Saturday, July 25, 2015

映画『みんなの学校』

◇STAFF
監督:真鍋俊永
撮影:大久保秋弘
プロデューサー:兼井孝之

出演:大空小学校のみんな

(2015.7.24 劇場で鑑賞)

大学院の同期に誘われて観に行ってきました~。
もともとM1のときに児童養護施設のドキュメンタリー映画『隣る人』を同期みんなで観に行ったことがあって,それを思い出してくれたのだとか。私はあれ以来,ドキュメンタリーの面白さというか奥深さに惹かれています。

ドキュメンタリーってあらすじに書きにくいので…まずは予告編をどうぞ。笑


舞台となる大空小学校は大阪市住吉区にある公立学校。学区に住んでいれば,必然的に通うことになる学校。映画や公式webサイトによると,隣の学校の人数が増えたためにできた新設校。
この学校では特別支援が必要なお子さんも,支援級を設置することなく通常級で過ごします。教職員も特に加配等はなく,サポーターさんやボランティアさんの手を借りて手厚くお子さんを見ているみたい。「自分にされていやなことは人にしない 言わない」が学校で唯一のルールで,これを破ると“やり直しの部屋(校長室)”に出向く仕組みだそうで…。

とにかく学校全体がチームとはこのこと!という感じで,例えば朝起きられなくて登校できない子は管理作業員のおじちゃんが起こしに行く…とか。教員以外の見守り体勢がとにかく手厚いというか,分厚い学校でした…。

障害がなくてもあっても地域の子どもとして育てられていく,育ちあっていく子どもの姿は確かに温かくて,きっとこの子達が大きくなってバラバラの中学や高校なんかに行っても,地域で出会ったら「あっ,○○!」「おっす」みたいな感じになるんだろうな~なんて想像しながら見ていました。

とっても刺激的な映画だったので,観て思ったことを4点にまとめたいと思います。

①校長先生がすごい
「教員が替わっても学校はそこにある」と言うけれど,それでも学校のトップである校長先生の影響というものは測り知れないものがあると私は思っています。開校当時からこの学校は木村校長が舵切りをしてきたけれど,この先生だったから成し得た部分も大きいだろうなと思います。
児童が学校から脱出しようものなら窓から「出た!追いかけろ!」という感じで近くにいた大人に確保するよう指示を出したり,教室に戻れない子どもがいたら担任と2人掛かりでずるずる引き摺って教室に戻す。とにかく,校内を動く,動く,そして児童に直接指導をする!
めっちゃパワフル~と思う反面,(あれ。校長って出張とかナントカ会議とかしょっちゅうあるお仕事のひとですよね…)と思ってくるのです。この先生はずっと学校にいるような錯覚に陥ります。観てると。
逆に副校長先生?教頭先生?は全く出演されていなかったので,そこが校長の補佐をしまくっているとは思うのですが…。でもこれで本当に学校運営回ってるんだろうか!と心配になってしまいました。子どもからすると,「ルールを破ったら自分をしかるのはいつもあの人」という一貫性があるのは良いのだろうなぁとも思ったり。
あと,校長先生が語った本音は,人間味がすごーく伝わってきました。いやぁ,仕方ないよ。そう思って当然だよ。先生である前にひとだもの。って思いました。あと木村校長に限らず,世の中の先生達ってやっぱり,超自我が強いんだろうなぁとも思いました。

②6年生のKのおうち
彼が出てくるたび,(もう!…もう!!!)と思いながら観ました。いろんな児童がでてきましたが,私も一緒に観に行った同期も彼のことが一番気がかりです。情緒が育ちにくい環境や関わりだったんだろうなということが,彼の生活や言動から伝わってきました。ご両親のお仕事が早朝からあるそうなのだけど,それを差っ引いてもケアされていない度合いがかなり激しくて,福祉レベルで気になるご家庭です。卒業式の服装なんかも見ていてすごくショックだったのだけど,あそこに彼の育ちが詰まっている気がしました。校長の「自分のためにがんばれ」という言葉はとてもぐっと来たのだけど,どうか今彼がいるところががんばれる環境であってほしいし,がんばりたいと思える何かがあってほしいなと思います。

③4年生のM
M~~~~!!!(;o;)もう,1/2成人式っぽい授業参観のシーンでは,涙なしには見られませんでした…!Mは自分の感情や行動のコントロールがうまくいかなくて友達に暴力を振ってしまう子なのだけど,あとで振り返れば「あれはだめだった」「もう暴力は振るわない」と思える子なのに…。自分でもわかっているのにコントロールできないのって,すごくつらいと思うんですよね…。2月12日に暴力を振ってしまった後,「もうしません」と反省文を書いたのに,その3日後また手を出してしまったところは私も苦しい気持ちでいっぱいになりました…。
そして1/2成人式(っぽいもの)は,みんな将来の夢とか,もう少し未来の話をするのだけど,彼は「暴力をしない暴言を言わない」という直近の目標を語るのです。最初は頑張って話す彼ですが,次第に顔が歪んで涙が出ちゃって。あぁぁ~,苦しいよねー!つらいよねーーー!!!(;×;)と,ここでもらい泣きしちゃいました…。まさに通級適のお子さんだなと思います…。

④支援を要する子どもは,何を目標に学校生活を送れば良いのか
今回一番考えさせられたのはここです。
以前上司の一人が「インクルーシブ教育なんてきれいごとだよ」と仰っていたのが心に引っかかっていたのですが,そう言った上司の意図が,なんとなくわかったような気がします。
私が普段職場でお会いするお子さんは支援を要する方が多いので,そういう…職業的な立場のフィルターがかかった上での感想になりますが…。

確かに,学校が怖くて行けなくなってしまった子どもが大空小学校に転入したことでまた行けるようになるのなら,保護者としてはとても嬉しいことなのだと思います。ハンデがあっても周囲に支えられ,同じことを達成できるのは大きな喜びなのだろうとも思います。支援を要する仲間がいることで,周囲の子どもたちも必然的に,ちょっと工夫をした関わりを持ってくれるようになるのだろうとは思います。

だけど,生きるために身に着けるべき知識(時間,お金の計算,読み書き)やコミュニケーションスキル(ヘルプを自ら出す,交渉する)は,ここで本当に身につけられるのかという疑問がかなり残りました。
この地域で永久に暮らせる保障はないし,中学校など上級の学校でこの手厚さと同じ支援が受けられるとは到底思えない。小学校6年間で彼ら自身が身に着けるべき学習とは何なのか。目標や保護者の願いは当然それぞれ違うけれど,その子どもの成長には何が必要かという視点で環境を選択することはとても大切なことだと思います。ASD圏のお子さんもこの映画にはいらっしゃいましたが,小人数の学級・学校と言ってもやはり刺激は多く,耳を塞いでいる映像を見るとやはり負荷は高いのだろうということが伝わってきました。「みんな」と同じ場所にいられることももちろん大切なのだけど,「この子」が安心できたり集中できる環境を用意してやるべきことに取り組めたら,また身に着くものも違うのかもしれないなと思います。


最後はちょっと否定的なことも書きましたが,でもこれを公立の学校が,加配なしで取り組んでいるのは本っ当ーにすごいことだなと思います。教師陣の情熱,街のひとの温かさあってこそできることなのでしょう…。「教育とは何か」「地域で子どもが育つには何が必要か」を考えるヒントをくれた,そんな映画でした。

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