Monday, September 21, 2015

第38回東京都高等学校文化祭演劇部門地区大会(山手城南地区) 東京都立桜町高校演劇部『新竹取物語』

(東京都高校文化祭演劇部門地区大会パンフレットより。ちなみに写真は昨年の東京都代表なので,上が桜町の写真です!円周率!)

@日本工学院専門学校

作:桜町高校といのさん
出演:東京都立桜町高校演劇部

昨年度の関東大会(南)で,私の中でものすごいインパクトがあった『死刑囚のπ』
その後ご縁があり都大会のDVDも頂いてしまい,何回か拝見してはいるのだけど,未だに(ここはどういうことなんだろう)と考える隙間をくれる作品です。
今年の4月には六本木の俳優座劇場で行われたはいすくぅるドラマすぺしゃるの枠で上演された『酒呑の女』も拝見し,人生初の,お金を払って高校演劇を観るというイベントを達成したのでした。笑

やっぱり高校演劇は大会作品に一番力が入っているはず!桜町のホームの大会である地区大会に行きたい!と思い,地元の長野県中信地区大会の翌日に蒲田までおでかけしちゃったのでした。

出かける準備の途中,Twitterを見ていたら(あれれっ)ということが。
「桜町の公演は保護者や関係者で100人くらいひとが来る」というもの。
それを読んだ私は,

ふーん…。(・ω・)なぜそれにみんなやきもきしているのだろうか…。

としか思ってませんでした。というか

100人も集客できる桜町,さすがだな…。(´ `)☆

って思ってました。なぜならば,前日まで1800席ある会場で地区大会を観ていたので,100人増えたところで「……で?」と思っていたんです。
(←これはこれで大きすぎで,私もここで公演打たせてもらったことありましたが,自分の公演も含めてここを使いこなしている高校を未だかつて観たことがありません。本当に大きすぎ。笑)

しかしよく考えてみると,桜町は昨年こまばアゴラ劇場で上演してる。ここは200人くらいの超コンパクトな会場だということは私知ってる。同じエリアの地区大会ならば,会場は変わっても規模は大きく変わらないはず。
つまり定員の半分が埋まっちゃう&そのために前の学校が終演したら客席完全入替にすることに,Twitterのひとたちは憤りを感じているのかしら…。と自分なりに理解しました。
今年5月の私の日記「高校演劇における大会会場規模の違いについて―東京都と長野県の比較から―」にも書きましたが,土地が違うとこんなにも事情が違うのですね。

実際会場に入ってみると,まるで明治大学和泉キャンパスでいうところの005教室のようなコンパクトさ!(大学だとここでしかお芝居作ったことないからこれしか表現しようがない。笑)専門学校でやるというからホールとか借りてるのかと思いきや,「稽古室」みたいな教室名の箱が会場!(゜ロ゜)どびっくり。元長野県民からすると,正直これが地区大会!?と思いました。

でも,関東高等学校演劇協議会のwebサイトを見てみると,東京都の加盟校数は221。私の地元長野県は58校。地区大会ってもちろん上位大会に行くためのコンクールでもあるんだけど,もっとこう…同じエリアの学校同士でお芝居を観合って,お互いの1年間の成果を見たり刺激を受けたりするものだと個人的には思ってたんですが,221校もあれば,言い方悪いですけど「数をさばく」ので精一杯なのでは…。そんな,学校同士で観合うキャパの会場を全て押さえられっこないと。都大会でさえ隣同士の会場で同時進行で,誰も全ての作品をリアルタイムで観ることはできないし。
そう考えると,やっぱ東京って密度高すぎて,生きるのたいへん…って思いました。

あ。そうですそうです。
なので,私観れたんです。ちゃんと。完璧に一般客ですけど。Twitterには「保護者・関係者が優先されるんじゃ…」なんて憶測も飛び交っていたようですが,順当に並んでいるひとたちから入場することができました。
私は事の真相を知らないし知ったところで…なので,運営に口出しする気はありませんが,次の学校が観たくて並ぶ必要があるためにその前の学校が観られないという構造は全国大会の午前午後の入れ替えでも起こっていたことなので,私はあまり気になりませんでした。(もともとキャパが200とかで,一番の関係者である参加校の生徒さん達だって他校のお芝居を全部観ることが実質ムズカシイし,選んで観るのが東京なんだと思うことにします。)
そしてこれもTwitter情報なので実際どうだったかわかりませんが,帰さざるを得なかったお客様もいたようです。定員がいっぱいなら消防法に引っかかる可能性もあるので,規定を守る意味でそれは当然かなと思います。もちろん,心苦しいでしょうけど…。


