Wednesday, September 23, 2015

KERA・MAP #006 『グッドバイ』

(キューブ公式webサイトより)

@世田谷パブリックシアター

原作:太宰 治(「グッド・バイ」)
脚本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

出演:仲村トオル/小池栄子/水野美紀/夏帆/門脇麦/町田マリー/緒川たまき/萩原聖人/池谷のぶえ/野間口徹/山崎 一

フライヤーがとっても魅力的で,初めて見た時から(素敵~!)と思っていたKERA・MAPの『グッドバイ』。観たいけどチケットは即予定枚数終了してて,あぁ残念…と思っていました。
がっ,高校演劇の全国大会におでかけしている最中にKERAさんのTwitterでもうちょっと席を出すことを知って,滋賀県でチケットを確保!帰りの新幹線に乗る前にタクシーの運転手さんにコンビニに寄ってもらって発券!というキツキツスケジュールの中手に入れたものだったのでした。

この舞台を観る3日前から前日まで高校演劇の地区大会を地元の長野県や東京で観ていたのですが,ひっさしぶりにプロのエンターテインメントな舞台を観たな!と思いました。
そうそう。この感じこの感じ。オープニングの映像とダンスとか,うひゃーって思いました。さすがKERAさん…!

そして気づいたことが。
今年に入って『エッグ』『お話の森』,そして今回と,私仲村トオルのお芝居3回観てる…!私仲村トオルのことが,好きかもしれない…!(*´艸`*)ていうか,好き…!!!
まるで中学生の初恋のような気持ちになりました。←
最近テレビのCMでも仲村トオルを拝む機会がありましたが,あんな声の抑え方,もったいない…。やっぱり彼は舞台で輝くひとだわ…!なんてことも再認しました。笑

はっ。そうそう。舞台のことを書かねば。

今回はとにかくキャストさんが大物揃いなので皆さんに期待していましたが,期待以上でした。
特に映画『八日目の蝉』で圧倒された小池栄子を生で観られるのが楽しみだったんですが,本当にパワフルで素敵な女優さんだということを体感できました~!!!
小池栄子演じるキヌ子さんは,一見すっごく図太くてガサツで品がなくてという感じなんですが,実はただ真っ直ぐなひと。本人としてはいたってマジメにやっているけど,傍から見るとそれがとってもチャーミングで,魅力的でした。あとやっぱり小池栄子は声が良いよね。ちゃんと舞台で通るよね。ダミ声というか,わざと潰した感じで出しているのにそれがちゃんとクリアに聴こえるんだもの…。なんて女優さんなの…。
緒川たまき演じる大櫛さんから正体も心も見抜かれたあたりから,自分自身に戸惑うキヌ子が見えて…とても素敵でした。だから田島周二が亡くなったと知ったときの,一人でひっそり泣いているところなんかはキヌ子の感情がストレートに出ていて,とっても切なかったです。あぁ…。
パンフレットの小池栄子のインタビューページなんかでも,田島とキヌ子はお互いにないものを埋め合っていけるみたいなことを言っていて,そうなんだろうなぁという感じが二人の空気感から伝わってきました。あぁ,本当に魅力的なキャラクター&女優さんだった…。

そして小池栄子の次に「!!」っとなったのは夏帆。私,テレビも含めて夏帆のお芝居自体あんまり観たことなくて。2008年放送のテレビドラマ『4姉妹探偵団』をちょろっと観たことあったんですが,途中で挫折してしまって。どんな女優さんなのかと思っていたんですが…
腰が,高い!(゜д゜)←そこ
第二部の出だしは田島を忍ぼうというところから始まるので喪服なんですが,帯の位置が…なんか異様に高い!!笑 でも位置としては正しい!! 脚長いんだな…としみじみ感じました(´ `)ていうか超小顔でした。
体型にもびっくりしましたが,お芝居もキレイというかピュアというか,ケイ子さんなりの正義を持っている感じが素敵でした。ケイ子さんもキヌ子さんと多分似たところがあって,一部で世間を知らないところというか,予測が甘いというか,そんなところがあって。あ。それがピュアってことなのかな。うまく言えないけど。そこでしっかり傷つくケイ子ちゃんを見て,私もしっかり苦しくなりました。でも捨て台詞の「グッドバイ」が心地よかったです。笑

あとやっぱり楽しみだったのは門脇麦。昨年『K.テンペスト』を観た時は個人的にはまだあまり注目していなくて。ただ声が,私の部活の後輩ちゃんにそっくりで,その子にしか見えなくなっちゃった(笑)ということがあったんですが,朝ドラの『まれ』とか見ているうちに絶妙な力のある女優さんだということがよーくわかりました。再び生で門脇麦の声が聴けることを楽しみにしていたんですが,やはりこの女優さんは声がスゴイですね…。強く出している訳じゃないのにパーンと通るし,忘れられないインパクトがある。田島とやりとりするところとか,ものすごい贅沢な響きがしました。
パンフレットのインタビューには「青木さん,水原さん,大櫛さん。その三人とは違う形で,田島さんに衝撃を与えなければ,と思っています。」と書かれていたのだけど,ちゃんと衝撃がありました…。みすぼらしい姿というところもそうですが,年齢に見合わない,外れた感じ。そこが大人の田島さんとしては守ってあげたくなるところなのかなと思ったり。でも第二部ではもう世間を一通り知ってますみたいな感じになっていて,4人の愛人の中でもやっぱりベクトルが違うキャラクターだなと思いました。そうそう。パンフレットに門脇麦の人生の転機が書かれてましたが,潔くてこういうひと好きです。私。一瞬真木よう子がよぎりました。またぜひ生で観てみたい女優さんになりました。

そしてそして肝心の仲村トオルなのですが,この,真面目に見えて全く責任がなくて,愛してるように見えて全く大事にできてなくて,ゆるふわな男はなんなんだろう。ゆるふわなんて男の人の表現に使わないと思うんですが,でも超ゆるふわ。田島周二よ。でも仲村トオルが演じるから,それが全うなひとのように見えてしまう。あぁ怖い怖い。笑
本当にツッコミどころ満載な男。お芝居を観てもなんなんだこのひとと思っていたんですが,パンフレットの仲村さんのインタビューに載ってた「愛人たちとの関係でも,親切と愛情の区別がついていない。」って文章を読んで,スッときた気がしました。そうかぁ。だから一瞬一瞬では,目の前の女性に実直な感じがしたのか。って。
でもって,失ってから初めて自分の気持ちに気づく…。妻の静江のことも,愛してしまったキヌ子のことも。なんてベタ!ベタなラブコメ!でもそこが楽しい!!笑 最後らへんの,田島とキヌ子の,記憶が戻ったことを隠して会うところなんか,こそばゆくてこそばゆくて,(んも~!!)と思いながら観ちゃいました。笑 今までのトオルさんのような隙のない感じとは全く違うお芝居が観られて満足でした…。

はっ。そうそう。あと個人的にツボだったのは,池谷のぶえさん演じる幸子ちゃん。やべぇよ幸子ちゃん。カンペキに私の領域のひとだよ幸子ちゃん。でも面白くなっちゃうのは,KERAさんマジックなんだろうな。


プロの舞台だな~と思った要因はいろいろあって,ビジュアルへのこだわりとか,舞台装置とか,映像とか,いろいろ。そう。フライヤーのモノクロ感とかパンフレットの写真の質感とか,たまらなく好きです~。
あと要所要所で入ってくるダンスというか,振付が素敵でした。どこに注目していいかわからないくらい視線があちこちに散る感じで,気づくと次のシーンへつながっているあたりとか,面白いなって感じました。あのあたりはさすが小野寺さん…。


久々に最初から最後までウキウキした気持ちでいられて,観たぞーって満足感があったお芝居でした。12月には10年ぶりにNYLON100℃の『消失』も観るので,今回とまた真逆のKERAさん作品を味わえることを楽しみに生き延びたいと思います。

Monday, September 21, 2015

第38回東京都高等学校文化祭演劇部門地区大会(山手城南地区) 東京都立桜町高校演劇部『新竹取物語』

(東京都高校文化祭演劇部門地区大会パンフレットより。ちなみに写真は昨年の東京都代表なので,上が桜町の写真です!円周率!)

@日本工学院専門学校

作:桜町高校といのさん
出演:東京都立桜町高校演劇部

昨年度の関東大会(南)で,私の中でものすごいインパクトがあった『死刑囚のπ』
その後ご縁があり都大会のDVDも頂いてしまい,何回か拝見してはいるのだけど,未だに(ここはどういうことなんだろう)と考える隙間をくれる作品です。
今年の4月には六本木の俳優座劇場で行われたはいすくぅるドラマすぺしゃるの枠で上演された『酒呑の女』も拝見し,人生初の,お金を払って高校演劇を観るというイベントを達成したのでした。笑

やっぱり高校演劇は大会作品に一番力が入っているはず!桜町のホームの大会である地区大会に行きたい!と思い,地元の長野県中信地区大会の翌日に蒲田までおでかけしちゃったのでした。

出かける準備の途中,Twitterを見ていたら(あれれっ)ということが。
「桜町の公演は保護者や関係者で100人くらいひとが来る」というもの。
それを読んだ私は,

ふーん…。(・ω・)なぜそれにみんなやきもきしているのだろうか…。

としか思ってませんでした。というか

100人も集客できる桜町,さすがだな…。(´ `)☆

って思ってました。なぜならば,前日まで1800席ある会場で地区大会を観ていたので,100人増えたところで「……で?」と思っていたんです。
(←これはこれで大きすぎで,私もここで公演打たせてもらったことありましたが,自分の公演も含めてここを使いこなしている高校を未だかつて観たことがありません。本当に大きすぎ。笑)

しかしよく考えてみると,桜町は昨年こまばアゴラ劇場で上演してる。ここは200人くらいの超コンパクトな会場だということは私知ってる。同じエリアの地区大会ならば,会場は変わっても規模は大きく変わらないはず。
つまり定員の半分が埋まっちゃう&そのために前の学校が終演したら客席完全入替にすることに,Twitterのひとたちは憤りを感じているのかしら…。と自分なりに理解しました。
今年5月の私の日記「高校演劇における大会会場規模の違いについて―東京都と長野県の比較から―」にも書きましたが,土地が違うとこんなにも事情が違うのですね。

