Monday, July 20, 2015

第44回関東高等学校演劇研究大会(栃木会場) 長野県長野東高校演劇部『サバの缶詰』(DVD)

2009年1月24日・25日
@栃木市文化会館大ホール

作:清水信一
出演:長野県長野東高校演劇部

(2015.7.20にDVDで鑑賞)

今月上旬に長野東の文化祭にお邪魔した際,顧問の先生からこのDVDをいただきました。
先月お会いしたときに(←なんかこれだけ読むとすごいお会いしている感じ。笑)この作品のお話を伺っていたので,どんな舞台だったんだろう~と思っていたのでした…。

しっとり…。とってもしっとりした作品でした…。

終始テンポもしっとりだなと思っていたのですが,鑑賞後に長野県高校演劇連盟に掲載されている「高校演劇ながの第15号」を読んでちょっと納得…。キャストさんが全員1年生でした!
すすす,すごくないですか!?
卒業した3年生とカンペキに入れ違いということは,言い方キツイですが一度廃部したようなものですよね…!?それでいきなり関東大会って,超すごいと思うんですが!よくここまで来ましたね…!ひゃーーー。(驚きを隠しきれない)

舞台は実在するところなのに,ストーリーはファンタジー要素が入っているからなんだか不思議な気持ちで観てました。このエリアのひとが長野東に通学できるのか(長野東のひとたちにとってこのエリアは身近なのか)は地図を見てもイマイチわからないのですが,地域に向き合う作品っていいなーなんて思いました。昨年度の関東大会の新潟県立六日町高校演劇部『ここは六日町あたり』でも思いましたが,その地域に住んでる人でないと出せない空気感って絶対あると思うので。

そうそう。映像だから臨場感は半減しているし,カメラを挟んでいる時点でお芝居というよりはお芝居の「記録」だと私は思っているのだけど,なんだか長野県の夏の空気とか,夜のひんやりした感じとか,そういうものがちゃんと想像できました。ホリゾントの効果かな。「私ホリゾント好きじゃない」って過去に何度も言ってますが,それでもきちんと使えているところがあると(おぉーっ)てなります。笑

ついでに舞台装置の話をすると,ホームの質感がとっても素敵でした!これは映像だからアップで見られて逆に良かった!雨ざらしのコンクリートや,看板(これがたまらん。いい錆び具合。いい落ち具合。)が重厚感たっぷりで,まさに舞台を支えてるなーって感じがしました。あとぽつんとつく電灯も素敵。お芝居だから表現できなくて仕方ないけど,夜のシーンは蛾が大量に飛び回ってるんだろうななんていう画も想像できました。

その流れで小道具(というのかしら)の話もすると,きゅうりとおにぎりがホンモノなのもよかったなぁー。音がいいよね。3人で揃ってかじるところなんかも,(あーこれ絶対狙ってるところだわー)なんて思って聞いてました。笑 あのポリポリした音って,どうしてそれだけで夏感が増すのかしら。『トトロ』って単語も出てきてるから,それで余計夏っぽさが出るのかも…。ラップもカシャカシャ感がいいよね。


さてさてお芝居の中身の話を…。小学生であっても高校生であっても,それぞれの立場でぶち当たる壁というか問題というか悩みというか考えてしまうことというか,そういうものがあるよなぁということをしみじみ思いました。
周りのひとが聞けば(なぁんだそんなこと)になるかもしれないけど……例えば裏サイトにあることないこと書きこまれたくらいで退学するんかとか,書きこんじゃった本人も混乱して死にたいとか言い出しちゃうし,耐性!耐性低いよ!と心の中で突っ込んでしまいましたが,当人にとっては超一大事で,それこそ状況によっては死にたくなったりするよなぁって。歴史の登場人物は武勇伝ばかりだし,どんなに勉強ができても忘れていくときは忘れていくし。なんのために高校行くんだろうとか考えちゃうだろうなって。でもそういうことって周りに言われて解決することじゃないし,自分なりに何かに触れて考えて,ぐるっと巡って今を生きることしかできないことに気づくのかなーなんて思いました。

幹太くんみたいな年齢の子どもだったら,親の都合に人生かなり振り回されちゃうよなぁ。振り回されるのはつらいけど,でも守ってもらわなきゃ生きられないから結局振り回されないとだし。そんなときに何を頼りに生きていくのかな。幹太くんの場合は知識とか普段得られない体験に没頭することで防衛していたのだろうけど,子どもでも大人でもない晶子姉ちゃんと出会うことで大人の誰にも(おそらく)言えない無価値観とか,そういうのを言えたんだろうなー。口にはしなくても,寂しさとか,くるしさとか,そういう何かで繋がっていることがわかったのかな。2人は。
(いやしかし幹太くんの嘘もびっくりだわ…。よく西麻布とかって地名がポロッと言えるなぁと。でも広尾まで3駅とかすぐ出てくるから,やっぱ幹太くんにとってそこは大切な場所なのかな。なんて思ったり。)

きゅうりバ…あ,真理婆ちゃんが言ってた「シンから思えば来る…」みたいなせりふは印象的でした。(なのに正確に覚えてない…。←)シンって,芯かな心かなーとかって考えちゃいました。


シーンが結構ぷちぷち切れるので,(そそそ,それで!?)というところもちょこちょこあったり。
退学問題まで発展したネットいじめは「死にたーい!」「ごめーん」でそのままだし,幹太くんは新しい生活をどう思ってるのかなとか,そのあたりは気になるところです。
そこへさらに電車が来ちゃったので,幹太くんじゃないけど(あれは何だー!)となり,情報過多!

でもシンから思ったから電車が来たというのはなんだか違う気がして,じゃあ何だろうと聞かれるとなんとも言えないのだけど…。うーん。現状に向き合うための後押しみたいな感じで,廃線のホーム(傷ついたお疲れの心を休める場所)から今も現役で電車が走ってるところまで連れてってくれたのかなーという感じが個人的にはしています。つらくて保健室で寝てた自分を迎えに来てくれた友達。みたいな。そんな感じ。(たとえになっているのだろうか…。)


あと2000年代後半だな!と時代を感じたところがあって。
髪型が…みんなシャキッとしている…。私も2000年代の高校生で,髪はストレートであればあるほど価値があると思って生きてきたニンゲンだったので,すんごい親近感わきました。皆さん天使の輪が美しいですね…。(お母さんとなっちゃんが同じ役だっていうことには,声+天使の輪加減でわかりました。)
はい,それだけです。笑

あとあと。昨年拝見した長野東の『銀河鉄道の夜~吉里吉里国ものがたり~』でも,登場人物の名前がとっても素敵ーと思っていたのだけど,この作品でも名前へのこだわりが感じられて,素敵でした。


幹太のお母さんもおばあちゃんも,晶子のひいおばあちゃんもてっちゃんも実際には出てこないけれど,なぜだか情景が浮かびました。すごいなぁ。
そしてこのキャストさん達,何気に私と年が近いわ…。きれいな天使の輪っかを持ってた彼女達は,どんな大人になっているのかしら。なーんて,お話そのものもそうでないことも,想像が膨らむしっとりきれいな舞台でした。

顧問の先生,素敵なお時間をありがとうございましたー。

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