……本編のことに入るまでにこんなに長い文章を打ってしまった…。笑
さて,ようやくお芝居本編のことです。

幕が開いてすぐ目に入ったのが,奥のペットボトル!で,できた幕というかカーテンというか!
そしてしばらくすると出てくるアンサンブルの女子生徒達!と,女子生徒達が楽器のように使っているペットボトル!
なぜペットボトル!?と思ったんですが,お芝居の途中で気づきました。ペットボトルって,すごく節っぽい。つまりあれは,竹だ!(・o・)…と。後ろのホリゾントの色をもろに受けるから,そのたびペットボトルもその色に染まり…。手は込んでいるけどお金がかからないって,高校演劇ではとても大事な意識だなーと思います。シンプルだけど素敵な舞台でした。

あと,一番きゅーんときたのは,私が『死刑囚のπ』で素敵だと思った真理ちゃん役の方と緑子先生役の方が今回もいらしたこと!(ももも,もし違ったらスミマセン…!緑子先生の方は本当に合ってるかちょぴっと自信がない…)お二人とも声がとても素敵で,八千代で拝見したときからすごく印象に残っていたんです。お芝居の感じから,関東大会の時点で2年生くらいかなー&そしたらもう3年生で引退されているかなーと思っていたんですが,お二人ともいらしたのでびびりました。特に昨年度の真理ちゃんは当時1年生だっただなんて…!超衝撃的でした。これだけでも,観に来て良かったと本気で思いました…!『π』で真理ちゃん役&今回教授役の方は前回と正反対というか超はっちゃけていたり,『π』で緑子先生役だった(と思われる)&今回山田美央先輩役の方は先輩らしくキリリとしていて素敵でした。

創作だからといえばそうなのかもしれませんが,でも,ぴったりのキャスティングで舞台の世界にぐぐいと引き込まれちゃいました。私も教育実習やったことあったり今も学校で働いているので,カオルちゃんの教育実習生っぽいスーツ姿を見た瞬間,(こういうひといるわ!)って思えました。笑
あと皆さん15~18歳のはずなのに,例えば本当に芳野さんは主婦に見えたし,明菜ちゃんはあの細っこい感じとかが小学生に見えたし。キャストさんの幅が充実していて,無理な感じがなくて。そして皆さんちゃんとお芝居ができるので,うらやましいカンパニーだなぁと思います。
一番びっくりしたキャストさんはやっぱり社長役の方!パンフレットのキャスト一覧からは,ぱっと見全員(日本人も含めて)アジア系だと思いきや…!お人形さんみたいでびっくりしました…。白と赤の衣装をバッチリ着こなせるのも,あのキャストさんだからなんだろうな…。桜町の幅がさらに広がりそうですね。

これまで高校演劇をいろいろ観てきましたが,障害をもったひとが出てくる作品ってほとんど観たことがなかったので,そこも今回驚きました。明菜ちゃんの第一声を聞いた瞬間,ハッとしました。私もお仕事で構音が未熟な方とか,難聴ゆえに音によっては発音が困難な方にお会いすることが比較的多いんですが,ちゃんとその方達のようというか…。(そうそうその子音発音しにくいよね)って音がちゃんとしづらそうだったので,キャストさんの努力が伝わってきました。
小1くらいでも,聴覚に支障がなくてもまだ構音未熟なお子さんはいるけど,小2,3くらいになるとやっぱり周りが意識しちゃって責める…みたいなことってあるんだろうと思います。だから明菜ちゃんについても「前はもうちょっと喋れたんだけど」ってせりふがありましたが,器質としてはそんなに落ちなくても,もしかしたら周囲のいやがらせゆえに選択的に聴力がさらに落ちちゃって(心理的要因で聞こえづらくなる),それゆれに表出される喋りも周囲からすると聞き取りづらくなっちゃったのかなーと思うと,とても苦しい気持ちになりました。
だからこそ,社長に放つ「うるさいぞババア」みたいなはっきりしたせりふ出しは,かなり残念でした。そのまま,ちゃんと言えないまま,そのせりふを聞きたかったです。そう言いたいって思いは全開で。

