。うん。良かった。

あとはもう3回も観ちゃってるので,その足音が観客にどう聞こえるかとか把握しているのだろうかとか,階段落ちが遠くて残念すぎるとか,良秀がとち狂って絵を描きまくってみんなばしゃーんと倒れるあたりはやっぱりおぞましくて良いなとか,作家の妻役の方の目が今回も素敵だったとか,歯車の映像は文化祭の天井投影がいちばんインパクトあったとか,上下の着替えやスタンバイの美意識よとか,いろいろ思っていても見慣れてしまった感があるので,自分でもよくわからなくなりつつあります。すみません。笑
でも,文化祭~県大会のパンフレットを見てみると毎回人の名前が違ったり配役が違ったりしていて,一公演一公演打つのが大変なカンパニーさんなのかなと思うと,お芝居として毎回一定の質に仕上げているあたりは,この学校の力なのかなと思います。

あの『南京』と言い今回の『A・R』と言い,2000年代の中信のひととしてはとっても気になる作品をセレクトしてきた屋代さんが今後どういった舞台に取り組まれるのか,ひっそり見守っていきたいと思います。
屋代のみなさん,お疲れ様でしたー。

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