実際会場に入ってみると,まるで明治大学和泉キャンパスでいうところの005教室のようなコンパクトさ!(大学だとここでしかお芝居作ったことないからこれしか表現しようがない。笑)専門学校でやるというからホールとか借りてるのかと思いきや,「稽古室」みたいな教室名の箱が会場!(゜ロ゜)どびっくり。元長野県民からすると,正直これが地区大会!?と思いました。

でも,関東高等学校演劇協議会のwebサイトを見てみると,東京都の加盟校数は221。私の地元長野県は58校。地区大会ってもちろん上位大会に行くためのコンクールでもあるんだけど,もっとこう…同じエリアの学校同士でお芝居を観合って,お互いの1年間の成果を見たり刺激を受けたりするものだと個人的には思ってたんですが,221校もあれば,言い方悪いですけど「数をさばく」ので精一杯なのでは…。そんな,学校同士で観合うキャパの会場を全て押さえられっこないと。都大会でさえ隣同士の会場で同時進行で,誰も全ての作品をリアルタイムで観ることはできないし。
そう考えると,やっぱ東京って密度高すぎて,生きるのたいへん…って思いました。

あ。そうですそうです。
なので,私観れたんです。ちゃんと。完璧に一般客ですけど。Twitterには「保護者・関係者が優先されるんじゃ…」なんて憶測も飛び交っていたようですが,順当に並んでいるひとたちから入場することができました。
私は事の真相を知らないし知ったところで…なので,運営に口出しする気はありませんが,次の学校が観たくて並ぶ必要があるためにその前の学校が観られないという構造は全国大会の午前午後の入れ替えでも起こっていたことなので,私はあまり気になりませんでした。(もともとキャパが200とかで,一番の関係者である参加校の生徒さん達だって他校のお芝居を全部観ることが実質ムズカシイし,選んで観るのが東京なんだと思うことにします。)
そしてこれもTwitter情報なので実際どうだったかわかりませんが,帰さざるを得なかったお客様もいたようです。定員がいっぱいなら消防法に引っかかる可能性もあるので,規定を守る意味でそれは当然かなと思います。もちろん,心苦しいでしょうけど…。


……本編のことに入るまでにこんなに長い文章を打ってしまった…。笑
さて,ようやくお芝居本編のことです。

幕が開いてすぐ目に入ったのが,奥のペットボトル!で,できた幕というかカーテンというか!
そしてしばらくすると出てくるアンサンブルの女子生徒達!と,女子生徒達が楽器のように使っているペットボトル!
なぜペットボトル!?と思ったんですが,お芝居の途中で気づきました。ペットボトルって,すごく節っぽい。つまりあれは,竹だ!(・o・)…と。後ろのホリゾントの色をもろに受けるから,そのたびペットボトルもその色に染まり…。手は込んでいるけどお金がかからないって,高校演劇ではとても大事な意識だなーと思います。シンプルだけど素敵な舞台でした。

あと,一番きゅーんときたのは,私が『死刑囚のπ』で素敵だと思った真理ちゃん役の方と緑子先生役の方が今回もいらしたこと!(ももも,もし違ったらスミマセン…!緑子先生の方は本当に合ってるかちょぴっと自信がない…)お二人とも声がとても素敵で,八千代で拝見したときからすごく印象に残っていたんです。お芝居の感じから,関東大会の時点で2年生くらいかなー&そしたらもう3年生で引退されているかなーと思っていたんですが,お二人ともいらしたのでびびりました。特に昨年度の真理ちゃんは当時1年生だっただなんて…!超衝撃的でした。これだけでも,観に来て良かったと本気で思いました…!『π』で真理ちゃん役&今回教授役の方は前回と正反対というか超はっちゃけていたり,『π』で緑子先生役だった(と思われる)&今回山田美央先輩役の方は先輩らしくキリリとしていて素敵でした。

創作だからといえばそうなのかもしれませんが,でも,ぴったりのキャスティングで舞台の世界にぐぐいと引き込まれちゃいました。私も教育実習やったことあったり今も学校で働いているので,カオルちゃんの教育実習生っぽいスーツ姿を見た瞬間,(こういうひといるわ!)って思えました。笑
あと皆さん15~18歳のはずなのに,例えば本当に芳野さんは主婦に見えたし,明菜ちゃんはあの細っこい感じとかが小学生に見えたし。キャストさんの幅が充実していて,無理な感じがなくて。そして皆さんちゃんとお芝居ができるので,うらやましいカンパニーだなぁと思います。
一番びっくりしたキャストさんはやっぱり社長役の方!パンフレットのキャスト一覧からは,ぱっと見全員(日本人も含めて)アジア系だと思いきや…!お人形さんみたいでびっくりしました…。白と赤の衣装をバッチリ着こなせるのも,あのキャストさんだからなんだろうな…。桜町の幅がさらに広がりそうですね。

これまで高校演劇をいろいろ観てきましたが,障害をもったひとが出てくる作品ってほとんど観たことがなかったので,そこも今回驚きました。明菜ちゃんの第一声を聞いた瞬間,ハッとしました。私もお仕事で構音が未熟な方とか,難聴ゆえに音によっては発音が困難な方にお会いすることが比較的多いんですが,ちゃんとその方達のようというか…。(そうそうその子音発音しにくいよね)って音がちゃんとしづらそうだったので,キャストさんの努力が伝わってきました。
小1くらいでも,聴覚に支障がなくてもまだ構音未熟なお子さんはいるけど,小2,3くらいになるとやっぱり周りが意識しちゃって責める…みたいなことってあるんだろうと思います。だから明菜ちゃんについても「前はもうちょっと喋れたんだけど」ってせりふがありましたが,器質としてはそんなに落ちなくても,もしかしたら周囲のいやがらせゆえに選択的に聴力がさらに落ちちゃって(心理的要因で聞こえづらくなる),それゆれに表出される喋りも周囲からすると聞き取りづらくなっちゃったのかなーと思うと,とても苦しい気持ちになりました。
だからこそ,社長に放つ「うるさいぞババア」みたいなはっきりしたせりふ出しは,かなり残念でした。そのまま,ちゃんと言えないまま,そのせりふを聞きたかったです。そう言いたいって思いは全開で。

明菜ちゃんもきっと本当は誰かと関わりたいし,友達がほしい。そういう気持ちが,「かぐや」をイマジナリーコンパニオン(空想上の友達)のようにさせていたのかなとか思いました。自由に喋ることができないからこそ,心の中で自由に喋れる友達を欲していたのかなって。それが明菜ちゃんの感じる外部にはいなかった。カオルも家には来てくれるけど,やっぱり私達が欲しがったり認めてもらいたがったりするのって,同世代の友達・ひとなんだろうなー…。
なのでその唯一自分をわかってくれる(と思ってる)友達で,自分のことを自由に表現できる自分自身の分身でもある「かぐや」の存在が大人達から否定されてしまったら,もう地球にはいられないんだろうなとか思います。

で,何を隠そう教授が素敵…。私がもともと気になっているキャストさんということもあるけど,突き詰め方が究極で,いい…!(大学っているよね,ああいう先生。私が行ってた大学院でも,毎日ベレー帽かぶってる小人みたいな先生がいました。笑)高校生が大学教授って難しいと思うけど,あそこまで全身トータルコーディネートできていたら年齢不詳すぎて,「そういう人です」になれるんだなと思いました。笑
それからダニにあんなふうに感激できるなんて。ある意味さかなクンのダニバージョンというか。そんな雰囲気さえしました。やっぱ研究者って変わってるよね。変わってるから研究者だよね。笑

それから,昨年度の『死刑囚のπ』と今回の『新竹取物語』を観ていて感じたことが。

“桜町のお芝居って,大人がちゃんと悪者として描かれてる。”

もちろん全ての大人が悪く描かれているわけではないけど,『死刑囚のπ』だったら真理ちゃんのお母さんとか,今回だったら私利私欲を追求する『社長』とか『政治家』。“子どもが弱者として描かれている”と言い換えてもいいかも。子どもの世界はいつだって大人によって振り回されている。子どもが感じるぐちゃぐちゃした気持ちが,ちゃんと舞台に出ている。それがとっても魅力的だなって思います。(私もきっと振り回されてきたけど,今は確実に振り回す側になってしまったんだろうな…。)
きっとこのぐちゃぐちゃには,桜町の皆さんが日々感じているものが少なからず投映されているのだと思います。ぐちゃぐちゃは痛いしつらいし,触るにも勇気がいることです。こういう,今しか感じられないところを丁寧に切り取って見つめているところに,私は惹かれるんだろうなと思います。
(だから大人と子どものどちらとも言えない大学生が明菜ちゃんを守るというところも,この作品の素敵なところ。でもってほわほわして見える教授も,やっぱりいざとなると自分や社会的なことを大きく主張していて,子どもとしてはちゃんと嫌なひとだった。笑)

あとあと,やっぱりこの至近距離なのでキャストさんの圧がすごくて,その胸に迫る圧で涙出てきました。昨年度の関東に出ていた静岡理工科大学星陵高校演劇部『ブルーシート』に似た感覚がありました。特にラストの,芳野さんが明菜ちゃんに向かって叫ぶあの必死さにやられました。ぐわぁぁぁーって。やー。この距離,良いですね…。


思ったところをだだだだーっと書きました。本編に入る前の文章の方がもしかしたら長いかもしれませんが,お芝居本編とその前後,全部含めて“私の感想”です。感想なので,主観100%です。私は純粋にお芝居を観て感動しました。それで十分です。

あの距離で桜町のお芝居を拝見することができ,とても贅沢な気持ちになりました。笑
パワフルな舞台で,私もエネルギーもらえたなって思います。
桜町の部員の皆さん,そしていのさん,お疲れさまでした!

Sunday, September 20, 2015

第30回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2015~ 長野県松本県ヶ丘高校演劇部『三人そろえば』

(中信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@まつもと市民芸術館主ホール

作:金井賢一
出演:長野県松本県ヶ丘高校演劇部

2015年の中信地区大会,大トリは県!