明菜ちゃんもきっと本当は誰かと関わりたいし,友達がほしい。そういう気持ちが,「かぐや」をイマジナリーコンパニオン(空想上の友達)のようにさせていたのかなとか思いました。自由に喋ることができないからこそ,心の中で自由に喋れる友達を欲していたのかなって。それが明菜ちゃんの感じる外部にはいなかった。カオルも家には来てくれるけど,やっぱり私達が欲しがったり認めてもらいたがったりするのって,同世代の友達・ひとなんだろうなー…。
なのでその唯一自分をわかってくれる(と思ってる)友達で,自分のことを自由に表現できる自分自身の分身でもある「かぐや」の存在が大人達から否定されてしまったら,もう地球にはいられないんだろうなとか思います。

で,何を隠そう教授が素敵…。私がもともと気になっているキャストさんということもあるけど,突き詰め方が究極で,いい…!(大学っているよね,ああいう先生。私が行ってた大学院でも,毎日ベレー帽かぶってる小人みたいな先生がいました。笑)高校生が大学教授って難しいと思うけど,あそこまで全身トータルコーディネートできていたら年齢不詳すぎて,「そういう人です」になれるんだなと思いました。笑
それからダニにあんなふうに感激できるなんて。ある意味さかなクンのダニバージョンというか。そんな雰囲気さえしました。やっぱ研究者って変わってるよね。変わってるから研究者だよね。笑

それから,昨年度の『死刑囚のπ』と今回の『新竹取物語』を観ていて感じたことが。

“桜町のお芝居って,大人がちゃんと悪者として描かれてる。”

もちろん全ての大人が悪く描かれているわけではないけど,『死刑囚のπ』だったら真理ちゃんのお母さんとか,今回だったら私利私欲を追求する『社長』とか『政治家』。“子どもが弱者として描かれている”と言い換えてもいいかも。子どもの世界はいつだって大人によって振り回されている。子どもが感じるぐちゃぐちゃした気持ちが,ちゃんと舞台に出ている。それがとっても魅力的だなって思います。(私もきっと振り回されてきたけど,今は確実に振り回す側になってしまったんだろうな…。)
きっとこのぐちゃぐちゃには,桜町の皆さんが日々感じているものが少なからず投映されているのだと思います。ぐちゃぐちゃは痛いしつらいし,触るにも勇気がいることです。こういう,今しか感じられないところを丁寧に切り取って見つめているところに,私は惹かれるんだろうなと思います。
(だから大人と子どものどちらとも言えない大学生が明菜ちゃんを守るというところも,この作品の素敵なところ。でもってほわほわして見える教授も,やっぱりいざとなると自分や社会的なことを大きく主張していて,子どもとしてはちゃんと嫌なひとだった。笑)

あとあと,やっぱりこの至近距離なのでキャストさんの圧がすごくて,その胸に迫る圧で涙出てきました。昨年度の関東に出ていた静岡理工科大学星陵高校演劇部『ブルーシート』に似た感覚がありました。特にラストの,芳野さんが明菜ちゃんに向かって叫ぶあの必死さにやられました。ぐわぁぁぁーって。やー。この距離,良いですね…。


思ったところをだだだだーっと書きました。本編に入る前の文章の方がもしかしたら長いかもしれませんが,お芝居本編とその前後,全部含めて“私の感想”です。感想なので,主観100%です。私は純粋にお芝居を観て感動しました。それで十分です。

あの距離で桜町のお芝居を拝見することができ,とても贅沢な気持ちになりました。笑
パワフルな舞台で,私もエネルギーもらえたなって思います。
桜町の部員の皆さん,そしていのさん,お疲れさまでした!

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