…すすす,すみません(;ω;)あらかじめ謝っておきます。
2日目の最後だったんで…その,若干意識が飛びました…。スミマセン…。なので本当に流し読みしてください…。

私「三人姉妹」って読んだことなくて。ざっくりなあらすじくらいしか知らなくて。
でもこの脚本の設定が面白い…!多分ベースを知っていればもっと楽しめたと思うんですが,そうじゃなくてもちゃんとついていけました。

雅子さんが「織江さんはちょっと自分の世界に行ってしまう…」というふうに理奈に説明しているのを聞いた時から,私は織江さんのことが気になって気になって仕方ありませんでした。(そういうひと,好きなので。笑)
がっ,その後舞台に登場してきた織江さんは,私が見た感じ,ちゃんと雅子さんと理奈の話に噛み合ってるので(あれれ。)と思っちゃいました。もっとぶっ飛んでいるひとを想像してしまった…。というかもういっそのことぶっ飛んでて周りが心配しちゃうくらいでもちょうどいいんじゃないかと思ったりもしました。←とっても無責任発言。笑

舞台セットとか見てみると,(あれこの本棚,去年使ったやつかなー)とか思ったり。実際がどうかはわかりませんが,ちゃんと使いまわすってエライなと思います…。
あと小道具のポットとか湯呑とかがおうちの家庭的な雰囲気があっていいなーって思いました。雅子がお仕事終えて帰宅した後お茶を飲むシーンがなんだか好きでした。(お茶セットが舞台のパネル裏にあったかなと思うんですが,小道具棚とか用意して,しゃがまずに道具をチャキっと持てたら動きがスムーズそうですね…。)

というか!この作品もっとコンパクトなところでやった方がやりやすそう&面白そう!今回は場転や物の移動で不必要な時間が生まれちゃった気がしてなりません…。教室公演とかで,お客さんも家の住人と思わせちゃうくらいの距離感でぜひやってほしいです!

そうそう。ホンとしては面白いと思うのですが,まだそこにキャストさん達がついてこれてないのかなーという印象が全体でありました。せりふの出が淡々としていたのが残念…!抑揚がないわけではないのだけど,なんだか心や気持ちの変化が見えにくいお芝居だったかなーと思います。
でも上級生がお一人で,あとは1年生の皆さんということを考えると,木曽青峰のようにこれからなのかなという感じです。

一学年抜けるってかなりの大ダメージだと思うのですが,ここで踏ん張って来年もぜひ出てもらいたい学校だなーと思います。
県の皆さん,お疲れさまでしたー。

第30回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2015~ 長野県松本深志高校演劇部『雲の』

(中信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@まつもと市民芸術館主ホール

作:長野県松本深志高校演劇部の生徒さん
出演:長野県松本深志高校演劇部

このタイトルを演劇連盟のwebサイトで初めて見た時は,「階段」というワードがぱっと私のアタマに浮かびました。
『雲の階段』。元々は小説だけど,2013年4~6月のクールに日テレで連続ドラマ化されました。私の好きな長谷川博己が主演だったり,木村文乃ちゃんがヒロインだったり,あとCobaが楽曲を手掛けていたのもあって,久々にハマって観ていた作品。島の診療所の事務員として働いていた三郎が,所長の一声でメスを握るようになって,無資格のまま大病院に医師として赴き,院長にのし上がっていく話。
今回の深志が,この作品と重なりました。

いろいろ書きたいことはあります。


今回パンフレットの深志のページを読んでから本番まで,非常につらい気持ちになっていました。いや今でもつらいです。できれば棄権してほしいと思っていましたが,深志の皆さんが世の中に発表された以上,観客としてキャッチして,思ったところを書かせていただきたいと思います。


一番疑問に思うことは,「そこまでして地区大会に出たかったのはなぜだろう」ということです。
同じ学校が毎年大会に出てくれたら,それは観客としても嬉しいことです。(去年あの役やってた人だ!)とか(今年は気合い入ってるな)なんていう楽しみ方もできるので。高校演劇は2年続けて観て面白くなってくるパフォーマンスだなぁと中学生の時から思ってました。
でも,今回この作品を選んで出場しなければならなかった理由が,作品を観てもよくわかりませんでした。
もし出場が難しいのであれば,作品を変えるか出場しないかという選択肢もあったと思います。どの選択肢を選び取っても,今できる最大限のことをやることが,そのチームにとってベストのはずです。何も生産せず結果0なのと,0を生産することは全く違う。0を生産することほど虚しくて何にもならないことはないなと,思います。0を生産し続けたのが,『雲の階段』で言うところの三郎なのだと思います。

本当は,私は深志の演劇部OGの友人とこの作品を観るはずでした。友人の都合がつかずそれは叶いませんでしたが,それでよかったと思いました。私は深志の出身ではありませんが,母校でこんなことがあったら,非常に悲しいです。

もしこのお芝居を中学生が観ていて,このお芝居に心を動かされて,来年入部して事実を知ったら,その子はどう思うのかなとか考えてます。私だったら騙されたなって思います。

キツイ表現をしますが,観客を騙してまで発表したかった深志の気持ちが,どうしてもわからないのです。

こういった経緯に至った理由はいろいろあるかもしれませんが,私は理由を聞きに芸術館に行ったのではありません。純粋に芝居を観に行ったんです。パンフレットと見せてくれるお芝居,それが全てのはずです。

私にとって松本深志高校は,知的な権威です。よりにもよってその深志がと思うと,非常に残念でなりません。もちろんこんなことどこにもしてほしくないですが,でもよりにもよってって感じです。


大人はなんでこれにGOサイン出したかなとか,部員の皆さんはどう思ってるのかなとか,気になることはたくさんありますが,このへんにしておきます。

このブログで何度か書いていますが,私は中学生の時に顧問が著作権を無視して,演劇部作として既成脚本を上演しようとしていたことに耐えられず退部したニンゲンなので,過剰に反応していると自分でも思います。

直接評価されるのは大人ではなく,あのお芝居を演じた生徒さん達であり,あのお芝居を書いたことになっている生徒さんなので,彼・彼女の不利益にはなりたくないなと思いつつ,でも書かずにもいられませんでした。

もしこの記事があることで何かしらの支障がありましたら,この記事にコメントをつけていただくか,私の雑記のブログ(papillon*)をPC表示したときに右側に出るメールフォームからご連絡ください。よろしくお願い致します。

カサハラリカ

第30回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2015~ 長野県木曽青峰高校演劇部『一人ぼっちの南吉か~新美南吉の作品群による上演脚本~』

(中信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@まつもと市民芸術館主ホール

作:日下部英司
出演:長野県木曽青峰高校演劇部

今年,中信地区の文化祭4校にお邪魔しましたが,木曽青峰は唯一文化祭と同じ演目。むかーし蟻高がやっていたのを観たことがある『南吉』。文化祭のときは,蟻高初演時の記憶を手繰り寄せながら拝見しました。

そう。文化祭から2ヵ月経っているから,どんなふうに成長したかなーって楽しみにしてました。

が!

…個人の好みですが,文化祭公演の方が良かったかもしれない。特に衣装…!
講評で講師の先生が「素っ裸」と表現されていました。私が今まで観てきた日下部先生作品のこういう衣装を見る度に感じていた(ヒャッッ!!)という感覚(笑)をうまーく先生が表してくださった…!なんかやっぱり,ぴたぴただと,想像の余地がなくなっちゃうというか。私,マツコ・デラックスはあのシルエットがより魅惑的な感じを際立たせていると思っているので,前回の人物1役の方のデニムシャツとかがよかったなーと思いました。あと,人物2の方が出てきたときは,昨年の『砂漠の情熱』のエレーヌさん再来かと思ってしましました。笑 前回のオレンジニット,よかったのに!なぜ!パネルがオレンジっぽいから!?(>ロ<)とにかく前回良かっただけにもったいなーーーーい!
…と,思いました。

あとやっぱりこの脚本ってどういうテンションでやるかで仕上がりがかなり違ってくるだろうな~と改めて思いました。
文化祭公演は全体を通してしっとり目で,静か…。怒っていても,静か…。そんな感じだったんですが,それは皆さんがまだ1年生で,高校演劇を始めて日が浅いからかなと思っていたのです。
でもそこから2ヵ月経って,そこまで激しくお芝居に変化があったかと言われると,うううーんという感じでした。静かで寂しい感じがする脚本ではあると思うんですが,本当に全部同じトーンのお芝居だったような気がして残念です。表情とか,特に目とか,まゆとか,口元とか,そういったところでも意思が見えるようなお芝居ができると,表現の幅がもっと広がるだろうなーっと思います。今回のキャストさんは皆さん1年生さんらしいので,これからの伸びに期待です。(安直かもしれないけど,次は真逆の明るい本とかやってみたら,すごい振れそうですね…。)

あ。そうそう。今回特に印象的だったのが,照明でした!月夜の晩に,ごんが兵十のあとをついていくところ。あそこの色がとってもきれいで,本当に月の光のようでした。地区の照明を見ていて,ここまで自然光っぽい光に出会わなかった気がするので,さすがだなぁと思いました。(朝なのに夕陽っぽいホリゾントとか,やたら青々とした朝を表すホリゾントとか,そういうのを見てぬーんと思っていたので…。)

そして。一人ぼっちって難しい感覚だなぁと,改めてこの作品を観て思います。
こっちとしては私がいるじゃないのと思っても,相手がシャットダウンしてしまったらなかなか外と繋がりにくいというか。だからどんなにみな子さんが関わっても,一人ぼっち×2人だったのかな。

でもって一人ぼっちって感覚,この作品ってもともと一人でスタートしてるようなものだから,なかなかお客さんと共有しにくいような気がしなくもないです。(蟻高の『君に想う夏』なんかも,一人ぼっちはやだーって言っていたけど,あれは団体から個になってしまった過程が描かれているからわかる気もするのだけど,こっちはもともと一人だからな…。うまく言えないけど。膨らみにくい感じ。)

少人数で,しかもキャストが1年生だけって大変だろうなーと思いますが,丁寧に演じているのはとっても好感持てました。ぜひいろんな作品に出会って,木曽青峰の幅を広げていってほしいなと思います。
木曽青峰の皆さん,お疲れさまでしたー。

第30回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2015~ 長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部『木の葉に書いた歌』

(中信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@まつもと市民芸術館主ホール

作:郷原玲
出演:長野県松本美須々ヶ丘高校演劇部

昨年中信地区に新たな風を巻き起こした郷原先生。美須々に異動されて2年。先月はサマフェスにも行っている。昨年は1年生だけだったけど,今年は1,2年生の2学年体制になっている!
→つまり今年は超気合い入れた作品を持ってくる!!!

と思っていましたので,私が個人的に気になる3校のうちの最後はここでした(美須々への思いを綴った記事はこちら)。
文化祭公演を観た方のTwitterを拝見していたのですが,それによると同時多発の超長いせりふがあって,それがすごいらしい。のです。
でも,始まったらこのことは忘れてしまって,該当シーンに入って(あっ,そういえば!)ってなりました…。なんてことだ私の記憶よ…。

やー。気合い,パンフレットからも見えました。だって【上演にあたって】が

“2015年,節目の年に思いを込めた物語をお送りします。”

のひとこと。これに全て詰まってるじゃないですか。

なんか,観終わったあと,一緒に観たひとと話したんですけど,「小川先生がこっちから45度で切ったら,郷原先生は反対側の45度から切ってくるひとだね」っていうことでまとまりました。うまく例えられているのか,そして第三者に伝わっているのかイマイチわからないですが,でも我々はそう思いました。やっぱり伝統とかなんとかじゃなくて,「“それ”を食べたらそう育つ」というか。扱う題材は違っても,実験方法は同じというか。そんな感じ。
(これは小川先生がバリバリ顧問だった時代に他校の生徒だったOBOGの一意見です。そんな感じでさらっと流してください…。私達もモノを見るときはどうしても,その他校のレンズを通してになってしまいます…。)

そして,郷原先生がやりたいことを美須々でも始めたぞっという感じがしました。多分昨年は1年生の部員さん4人でなんとかあれを作った!という状態だったと思うんですが,部員も増えたし当時の1年生も経験を積んだし,やりたいことやってるなって。出だしから,昨年の長野県茅野高校の『夜長姫と耳男』を思い出しました。雰囲気似てました。ああいう感じがお好きなのかな…。
でもって美須々もアタマから踊ってました。前日の豊科もそうでしたが,朝イチから踊るってすごいわ…。音と動きとすごい合ってて,おぉっと思いました。

私は昨年美須々の『B面セレナーデ純情奇譚』を観た時に,(このひとたち普通にせりふを出すことってできるんだろうか…)と思っちゃったんですが,今回もおんなじような喋り方だったので,その道を極めると決めたのかなと受け取ることにしました。ある意味すんごい癖のある喋り方(特に章太郎くん)だけど,しっとりしたシーンではきちんとストレートに出せているからいいのかな。でももしそれが癖というか,それしか出せなくなってしまったらとてももったいないなと思います。

朝イチって会場はあったまってないし,発表する側も顔や体が動かしづらいので大変な枠だなーと常々思っているのですが,そういうコンディション+↑に書いた喋り方だったので,お芝居のスピードについていくのが大変でした。たまに聞き取れないせりふもあったけど,それは勢いで押していたので(高校生若いな…)とも思いました。
そう。勢いはある。日本があれよあれよと戦争の道を突き進んでいくように,章太郎くんをめぐる世界も,もんのすごいスピードで動いている。それはすごく伝わってきたのですが,中身が私のところまで落ちてきたかというと,必ずしもそうとは言えないかも。んー。なんだろう。なぜなんだろう。んんんー。ちょっとまだうまく言えないです。でも,きっと流れていたから,前半もっと笑えるであろう箇所(さむらごーちさんとか)は,耳で聞こえて意味を理解できる前に次のせりふが出てしまって笑えなかったのかななんて思います。本当はもっと笑えるお芝居なんだろうと思います。

村上春樹の作品っていろいろ選択肢はあると思うんですが,「海辺のカフカ」かーっと。
私はハルキニストではないのですが,なんかこの作品てエディプスコンプレックスとか精神分析的な要素が盛りだくさんで,比喩を読み解けばわかる作品なのかと言うと必ずしもそうじゃないのかなと思ったりもするんです…よね。なんか余計な部分までくっついてきてしまう気がして,なんで「カフカ」なのかなという感じはしました。でもこれもきっと郷原先生の趣味なので,なんとも言えませんけど…。

あとCanCamね!笑 まさかあの舞台(まつもと市民芸術館)にCanCamが出てくるとはね!笑
私も大学生のときに愛読していたものです…。←

そうそう。村上春樹もCanCamも,現代の日本を引っ張るモノの象徴として出てきていると思うんですが,あれ見た時に(そっかー。CanCamって世の中引っ張る雑誌なんだー)って思いました。笑
それこそエビちゃんとか山田優がこの雑誌にいた頃は間違いなく赤文字系雑誌でナンバーワンだったと思うんですけど,今ってどうなんですかね。あの頃のエビちゃんに匹敵するモデルがいるとは思えないし,「ファッション雑誌といえば○○」ってぱっと言えない時代な気がします。

(……という訳で調べてみました!一般社団法人日本雑誌協会によると,2015年4~6月の女性ヤング誌のファッション・総合部門では一番発行されているのが「ViVi」でした。ちなみにカジュアル部門では「non・no」,女性ティーンズ誌のティーンズ総合部門だと「SEVENTEEN」,女性ヤングアダルト誌のファッション総合部門だと「MORE」のようです。納得~。)

なので,演じる高校生からするとCanCamって少し遠い存在に思える気がしました。女子高生にとって不動のSEVENTEENあたりがちょうど良いのではないかとも思ったりしましたが,そこも郷原先生の趣味だと思うので,そっとしたいと思います。←
(ちなみに私は現在AneCanで落ち着いています。←←←)

はい。メディアの話は置いておいて…。
そうそう。期待していた同時多発のあれ。
なんか,私はてっきり2人組くらいの会話が2箇所で同時並行してるシーンが出てくるのかと思いきや,全然違いました!ラスト10分がとにかくスゴイ!群唱と言うのですね!またひとつ賢くなりました。笑
あれって大勢で言えば良いのかってもんでもなくて,やっぱり違う声帯同士の組み合わせだから,響きが大事だと思うんです。今年関東大会&全国大会で観た神大附属の『恋文』なんかもこの群唱で始まるけど,私あの群唱はあんまりすーっと聞けなくて,むむむーんと思っていたのです。
でも!美須々超キレイに聞こえるんですが!すごいぞ美須々!なんか,昔長野県田川高校がやっていた『神々の国の首都』の出だしや心中シーンを思い出しました。ここは本当に,女子高生の圧がすごいシーンでした…。戦場では一切の比喩は意味を持たないというあたりとか,圧巻でした。そうか。比喩が使えるということは,心や表現や世の中が豊かな証拠なのですね。

本当にいろんな要素がわわわーっと出てきたので,観終わって数日経っている今も消化不良でうぅぅとなっています。
一瞬一瞬はわかるのだけど,つなげたときに「はて?」という感じになっちゃうのは,私のアタマの回転が足りないのだと思います。すごいのは,力が入っているのはわかるのだけど。状況も追えるのだけど。なんだろう。全然ジャンルは違うけど,去年の蟻高に近い感覚を味わっています…。
私はひとの力動が見たいニンゲンなので,シチュエーションで面白くても,やっぱりそこが見たいので,つなげたときに「はて?」ってなっちゃうのかも。一瞬一瞬の画は狙いがあって,それもわかるし,きれいなのだけど。ラストの画とか。

例えば狐の嫁入りは何かなとか。たとえや擬人化で表現に彩があった時代の日本の一部なのかなとか。ニンゲンが化かされる狐の仲間になっていく様子かなとか。オープニングの狐たちのあれは,私達を化かそうとしてるのかなとか。
タイトルも,きれいなタイトルなんだけど,でも何だろうなとか。作中に出てきたいろんな要素を集約したものがタイトルなのだとしたら,まだまだ作品の世界には浸れていないんだろうと思います。
歌も最初出てくるけど,歌ってるのは葉子さんじゃないしなとか。顔を出すってそういうことだと思うので。(でも歌声はとてもきれいでうっとりだった…。よくアカペラで歌えるな~と関心してしまう…。)

そうそう。あと,「言葉が独り歩きしてる」ってせりふが出てくるシーンがあると思うのですが,ただ勝手に載ってるだけで,もう少しその意味が本人の意図以上に援用されているあたりが見れるともっと良かったなーと思います。本人の“そんなつもりじゃ”感とか,どうして個人に宛てた手紙の一部が世に出ているんだという戸惑いなんかがあんまり見えなくて,もったいないなと感じました。

最後に舞台!やー。相変わらず手が込んでいてすごかった…。センターから観たので,葉子さんのベッドの構造が気になりました。どうなってるんだろう~。
奥の方の葉っぱとか,昨年の作品の使いまわしなのかな。ちゃんと道具を使い切っていていいなーとも思いました(・ω・)やっぱり,一作のために全て揃えて終わったらおしまいというのは高校演劇だとかなり大変だと思うので。シャッと開くカーテンも素敵でした。

言葉をめぐるお芝居で,代筆と代筆に挟まれて,世の中のうねりに巻きこまれていく…といういろーんな要素があるもりもりもりだくさんなお芝居だったので,もっとウォーミングアップしてから見るべきでした!やっぱり高校生の皆さんは派手なものが好きみたいなので,終演後の感じからすると(すごかったんだろうなこの舞台)と思いましたが,ほぼアラサーのカサハラさんはまだ飲み込めず,咀嚼はこれからです。が,美須々の本気はよーく伝わってくる舞台でした。飲み込んでないけどおなかいっぱいになる…。そんな舞台でした。
美須々の皆さん,お疲れさまでしたー。

+++

(2015.9.23追記)

はっ!書こうと思ったこと書きそびれた!

その①
章太郎くんのせりふで,「書くことが生きること」みたいなせりふがあったと思うんですが,そこは私もわかるような気がしました。
私の,お芝居とか映画の感想や日々のあれこれを文字にすることもまたそうで。川のように流れる日々にピンを止めておきたいと思って,書くことを続けています。それを,このせりふから思い出しました。

その②
その章太郎くんの衣装がすごいなと思って。
舞台で帽子かぶり続けるって,顔が見えなくなってしまうリスクと天秤にかけると結構な決断だと思うんですよね。
今回センターから観たので比較的章太郎くんの表情はよく観えたんですが,これが上手とか下手とか,上の方の席とかだと情報量は減るだろうなーと思うのです。思い切ったなーって感じました。


(2015.9.26追記)

さらに思い出したことがあるのでつけたし。

後半で,看護婦と編集者?が同一人物だということが決定的になったとこで,(ん?)と思いました。
というのも,このお芝居は「そのほか」のひとたちがいろんな役でコロコロ入れ替わって出てくるところが面白いと思うんですが,看護婦と編集者?をやっていた方はさらに他の役もやっていたと思うんです。麦わら帽子の女の子とか。それは,「同じひとが演じているけど別人格」という舞台の暗黙のルールが通用していたからできたと思うんですが,その2つ(看護婦と編集者?)だけルールから外れていて,なんかすっきりしないなと思いました。ずるいというかなんというか。なんて言えばいいんだろうか。ずるいというか…そうなっちゃうと,(え,じゃあ他のひとは?)ってなるんです。

なのでそこを成立させたいのであれば,看護婦と編集者?役の方はそこだけに絞ってやった方が良いんじゃないかなと思ったりしました。冒頭のダンスとかラストの兵士とかのコロス的な役(ある意味人格がない役)は別に良いと思うんですが,あの2役にプラスして人格のある役も兼ねちゃうと,なんだかな…という印象です。(2役だけにしちゃえば,他のいろんな役をやってるひとと紛れて,パッと見いろんな役をやってる「そのほか」のひとに見えるけど,後で実は違いましたって観客を裏切れるような。気がする。)

文章がすっきりしませんが,ニュアンスが伝わると嬉しいです…。

Saturday, September 19, 2015

第30回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2015~ 長野県南安曇農業高校演劇部『勇者の名前は犠牲になったのだ』

(中信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@まつもと市民芸術館主ホール

作:ととのえ
出演:長野県南安曇農業高校演劇部

昨年観た中信地区大会で,私の中の裏のマイベストがここ南農でした。オカマのマリさんのビジュアルがすっごいインパクトあって,県大会の会場でここの生徒さん(演劇部ではない)が花を売ってたところに「すごくよかったのでよろしくお伝えください」と伝言を頼んでしまったくらい…。←だいぶあやしいひと

その南農が今年は何をやってくれるのか,私はワクワクしていました。タイトルからして二次元感たっぷりだったので,どっちに転ぶかなとも思っていました。笑

なんか,今回も斜め上に行ったなという感じ…!

2次元なんだけど,その2次元を俯瞰して見ている作品の感じがとても良かったです。笑
完全に入り込んじゃうと,今年の北信の中野西高校『恋夏トリップ~Child→Adult~』みたいになっちゃってこっちがこそばゆくなってしまうところでしたが,そんなことなくて安心でした。

講師の先生も仰ってましたが,衣装とかかなりそれっぽくて面白かったです。こういうお芝居してくるカンパニーって,本人達がそういう格好したかっただけなんじゃないの?と思ってしまう場合もあるんですが,南農は…もしかしたらそれもあるかもしれないんですが,その自分の格好に溺れることなくお芝居が成立していたのでスゴイと思いました…。

ある意味ぶっ飛んでるのをひょいひょいっとこなしてしまうのでぐいぐい観てしまったんですが,暗転のときに明らかにせりふでない声が聞こえてきたり,せりふをカバーし合ってるようなふうにも見える場面があって,途中は若干ハラハラしました。笑 やっぱりそういうところが少しでも見えてしまうとお客としては我に返ってしまうというか,世界に入り込めなくなってしまうので,稽古を重ねるって大事なんだろうなと思いました。とりあえずきちんと幕が降りて安心です。笑

いろいろ面白ポイントはあったのですが,一番ぶはっと来たのはやっぱり王様…。ああいう,自分の体型を味方につける覚悟があるってすごいですね…。見た目だけで面白いって高校演劇では貴重だと思うので,それだけで拍手です。あと魔法使いの見た目と,結構な棒読みも良かった…。

南農のお芝居は今年で2本目ですが,なんとなくみなさんの趣味がわかったような気がします。このままぜひ,南農さんの道を突き進んでほしいなと思います!
南農の皆さん,お疲れさまでしたー。

第30回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2015~ 長野県塩尻志学館高校演劇部『ホッカイロ女』

(中信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@まつもと市民芸術館主ホール

作:たかのけんじ
出演:長野県塩尻志学館高校演劇部

おかえりなさいたかの先生~!(´∇`)ノシ
私は中信地区の演目を知ってから,この日この時間を楽しみにしていました…!そして蟻高に続き,今回特に気になる3校のうちの一つでした(志学館への思いはこちらの記事で)。

そう。↑の記事で,「シリアスではなさそう…」と書いていたんですが,4分の1くらい裏切られました。さすがけんじたかの…。笑

幕が上がる直前まで,緞帳の向こうから ザワザワ… ザザザ… という音がしていて何なんだろうと思っていました…。気になったのは私だけではないはず…。ロスコ―かな。ロスコ―たいてる音かななんて思いました。が。違いました。

開演して,びっくり。(゜д゜)

ほ・ぼ・さ・ら・ぶ・た・い!!!

幕の間から漏れ出ていた赤い光はホリゾントの色。
ザワザワ言ってたのは舞台奥のゴミ袋の音。
シャンソンのような曲が流れ,しばらく待っていると…人が出てきた!しかもなんか生まれた感じ!

と思ったら上から袖から大道具が出てくる出てくる!
なんだか,昨年志学館も出ていた塩尻市民演劇フェスティバルで田川がやっていた『審査員』を思い出しました。あれも最初サラ舞台から始まって,ちょっとすると幕とか道具とかがバトンで降りて来たり袖から机が出てきたりしてセットが作られていったのでした…。

今回の志学館はパネルが白黒だったり奥の扉の絵が抽象的だけど質感が素敵だったり(ネオンの「BAR」も素敵だった),今まで観てきたたかのけんじ作品にはない感じでしたが,センスはさすが…と思いました。
というか講評で聞いて私もたまげたのですが,パネルは切り絵なんですね。どひゃー。さすが志学館というか…。いろんな才能をお持ちの方が集まっている学校だと思うので,たかの先生の世界を立ち上げることができるんだろうなぁと思います。

さてお芝居の中身へ…。
パンフレットにすんごいたくさん(9人)役名が出ていたので,にぎやかな作品になるのかと思いきや!
まさかのほぼ二人芝居でした。
え!出だしのあのダンスとかとっても素敵だったのに!
講師の先生が仰ってたように,作品が始まるとしゅしゅしゅーっとしぼんでしまった感が否めない!

そうそう。ホッカイロ女に対して周りの聴衆が固まってて,せっかくみんな個性的で良い格好してるのに見えなくて,もったいなーいと思ってしまいました。街のひと,一人ひとりちゃんと職業が見えて,衣装のこだわりを感じました。だからこそちゃんと見たかったなぁ。

なんだか,気づいたらホッカイロ女と女(女1と2で良いのかしら…?)になっていて,あれれいつの間に世界がそんなふうになってたの!?と思っちゃいました。ちょっと違うこと考えていたら,まるで台本のページが飛んだような状態に…!油断したら展開が早かったです。

そして気づいたら,あれ。この構図。なんか観たことあるぞ。
2002,03年に美須々でやってた『少女監禁』ってこんな感じじゃなかったですか…?(´_`)?
たかの先生…2010年代版の『少女監禁』なんですかこれは…!?と,悶々と考えてしまいました。
男のDVとか超こわいよーオロローン!ホッカイロ女の泣く声が悲痛だよオロローン!

しかも観てると,ホッカイロ女のママは女に見えてしかたないのですが,実際どうなのでしょう…。考える余地があるようでないようで,なんだかストーリーとしては膨らみ切れていない気がしました。
枠としては1時間あるけど,気づいたら長いことホッカイロ女と女しか出てこなくて,(もしかしてこれで終わるのかしら)と思ったら本当に終わってしまいました。40分で。うーーーー。なんだか消化不良です。1時間版にできるならしてもらって,もう一回観たいなぁ。

そういえば要所要所でシャンソンが使われてて,とてもオシャレというか素敵な時間でした。しかもしっかり聞かせていて,その間の時間の進み方なんかも他と違って,面白かったです。
そのうちの一曲が「愛の賛歌」だったんですが,私あの曲って男女の曲だと思って今まで聞いていたんです。なのであそこにかかったときに(えぇ!?)と思ったんですが,ホッカイロ女の心情だと思って聞くとまた違うのかも。世間にどう見られても,ママに見つけてもらえるならそれでいい。みたいな。

あ。そして今の文章打ってて観てた時に感じたことを思い出しましたが,ホッカイロ女の,感覚というのかな。そういうのが,アンバランスな気がして。
ホームレスみたいなおじいちゃんにお金もらえるなら何されてもという風に考えてる(←ホッカイロ女曰く,今までそういう人もいたし)その一方で,ママのこととなるとなんだかとてもピュアで,妙に現実と幻想が混ざりまくってるひとだなぁという印象がありました。そういう意味で,アンバランス。
でもきっとベースは健康的なひとなんだろうなという感じも。私はお仕事で施設にいらっしゃるお子さんに年何回かお会いする機会がありますが,やっぱり実際に被虐のお子さんと,生まれてすぐ親と離されているお子さんでは,傷つき具合が違うなぁということを感じます。ホッカイロ女は生後すぐに捨てられてるので,そこはアレですが変に傷ついてないので,あのベースを保てたんだろうなぁなんてことも思いました。

ひっさびさ(2006年の松本美須々ヶ丘『スローグッドバイ』以来…?)の創作と思うと,感覚とかそういうものを取り戻すのも大変だったんだろうなーと思います。なので40分であっても,またたかの先生の作品を拝見できて感激でした。かつて中信で創作を発表されていた先生方が他の地区や管理職に異動(昇進?)されてしまっても,こうして同じ地区で同じ先生の作品を拝めて,とても嬉しいです。また機会があればぜひ拝見したいです!
そういえばパンフレットにはさまってましたが,10月末にレザンで公演打つんですね…。モチベーション高すぎて,さすがですって感じです。笑 中ホールってチョイスも素敵です。
…っていうところまで打って,もしかしたら10月末の公演,観に行けるかもしれないことに気づいたので,ちょっと予定を調整してみたいと思います!←結構本気

ドリーミン☆なイメージがあった志学館。たかの先生でちょっと刷新です。どんなカンパニーになっていくのかな。これから楽しみです。
志学館の皆さん,お疲れさまでしたー。


(余談。)

大会が終わって,帰りの道中,母に感想を話していたのです。

<前美須々にいた先生が今志学館にいるんだよー>って言ったら,「たかのなんとか先生?」って,私の友達の名前とか全然覚えてくれない母がたかの先生の名前出してたんで,びびりました。

しかも「舞台装置にベッドとかあったよね」って,2004年の『海を流れる河』のことを話し始め,さらにびびりました。

11年も前の舞台のことを,他校の保護者が覚えてますよたかの先生ぇー!)


(とかいろいろ言ってますが,私たかの先生と一回もお話したことありません。機会があったらお茶とかしてみたいです。←


+++

(2015.9.27追記。)

すみません。シルバーウィーク開けたらレザン公演の翌日に仕事が入ってました。行けない…。無念…。

第30回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2015~ 長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部『君に想う夏』

(中信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@まつもと市民芸術館主ホール

作:髙山拓海・長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部
出演:長野県松本蟻ヶ崎高校演劇部

今年の地区大会で,特に気になる3校のうちの一つだった蟻高(気になる3校をまとめた記事はこっち)。文化祭公演『南洋記』を観た時,もしこれを大会でやったら相手がどう出てきても間違いなく県に行くだろうなーと思ったものです。
そして3年生の皆さんが引退した時点で,部員全体の半分がいなくなってしまったことになるので,これは部の雰囲気とかバランスが大きく変わるだろうなと思っていたんです。
新体制になった蟻高がどんなお芝居を打ってくるのか,楽しみにしていたんです。

が。

なんか…

変わると思っていたらむしろ極まっていて…。

初日午後イチのこの枠で,会場がこの学校に持っていかれたのがよくわかりました。
幕が降りた瞬間の,この客席の温度を,見せられるものなら蟻高のひとたちに見せたいと思いました。(音響さんが見ているだろうから伝えていただきたい。笑)

同時に,(やっぱ“それ”食べて育ってきたよね。)って思いました。

2日目の最後の講評で,講師の先生が「伝統的」と仰っていましたが,私からすると伝統というよりは「それ食べてその栄養を吸収したらそう育つよね」という感じです。
例えば昨年美須々は郷原先生nizeしたなと思ったし,ドリーミンなお芝居をやる印象のあった志学館は今年たかの先生色を出し始めたように見えたし。
顧問の先生の異動ひとつで,部の雰囲気も作風も大きく変わってしまう高校演劇。なのでそれは果たして伝統なのか?と言われると,ちょっと違うような気がします。でもぴったりくるうまい言葉が見つからない…。伝統というゆるぎないDNAっぽいものより,消化していつか消える栄養のようなもの。なのかもしれません。

今年の蟻高の“それ”は,現在木曽青峰にいらっしゃる日下部先生(と,その作品)。
作者の生徒さんは,本当にこの先生のことをリスペクトされていらっしゃるんだろうなーということが,よーく伝わってきました。先生の作品を観て,脚本も読んで,実際に演じて,いろいろ要素を吸収されてきたんだろうなと。作者のご本人がどこまで意識しているかは別として,観ている側からはそう感じました。一人何役かやるところとか,お芝居の本編+個人の回想で構成されているところとか,舞台装置の組み方とか。そんなところからです。それがいい悪いではなく。

そして“それ”を吸収して栄養に換えた今回の蟻ヶ崎は作品自体も骨太で,それに耐えうる役者さんの力が揃っていて,とにかく見応えありました。ちゃんと一つ一つの演出に意図が見えて,その演出を役者さんがしっかりモノにしていて。先日観た『NINAGAWA・マクベス』のパンフレットの言葉を借りると,「ノックアウト」でした。

力はあるだろうに,なぜかイマイチ客席まで届いてこない。そんな印象が去年の『Nippon, cha cha cha!』にありました。何でなんだろうなーと思っていたんですが,いろいろ考えた結果,感情が見えにくいからかなということでまとまりました(自分の中で)。その一瞬一瞬の感情は見えるんですが,作品全体としてつなげた時になんだかぶつ切りな気がして,ストーリーは追えたけど!はて!という印象がしなくもなかったのです。
なので,その力あるひとたちが今回感情をぶつけてきたので,かなり迫ってくるものがありました。あぁすごかった。

マイムのお芝居も,一つ一つの所作も,体がとてもきれい。きれいは正義。見入っちゃいました。
ストップモーションも美しくて,こういうのって演劇ならではだよなぁとしみじみ思ったり。体をきちっとトレーニングしていることが,一見簡単に見えるお芝居からしっかり伝わってきました。ベースの力って大事。
そうそう。ベースで思い出しました。この時点で地区大会4校目ですが,登場人物全員のせりふを安心して聞けたのってこの学校が初めてだったかもしれません。「聞き取る」必要がなくて,ちゃんと聞こえてくる。そして声もクリア。

あと,選曲もすごい好みでした。ラフマニノフとか,一瞬浅田真央がよぎりましたけど。笑
特に中盤ちょっと過ぎたあたりの,齊藤・吉野のシーン→暗転→貴子のモノローグのところで掛かっていた曲にかなりぐっときました。ちゃんと狙って掛けてて,暗転でいいところが来る!しかも音も上がる!とか,やられたーってなります。笑 本当にやられたので,思わず蟻高の生徒さんに使用している曲を伺ってしまいました。教えてくださってありがとうございました…(;o;)

そうそう。昨年特に蟻高のお芝居を拝見したので,どなたが何年生さんかだいたいわかってしまうのですが,今年の夏までスタッフさんだった方が大会ではキャストさんで,「わぁ♥」ってなりました。笑
しかもうまい…!なんてオールマイティな部員さんなの!すごいわ蟻高…。
そして文化祭公演できゅーんときた,今回で言う千里役の方が,また演技の幅が広くてびっくりでした…。千里さんとして出てきたときは(衣装が開襟じゃない…)と思っていたんですが,二役だったからなのですね…。納得…。
(主役の方は本来ヒロインなのに男性役もできてしまうから,ホント幅が…広い…。)

文化祭の『南洋記』も戦争モノだったので,よくこのどシリアスに長い間向き合っていられるなーと思ってしまいました。私だったら具合悪くなりそう。笑
そう。本当にどシリアスだけど,ひまわりがあるから救われてる感ありますよね…。いつでもそこにあって。吉野の心情がポストとひまわりにうまく表れていたなぁと思います。

これを7人で仕上げたって,本当すごいですね。それしか言えないです。薄っぺらくてごめんなさい。
あ。でも,そうだ。思い出した。吉野が空中を彷徨って,影に押されるシーンで「もう一人は嫌だ!」みたいなせりふがあったと思うのですが,あれは『南洋記』の「俺は虎にはならない!」のせりふを聞いたときと似た気持ちになりました。
そうなんだけど…そうだと思うんだけど…なんだか言葉が安直というか,聞いて拍子抜けしちゃうというか。(えっ!?)みたいな感じで。そこでそれ言いますか!?という感じがしなくもなかったです。なんだろう。一人が嫌だったの?って感じで。うーん。ここは唯一もやもやしているところです。

いろいろずるずる書きましたが,今まで蟻高(特に2年生)の皆さんが吸って,取り入れて,自分の力に換えてきたものをこの舞台で具現化できたんだろうなーという作品でした。拝見できて満足です。もともと期待していましたが,予想以上でした。きちんと評価されてほしい作品です。
蟻高の皆さん,お疲れさまでしたー。

+++

(2015.9.23追記)

そうそう大事なこと書き忘れました。吉野が千里に告白した後のガッツポーズが超かわいいんですけど。観てて ふふっ てなっちゃいました。笑 微笑ましいシーンですね…(*´艸`*)


(2015.10.26追記)

あ。すみません。ずっと書き忘れてたこと思い出しました。唯一,唯一惜しいなーと思ったのが,平台のケコミ。確か,置いてあるだけで特に何もされていなかったかと思うんですが,私持ち手が堂々と見えてるのは好きじゃないんです。いかにも舞台装置,みたいな感じがしちゃって。
芸術館は床も平台も黒だったのでまだ目立たなかったと思うんですが(だから特に手を加えてなかったのかも),他会場になると白い床,白い平台になると思うので,ケコミが付くと締まって見えていいだろうなぁと思いました。


(2015.11.23追記)
またまたずっと付け足そうかどうしようか思ってたこと,付け足します。笑
このお芝居観てたら,この年のお盆に観た映画『出口のない海』を思い出しました。この映画は大学生が海軍に入隊して兵隊として生きる心の揺れを描いている作品なのだけど,人間魚雷「回天」が出てくるのです。母艦から切り離されたら敵か海面かどこかに突っ込むしか道はない兵器,回天。それの陸版もあったのですね…と,今回このお芝居観て思いました。…っていう,本当にそれだけの話。オチも何もなくてすみません…。

第30回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2015~ 長野県田川高校演劇部『恋愛戯曲』

(中信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@まつもと市民芸術館主ホール

作:鴻上尚史
潤色:長野県田川高校
出演:長野県田川高校演劇部

文化祭の『もっと泣いてよフラッパー』に続く観劇。文化祭はまさかの2時間弱のお芝居で,やりたいことはわかるけど…と思ってしまったのでした。今回は1時間の規定。どんな作品を持ってくるのかなと思っていたんですが,鴻上さん!中信では2000年代前半に豊科高校がやっていたけど,田川が鴻上さんかぁ…!どんな作品になるのかしら…と思って楽しみにしていました。

観終わって思ったこと…。

(カット,大変だったのかなぁ…。)ということ。

すごい面白い話だと思うんです。作家とプロデューサーが恋に落ちるまで。
でも,ストーリーはギリギリ追えるんですが,登場人物の内面まで追えたかなぁと思うと,そこまではいけなかったかも…。うーん。何だろう。何でそうなったんだろう。単にカットの仕方の問題なのか,キャストさんのお芝居の問題なのか,演出の問題なのか…。うーん,多分どれもあるので単純には「これ!」って言えませんが,きっともっと面白い作品なんだろうなとは思うんです。

カットの仕方とかはさすがにわからないので,今回観たお芝居のことを考えると…。
次元?次元の移り変わりが,もう少しスマートにできたらなーって思いました。劇中劇やさらにもう一段階上の劇中劇が出てきますが,そこの切り替わりにいろいろと手間がかかっているように見えました。そしてその際切り替わりの効果音を使っているので,暗転中は無音になってしまって,もったいない時間が流れていた感じ…。
例えばいっそのこと暗転にしないで→ビデオの巻き戻しや早送りのようにせかせかチャキチャキと動いて→ストップモーションを挟んで→カチンコの音でお芝居始める!とか。暗転の中で長いせりふが出てきたシーンがいくつかありましたが,実際体は動いていないのにせりふだけそれっぽく出していたりすると,個人的にはなんだか醒めちゃうというか…そんな感じもあったので。だったら見せちゃえばいいかなと思ったり思わなかったり。もっとスマートに切り替えられる気がするので,そこは演出さんの腕次第なのかな。

…と書いたんですが,今回も演出さんのお名前がなかったので皆さんで作ってきたのかなと推測しています…。
みんなで意見を出し合うのももちろん必要な作業だとは思うんですが,「じゃあ最終的にこうします」と舵を取るひとがいなければまとまりとしては薄くなっちゃうかなーと感じました。講師の方が舞台セットの階段のことをお話されていましたが,多分センターに固定のひとが一人いれば,(あ。動きづらそうだな)とか(あ。ここの演技見えないぞ)とか気づけるんじゃないかなと思います。ぜひ一度徹底的に裏に回る人を立てて,演出に専念する部員さんがいても良いんだろうなー。←実際の事情はわかりませんが…。

あとは衣装とかメイクの部分で,向井くんのネクタイの色と皆さんの前髪が気になりましたー。
なんか,遠目から見るとネクタイが黒っぽくてまるでお葬式だったので,そこは色に工夫があると良かったなーというところと,
室内なので皆さんスリッパなんですが,カパカパしちゃう人が多いように見えたので,スリッパと靴下?足?をもう少し固定できると動きやすかったのかなーというところと,
以前からそうですが前髪が下りてる方が多いので,まゆや目のお芝居が見えず残念だったなぁと思います。

でも今回音響にすごくこだわりを感じました。鳥の声とか雷,そういった音が大きめでおどろおどろしい感じが伝わってきました。ああいう時計の音って突然ボンボン鳴るから超驚きますよね…。わかります…。
舞台装置もシックな感じが素敵でした。真由美のドアは取っ手とかがもう少しこじゃれてても良いかなと思ったけど,全体的に落ち着いていたり,窓もあえての正方形で面白かったです。

間取りとかハコ自体を小さくしてもう一度練り直してみたら,コンパクトになってさらに面白い作品になりそうだなと思いました。60分できっちりまとめてきた田川なので,さらに次のステップへ進めるだろうなと感じています。
田川の皆さん,お疲れさまでしたー。

第30回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2015~ 長野県梓川高校演劇部『Leaving School』

(中信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@まつもと市民芸術館主ホール

作:阿部順
脚色:長野県梓川高校演劇部
出演:長野県梓川高校演劇部

ここも昨年(脚本選びが…!)と思った高校。そしてポンキッキの曲をやたら使っていたのは,最後にアレをかけたかったからなんだな~と思った高校!笑

そう。去年の登場人物は私とほぼ同世代のはずなのに,メンタルがまるで『千と千尋の神隠し』の千尋(小学生)のようで,ギャップを感じまくっていたのでした…。

あれから1年!梓川の伸びが見えた1時間でしたー!(;ω;)やっぱり作品選びって超超超大事!!!

全体を通しての感想は,脚本が乱暴…ということ(-ω-メ)
学校でできること,やっちゃいけないことがなんとなーくわかった大人になった今の私がこれを見ると,(そんなん学校でやらんがなー!)とツッコミを入れたい箇所がちらほら…。例えば「取り調べ」とか。やってることは取り調べっぽいものであっても,もっとマイルドな表現使いましょうよとか,保護者もいないのに退学届突き付けるってどういうことーとか,そもそも退学させる役割の先生って何者ーとか…。そういうハード面はすごい違和感が…。
でもちょっと悪い生徒とへっぽこな先生が心を通わせていく…みたいなソフト面はとっても素敵で,岡本が指導して石田のパフォーマンスが良くなっていくあたりは心のやりとりが見えたなーと思います。

メインの二人が魅力的だったので,脇の先生達も詰めるともっとよくなるんだろうなーと思います。清掃員?用務員?さんは何だか動きがふわふわしていて,なんとなく作業してたら取り調べの部屋が気になって聞き耳立てちゃったというよりは,取り調べの部屋をめがけて作業している感じに見えちゃったり。キャバクラに通いまくる男の先生も,もっと派手に嫌な感じを出して良いかなと思います。会議で寝ちゃうところももっとあからさまにしたり。たまご買いたい先生は歩き方とか面白かったな…。ああいう本気でわざとらしいやつ,嫌いじゃないです。笑

あと舞台装置のこと。私も平台で空間を仕切るのは良いなーと思ったんですが,扉から廊下までが若干狭そうなのが気になりました。パネルの人形足もあるし。もう少し動きやすい配置があるのかななんて思います。

あ。そうそう。体育祭?のアナウンスが素敵だった!あれ部員のどなたかが録ったんですか?それとも放送部とか別の方??声がキレイでいいですねー(´∇`)アナウンスにぴったり!
でもわざとなのか何なのか,終始淡々としていて,なんだかミスマッチな感じもしちゃいました。石田が転んだあたりとか。あそこって多分笑いが取れる場所なので,見えなくても石田の姿が想像できる,そんなアナウンスだともっと良かっただろうなーと思います。

そして最後は…昨年県大会で観た長野県坂城高校『158.9』(原題「151.8」)を思い出しました。石田はあれ見てなんて思うのかなぁ。余韻のある終わり方で素敵でした。

高校生がちゃんと高校を舞台に演じるのって実はムズカシイと思うので,頑張ったなーと思います。本当に去年と比べるとぐいーんと良くなっていて,部外者ながら嬉しいです。ぜひこの調子で良い作品に出会ってください!
梓川高校の皆さん,お疲れ様でしたー。

第30回中信地区高等学校演劇合同発表会~ゆめ舞台2015~ 長野県豊科高校演劇部『ごはんの時間2ぃ』

(中信地区高校演劇合同発表会パンフレットより)

@まつもと市民芸術館主ホール

作:青山一也
潤色:長野県豊科高校演劇部
出演:長野県豊科高校演劇部

昨年,脚本選びがもったいなかったなーと思っていた豊高。
今年は(個人的に)懐かしの『ごはんの時間2ぃ』!ちょうど10年前に松本松南高校(現・松本秀峰中等教育学校)がこの作品をやっていたのですが,お昼ごはんの時間の話…という感じ&感想とか書き残さなかったので,ぼんやーりした覚えしかなかったのです。
でも!青山一也といえば,昨年度から今年の夏にかけて長野県松川高校がやっていた『べいべー』を書いたひと!今はこのイメージがあったので,演目見て安心しました。

やっぱり作品を選ぶ時点で出来上がりの6,7割は決まるなーと思えました。昨年も出演されていた方がいらっしゃいましたが,輝き方が昨年と全然違う…!今の豊高に合ったお芝居なんだろうなと思いました。
でもって昨年の『道化師~Do you key see?~』でも,“(かつての)豊高はオープニングにインパクトがある学校というイメージだった”って書いてるんですが,今回それが戻ってきた感じ。
踊ってるー!キューピー3分間クッキングで踊ってるー!笑 初日の朝イチってすごい大変な枠だと思うんですが,その頑張りは伝わってきました…。きっとこれが県とか関東だったら,間違いなく手拍子が起きるんだろうな。

特に今回はキャスティングが素敵だなーと思いました。宇野くん役の方も吉田くん役の方も女の子だと思うんですが,体型とか髪型がうまくて,ちょっとおばかな男の子とちょっと何考えてるかわからないきもちわるい男の子に見えました!(ほめてる!)宇野くんが赤なのは正解だなーと思いました。あと吉田くんのツヤサラ髪にあのメガネっていいなぁ…。笑

あ。キャスティングから見た目の話になってしまったのでそのまま…。あのピンクカーディガンのツインテールちゃんも見た目素敵だったなぁ~。(でも女子のみなさんのリボンは長かったような。途中でほどけちゃってるように見えた子もいたんだけど,気のせいなのかな。結び直せばいいじゃんと思ってしまった…。)

見た目で良かったとこもありましたが,特に残念なところがありました!それは靴下!
個人的に靴下の長さは時代を映していると思うのです。2010年代半ばの今は,短いのがトレンド。私は地元に帰って松商学園の生徒さんと街ですれ違うたび,靴下の丈を見ては時代の流れを感じています…。
で,カレンダーにこれでもかとでっかく書かれて主張してた,作品の舞台である2001年の靴下といえば,ハイソの時代!ハイソックスの時代なのです!特に紺色!!!笑 それと同じくらいルーズソックスがまだ全盛期。白くて短い靴下なんてダサかったのです。それを思うと,皆さん気持ち靴下が短いかなと思いました…。ルーズソックスの子もいたけど,あれはとても中途半端はボリュームだったかも…。(え?たかが靴下?)って思うかもしれませんが,ちょっと昔をあえて選択するならば,もうちょっと細かい部分にこだわりが見えるとさらに良かったなーと思います。

さてさて中身の話を…。
私,青山一也作品は『べいべー』しか観たことがないのですが,改めて『ごはんの…』を観ると『べいべー』っぽい要素がたくさん出てきますね!ジェンダーとか,将来の職業とか。どう生きるかということが。しかもここにも「さくらちゃん」が出てくるし。青山先生はどっちを先に書いたのかわかりませんが,きっとこの作家の中では気になる要素なんだろうなと作品を観ていて思いました。

あと,いきなりマイクが出てきて歌っちゃうからびっくり!しかも歌えてるからびっくり!笑
マイクで宇野くんの世界に巻き込んでいっちゃうあたりは,今年の7月に全国で観た福島県立いわき総合高校演劇部『ちいさなセカイ』でカラオケ(西野カナ「涙色」)がはじまっちゃうシーンを連想しました。面白かったー。

中盤でさくらちゃん(だった気がする)の「専業主婦になりたい」という話を受けて,吉田くんも「僕も専業主夫になりたい」と言い出すあたりは,2000年代前半だからこそあんなバッシングが来るんだろうな~と思いました。当時はニートなんて言葉もなかったし,作品の情報によると女子大生の就職率はまだまだだったようだし,男性が稼いでこその時代。15年くらいすると,社会そのものの状況や社会的な性差,働くことへの価値観も変わるんだなぁということをしみじみ感じました。吉田くんにとっては生きづらい時代になったんだな。多分現代だったらさくらちゃんがつらそう。自分がなりたいものと,社会的に許容されるものが一致するってなかなか大変なことなんだろうなということも,なんとなく思いました。

そうそう。吉田くん。いいキャラしてるので,後半は豹変せずにそのままボソボソ喋りのまませりふを出していってもよかったのかななんて思いました。なんか,私の中で吉田くん像が拡散してしまって。ボソボソでも主張するときは主張できるのか,本当はすんごいバリバリ喋れるけど普段はボソボソの仮面をかぶっているのかって,結構違うと思うんですよね。なんだか騙されちゃった感じがしなくもなかったかも。

そして舞台装置の話をすると,白い壁がぺらーっと続いているので,教室内の貼り紙って結構大切かなと思うんです。色のアクセントを置くという意味で。
壁が結構白くて広かったのですが,貼り紙も白が多くて,イマイチ使いきれてない感がありました。例えばカレンダーはもう少し色を付けるとか。そんな工夫があると良いのかなーと思いました。

あと装置なのか演出なのかよくわからんですが,教室内の勢力が机の配置に表れるとするならば,もう少し配置換えの余地はあったかなーという気もします。序盤で女子達が吉田くんがどうのこうの言ってますが,女子同士も女子と吉田くんも物理的な距離があまりなくて,これ丸聞こえでしょ!と思いました。笑 もう少しこそこそ話すときはきゅっと集まったり,そもそも机置くときに上手に集合するとかがあると,吉田くんに対する女子の抱く思いがノンバーバルな面でも伝わったかなーと思いました。

もともと豊高のお芝居は好きですが,昨年と比べて脚本選びから演出までスタンダードに戻って来てくれたような感じがして,とても嬉しかったです(´∇`)人数も多いから,面白いものにじゃんじゃか挑戦できそうですね。まだまだ伸びそうなカンパニーさんだなと思います!
豊高の皆さん,お疲れ様でしたー。

Saturday, September 12, 2015

『NINAGAWA・マクベス』

(Bunkamura公式webサイトより)

@シアターコクーン

演出:蜷川幸雄
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:小田島雄志

出演:市村正親/田中裕子/橋本さとし/柳楽優弥/瑳川哲朗/吉田鋼太郎

先日舞台を観に行ったときにもらったチラシの束を整理していたら,見つけてしまった『NINAGAWA・マクベス』。先月佐々木蔵之介の『マクベス』を観たときに,私この作品好きだわと改めて思っていたのでした。

私,お恥ずかしながら蜷川さんの舞台って今まで一本も観たことなかったんです。いつか観たいと思っていたけど,まだ大丈夫まだ大丈夫と思って過ごしていました。
でも最近の蜷川さんはお顔にチューブがついているし,移動も車イス。急がねば…!でも何を観れば良いのか!
…と,思っていたところに飛び込んできたのが『NINAGAWA・マクベス』なのでした。

あー。観て良かった。いちまんさんぜんえんしたけど,その価値はありました。

しっかり味わいたかったのでパンフレット買ったんですが,蜷川さんのエネルギーの高さに驚き…。
以下,パンフレットより一部抜粋です。

イギリス人は自国以外の人間が創るシェイクスピアを,ちょっとやそっとじゃ認めようとしません。それほど強固な自信に裏づけられている。だからこそ判定勝ちではなく,決定的な力量を示してノックアウトしなければならないと思っていました。(中略)とにかく世界演劇の中で勝とうとしたら,判定勝ちじゃ生き残れない。ノックアウトしない限りはね。若い人たちがこれを観てどう思うか聞かせてほしいですよ。「おじさん,つまんないよ」って言われるかもしれないけど,全力でやるしかありませんね。

チューブをつけて,車イスに乗っている80歳のおじさんが,こんな熱いこと考えてるんですよ。
なんてひとなんだ。蜷川幸雄よ。


観劇して思ったことは, (この年齢だから言えるせりふがあるんだろうな) ということ。
そう。思い返せば,私が観てきた『マクベス』って,内野聖陽×松たか子の『メタルマクベス』,野村萬斎×秋山奈津子の『マクベス』,堤真一×常盤貴子の『マクベス』,と佐々木蔵之介でした。佐々木蔵之介はちょっと趣向が違うマクベスなので置いておきますが,この3組っていわば中間管理職みたいな年齢のひとたちで,まだまだ伸びしろあります!ってひとたちだと思うんです。

が,今回は市村正親×田中裕子…。なんかもう,ある程度のキャリアを積んで,地位を築いている年齢。ある一定のものは手にしているはずなのに,それでも欲に食われ自滅に進んでいく。中間管理職の抱く欲とはまた違う気がして,深みというか,厚みみたいなものをお芝居から感じられました。

例えば劇中に「私は子どもにお乳を与えたことがありますからよくわかります。」みたいなせりふがあると思うんですが,秋山奈津子のせりふを聞いても常盤貴子のせりふを聞いても,なんだかこの箇所は毎回しっくりこなかったんですよね。なぜか。(あ。育てたことある………の??)みたいな。でも田中裕子のせりふは実にすーーーーーっと聞けて,自分の中にすとんと入ってきた気がしました。単に年を重ねたからかと言われると,きっとそれだけではないと思うのだけど…。過去に観た『マクベス』で聞いた覚えがあるせりふもバンバン出てきましたが,響き方がなんだか違う。NINAGAWAマジックが働きまくっている舞台でした。

それからやっぱり,男のひとは年を重ねてこそ味が出るよねぇ…。
市村正親ももちろんですが,私は特に吉田鋼太郎にうっとりでしたよ…。あの渋さ,たまらん。笑 舞台で観たのは超久しぶりだったので,胸がときめきまくりでした。
やっぱり吉田綱太郎は舞台のひとだなーというのも再認。声の通りが全然違うよね。嫁と息子を殺されて,声にならない声を出すところなんて,本当に悲痛さがあって。苦しい,悔しいという思いがうなりになると,ああなるんだろうなと思います。あー本当にしびれた。びりびりですよ…。笑
(あとすっごい余談なんですが,“鋼太郎”ってローマ字表記にするとKohtalohなんですね。hついてるし,まさかのlo!!!カッコイイ…。)

年を重ねなくても素敵だったのは柳楽優弥くん。笑
初めて舞台の柳楽くんを観たんですが,声の通りが半端じゃない!ひゃー。このひとすごい!
『メタルマクベス』で観たマルカム役の森山未來も良かったけど,柳楽くんも素敵だった。若くて,生き延びて好機を待つ,エネルギー溢れるひとマルカム。マクダフとのやりとりは,かなりぐっときました。
今『まれ』を観てるから柳楽くんのお芝居観れてるけど,声が良い役者さんはやっぱり舞台で観なくちゃね。やだー。他の作品も観てみたい!←そう。『まれ』観てるから,田中裕子と柳楽優弥という組み合わせはとってもときめきでした。

そして何を隠そう田中裕子…。私の中で田中裕子といえば『もののけ姫』のエボシ様。そして『Mother』とか『Woman』でそそっと陰から主人公を見守る役…という感じで,あと『まれ』。笑
なので田中裕子がメインのお芝居をしっかり観たことがなかったのですが,今回は堪能させていただきました…。せりふの一つ一つが重い!重いというか,深い!!聞こえは軽いのに,あとからずしっとくるこの感じはなんなんだろう!ひゃー。すごい女優さんです…。
でもって,まさか田中裕子のチェロ生演奏を聞けるなんて思っていなかったのでびっくり。笑 すごーい!弾けるんだ!と思ったんですが,パンフレットを見るとスタッフのところの「チェロ指導 溝口肇」とな…。どこまでも豪華だわ…。


そうそう。2階の客席だったんですが,1階から階段を上って移動している時から,舞台装置がちらっと見えてハッとしました。

すっごい,仏壇…!(゜д゜)

舞台が,仏壇で…。仏壇のフレームの中でお芝居が展開していって…。いつ誰を注目して見ても,この仏壇セットが必ず視界に入って,和を感じまくる作品でした。衣装も髪型も,安土桃山時代。動くのは桜の木。
徹底的な和だったのに,何も違和感を感じないのはなぜなのだろう…。役者の力量?もう,衣装も,道具も,空間そのものを役者が制圧しているから,それで成立しているから,なのかな。これもNINAGAWAマジックなのかな。

だけど舞台全体を通してアダージョとか弦楽が使われていて…。(チェロもそうだし)そういうところは和と洋の融合というか,マクベスの世界の根底に触れている気がしました。選曲のセンスも,さすがだなぁと思います。(私は自力でアダージョには気づけたのだけど,あと何が使われていたんだろう?特にボーカル入りのやつ。気になります。)

はー。とにかく圧倒されまくりでした。思うところを書き連ねてしまいましたが,これをノックアウトと呼ばずに何と言うのだろうかという気持ちになった作品でした。演出家の名前をタイトルに冠しても,ちゃんと張り合える作品。久々に拍手が疲れる舞台でした。あぁぁーよかった。今年のマイベスト3に入る作品です。満足。本当に満足!